星空に願いをこめて。3
「どうやら僕は、君のことが好きみたいだ。だから、そばにいさせてよ」 僕の我儘だけど。
家に帰り着いて母に牛乳を差し出す。
「はい、牛乳。それと、今から出かけてくるから」
自分の言葉に自分で驚いたけど、口も、足も全て勝手に動いた。
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学校の近くの展望台。優雅が僕を誘ったときに言っていた場所。
きっとそこからよく見えるのだろう。
お菓子や飲み物を買っていたところを見ると、家ではなさそうだと判断し、僕はそこへ向かってみた。
つくとそこには人影があり、ああ、よかった、あっていた。そう思った。
「木村さん」
声をかけてみると彼女は振り返り、目を丸くした。
「田辺くん?どうしたの?」
「んー、興味が湧いたからさ」
「そっか。田辺くんも星見にきたんだね」
星をというより、木村さんを見に来たのだけれど。
そんなことは言えない。
「まあね。木村さんは星が好きなの?」
「うん、好きだよ。なんだか星空を見ていると自分だけ別の世界にいれるような気がするの」
「そうなんだ」
「それに今日は流れ星が見れるからね、願い事も出来るんだよ」
くすりと木村さんは笑った。
「何をお願いするの?」
「……内緒」
さっき初めて話したわりには話が弾んで、二人で夜空を見上げる。
それでも星空の下で沈黙はやってきた。
「……また誰かと星を見るなんて思ってなかったや」
先に口を開いたのは木村さんだった。
それは僕に向かって言ったのか、ただの独り言なのか分からなくて僕はただ木村さんを見て黙っていた。
「わたしね、好きな人がいたの。その人も星が好きで、よく一緒に見てた。……でもね、もうその人とは見られない」
細かいことまでは話して来なかった。けれど木村さんが心に何かを抱えているのは伝わってきて、僕は唇を噛み締めた。
「……じゃあさ、これからは僕が一緒に星を見るよ」
「え?」
「僕はその人にはなれない。多分、代わりにすらなれない。たけど、一人でいるよりはずっといいんじゃないかなって」
「田辺くん……?」
「どうやら僕は、君のことが好きみたいだ。だから、そばにいさせてよ」
僕の我儘だけど。
星空に願いをこめて。3