燃え尽きた村
おひいさまが人を燃やしはじめたのは
おひいさまが人を燃やしはじめたのは、その村で疫病が流行りだしてからのことだった。
おひいさまの家系は代々、村の火の管理を司ってきた発火能力者の血筋である。夜を明るく、冬を暖かく。そのため、村の生活は快適であった。
しかし、冬が終わり、春がやってきたころから、どこからともなく疫病が流行りだした。それから、おひいさまは疫病に罹った村の人間を生きながら燃やしてしまうようになったのだ。
おひいさまの家系に生まれた女はみな、七歳の誕生日とともにその役目を受け継ぐこととなる。村を見渡す高台にあるお社に篭り、外界との接触を断ちそれから役目を終えるときまで、独りお社の中で過ごすこととなる。そこから村中の炎を操るのだ。おひいさまのいるお社へ出入りを許されているのは、一族の中でも世話役の人間のみだった。
春のあいだ、姿の見えないおひいさまは、疫病を焼き続けていた。それでも疫病はどこからともなくやってきては村の人間を襲った。疫病に罹ったと噂の立ったものは、その翌日にはおひいさまの炎に焼かれた。
次に焼かれるのは誰なのか。村人は不安の日々を過ごし、疫病の噂とおひいさまの炎を恐れて暮らしていた。
やがて夏がきて、疫病が猛威をふるいだしたころ、おひいさまの一族も皆焼かれた。おひいさまの世話役も真っ黒な炭の固まりとなる。
おひいさまは、この村を根絶やしにするつもりなのではないか。じりじりと膨らんできた、おひいさまへの恐怖は疫病のそれを上回り、そして蜂起した村人たちはおひいさまの社へと雪崩れ込んだ。
黴のにおいと、張り巡らされた蜘蛛の巣。ひどい埃で、息するたびに咳き込むような屋内。こんなところで人間が生活をすることができるのだろうか。
そこにいたのは、果たして一体のミイラだった。少女のミイラが畳の上にきちんと鎮座している。その身体は何十年もの時を経て干涸び、暗く落ち窪んだ眼窩は虚空を見つめていた。何代も前のおひいさまが、そこに置き去りにされていたのだ。
では、いったい誰が疫病を、疫病に罹った人間を焼き続けていたのか。村人たちがお互いを疑いあったそのとき、次々に村人たちが燃えはじめた。そして、最後に燃え尽きた村だけが残った。
++超能力者++
村人全員
ESP:潜在的なパイロキネシス
燃え尽きた村
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