幼馴染とは名ばかりの

自分が高校生じゃなくなってから本当に切実に高校生っていいなあって思うようになりました。
高校生眩しい。
だから高校生書いて心を満たす日々です。うそですそんなに毎日書いているわけじゃあない。

海があるところって、少し怖いけれど空気がきれいそうで好きです。今回はそういう町が舞台の設定。

夏ですね!(そろそろ終わる)

高校生っていいなあ


「お腹すいた!」
 昼休み、向かい合わせに席を二つくっつけて、いつも通りお昼を食べようとすると、そいつは突然机に突っ伏した。
「えっ。ご飯食べるんじゃないの?」
 母が作ってくれたお弁当を開ける手を止めて、そいつの少し色素の薄い髪をつつきながら聞く。
「忘れた。忘れたんだよ! 午後まで授業ある今日に限って!」
「いきなり起き上がるとは何事か」
 もうちょっと髪に触れていたかった。
「購買来てるじゃん」
「絶賛金欠なう」
 再び机に突っ伏しながら、器用に鞄から取り出した財布をこちらに投げてくるので、受け止めて遠慮なく中を見させてもらう。
「うわ……」
「「五十八円」」
 私が言うタイミングを見てか、二人で財布の中身を口に出す。
 恐ろしい子だわ。所持金五十八円とかいまどきの小学生でももっと持っているわ。
「そりゃ購買もいけないわな」
「そういうこと」
 はぁぁぁぁ。と大きなため息をつくそいつ。
「半分食べる?」
「んにゃ。いいよ悪いし」
 即答してきたぞこいつ。そういうとこ遠慮しいなんだから。
「どうせ食べきれないし、食べてよ」
「いいって」
「今日食欲あんまりないの」
「食えよ。それ以上やせられても困る」
 こういうところあるからなあ。
「そっくりそのままその言葉返してあげる」
「断る!」
「食え」
 私はすでに開けていたお弁当から、唐揚げをフォークで刺し、向かいで駄々をこねる奴の口に突っ込む。
「むぐっ!?」
「いただきます」
 唐揚げをどうにか飲み込もうとしているあいつを放置して、私はご飯に手をつける。
「ごち! ていうかいきなり突っ込んでくんなあほ!」
「はいこれも」
 今度は卵焼きを突っ込んでやる。
「……」
 不満そうな顔をしつつ、もぐもぐ食べるあいつを見て、思わず口元が緩む。
「もういいから。自分で食べろ」
 食べ終わったらしく、手で牽制してくる。
「教室で見せつけんなーバカップルー」
 隣のグループの一人が絡んできた。
「付き合ってねーし」
 あいつが律儀に返事をするので、私はそのまま放置して食べ進める。
「毎日一緒にお昼食っていてか」
「おうよ。こいつの母親に言われてんだよ。昼飯ちゃんと食ってるか見張っておけって」
 この幼馴染はおしゃべりだ。まったく……。
「うるさい梅干し突っ込むぞ」
 こいつは昔から梅干しが大嫌いだ。それ以外なら何でも食べる癖に。
「うおーこええ」
 まったく。
「あんたこそお昼ちゃんと食べなさいよ。食べざかりなんだし」
「今日だけだって」
 いつもは自分で弁当を作ってくるか、購買で買うかしているのは知っているが、今月は何度か昼食を抜いているのを知っている。というか知らないわけがない。
「来月何かあるわけ?」
「なんでだよ」
 隣のグループと絡むのもやめ、おとなしく携帯をいじっていたから素朴な疑問を口にしてみた。今月減量しているかの食生活じゃないですか。それなら来月になにかあるとしか思えない。
「別に減量しなきゃいけないようなスポーツやっているわけじゃないよね?」
 最後の、ね?のところに少し力を込めて、奴の口に弁当箱から出したアスパラのベーコン巻きを問答無用で突っ込む。
「むが!?」
「それ食べたら答えてね。正直に言わないと梅干し突っ込むわ」
 やつが飲みこむのを、自分も白米を咀嚼しながら待つ。
「ごち。スポーツなんてやってねえよ。ただ来月から夏休み本格的に始まるじゃんか」
「ああ。八月だもんね。え?夏休みだから減量しているって言うの?なんで?」
 私の水筒に手を伸ばしてくるので、お茶をコップ部分に注いでやる。どうせ飲み物も忘れたんだろうこいつは。ばかか。
「さんきゅ」
 奴はおとなしく私の水筒のコップからお茶を飲み干しながら、呆れた目でこちらを見てきた。なんだなんだ。何故そんな目で見られねばならない。
「夏って言えば海じゃねえか」
「?」
 たしかに7月後半にさしかかって、家の近くの海岸は人でいっぱいになっているけれど。え?
「今年も海行こうってことだよ。いい加減察しろよばーか」
 頬杖をついて、横を向く奴の顔は少し赤いような気がする。夏の暑さからくる赤ではないだろう。なにしろここは今冷房が利いていてとても涼しい。
「え、だって去年だって家族で行ったじゃない。改まってなに?どういうこと?」
「だー!俺は、去年も二人で行こうって誘ったのに、気づいたら全員で行ってたんだよ!」
 あ。やっぱり顔赤いし。なんで怒っているわけ?
「どういうことよ」
「はあ……お前ってそうだよ。そういうやつだよ」
 また頬杖をついてそっぽを向くあいつは何やら、口の中でもごもご言っているようだがなにを言っているのか全くわからない。
「ちょっと説明しなさいよ!」
「うっせえ。8月最初の夏期講習のあと、海行くから支度だけしてこいよ」
「はあ!?ふざけんな!っていうか私まだ食べきってないんだけど!?」
 梅干しの乗った部分の白米だけ残ってしまっているお弁当と私を残して奴は、教室から出て行ってしまう。
「なんなんだっつの」
 私は一人残った白米を口に含む。
「やっぱりお前ら付き合ってるんだろ」
 隣のグループにまた絡まれた。
「付き合ってないっつの」
 私は乱暴にお弁当のふたを閉めてから、奴のために自動販売機まで行ってやることにした。飲み物くらいおごってやらあ。飲み物渡すついでにさっき聞きそびれたことを聞いてやろうと思う。
 海に誘うってデートのつもりなのか。ってね。

幼馴染とは名ばかりの

高校生いいなあ。
不器用少年と鈍感娘の組み合わせって見ているこっちがやきもきするんですよねえ。かわいい。
幼馴染同士で付き合って、結婚までいくって夢ですよね。いーなーかわいい。
ま、この二人がくっつくかどうかなんて知らないけど。

ずいぶん前に後輩ちゃんにもらったお題「お弁当」の消化でした。
途中まで書いてほったらかしになっていたので終わらせてみましたー。
何かございましたらTwitter(@asgk150)まで。お題とかでも嬉しいです。書くまで時間が空いてもご了承を。
ついったー適当なことしか言っていないですが、大丈夫です普通の人です。どうかよろしくお願いします。
お粗末さまでした!

幼馴染とは名ばかりの

海が近い町が舞台の高校生二人組のお話。 幼馴染って可愛くって好きです。特に男女の。現実にはあまりない。だからこそ書くのが楽しいのです。 夏らしいものにしてみましたよ。もう夏終わるけど。 不器用少年と鈍感娘のお昼のお話。 どうかよろしゅうおねがいします。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-25

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