陽だまり

あなたをはじめて目にしたとき
ちょうど太陽と月のようだと思いました
透き通るすすき色を下地に
涼しげなみぞれ色が複雑に入り組んで
そんな出会いも束の間
拾われてすぐに炬燵に駆け込んだあなたを見て
その図々しさと愛らしさに
こみ上げてくる微笑ましさを隠せませんでした

こうして 我が家に住み着いた
いつも寝ぼけ眼のあなたは予想通りの睡眠魔
光の差す窓際のカーテン裏で
柔らかな陽を 無防備なお腹に浴びながら
手足をだらけさせて 平和を噛みしめるようなあくびをして
毛布に溶けるように眠っていました

そんなあなたはそのまま深く眠ってしまったようです
せっかくの白い体が汚く赤錆びて
ただの無機質な物体に成り下がり
あんなに ねだったご飯にも手を付けず
棚の上で 物言わず僕たちを見下ろしています

あなたの声はもう二度と聞こえないようでいて
その 猫らしくない 生まれたばかりの子猿のような
変に甲高い声が 私の肉の中を駆け回りますし
あなたの体にはもう二度と触れられないようでいて
その 太陽の温かみを存分に吸った体温と
柔らかな毛並みは 私の掌で静かに息をしています

雲の上でもあなたは相変わらず
陽だまりに寄り添って
静かに寝息を立てているのでしょうか
あなたひとりの命に振り回される世の中ではないけれど
我が家は少し静かになりました
あなたのいない窓際には
陽だまりだけが横たわっています

陽だまり

陽だまり

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-24

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