白い右手
どんなに白い膚であっても
その下には暖かな血が通っていて
鼓動は確かに刻まれている
ふたり密かに撫で合って
互いに壊れて行く錯覚を味わい
まるで美酒のように夢ヶ淵に墜ちる
君の右手に握られるものが
花だろうと刃物だろうと
僕を彩るには十分過ぎるから
赭い色を授けられて
バッと花弁が宙に舞い
僕に向けられた君の気持ちが
僕の胸を染め上げた
片手では収まり切れないほど
受け取った無償の愛が
この狭い部屋に充満する
話したい言葉を喉に詰まらせて行く
それでもなお
右手はやけに白いままで
熱を宿し続けていた
今は蝶番の軋む音に誤魔化されよう
繋ぐためにこの手はあるから
君よ
鮮やかにけざやかに輝いていて
ひいては時間さえ飛び越えて
夜さえも照らしておくれ
両手に掴む「それ」が何か解るまで
白い右手