白い右手

どんなに白い膚であっても
その下には暖かな血が通っていて
鼓動は確かに刻まれている

ふたり密かに撫で合って
互いに壊れて行く錯覚を味わい
まるで美酒のように夢ヶ淵に墜ちる

君の右手に握られるものが
花だろうと刃物だろうと
僕を彩るには十分過ぎるから
赭い色を授けられて
バッと花弁が宙に舞い
僕に向けられた君の気持ちが
僕の胸を染め上げた

片手では収まり切れないほど
受け取った無償の愛が
この狭い部屋に充満する
話したい言葉を喉に詰まらせて行く

それでもなお
右手はやけに白いままで
熱を宿し続けていた
今は蝶番の軋む音に誤魔化されよう
繋ぐためにこの手はあるから

君よ
鮮やかにけざやかに輝いていて
ひいては時間さえ飛び越えて
夜さえも照らしておくれ

両手に掴む「それ」が何か解るまで

白い右手

白い右手

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-24

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