夢の歌姫

わたしの歌は、世界的ヒットを記録した

わたしの歌は、世界的ヒットを記録した。

国を越えて、わたしの歌を求めるひとがあとを絶えない。
しかし、一体そのうちの何人が本当にわたしの歌を理解していると言うのかしら。
ひとりもいない、と断言してしまおう。
誰ひとりとして、わたしの歌を聞いてはいないのだ。
どんなにレコードが売り上げを伸ばし、コンサート会場が埋め尽くされたとしても、それは揺るがない真実なのだ。
誰もに聞かれていて、誰にも聞かれていない。それが、わたしの歌。
いま、満員の客席を前にわたしはそんな虚しい気持ちを持て余す。静まりかえったコンサートホール。
わたしは万人の眠りのなかでひとり眠ることも出来ずに頬杖をついて、このコンサートが終わるのを待っている。

わたしの歌を最後まで聞くことなく、眠りについた全ての観客たちを前にして。



++超能力者++
袴田 玲於奈(はかまだ・れおな)
ESP:歌を聴いたものを眠らせる

夢の歌姫

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夢の歌姫

1分で読めます。「話の中に必ず超能力者がひとりは出てくる」というしばりで掌編の連作を執筆中。 超能力者の名前と能力が必ず最後に記載されてますので、答え合わせ感覚で読んでいただければ幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-23

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