天上の戦い

 プロローグ
 今、ゼウスの心に刺さる言葉、「地獄」。
 聖地、デルトバリスタムに流れる、大量の血。
誰も予想しなかった、最後の戦い。
ゼウスは、もはや状況を考えることはしなかった。
ただ前へ進む。
ただ、前へ…

第一章 「オリュンポスとフレグメント」

 ここ、オリュンポスでは、今日も楽しい宴の音が聞こえる。
 このオリュンポス、今あなた方人間や、鳥、魚、それに虫が暮らす世界とは違う。ここは天界。地上とは、違うのだ。
 このオリュンポスの中心地、サハルムには、とても大きい宮殿がある。この中に入ることが許されているのは、ヘスティア、アレス、ヘルメス、ヘパイストス、アフロディテ、クロノス、ヘラ、アポロ、アルテミス、アテナ、ポセイドン、そしてゼウスの12人と、その側近たちだ。
 この宮殿の名は、ハブルト。ここに入れる12人はオリュンポスの十二神、その側近たちも含むと、オリュンポスの中軸(アキセス)と呼ばれる。
 アキセスは、オリュンポスでは最も栄誉なこととされ、人々に崇められる。
「アキセスは、オリュンポスのカケラ(フレグメント)。十二神は、オリュンポスの王(キング)」。初代ゼウスが、叙任式で言った言葉だ。この言葉は、4代目ゼウス、3代目アキセスの同時叙任式から、宣誓の言葉として「私は、人々に崇拝されるフレグメント(キング)になることを誓い、ここに名を重ねます」と言い、石碑に名前を書く、伝統的な儀式として定着した。
 今日も、その言葉が聞こえる。声の主は、10代目ゼウス、8代目アキセス達だ。
彼らに課せられた指名は2つ。シャドウ・レイの討伐、そして天界・下界の統一だ。
シャドウ・レイは、天界にいて、数年前にオリュンポスとの分裂が起きており、対応が急がれる。
下界は通称「ジゴク」。300年ほど前の初代ゼウス、アキセスから戦が起きており、そろそろ統一しておきたい。
そんななかで就任したゼウスは、オリュンポスでは珍しい武器を使わないプロセスの人だ。ポセイドンは剣士。4本の刀を曲芸のように操る。 アテナは特殊な武器、ブラセスを使う。戦いではゼウスの参謀役となる。 アルテミスは弓使い。 アルテミスの父のものを使っている。アポロは大きなノコギリを使う。ヘラは魔物を使う召喚士だ。切り込み隊長を担う。クロノスは幻覚を駆使して戦う。アフロディテは空で戦ったり、降りてきたりして相手を惑わす。ヘパイストスは自分が様々なすがたになる。ヘルメスは6台の銃を使う。アレスは魔術師。様々な呪文でサポートする。アキセスの頭脳ヘスティアはその時に応じて10種類の武器を使い分ける。どの神もその道の最強神で、巷では「最強の軍事キング」と呼ばれている。
 さて、叙任式が終わった。今日からアキセス達はオリュンポスとして働くのだ。 「ではこれから、第一回アキセスをはじめる」ゼウスの声がハブルトに響く。
「まず最初に、これからの方針を決めていきたい。シャドウ・レイ、ジゴクについて意見をいただきたい」
「まずはシャドウ・レイの討伐が先だと思う」まず口を開いたのはクロノス。
「このままであると手遅れになりかけるからな」
「確かにな」とアフロディテ。
結果、この意見は満場一致で賛成となった。
「では、まずはシャドウ・レイの討伐を全力で行う」これで今日のアキセスが終わった。

その夜。
アポロは、自分の宮殿に帰る途中だった。ようやく自分の宮殿にたどり着いたとき、アポロの回りには魔物バーシクルが寄っていた。
気づいたアポロは、「君達、シャドウ・レイの使いか?」と聞きながらノコギリを出した。アポロのノコギリは、彼の身長より大きい。
アポロの問いに、バーシクルの一匹はこう答える。
「そうだ。まずはおまえの首をいただきに来た」そして、アポロに襲いかかった。
アポロは、5匹のバーシクルの中の、一回り小さな奴を倒すことにした。
ノコギリを出しながら、走る。最初の一匹の攻撃をノコギリを当てて避け、3匹目のバーシクルにたどり着く。そしてノコギリを車輪のように縦に回し、威力がついたノコギリにバーシクルを当てて倒した。真っ二つだ。
だが、もう2匹が加わる。そこで今度は横にハンマー投げのように振り回した。そのノコギリが、炎を帯びる。
「ファイア・ソー!」それを一気に当てて一掃した。 全滅だ。
「ふう」なぜこんなやつらが? 情報が漏れたのか? だとしたら、誰が?
アポロは、不思議であった。

第二章 「出陣! 悪魔の巣窟 ファイア・レイ」

次の日。
ハブルトに響く、アポロの声。昨日、バーシクルが襲ってきたことを話している。
話終わると、しばらく沈黙が続いた。みんな考えているのだろう。
しばらくすると、今回アキセス入りしたアポロの側近、アトラスがこう言った。
「一刻も早く、シャドウ・レイを討伐した方がいい」危険だ、他の人に被害を起こしかねない、というのだ。
結局、この意見に満場一致で賛成し、3日後に宣戦布告が行われ、第一部隊としてアフロディテとヘスティア、アキセスのイアペトス、ウラノス、レイア、エピメテウス、パンドラがシャドウ・レイの本拠地、ファイア・レイに行くこととなった。
そこは、もはや「魔城」だった。
黒い城の建物に4人の見張り。「庭」には魔物がうじゃうじゃいる。
アキセスたちは、これからどうしたらいいのか、分からなかった。
しばらくすると、アキセスの頭脳ヘスティアが言った。
「皆の技を使えばここを突破出来る。魔物を一掃する方法と、そうでない方法と」


ヘスティアの作戦はいたって単純だった。魔物に触れない方法は、レイアのステルスを使って渡る人、アフロディテの空を飛ぶ人に別れると言うもの。
魔物を一掃する方法は、それぞれが魔物を倒しまくること。
敵は目視200。7人だから、単純計算で30匹近い魔物を倒すことになる。


オリュンポスでは、アキセスのプロメテウスをリーダーとした雑魚軍を派遣する動きが高まっていた。
その数300。ファイア・レイに、雑魚が沢山いるためだ。
協議の結果、派遣をヘスティアに決めてもらう事で合意した。
早速、ゼウスはヘスティアにテレパシーを送った。


どちらの方法をとるか悩んでいたヘスティアは、突如感じた気配に立ち上がった。ゼウスのテレパシーだ。
「ヘスティア、聞こえるか」
「ええ、よく聞こえます」
「現在、オリュンポスで雑魚軍を派遣する動きがある。君は雑魚が欲しいか?」
しばらく考えてから、こういった。
「下さい」
「分かった。すぐに派遣する」
これ以降、テレパシーは来なくなった。
ヘスティアは振り返ってアフロディテの方を向いてこう言った。
「敵を、一掃する」


ウラノスは、魔物の前に出た。
魔物は驚いたのかしばらくウラノスの方を見ていたが、一匹がキーキーと鳴き声を発すると一斉に飛びかかってきた。
ウラノスは皆を呼ぶ。 戦闘体勢に入る。
アキセスたちが出てきた。エピメテウスは即、必殺技を繰り出す。
「終章(エピローグ)!」
持っていた刀が覇気を帯びる。その覇気は、ウラノスのナックル(拳につけた武器)、その他アキセス達の武器にも伝わった。
エピメテウスは終わりを意味する神。故にエピローグという必殺技を使うのだ。
皆は魔物に向かっていく。
アフロディテは天空から銃を使い、乱射している。
ヘスティアの今日の武器は、敵の魔物であった。
死んでいる魔物を見つけると、それを魔術で復活させ味方にする。そして、そいつらがまた魔物を殺すのだ。どんどん味方が増える戦いかただ。 イアペトス、エピメテウス、パンドラは刀で、ウラノスはナックルで、レイアは魔術で戦う。
敵の数は減っていく。まもなく敵の数が100になるというところだった。
「庭」の敵は、魔物だけではなかった。
ヘスティアが、なにかを察知する。
「おい! ペースを上げよう!」と叫んでから、10匹ほどのゾンビ魔物を呼び、自分は父から受け継いだ伝統の剣を持ち、魔物のいない方向へ向かっていった。
「どこへいく?」とエピメテウスが魔物を一匹倒しながら叫んだが、その返答はなかった。
400メートル程進んだ辺りで剣を振る。そこには人はおろか、魔物、草さえもいなかった。
ところがヘスティアの剣は途中で止まり、血が出た。そこに、腕を怪我した男が現れた。
「よく気づいたな、ヘスティア」という。
「シャドウ・レイだな」
「そうだ」
「名を名乗れ」
一呼吸置いて男は言い放った。
「シャドウ・レイ四天王、白虎だ」


敵の数はあと30というところになって、魔物は最後の抵抗を試みる。
そこにやって来たのは、雑魚軍だった。
「悪かったな。ちょっと遅れた」リーダーのプロメテウスが言う。
そしてまもなく、魔物は全て地にのび、雑魚軍と合流した第一陣は魔城に向かっていった。


魔物と第一陣が去った庭には、ヘスティアと白虎と名乗る男の2人だけしかいない。
白虎が言う。
「教えてやろう。我がシャドウ・レイは10の部隊がいる。その一つ、シャドウ・レイ四天王の1人が俺って訳だ。残り3人いる。」
一呼吸置いてこう続けた。
「玄武、青龍、朱雀。これが第一部隊。あとは知らんがな」
「じゃが、第三部隊がオリュンポスに向かっているのは知ってるぞ」
ヘスティアはその言葉に反応した。
「第三部隊はな、強いぞ。この魔物を20匹集めたくらいのやつがいっぱいだ」
すぐにゼウスに伝えなければ。そう思ったが、そんなことをしている間に白虎が襲って来たらと思うと出来なかった。
ヘスティアは、ゆっくりと呟いた。
「ゼウス、そっちが危ない」


オリュンポスは、次なる作戦を考える会議が開かれた。侵入に成功した為、一気にたたみかけようと思ったのだ。
結果、第三陣を派遣することに決めた。
メンバーは、全て十二神。
アレス、アテナ、クロノス、ヘラだ。
この四人はすぐ、ファイア・レイに向かっていった。


「出陣フェーズ、大成功だな」ポセイドンが尋ねる。
「ええ。でも、油断は出来ません。まだ、戦いは始まったばかりですから」と明るくゼウスが答える。このあとは城を兵が取り囲み、一気に破滅へと追いやる侵攻フェーズが待っていた。
しかし、そう簡単にシャドウ・レイが引き下がるわけもないと、ゼウスは考えていた。
戦争は、まだまだ続くのだ。

第三章「戦争開始! オリュンポスの焦りとシャドウ・レイの罠」

~ファイア・レイの庭~
「さあ、遊びはここまでにしよう」
戦いの始まりを四天王、白虎が伝えた。
「ブラッド・コンティマルクス」白虎はすぐに必殺技を繰り出す。
白虎は、ヘスティアの前から消えた。そのあとすぐ、目の前に現れていた。
その右に持った大きな刀で、ヘスティアを切った。ヘスティアは、音をたてて飛んでいった。
あとには、カラカラカラ、という岩の音のみが響く。
「あっけないな」白虎が呟いたその時、岩の辺りの煙からヘスティアが現れた。
ヘスティアがその手に持っていたのは、刀2本、剣5本、銃、ハンマー、ブラセス一本ずつ。剣と刀は、少しずつ形や大きさが違う。
そして手は、10本になっていた。
「ヘスティア・アシュラモード!」
高速移動し、一本の剣で切る。白虎は避けたが、腕をかすった。
きれたところから血が出る。
だが、白虎も反撃を始めた。避けたところから刀を振り下ろす。
ヘスティアにはあたらなかったが、100メートル程先の岩が砕けた。
「あれに当たったら死ぬ」と考えたヘスティアは、ヒット&アウェーに戦法を切り替えた。
そしてしばらく緊迫の近接戦が続く。

~塔の最上階~
一方、塔の上に登った第一陣と第二陣は、塔内の魔物をつぎつぎと倒し、塔の最上階まであと一歩というところにいた。そこには、3本の道。
「どうする? 」アフロディテが訪ねる。
「この道のどこかにドンがいるのは確かだ。しかし、我々アキセスは一人でドンに立ち向かえん」エピメテウスが言う。
「今ここにいるのは300と6人。300は各道に100ずつ配置するとして、6人はどうする?」とイアペトス。
こんなことを議論し、30分間。第三陣、アレス、アテナ、クロノス、ヘラがやって来た。そしてアフロディテ、イアペトス、ウラノス、レイアが直進、エピメテウス、パンドラ、アレス、アテナが左、クロノス、ヘラ、プロメテウスが右と、参謀役アテナが決めた。
「皆、気を付けろよ」と言ってアフロディテは道を進んでいった。そしてみんなが散っていく。

~ファイア・レイの庭~
そろそろ決着をつけよう。ヘスティアは思った。アシュラモードは一度だけ必殺技が出せるが、それは諸刃の剣。反動でもとに戻ってしまうのだ。
そんなことを考えていると、白虎の剣がすぐ近くに。
なんとか避けたが、1本の腕が傷を負う。そこでヘスティアは1本の腕を守りに使い、他の腕で必殺技を繰り出すことにした。この技ははじめの5秒くらい隙ができるのだ。
ヘスティアは白虎をブラセスで吹き飛ばした。この隙に、神経を9本の手に集中させる。集中させていると、腕に変化が起きる。問題の5秒も突破。残りの1本も変化し始め、10本の手がさらに10本に分かれた。結果的に腕は100本になった。
「アシュラ2乗(スクエア)モード」
攻撃を仕掛ける。この姿でいられるのは2分だけ。
白虎は1つの攻撃は難なく避けたが、次から次へと剣が飛んでくる。避けきれず、1つが当たる。怯むと、また1つ、また1つと受けていく。こうなったらヘスティアは止められない。

2分後、ヘスティアの前には変わり果てた白虎がいた。ヘスティアは、ゼウスに危険が迫っていると聞いた先程のはなしを思い出し、ハブルトヘ急いだ。

~サハルム・宮殿ハブルト~
ゼウスとポセイドンが、向かい合って座っていた。他の人はいない。
「ファイア・レイには多分第一部隊がいるだけ、ボスはいないでしょう」ゼウスが告げる。
「じゃあどこに行ったのだ?」ポセイドンは問う。
「来るといった方が良い。こちらに向かっている。我らも最強部隊を編成し立ち向かうぞ」
「もちろんですとも。早速リストアップを」
「そんな暇はない、今俺が言うからメモしてくれ」
ゼウスの読み上げる低い声。ポセイドンのメモがこれだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ヘルメス
ヘパイストス
アポロ
アルテミス
アトラス
ベルセポネ
大巨人ギガンテス一族
バーシクル第一部隊
ポセイドン
ゼウス

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「早速呼んで参ります」
「頼んだ」ポセイドンは去っていった。
「みんな頼むぞ」ゼウスが呟いた。明らかに焦りと迷いが入った、らしくない声だった。

~塔の屋上・アフロディテ、イアペトス、ウラノス、レイア直進側~
そこにいたのは、第一部隊副隊長、玄武だった。
「お前が玄武か」アフロディテは尋ねる。
「そうだよ」と答える。
「ドンは他にいるのか」
「いいや、ここにはいない。ハブルトヘ向かっている」玄武が言う。
「まずはお前を倒す。そしてハブルトヘ俺らもいく。いくぞ玄武!」

~塔の屋上・クロノス、ヘラ、プロメテウス右側~
そこにいたのは、第一部隊、青龍だった。
「青龍だな」クロノスが尋ねる。
「そうだ。お前らはここで消させていただく」
「ドンは他の道か」
「ここにはいないぞ。ハブルトヘ向かっているからな」青龍が言う。
「まずはお前を倒す。そしてハブルトヘ俺らもいく。いくぞ青龍!」

~塔の屋上・エピメテウス、パンドラ、アレス、アテナ左側~
そこにいたのは、第一部隊隊長、朱雀だった。
「朱雀か」アテナが尋ねる。
「うん、そうだよ」朱雀がにこやかに答える。
「ドンはどこにいる?」
「いないよ。だってハブルトヘ向かってるから」朱雀が言う。
「まずはお前を倒す。そしてハブルトヘ俺らもいく。いくぞ朱雀!」

~サハルム郊外~
「ハブルトまで後どれくらいだ」シャドウ・レイのリーダー、麒麟が尋ねた。
「後数分かと」部下、第三部隊の鳳凰が答えた。
「アキセスが滅びるまでもう少しだな」
 サハルムに不敵な笑い声が響いた。

~サハルム・宮殿ハブルト~
「出撃準備、完了しました」
 ポセイドンが戻ってきた。
「もともと天界はひとつだった」ゼウスがつぶやく。
「100年ほど前まではですね」ポセイドンが答えた。
「第八代ゼウス、第四代アキセスの時だった。当時十二神の名を授かっていた初代麒麟は、ゼウスとの仲間割れでその称号を持ったまま今のシャドウ・レイに逃げ込んだ。ゼウスは、その後の後任の十二神に違う神の名をつけた。それがヘスティア」
「麒麟は何の称号を持っていたのですか?」とポセイドン。
「当時ゼウス・ポセイドンと並び最強と言われた冥界神、ハデスだ」
「あのハデスか!」
「あの?」
「有名な神話があるんです」ポセイドンがそれを話そうとした時、ハブルトに大きな音が響いた。
次にアトラスが入ってきてこう告げた。
「シャドウ・レイ側の爆破です」

ゼウスたち3人が戦場へ着いたとき、そこはもういつもの平和なサハルムではなかった。
「この人数で足りる?」ヘルメスが言う。
「まずはひとつひとつ片付けよう。俺は麒麟、ポセイドンは鳳凰とやりあう。後は頼む。いくぞ!」

 

第四章 「神と神の一騎討ち ゼウス対麒麟国を背負う戦い」

~サハルムとファイア・レイの間・ヘスティア側~
ヘスティアは急いでいたが、魔物が次々に襲いかかってくる。白虎戦の傷が癒えていないだけに、最初は苦戦していたが、庭にいたときに使っていた魔物ゾンビ戦法でだんだんと楽に戦えるようになった。
そのとき、一人の人が立っていた。あの背の高さからして、おそらく大巨人ギガンテス一族の一人だろうと思った。
「どうされました?」と尋ねる。
「なにもしていないですよ。私はただサハルムを見ているだけです」と答えた。
「サハルムで何かあったんですか?」
「あなた知らないんですか? サハルムは今麒麟らに攻撃されています」
それを聞いた瞬間、「ありがとう」といってさらに速度を早めた。

現在の自分の称号「ヘスティア」はハデスの代わりということは知っていた。その成り行きも知っている。ヘスティアにはアキセスで唯一、なるための制限があるということも知っている。それは、ハデスの血を引くもの。8代ゼウスはそれだけハデスを買っていたのだろう。だからこそ、自分はこの戦いに貢献したいと思っていた。
ヘスティアは道を急ぐ。

~塔の屋上・アフロディテ、イアペトス、ウラノス、レイア直進側~
玄武は強かった。
アキセスは全員やられた。アフロディテが、玄武と一騎討ちだ。
「いくぞ玄武」いつものように空を飛ぶ。
だが、飛べるのはアフロディテだけではなかった。
玄武がすぐ近くに。地面に叩き落とされた。
「飛ぶとか簡単だし」と玄武が言う。
「手強いな」と呟く。だかこれくらいでアフロディテはくじけなかった。まだ自分には武器があるから。しかしその武器さえも通用するかわからないほど、玄武は強かった。

~塔の屋上・クロノス、ヘラ、プロメテウス右側~
青龍に、立ち向かうことを志願したのはクロノスだった。
「すまないクロノス。先に戻っている」ヘラが言って戻っていった。
「青龍、すぐに倒してやる」と言いながら左手をあげる。すると、フロア全体が徐々に変形し、全体が針でおおわれたドームに変わった。クロノス得意の幻覚だ。クロノスの幻覚は天界下界シャドウ・レイどこを探しても無敵といわれている。
「ブルーム」クロノスのまわりに15本ほどの剣が出現した。それが、一気に青龍に向かう。

~塔の屋上・エピメテウス、パンドラ、アレス、アテナ左側~
「ここは俺に任せろ。お前らはハブルトヘ向かえ」アレスが言った。
「アレス、大丈夫か」とアテナ。
「ゼウスはお前が必要だ。はやくいけ」
「わかった。行こう」と言ってアテナたちは去っていった。
「みんないっちゃった。でも僕の狙いは君一人だから」朱雀は笑った。
アレスは呪文を唱える。入り口が塞がれた。
「これで俺たちはどっちかを倒さない限りここから出られない」
「なまいきだね」と言いながら、高速移動で近づく。剣を降り下ろしてくる。
アレスはまた呪文を唱えた。「レールード」 その後剣と盾が出てきた。
二つの剣が交じり合う。すぐに一方の剣は消えた。アレスの幻覚の剣ではなく、朱雀の剣であった。
「何だと!?」と朱雀。アレスの剣は、触れたものを幻覚で消す効果があった。
「これでお前は剣で戦えん。お前も消してやろう」アレスは朱雀へ突っ込む。朱雀は不敵な笑みを浮かべ、呪文を唱えた。「コルベルキーニ・レールード」アレスの時と同じく剣と盾が出てきた。
それを見て攻撃をやめるアレス。朱雀は、呪文をコピーする能力があるのだ。
「呪文のコピー能力、最高だろ」笑いながらいった。
どうやら厳しい戦いになりそうだ。

~ハブルト・最強部隊~
倒しても倒しても敵は減らない。むしろだんだん増えていっている気がする。
「全然減らねえ、どうする!?」アポロがファイア・ソーを決めながら言う。
「ゼウスを信じて待て、今は粘るんだ」ヘルメスは答えた。

~ハブルト・ポセイドン~
ポセイドンは、本来はこの職につくつもりはなかった。ポセイドンはゼウスの部下で、まだ掃除などをしていた。戦闘など無縁の暮らしだった。それが、あのとき変わった。
今から三ヶ月ほど昔、ゼウスの家に侵入者がやって来た。その際家にはポセイドン以外誰もいなかった。ポセイドンは、どうしたらあいつを倒せるか考え、近くにあった剣で戦うことにした。1本だと不安だから、曲芸をしていた経験をいかし、4本持っていくことにした。
そこでポセイドンの剣士の才能が開花した。2本の剣を上にあげている間に2本で攻撃、剣をとって4本で攻撃、1本をブーメランのように投げて攻撃といろいろなパターンを作った。ゼウスは、その姿に剣士の守護神、ポセイドンのオーラを感じたのだ。
もしあのままだったら今も掃除をしていただろう。だから、ゼウスには恩を感じている。だから、鳳凰は絶対に自分の手で倒したかった。
ついに、鳳凰を見つけた。そこは戦場となった荒野の端、シャドウ・レイの本陣だった。
「ゼウスのためにもお前を倒す!」ポセイドンは4本の剣を取り出した。

~ハブルト・ゼウス~
ゼウスも、シャドウ・レイの本陣から少し離れたところで麒麟とであった。
「お前が第十代ゼウスか」麒麟が問う。
「そうだよ、麒麟。お前を倒しに来た」
「俺もそのつもりだ」と長い剣を取り出した。ゼウスも構える。
「いくぞ麒麟」この戦いが2つの国の運命を左右することは、明らかだった。

ゼウスが持つ最大の武器は古来から伝わる「ミルベオ」という技と、生まれつきの固い肌だ。ミルベオには9種類も技があるが、すべて使えるのは過去を見ても3代ゼウス以外誰もいない。
それに加えて、鉄のように固い肌は、初代に匹敵するといわれている。
その能力で、ゼウスは序盤のたたかいを有利に進めた。
「さすが、史上最高のゼウスだな」麒麟が叫んだ。
「すぐに倒してやる」ゼウスが言いつつ、魔力をため始める。ゼウスの操る魔法は代々雷と決まっている。その中でも最高と言われた7代ゼウスと同じくらいの魔力だ。
「モルティーノ・サンダー!」手から雷が放たれた。それが麒麟に向かう。
麒麟に当たったはずが、なぜかこちらに向かってきた。避けたが、宮殿ハブルトヘそれが向かっている。
「ハブルトが危ない!」ゼウスはすぐにハブルトヘ向かった。

~塔の屋上・クロノス右側~
それが、一気に青龍に向かう。
だが、それはいとも簡単に弾かれた。
「お前は俺の能力を知っているのか」青龍がにやけながら言った。
青龍は屈指の防御の持ち主。その固く張られたガードは並大抵の攻撃では崩れない。
どうすればいいか、クロノスは分からなかった。そのまま、攻撃をうけていく。だんだんと傷を負っていく。
どうすればいいか、クロノスは分からなかった。

~塔の屋上・アフロディテ直進側~
全く互角の勝負だった。両方が互いに傷を負いながら戦う。厳しかった。
アフロディテは必殺技を使おうとするが、なかなかさせてくれない。
アフロディテの必殺技は、翼を駆使した技。
「そもそも空を飛ぶことさえ許されないんだ。必殺技のエネルギーをためる暇も……!」アフロディテはこの時気づいた。
アフロディテは翼を生やす。空に飛ぼうとする。
「バカな事を」玄武は空へ舞い上がった。
しかし、アフロディテは高くにいた。翼を広げ、羽を飛ばす。
「ナイフ・ジャック」たちまち玄武は空へ落ちた。
そのあと、アフロディテはエネルギーをためた。満タンになったとき、アフロディテの翼は白から黒へ、そして炎をおび始めた。
「デス・ウイング」それを一斉に、すべて玄武に放つ。玄武は空から落ちた衝撃でまだ動けていない。
「シャドウ・ガード!」シャドウ・レイ秘伝のガード技で守ろうとする。
「貫け!」最初の2、3本で穴が開き、そこからその他の羽が玄武の体を突き抜けた。

玄武にたくさんの羽が突き刺さった頃、アフロディテは空から降りてきた。いや、落ちてきた。
「やば、着地失敗した」
しばらくの療養の後、アフロディテは宮殿ハブルトヘ急いだ。

~塔の屋上・アレス左側~
レールードはアレスの得意技だった。だが、コピーされた。他の技を繰り出してもコピーされる。
アレスが出した答えはふたつ。コピー能力、コルベルキーニを習得するか、一瞬でかたをつける必殺技をを繰り出すか。
みたところ、そんなにコルベルキーニを習得するのは難しくなさそうだ。今必殺技を編み出すより、断然早い。何しろ「アレス」は元来から魔術師のトップがなる職業で、一番の専門家だ。
「この程度なら」アレスは思う。
アレスはコルベルキーニを見るため、多くの魔術を放った。そのたびコルベルキーニをされ、ダメージを受けた。ようやくコルベルキーニがわかった頃には、傷はかなり深かった。
「満身創痍だね。終わらせてあげるよ」朱雀が最後の必殺技の構えに入った。
「撃てるかどうか分からない。だけど、やってみないと始まらない!」アレスは心の中で思い、立ち上がってコルベルキーニの構えに入った。

~塔の屋上・イアペトス、ウラノス、レイア、ヘラ、プロメテウス、エピメテウス、アテナ、パンドラ~
クロノス、アフロディテ、アレス以外全員が塔の分岐点に戻ってきた。傷を負うものもたくさんいる。
「死んだやつはいないな」アテナが問う。
「大丈夫だ」いろいろな人が答える。
「一刻も早くハブルトへ向かうぞ」アテナがそういうと、みんなは塔をかけ降りていった。

~ヘスティアと最強部隊~
「やっと着いた」ヘスティアが呟く。
見慣れたハブルトの光景があった。いや、正しくは見慣れてはいなかった。そこは、戦場と化していたからだ。みんなが戦っている。今すぐ戦わなければ。

「辛いな、人が一杯だ」ヘルメスが言う。
そのとき、一斉に人が倒れた。ざっと200人くらいか。その先にはヘスティア。腕は100本だ。
「アシュラ2乗(スクエア)モード」
「ヘスティア! 来たか!」ヘルメスが喜んだ。
「気を抜くな。まだ一杯いるぞ!」

~ハブルト・ポセイドン~
鳳凰の剣はシャドウ・レイ代々伝わる秘刀、トルネード・フィンだ。対してポセイドンの武器はただの剣。だがゼウスが世界一の剣術と言ってくれている。こんなに強い幹部の討伐を任されている。だから、負けたくなかった。
まずは2本の剣をとった。そのまま、高速移動で近づき、剣で切った。
しかし、それは残像。速すぎる攻撃にポセイドンは防御をしきれなかった。
「強いけど、負けねえ」叫ぶポセイドン。
剣士対剣士の天界最高峰の戦いが続いた。

~ハブルト・ゼウス~
大きな爆発音が響いた。宮殿ハブルトに穴が開いていた。
中にゼウスが入ると、そこにはたくさんの人が倒れていた。家政婦的な仕事をしている人がほとんどだ。
「みんな大丈夫か!」ゼウスはその一人に駆け寄った。返答はない。
「無駄だよ、死んでるよ、お前のせいでな」不敵な笑みで麒麟が放った。
「絶対に許さん!」からだに雷をおび始める。これぞゼウス伝統の技。
「ゼウス・ライジングモード!」そして誰も死なないように、雷のバリアを張る。
「ライズバリア」高速移動で近づき、雷で吹っ飛ばした。
麒麟は雷のバリアにあたり、痛手をおった。
「勝ったと思うなよ」麒麟もまわりにオーラをまとう。それは、かつての麒麟、ハデスからうけついだもの。
「ハデス・デスモード」
対立する二つの光は、互角の戦いを繰り広げていた。わずかに、ゼウスがおされていた。

第五章「内戦の結末 麒麟、解き放つ『ハデス』」

~塔の屋上・アレス左側~
「ファイア・ローリングファイア!」朱雀は必殺技を放った。
炎の渦。高速で近づく。必殺技を撃った朱雀は反動が大きいのか、動けずにいる。
アレスはそれをかろうじてかわし、コルベルキーニを繰り出す。
「頼む、出てくれコルベルキーニ!」アレスは、自分のなかで不思議な力を感じた。
「コルベルキーニ・ファイア・ローリングファイア!」
炎の渦。高速で朱雀へ向かう。朱雀は未だに動けない。

自分にも朱雀のような反動は起こった。しばらく動けなかったが、そのあとは分岐点に向かった。

~ハブルト・最強部隊とアテナたち~
未だに大量の敵がいる。どんどんおされているが、最強部隊は1体1体を倒すしかなかった。
そこに、アテナたちは戻ってきた。
「アテナ!みんなは」ヘルメスが問う。
「クロノス、アフロディテ、アレス以外は全員いる。第一部隊の朱雀たちと一騎討ち中だ。早く敵を倒そう!」
アテナたちが加わり、徐々に、全体がへってきはじめた。

~塔の分岐点・アレス、アフロディテ~
アフロディテは傷を癒し、分岐点まで来た。するとアレスが同時にやって来た。
「アレス。 朱雀は」
「少し手強かったが、なんとか。 そっちは」
「玄武だ。なんとか倒した。 クロノスは」
「まだ戦っているんだろう。 それより、早く帰ろう」
「敵を倒しながらいくぞ!」

~ハブルト・ポセイドン~
二人の力は互角だったが、武器の面でわずかに鳳凰が勝っていた。
だが、ポセイドンはこの状況を打開する必殺技がある。
鳳凰が必殺技を繰り出した隙をねらう。
「ここまで俺をてこずらせたやつははじめてだよ。でもこれで消してあげる」
「ゼウスのためにも、ここで決める!」ポセイドンは必殺技の構えに入った。

~ハブルト・ゼウス~
苦しい戦いだった。ミルベオを撃ってもかわされる。魔法もあまりきかない。
麒麟が帯びている死のオーラは、確実にゼウスを蝕んだ。
そんななか、ゼウスはミルベオ最後にして最強の技を使う。
「ミルベオ・ライジングクラッシュ!」それは麒麟を捉えた。
再び雷のバリアにあたり、痛手をおった。
「本気を出してやるよ。シャドウ・レイが一番ってこと、証明してやる。当時最強と言われた、」麒麟の姿が変わっていく。手が4本、足が6本、胴は2つ、肌は黒く変色し、巨大化した。それはゼウスの身長の2倍程。
「ハデスの名のもとにな」今ゼウスの目の前にいるその怪物は、麒麟でなくハデスだった。
ハデスの死のオーラは、一瞬で雷のバリアを壊した。さすがハデスである。
「今のままでは被害がバカにならない。移動しよう」ゼウスは、最後の決戦の地をハブルトから近くの草原、フェールに移すことを決めた。
「ミルベオ・高速移動の術」ハデスを誘導しながらゼウスは、内戦終結のため、最後の地フェールに向かった。

~ハブルト・最強部隊とアフロディテ、アレス~
最強部隊はヘスティアその他遠征軍の助けも借りて、徐々に数を減らしていった。襲撃開始時には30万はいたと思われるものは、もう3万ほどになっていた。
そのとき、最後の遠征軍アフロディテ、アレスが来た。さすがにアキセスだけあって、十二神9人いればそれは普通の人の何十万人分にも値する。そろそろ敵はいなくなってきた。

~ハブルト・ポセイドン~
「ファイア・ネールズトール」朱雀が最後の必殺技を繰り出す。剣で竜巻を起こし、吸い込んで斬ろうということか。ならば。ポセイドンは竜巻に突っ込んだ。
「バカめ! 剣士としての人生、短かったな!」すかさず朱雀がポセイドンを斬った。
しかし、それは残像。朱雀がまわりをみると、そこにはたくさんのポセイドン。
「これが剣士の神ポセイドンの力だ。残像(ポセイドン・フェイント)」そして、一斉にポセイドンが斬った。勝負ありだ。
「ていうか、人生じゃないし」ポセイドンは思いながらあの地獄のような戦場に戻った。

第六章「内戦終結 ゼウスとハデスの亀裂の終止符」

~ハブルト・最強部隊とポセイドン~
ポセイドンが着いたとき、すでにそこには敵はいなかった。
「きっちり倒したんだろうな」バーシクル第一部隊隊長が尋ねた。
「ああ、そっちは」
「なんとか、全滅だ」
「あとは麒麟だけだな」ポセイドンはどこにいるかもわからないゼウスに思いを馳せた。

~ハブルト・ゼウス~
フェールに着いた。
「あいつを倒すには、俺も本気を出すしかないか」ゼウスは呟く。
ゼウスが帯びる雷が、さらに白く光る。そのオーラが、全てゼウスの拳に移った。その瞬間、あまりのエネルギーに周りの木が消えた。一瞬で焼けたのだ。これこそゼウスの最強を全て組み合わせた、ゼウスだからこそできる戦闘態形、「最強の10代目(ゲラカオ・デ・マイス・フォート)」だ。
ハデスも死のオーラを帯びている以上、互角だった。ゼウスが気づくと、そこに木はない。
「そろそろ終わりにしようぜ」とハデス。
「ああ、死んでもらう」
「100年の因縁、ここで終わらせる!」ハデスは気をためる。
「勝つのは俺だ!」ゼウスも気をためる。
「デス・フォール!」拳に込めた死のオーラで殴ってくる。
「ミルベオ・ライジングクラッシュ!」ゼウスも殴りにいく。

ポセイドンたちは突然、大きな爆発音を聞いた。間違いなく、フェールの方からだった。
ポセイドンはフェールに急いだ。

ポセイドンがフェールに着くと、傷だらけの麒麟、いやハデスとゼウスがいた。両方とも立ち上がろうとしている。
ハデスは再び倒れた。ゼウスは完全に立ち上がった。
ゼウスの勝ちだ。
天界の勝利だ。
ゼウスはハデスに近づいた。
「俺の負けだ。早く殺せ」
「いや、殺さん」
「なぜだ。お前たちの敵なのだぞ」
「もう、味方だ。ハデスの席は空けてあるんだ」
「俺に、十二神に入れというのか」
「ハデス。先代のゼウスがすまなかった。そのせいで辛い思いをさせた」
ゼウスが頭を下げた。そして、ハデスを魔法で回復した。
「こちらこそ、申し訳ない」とハデス。
内戦は、むしろ天界の絆を強くした。これからのジゴクとの戦いにも望める。ポセイドンは思いながらハブルトへ戻った。

筆者から

筆者です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ここで天界とシャドウ・レイとの内戦の話は終わりです。
次の章はその後の帰ってきた平和な日常とジゴク戦への準備の話です。そして、その次からはいよいよ、ファラオ率いるジゴク戦へと突入します。
キーポイントとしては、まだひとつ決着していなかった対戦がこのあと意外な形で登場していきます。
圧倒的な強さに悩む十二神たち、先代との修行で編み出す必殺技、そしてオープニングで少し出ました、聖地デルトバリスタムの決戦へ。最後の結末は?
引き続き、「天上の戦い」をお楽しみください。
最後に、天界の十三神とジゴクの十二神をリストアップしておきます。

天界の十三神

ゼウス
ポセイドン
ハデス(新設、シャドウ・レイリーダーの麒麟が就く)
ヘスティア
アレス
ヘルメス
ヘパイストス
アフロディテ
クロノス
アポロ
ヘラ
アルテミス
アテナ

ジゴクの十二神

ファラオ
アヌビス
アメン
アテン
ラー
オシリス
イシス
ホルス
セト
ベス
ネフティス
トト

第七章「帰ってきた平和 そして新たな戦いへ」

「私は、人々に崇拝されるフレグメント(キング)になることを誓い、ここに名を重ねます」
響いているのは、ハデスの声。今日はハデスの叙任式だ。ゼウスは色々と考えた結果、ハデスを新しい役職としておくことを決めた。
「これでジゴクとの戦いにも安心だ」ゼウスは思う。
叙任式の後、十二神ではなく十三神となった新しいアキセスとして、初の会議が行われた。
「ハデスです。内戦のことは、申し訳なかった。だが、この職を持った以上、全力で頑張りたい。よろしく」
「これで問題はないな。あとは、」ゼウスはため息とともに言う。
「クロノスか」そう、クロノスは青龍と戦いに行った以来、戻っていないのだ。
「青龍か」ハデスが口を開いた。
「青龍が連れていったのだろう。ヤツはいまどこに」
「そういえばポセイドン、あの伝説の続きを教えてくれ」
「ハデスについてですか? 分かりました」ポセイドンははなしはじめた。
「その昔、まだハデスが職としてあった時代、ハデスはジゴクを壊滅させるためにジゴクの十二神と契りを交わした。しかしそいつに裏切られ、ハデスは死んだ。それ以来、ハデスはそいつに狙われているというらしい」話終わると、ゼウスがひらめいた。
「そいつの名は?」
「ラー」
「ハデス、ラーが青龍だったとは考えられんか」
「なるほど、青龍となり側近になっておけばいつでも殺すことができる。本当にそうかもしれんぞ」ハデスが言った。
「とにかく、次の戦いは一筋縄ではいかない。みんなそのときに備えて休んでくれ」こうして会議は終わった。

ゼウスとポセイドンは闘技場に来ていた。今日は国民最強を決める大会の日だ。
「平和になってよかったな、ポセイドン」
「ええ、ほほえましいです」
しばらく沈黙が続くとポセイドンが口を開いた。
「鳳凰との戦い、互角でした」
「でも勝ったんだろ」
「まだ足りません。何か強力なものがないと、ジゴクの剣士には勝てません」
「お前なら今のままでも勝てるヤツはたくさんいる。ただ、」ゼウスは一呼吸おいて言った。
「ジゴク最強の剣士となると、それはホルスだ。今のホルスはとても強い。俺でも勝てるかわからない。そんなやつばかりがジゴクの十二神だ」
「それでも勝ちます。あなたのために」
しばらく沈黙が続いた。するとゼウスが
「来い」といって歩きだした。

そこは武器庫だった。
「お前の気持ち、受け取った。この四本の剣を授ける」
その四本は、鳳凰が持っていた剣「炎剣ファイアウォール」、その昔三代ポセイドンが氷山からとったと言われる「氷剣アイスバーン」、ゼウスに代々伝わる「雷剣サンダーボルタ」、そしてハデスからもらった「死剣デスバーン」の四本。
「ありがとうございます。必ず倒します」ポセイドンは全ての剣を入れ替えた。
「いよいよだな」ゼウスは呟いた。

「ファラオ。シャドウ・レイが負けた」ここはジゴクの本拠地、ホタライズの王室。今いるのは、第6代ラーと第10代ファラオ。
「元々勝てるとは思っていなかった。だがちゃんと収穫はあったんだろうな」
「ええ、必ず勝てます」
「そろそろ戦いの準備をしないとな」ファラオは立ち上がった。

天界とジゴクの間、聖地デルトバリスタムはあまりのエネルギーに各界から一人ずつしか入ることができない。つまり、一騎討ちになる。そこでの戦いがキーポイントになる。
いよいよ、ジゴクと天界との因縁にけりがつく。

第八章「ジゴクとの決戦! ジゴクの十二神の実力」

ハブルト内の全ての施設が復旧してから1週間。攻撃を仕掛けたのはジゴクだった。
「ゼウス、ジゴクのやつらが来たぞ。十二神のひとり、ラーもいる」ポセイドンが告げた。
すぐさま十三神が駆けつけた。ジゴクの戦闘員がハブルトを破壊する。その頭上には、ラー。
「お前がラーか」ゼウスは叫んだ。
「そうだよクズ共」
「絶対に許さんぞ!」
「最強の10代目(ゲラカオ・デ・マイス・フォート)」
「ミルベオ・ライジングクラッシュ!」ラーに最高の技を打ち込んだ。
しかし、何も起きなかった。ラーに、受け止められていた。右手のみで。
「サンライズ・アサルト」次の瞬間、ゼウスは吹き飛ばされた。
「よくもゼウスを!」アレスがいった。
「コルベルキーニ・サンライズ・アサルト!」ラーを吹き飛ばそうとする。
しかし、ラーのアサルトでまたしても飛ばされてしまった。
「ヘスティア、行くぞ!」ポセイドンが叫ぶ。
「残像(ポセイドン・フェイント)」
「アシュラ2乗(スクエア)モード」二人の最高の必殺技。
しかし、これもダメだ。右手のみで払われてしまった。
「あいつ、めっちゃつええ」とポセイドン。
「思い知ったか、ジゴクの圧倒的な実力を」
「いまならまだ引き返せる。ジゴクと戦うなど無謀だ」ラーがそういい放ち、帰っていった。
「ゼウス!」とアフロディテ。
「どうした?」
「あれは、クロノスだ!」
見た先には、確かにクロノスがいた。クロノスはハブルトを破壊していた。
「洗脳されているな」とハデス。
「すぐ助けるぞ」ゼウスは、クロノスのもとへ急いだ。

「クロノス!」
「ゼウスか。俺の名前はジゴクの十二神、ベスだ」
「クロノス…」
「ジゴクこそがこの世界を支配するのにふさわしい。天界ではない」そう言って他の人を引き連れ帰っていった。

次の日、会議が開かれた。ゼウスが、沈黙を破り言った。
「クロノスの職を、しばらく凍結したい」
「確かにな。あの調子ではまだクロノスは戻れない」とアレス。
「それまではおかない方がいいな」ヘラが言った。
「では、それは決定だ。もうひとつ、みんなに提案したいことがある」ゼウスは一呼吸おいて続けた。
「今のままではジゴクの十二神に勝てない。こちらの十二神も、もっと強くならなければならない。そこで、私は今の十二神を全員辞職させることを決意した。もちろん俺もだ」
「じゃあ、後任はどうするんだ?」すぐにヘルメスが言った。
「今の俺たちの側近についてもらう。臨時職という扱いで新しく名前をつける。そうだな、頭にフレッターをつけることとしよう」
「俺たちは、どうすればいいんだ?」とポセイドン。
「俺たちは、歴代の職の人に会いに行く。9代目からさかのぼるんだ。そして技を磨いてもらえ」
「俺は、歴史の浅い職だ。すぐ終わるぞ」とヘスティア。
「お前はヘスティアとクロノスのもとへ行け。お前は魔法が足りない」ゼウスは叫ぶように続けた。
「いいか、タイムリミットは1週間だ! それまではみんなで守り抜いてくれ!」
ハブルトに皆の決意の叫びが響いた。

「ファラオ、帰ってきた」ラーが言った。
「どうだったか」
「すぐに決着はつきそうです」
「そうか。まだまだいたぶらないとな」

第九章「ヘスティアの旅立ち 新たなモード、習得!」

ヘスティアは自分で4代目。クロノスは今の他に7人いる。ヘスティアたちは自分の親族であるから見つけるのは簡単だが、クロノスは難しい。ヘスティアは自分の父のもとへ急いだ。

「お父さん!」
「帰ってきたか。事情は知っているよ。そこにヘスティア秘伝の巻物がある。持っていけ」
「ありがとう!」
「成長したな。頑張ってこい!」
意外とあっさりと父はクリアした。

次は初代・2代目と同時に戦うこととなった。
「あなた方に勝って技を磨きます」
「来いよ。お前に何ができる」と2代目。
「俺はゼウスを助けるんだ。そしてジゴクを倒す!」
「行くぞ!」初代がすかさず武器を出した。
初代は銃を近接にも使えるようにした特殊な武器を使う。2代目は、ナイフ投げの攻撃が得意だ。
「アシュラモード!」いつもの技をだし、高速移動。
ひとつの剣が確実に初代をとらえたかと思ったが、軽くガードされた。初代は自分より遥かに強いとわかったヘスティアは、攻撃対象を2代目に変えた。ラストに初代との一騎討ちに持ち込めれば、アシュラ2乗(スクエア)モードで勝負できるかもしれない。
しかし、問題は初代より劣るがそれでも強い2代目を2乗(スクエア)モードなしでどう倒すかだ。
「強いだろう、俺たちは」初代が言った。
「つよい。つよいけど、まだまだ戦える!」
「フン。その粘り強さ、受け継いでいるようだな。ひとつヒントをやろう。アシュラモードと高速移動、組み合わせてみろ」
ヘスティアは考えた。
「つまり、腕を一緒に高速移動させるといいのか?」そして行動に移す。
いつもの高速移動の感じで、神経を10本の腕にも集中させる。2代目に近づき、降り下ろす。驚くことに、自分の腕がなくなった。
「え?」だが、その感覚はあるのだ。
「あまりに早いためにステルスのような効果を生み出しているんだ。これでお前のアシュラも輝くだろう」
「すげえ。ありがとう! さっそく練習する!」ヘスティアは急いでハブルトのトレーニングルームに向かった。

「あいつ、俺らを倒すこと忘れてるよな」2代目が呟く。
「ああいうやつが最強になるんだよ。あのアドバイスは、もしかしたら恐ろしいものだったかもな」
ひとつ間をおいてから初代が続けた。
「けどあいつ、クロノスはいいのか?」

ヘスティアは2日目には既にハブルトに戻っていた。 途中で元クロノスのもとへいくのを忘れていたが、ステルスを習得したくて、見て見ぬふりをした。
ハブルトに帰ると、一人のフレッター(臨時職の十二神達のことだ)と出会った。
「ヘスティア、もう戻ってきたのか?」
「ああ、こつをつかんだ。トレーニングルームに行くから、何かあったら呼んでくれ。それからヘスティアの称号を戻していただけるよう、フレッター・ゼウスに頼んでくれ」ヘスティアはそれだけ言って走り去った。
後ろからは「了解した」という声が聞こえた。

そこから5日間、ずっとトレーニングルームにこもっていた。トレーニングルームではシミュレーションができ、敵のレベルも仮想ではあるが先代のゼウス、ファラオたちと戦闘できる。その超ハイレベルの中で、ヘスティアは腕を磨いた。だんだんと、対等に渡り合えるようになった。
最後の日、ヘスティアは初代のゼウス・ファラオを相手にすることにした。
やはり、他とは比べ物にならない。それが二人もいるのだから恐ろしい。しかし、ヘスティアもアシュラモードでうまく対応していた。
「そろそろステルスを使ってみるか」そして必殺技を出す。
「アシュラステルスモード!」十本の腕が武器と共に一斉に消えた。それで戦うと、たちまち状況が一変。おしはじめた。
やはり、決め手にかける。ステルスモードを解除し、スクエアモードを出す。
「これでどうだ!」

まだ、足りない。アシュラ2乗(スクエア)モード、アシュラステルスモードをもってしてもまだだめだ。そんなとき思いついた。
ステルスモードのまま、スクエアモードを出せれば倒せる。
しかし、何度やっても出来なかった。スクエアモードもステルスモードも神経を集中させる必要があるが、違う働きの神経のため同時にコントロールするのが難しい。
「腕に集中しすぎている」不意に誰かの声が聞こえた。
振り返ると、そこには初代クロノスがいた。
「あまりにもお前が来ないから、来てしまった」
「すみません。ステルスモードを習得したくて」
初代はため息をついた。
「呪文だ」
「え?」
「呪文を使えば、その二つの技を繋げられる」
「でも、なんの呪文を?」
「ハリラ」
そして、ヘスティアはハリラを教えてもらった。ハリラは単体で放つと大きな火の玉を投げる技になる。これを二つの技とセットで使うと、両方をコントロールする潤滑油の役割を果たすというのだ。
「行くぞ!」
まず、アシュラスクエアモードを出す。次に、ステルスモードを出す。この時点ではまだ出来ていない。
そこでハリラを唱える。全身に神経を集中させる。
次の瞬間、両腕が見えなくなった。スクエアモードしか考えていないのに。
「これが、ハリラの力…」

ヘスティアはこの技を「アシュラ・完成形(パーフェクトモード)」と名付けた。そしてこの技を武器に、ジゴクとの決戦に挑む。

第十章「アポロの旅立ち 最強のアポロは俺だ!」

アポロは自分以外に7人いる。アポロは8人いて8通りの戦い方がある。それを吸収、応用するのが今回の目的。まずは前アポロのもとへ向かった。

前アポロのもとについた。
前アポロは剣士。今のポセイドンに匹敵する能力と言われている。
「君が、今のアポロかな」前に聞かれた。
「勝負してもらおう。最強のアポロは誰か、はっきりさせるためにな」いきなり技を繰り出す。
「ファイア・ソー!」しかし、その攻撃は簡単に弾かれる。
「アポロ・ファイナルモード」前アポロは炎を帯びた。
「先代からこのファイナルモードを受け継いできている。皆の思いがつまっているんだ。その強さは半端じゃない」
「俺もそれを受け継ぐ!」アポロのノコギリが、炎を帯び始めた。
炎がどんどん大きくなる。その炎は、アポロに力を与えた。
「これが、ファイナルモードか?」
「まだまだ炎が足りない! 行くぞ!」前は高速移動と剣の突きを同時に繰り出す。さっきより早い。
炎を帯びたノコギリを円状に回すと、炎のガードができ、アポロを守った。
その炎を前が切り裂くと、その中からアポロが。
「ファイア・ソー!」素早い反応で前は剣を出したが、ノコギリに弾かれ剣が飛んでいった。アポロの勝ちだ。
こうしてアポロはファイナルモードのコツをつかんだ。次のアポロのもとへ急ぐ。

アポロは6、5、4、3、2代目と、ファイナルモードを駆使し倒した。徐々に炎が大きくなるのを感じた。
そして、いよいよ初代である。

第十一章「ヘルメスの旅立ち 川のほとりの決戦」

ヘルメスは自分以外に7人いる。ヘルメスはまずは7代目のもとへ向かった。

目的地、とある川のほとりにはなぜか全員のヘルメスがいた。
「皆さん、なぜご一緒で?」
「初代の提案でな。一人ずつより、7人まとめての方がいいだろ」7代目のヘルメスが言った。
「ちょうどよかった。みんな倒すつもりでしたから」ヘルメスは2台の銃を手に取った。
後ろに金属製のアームのようなものが四本あり、その一つ一つが銃を持っている。
「本気でいきますよ」7人のヘルメスは一斉に銃を構えた。

川のほとりに、すさまじい轟音が鳴り響いた。八台の銃がたてている音だ。ヘルメスは銃で自分をガードしながら打ち続けている。不意に三代が高速移動で近づき、ヘルメスの前へ。
「死ね」その銃弾を、ヘルメスは魔術のガードを使い弾いた。
「アレスに教わっておいて良かった!」そう思った。
そして、ここであることに気がつく。
「音だ! 音で誰がどこから撃ってくるか分かる! そうすれば、そこから相手を撃ち抜けるかもしれない!」
ヘルメスは目を閉じた。何発もの銃の音。やはり、音は7つある。そして、どこにいるかも。
不意に、後ろに音を感じる。音は出ていない、わからないだけかもしれないが、とにかく何もない。なのに、何となく、わかるのである。
「初代か!」後ろを振り返ると、確かに初代。必殺技を出す。
ヘルメスの必殺技は六台の銃を一体化させ、大きな弾を撃ち出すというもの。
「フュージョン・ディスタンス!」
撃ったが、久々に撃ったので少しずれた。だが、それは初代の左腕を直撃した。前方に向き直ると、7人がならんでいた。
「自分の能力、気づいたか」3代目が尋ねる。
「音から人の気配が分かった!」ヘルメスは叫んだ。
「まだまだだ! 今のがジゴクの十二神だったらやられてる。もっと極めるぞ!」ここから1週間、ずっとこの能力を磨く訓練が続いた。

1週間後。7人の技を一つずつと、気配を感じる「ヘルメス・サードアイ」を習得した。そしてこの技を武器にジゴクとの決戦に挑む。

第十二章「アレスの旅立ち 魔術のスペシャリスト達の脅威」

アレスは自分以外に7人いる。代々魔術師で一番の才能を持つものがなってきたので、血縁関係は全くない。魔術師は突然生まれるからだ。
アレスは前回の朱雀戦、コルベルキーニを習得することで倒すことができたが、強力な必殺技があれば楽に倒すことができた。それを編み出すのが目的だ。
アレスの中で、初代と4代目の強さは他とは比べ物にならない。そこで、アレスは1週間という時間も考え、この二人に教えを請うことにした。まずは4代目のもとへ急ぐ。

4代目の一番の得意技は、魔法で無数の火の玉を作り、あてるというものだ。一見簡単そうに見えるが、実はかなり難しい。意識をすべてに向ける必要がある。
「お願いします。教えてください」
「なあに、俺が教えることはない。お前は最強のアレスだ。このくらい、出せるだろ」
一つ呼吸をおいて、続けた。
「すべてを意識するというより、何も意識しないという方が正しいか」
このアドバイスにしたがってみるが、やはり難しい。そこで、
「見本を見せてください」アレスは頼んでみた。4代目は、めんどくさそうに岩に向かい放った。
「ドロップ・ウイング!」羽を打ち落とす技。岩は砕け散った。一つ当たっただけで。
「ほら、簡単だろ」

それから2日ほど経って、ようやくドロップ・ウイングは完成した。やはり面倒くさそうな4代目が、15回目の見本を見せてくれたときに、コツをつかんだ。
「ありがとうございました。これでジゴクと戦えます」
「頑張れよ、8代目。あと初代の技を覚えたら最強だかんな」
「はい。今から行ってきます」アレスは呪文を使い、初代のもとへ向かった。

「さあて、俺も向かいますか」4代目が呟いたのは誰も知らない。

初代を探すのには苦労した。最終的に見つけたのはある国の宮殿だった。
「初代の必殺技を私にください。お願いします」
「難しいぞ。1ヶ月はかかる」
「そんなに時間はない。3日だ」
「俺が一生かけて編み出した技、そう簡単にパクられてたまるか」
「俺は最強のアレスです」
しばらく初代は黙りこみ、そのあと大きく笑った。
「俺に向かって自分が最強とかいうやつ初めてみたぜ。それに免じて教えてやる」

初代の技は時空間の一部を体内に取り込み、爆発させてエネルギーを取り出す技、「異次元爆発」だ。これによって技の威力は数十万倍にも増す。この技はさすがに3日では覚えられず、5日かかった。
「ありがとうございました。そろそろハブルトへと戻らないと。それじゃ」
「待て」初代が止めた。
「俺が教えることがまだある」そういうと呪文を使った。
「ドロップ・アウト」たちまち時空が壊れた。
そしてそこには初代と4代目が。
「今から俺たちが2つの技をあわせてつかう。威力を覚えておけ」

まず、2人が呪文を使い、融合する。次に、異次元爆発。そして、ドロップ・ウイングをうつ。
「アレス・スーパーフュージョン!」
次の瞬間、世界がもとに戻った。
「このように、ふたつをあわせるととてつもないパワーで、このせかいひとつくらい余裕で壊れる。だから、絶対に使うな。覚えておけ」
アレスはただうなずき、ハブルトへと戻った。
そして、この技と共にジゴクとの決戦に挑む。

第十三章「ヘパイストスの旅立ち 究極を目指して」

ヘパイストスは一人は二回職についたものもいるので、自分以外に6人いる。

第十四章「アテナの旅立ち 参謀役の覚醒」

アテナは自分以外に7人いる。アテナは代々ゼウスの参謀役となっていた。そのぶん、戦闘能力は劣ると古くから言われてきた。 しかし自分は逆で、アテナ史上最強の戦闘能力といわれているが、参謀の才能に疑問を持つ人もいる。その参謀の才能に磨きをかけることが今回の最大の目的だ。
逆に、参謀の才能で最強と言われているのは天界の常識となっている。天界にある伝説がそれを物語っている。2代目だ。当時の十二神中ゼウスを含む5人が戦闘で重傷をおい、引退を余儀なくされてジゴクに滅ぼされそうになったとき、一時的に臨時職のゼウスを兼任してその参謀力で停戦まで持ち込んだ実績があるからである。まずはそのノウハウを学びに行った。

2代目に会い、事情を話すと2代目は一緒にある場所へつれていってくれた。
そこは人間界の戦場であった。
「ここで指揮を執れ」
「え?」
「ここのリーダーはあいつ。そいつを乗っとり、この軍団を勝利へ導け」
アテナは回りを見渡した。
敵は目視3万程。対してこちらは2000ほどだ。圧倒的不利の中、どうやって勝利まで導けばいいのか。
「そうだな、俺だったら200人も犠牲を出さず勝てるな」2代目は、3万を一日で片付けられるという。
「ちゃんと見てろよ」そしてリーダーを乗っ取った。

圧巻だった。奇襲が次々と当たる。敵がどんどん倒れる。そして5、6時間でかたがついてしまった。
「すごい」としかいえない。この人からできるだけ多く吸収したい。アテナは、2代目にコツを教えてもらいたいと言った。
「おれ、感覚でやってるからな…」一つ間が空いた。
「とりあえずやってみよう! こういうのは経験が大事だ。幸い、人間はたくさん戦争をしているからな」

それから、いろいろな戦争を指揮した。古代中国のある国の頭になったが、惜しくも天下統一はならなかった。続いて西洋の戦争、ニホンという国のセキガハラノタタカイという戦で勝利に導いた。
歴史上あり得ないこともやった。アケチミツヒデという青年を乗っ取り天下統一まで導いた。ナポレオンという青年にとりつき、ヨーロッパという地域を征服させた。
その中で、アテナは確実に力をつけていった。
そして、2代目は、この修行の集大成として、最後の戦争を用意してくれた。
「この戦争は人類史上最悪の戦争と呼ばれる、タイヘイヨウセンソウという戦争だ。この戦争で、特訓は終わりだ。頑張れ」
そしてアテナは一人の人にとりついた。

その人は、ニホンという国のリーダーのようだ。この戦争、ニホンは苦戦を強いられているようだ。
海外の土地は占領され始めている。どうやら、今防衛中のある島がとられると戦局は一気に敗戦に傾くという。
「航空機で戦い、船は援護だ!ここが正念場だぞ!」アテナは叫ぶ。
その後は島近くの海域まで赴き、戦闘員に細かく指示を出した。しかし、物資の不足は明らかだった。
必死の防衛戦で、たくさんの人が死んでいった。心がいたんだ。
やがて、島の3分の1程が奪われた。アテナたちはニホンへ戻った。
すぐに会議が開かれた。今後の戦術について、話し合いが進む。しかし、アテナは疑問を感じた。
「なあ、この戦争はもう勝てない。あの島がおちるのも時間の問題だ。下手に続ければ、もっと様々な人が死ぬ。降伏を申し出よう。もちろん条件をつけよう」
しばらく沈黙が続く。
「私もそう思います」不意に口を開いたのは、テンノウという人だ。
結局、この会議で賠償金と土地の割譲なしでの降伏を申し出ることが決まった。
アテナは2代目のもとへと戻った。
「すみません。負けてしまいました」
「いや、あれでいい。俺もあの場面からはひっくり返せない」アテナは驚いた。
「どんなに優秀な参謀がどんなに頑張っても、勝てない戦争だってある。それを回りに流され続けていると、被害は相当になる。その事を、この戦争で学んでほしかったんだ。君の決断にかかるのは、たくさんの人の命だ。忘れるな」

アテナは天界のハブルトへと戻った。静かに、自分の部屋で戦略を考え始めた。アテナはたくさんのことを学んだ。そしてそれを武器に、ジゴクとの決戦に挑む。

第十五章「アフロディテの旅立ち 目指せ“大空”!」

アフロディテは悔しかった。自分が、玄武にたいして苦戦を強いられたことを。もともと勝負を決めた技「デス・ウイング」は使う予定はなかった。なぜなら、使うと着地に失敗したりして、ダメージが大きいからである。
だから、もっと強い技をてに入れたいと思った。
アフロディテは全員が飛行できる。だが、たとえ初代であろうと、「大空」と呼ばれた9代目ゼウスには勝てないのだ。
飛行のエキスパート、アフロディテがなぜ勝てないのか。それは、彼もアフロディテ出身だからだ。3代目アフロディテの子供である。幼い頃から飛行を叩き込まれ、将来はアフロディテに絶対になると思われていたが、突如雷属性の魔法が覚醒。ゼウスの目に留まって選ばれた。

第十六章「ヘラの旅立ち 真の召喚士になるために」

ヘラは召喚士。代々そう決まっている。今、ヘラが召喚出来るのは、龍神ファフニール。だが、ヘラにつくことで特殊な能力が備わる。それは、他の召喚獣を2体取り込めること。

第十七章「アルテミスの旅立ち 弓の使い方を学ぶ」

アルテミスは自分以外に7人いる。一人を除き、皆弓使いだ。あと一人、初代アルテミスは銃を使っていたので、皆が遠距離攻撃だ。

第十八章「ハデスの旅立ち 冥界の王達の技」

ハデスは内戦が始まるまでで4人、そのあと麒麟として2人がいる。ハデスは全員が死属性という特殊な魔法が使える。いや、逆にいうと死属性が使えるのはハデスのみ。先代のハデスに授けられることによってのみ、習得できる。この魔法の力を武器に込めて、戦うのだ。ハデスは、自分のみ武器がない。自分にあった武器を見つけるのが今回の主たる目的だ。

第十九章「ポセイドンの旅立ち 四本の伝説の剣と共に」

ポセイドンは自分以外に7人いる。自分はゼウスのサプライズ的起用で選ばれたので、血縁関係は全くない。
自分の武器は、ゼウスに授けられた伝説の剣たち。これがあれば、誰だって斬ることができる。
「それはどうかな」後ろから声が聞こえた。
振り返ると、剣が降り下ろされた。寸前でガードすると、そこには初代ポセイドンが。
聞いたことがある。初代は歴代最強。しかもポセイドンでは珍しく、一本しか剣を使わない。その唯一の剣は、伝説の剣。すべてを突き破るキセキの剣、「幻剣ポセイドン」だ。
「俺を倒してみろよ」
「勝ってその剣をいただくぞ」
「勝てねぇけどな」
「最強は俺だ」
初代の顔がこわばる。
「そんなこと言った人、始めてみたなあ、要するに」
「殺されたいんだね」幻剣が、黒くなってきた。炎を帯びている。ポセイドンは危機感を感じ、4本の剣を構えた。
「大人気なくてごめんね」次の瞬間、見えなくなった。と思うと、目の前に。
「終わりだ」
だが、空振りに終わった。ポセイドンの必殺技、残像(ポセイドンフェイント)だ。
「今度はこちらがいくぞ」残像をさらに増やす。数は無数だ。それが初代に襲いかかる。

だが、ポセイドンは殺せなかった。本体が、一瞬でばれたからだ。次の瞬間、ポセイドンに剣が突きつけられた。
「俺の勝ちだ」静かに、呟いた。
ポセイドンは、悔しかった。そして、
「俺に足りないものを、教えてください」
しばらくしたあと、初代は言った。
「一つ、そのフェイントを磨け。一つ、本当に最強になる気があったら、勝負をかけにいくときは1本だ」
「じゃあ、俺はどの剣で戦えば」
「全部だ」
「え?」
「今から剣の合成技術を教えてやる」

一週間後。ポセイドンはフェイントを磨きあげた。その結果、本物と残像とで特別な違いは完全に消えた。違いといえば本物と偽物というだけ。
そして、剣の合成技術も。ただ、教えられるときは実際に伝説の剣で合成することはなかった。「失敗したら危険」「かなり難しい」からだという。だが、完成はした。
そして、最後の別れである。
「ありがとうございました。これでホルスもぶっ潰せます」
「甘いな。俺を一度も倒せなかったくせに、何を言う。はっきり言って、悔しいが才能ならホルスが俺より上だ」
しばらくあと、初代は幻剣ポセイドンを放り投げた。
「やる。もう俺には必要ない」
「え? でも」
「俺はこの剣をポセイドン代々受け継ぐものにしたかった。だけど無理だったんだ。この剣は強すぎた。でもお前ならできる。やってくれ」
ポセイドンはただ、頷いた。
「間違っても合成するなよ、その剣を」ポセイドンはその声を背にハブルトへと戻った。

そしてポセイドンの戦闘スタイルは5刀流、残像を2刀流に確立された。そしてそれを武器にジゴクとの決戦に挑む。

第二十章 「ゼウスの旅立ち 天界最強の十人」

ゼウスは皆の旅立ちを見送ってから旅立った。自分以外に9人いるゼウスはすべて雷属性の魔法が使える。またミルベオも使える。それぞれ最強と言われている分野が存在する。以下の通り。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆
初代→総合力で最強。皮膚が固く、鋼鉄のようであった。
2代目→最も政治能力に優れていた。2代目のおかげで以降ジゴクとの戦争が止まった。
3代目→ミルベオの技九種類すべてを完全に使いこなせる唯一のゼウス。10代目はすべて使えるが、三種類完成していない。
4代目→魔法の強さは7代目に劣るが、雷属性の強さが最強。天界に落ちる雷鳴200本分くらいのパワーといわれている。
5代目→唯一の女性ゼウス。剣士だったため、剣術が最強。
6代目→唯一の召喚師ゼウス。当然召喚獣とそれを操る能力が最強。召喚獣は「テューポーン」。
7代目→唯一の魔術師ゼウス。当然魔法が最強。当時その魔法でジゴクはおろか、天界も一瞬で破壊できるといわれていた。
8代目→戦争神と呼ばれるほど、戦争に使う武器(主に戦車)の扱いにたけていた。あまりに強すぎて、これ以降戦車は禁止された。
9代目→飛行能力が最強。自由に空を飛べたため、「大空」という名もあった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆

この得意分野を分けてもらうことで、最強を目指す。

天上の戦い

※現在執筆中です。近日更新いたします。
現在執筆中の十二人の旅立ちは全員を少しずつ更新していきます。
なお、この作品に登場する神、歴史的人物、その他地名や出来事は実際のものと一切関係ありません。

天上の戦い

神々の王ゼウスと十二神が、麒麟率いるシャドウ・レイとファラオ率いるジゴクと戦いを繰り広げる。 ただいま執筆中! 気まぐれで更新しております。 中学生の野球部の快進撃を描く、「挑戦 ~中学生編~」も是非読んでください。 挑戦 ~中学生編~はこちら→http://slib.net/34930

  • 小説
  • 短編
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  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 第一章 「オリュンポスとフレグメント」
  2. 第二章 「出陣! 悪魔の巣窟 ファイア・レイ」
  3. 第三章「戦争開始! オリュンポスの焦りとシャドウ・レイの罠」
  4. 第四章 「神と神の一騎討ち ゼウス対麒麟国を背負う戦い」
  5. 第五章「内戦の結末 麒麟、解き放つ『ハデス』」
  6. 第六章「内戦終結 ゼウスとハデスの亀裂の終止符」
  7. 筆者から
  8. 第七章「帰ってきた平和 そして新たな戦いへ」
  9. 第八章「ジゴクとの決戦! ジゴクの十二神の実力」
  10. 第九章「ヘスティアの旅立ち 新たなモード、習得!」
  11. 第十章「アポロの旅立ち 最強のアポロは俺だ!」
  12. 第十一章「ヘルメスの旅立ち 川のほとりの決戦」
  13. 第十二章「アレスの旅立ち 魔術のスペシャリスト達の脅威」
  14. 第十三章「ヘパイストスの旅立ち 究極を目指して」
  15. 第十四章「アテナの旅立ち 参謀役の覚醒」
  16. 第十五章「アフロディテの旅立ち 目指せ“大空”!」
  17. 第十六章「ヘラの旅立ち 真の召喚士になるために」
  18. 第十七章「アルテミスの旅立ち 弓の使い方を学ぶ」
  19. 第十八章「ハデスの旅立ち 冥界の王達の技」
  20. 第十九章「ポセイドンの旅立ち 四本の伝説の剣と共に」
  21. 第二十章 「ゼウスの旅立ち 天界最強の十人」