地平線

白い壁が見える

白い壁が見える。
ぼくは今、病院のベッドで白い壁を見つめている。
いつまでも変わることのない退屈な白い壁。

地平線が見たいぼくは透視能力が使える。夢は、地平線を見ること。


ある日突然透視能力を手に入れた。
目の前のものをすり抜けて、その向こう側を見るための力。

透視能力が使えるようになって、世界が爆発的に広がった。
ビッグバンなんて目じゃない。
宇宙の広がりすら追い越して僕の視線は空間を駆け抜ける。

閉じたまぶたを越えて、
目の前の壁(が、あるらしい)を越えて、
辺り一帯のビル群(が、あるらしい)を越えて、
その向こう側の美しい夕日(が、あるらしい)を越えて、
成層圏、真空の宇宙、星の海(が、あるらしい)を越えて。
見渡す限りが透明で、宇宙の果てのその先すらも見えている。
宇宙の果てのその先は、真っ白だ。退屈と静寂の、白い壁。
その白い壁をただ、見つめている。

せめて、この星の輪郭だけでもいい。なにか形あるものが見たい。

ぼくは地平線が見たい。



++超能力者++
川瀬 公平(かわせ・こうへい)
ESP:透視能力

地平線

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地平線

1分で読めます。「話の中に必ず超能力者がひとりは出てくる」というしばりで掌編の連作を執筆中。 超能力者の名前と能力が必ず最後に記載されてますので、答え合わせ感覚で読んでいただければ幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-20

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