FISH STORY
夢を見る魚の話です。
魚は何十億年もの夢を見た。
魚は何十億年もの夢を見た。
深い深い海の底。
水流にのってきた噂話で耳にした。
遥か彼方、上の方角。
そこには「空」があるらしい。
ただ、1度だけでいい。
「空」を見てみたい。
噂は多くの魚に伝わり深海の底から、みんなが「空」を目指した。
多くの同胞が、失われていった。
それでも魚は夢をあきらめなかった。
涙を流しながら、「空」を目指した。
悲しんでるヒマはない。
上へ、上へ。と「空」を目指して。
魚の涙は、海に少し味付けをした。
やがて、最初の魚は海よりもせまい大地にたどり着いた。
光の下。
空のふもと。
魚は叫んだ。
もはやそれは、声になっていなかった。
でも叫ばずにはいられない。
魚はついに、長い長い夢をかなえたのだから。
いつまでも、いつまでも終わらない命の歌。
長い、長い夢の終わり。
FISH STORY
知人にこの話を見せたところ、作品の絵を描いて欲しいと頼まれましたが、何も描けずに眠らせていた作品です。このような形で日の目を見れて嬉しく思います。