リサイクル勇者6

本物のミキさんを救出するべく森へ向かった三人。そこでは意外な再会が。そしてついに救出・・・・・・。

ミキさんの偽者、あの大鎌の魔物を追い始めて数分。
 下は草原が広がっているが、ポツポツと木が見受けられる。
前方に飛んでいる大鎌の魔物との距離は大体百メートル弱。頑張れば追いつける距離だ。
 でも追いついたら戦闘になるだろう。今、このスピードでこの距離を、しかも両手に二人を抱えて飛び続けると体力がもつかどうか………。
「大変ですッ、あれ見るです!」
 右腕で抱えているル―シィが何かを見つけたようだ。
 ル―シィが指をさすところに目線を向ける。
「チョウチョがこんなに高いとこにいるです」
「限りなくどうでもいい!」
 結構緊迫した状況なのに何見つけてんだコイツ。
「リョーマ! もうちょっと左に移動してッ」
「よっしゃ」
 ユウの指示通り左による。
 何か近道でもあるのか………?
「かぶと虫ゲットだぜ」
「お前ら緊張感無いな!? 特にユウ、お前は姉ちゃんの命が懸かってんだぞ」
 チョウチョ見つけたり、わざわざ進路逸れてまでかぶと虫獲ったり…………。
 なんか虚しくなってくるわ。
「ていうかリョーマ、もっと急ぐです」
「そーだそーだ。アイツとあんなに離れてんだぞ」
「うるさい二人を捨てたら速くなるなんだけな」
「すみませんです。冗談です」
「ごめんなさい。頑張ってください」
 ったく………。一番キツいのは誰だと思ってんだ。
 なんかコイツらと構ってたら疲れて来た。ホントに捨ててしまおうかしらん。
「あ、奴が降りたです!」
 見ると前方にいた大鎌の魔物は飛ぶのをやめ、森の中へ入って行った。
 あの森の中にアジトがあるのか? そうだとしたらミキさんもそこに………。
「よし、降りるぞ」
 僕はゆっくりと高度を下ろし始める。
 だんだん地面が近づく。
「この高さなら降りれるよ」
「私もです」
 地面まで数メートルの時、ル―シィとユウはヒョイッと腕を抜け出して地面に着地した。
 僕も『フリーゲン』を解除し、地面に着地………。
 グキッ
「―――――――――――――――ッ」
 Oh……やっちまった。
「どーしたです? 何か嫌な音が聞こえたです」
「………………足首捻った」
「なにやってんの?」
 ユウのおっしゃる通り。
 初めて使った時も捻ったなぁ。僕って成長しないね……。
 ていうか痛い。ズキズキする。
「ル―シィ、薬くれ………」
「それが人に物を頼む態度ですか?」
 調子乗りやがって。
「……お願いします。薬をください、ル―シィさん」
「診療所に忘れました」
「テンメェェ―――――――――――ッ」
「しょうがないなぁ。肩貸してあげるよ」
「ありがとう、ユウ。ル―シィと違って気が利くな」
「もう治療してあげないですよ? 聞いてるです?」
 ル―シィを無視して森の中へ入って行くのであった。



 森の中は鬱蒼としていて、虫や獣の鳴き声が聞こえてくる。
 足場も悪く、木の根やツタが生えまくってる。
 その中を獣道を使って進む僕等三人。
「アイツ、どこいったです?」
「もう魔法でこの森全部吹っ飛ばしてやろうか。アイツも倒せるだろ」
「ダメだよ。この森は町の人たちも仕入れにくるから」
「んなこと言ったってかなり広いぞ、この森」
 さっき空から見た時は数十キロぐらい続いてたな。
 こんな中から見つけられるか? 急がなきゃいかんのに………。
「この森は他の魔物がいるから気をつけて」
「マジかよ。ユウに肩借りた状態で戦うのは難しいぞ」
 もし出てきたら面倒だな。
 ユウに被害が及ぶかもしれん。
「リョーマリョーマ、あれ見るです」
ル―シィが言うところ、前方の道の真ん中に何か落ちている。
 四十メートルぐらい先、大きさはバスケットボールぐらいの歪な形だ。
「何だぁ? あれは」
「肉ですッ!!」
 言うが早いかル―シィは落ちていた物に向けて猛ダッシュを始めた。
 あんな遠くにあるやつよく見分けられるな……。
「リョーマ、あれって罠じゃない?」
「そりゃあそうだわな」
 不自然すぎる。
「ル―シィ! それは罠だ、食うんじゃないぞーッ!」
 ていうか地面に落ちてる肉を食うかな。
 いやル―シィだったら食べるか。
 ル―シィはもう肉のすぐ近くに走っている。速すぎるだろ。
「いただきまァーすですゥゥゥゥ」
 ピョ―――ンッと跳びはねて肉へ食らいつこうとする。
 バサァッ
 肉が目前だったル―シィの頭上の木から大きな網が落ちて来た。
 ほら言わんこっちゃない。
「ヤッタゼーッ。マヌケナ人間ガ引ッカカッタァ―――」
「落チテル肉ヲ食オウナンテ食イ意地ガ張ッテル奴ダ」
「今日ハ鍋ダァ―――ッ!」
「うがぁ―――――――――――ッ、肉食わせるですゥ―――」
 近くの茂みから何やら背の低い魔物達が出て来た。
 数は三匹。完全ではないが人の言葉を話している。
 なんか見たことあるな……。
「ユウ、ちょっと急ごう」
「了解」
 
 
 近づいてみるとその魔物の正体が分かった。
 ゴブリンだ。
 あの汚い緑色の皮膚、とがった耳と鼻、ボロボロの服にずんぐりとした体。
 間違いない。
「おい、ちょっとそこのゴブリン」
「アァ? 何ダテメ―ラ」
「そこのあからさまに罠って分かるのに飛び込んでいったアホを離してくれ」
「そんな言い方ひどいです」
「事実だろーが」
 違うというのかこのバカは。
「イーヤ、ダメダネ。コレハ今晩ノ食材ニナルンダ。ソシテツイデニオ前ラモナァ」
「オ、オイ。チョット待テ。コイツドッカデ見タヨウナ……?」
 一人のゴブリンが遮った。
「オ、思イ出シタッ! コイツ前ニ洞窟ノアジトヲ潰シヤガッタ奴ダッ」
「ナニィィ―――――ッ、アノ化ケ物カ!?」
「ソウ言エバ似テイルゾ!」
 がやがやと騒ぎだすゴブリン達。コイツら洞窟にいたゴブリンと同じ奴らか。
 話が早そうで楽だ。
「なぁお前ら。ちょっと聞きたいんだけどさ、ここらに大鎌持った魔物っていないか?」
「『ユージュ』ノコトカ? アイツハコノ森ノ主ダ」
「そのユージュのアジトのところまで案内してくれんか」
「ナンデ俺達ガソンナコト!」
「また風でぶっ飛ばしちゃおうかなぁ~」
「ヒィィィ――――――ッ、ソ、ソレダケハヤメテクレェ!」
「じゃあ案内してくれ」
 するとゴニョゴニョと相談し始めたゴブリン三人衆。
 そんなにトラウマになったのか? あの風の魔法。
「リョーマはゴブリンのアジトを潰したの?」
「ん? まぁそうだな」
「リョーマって強いんだな……」
 ユウが尊敬するような目で見つめてくる。
 悪い気はしないな。
 話し合いが終わったのかゴブリンが戻ってきた。
「分カッタ。案内シヨウ。ダガ一ツダケ条件ガアル」
「何だ? その条件は」
「案内ハ近クマデダ。ユージュハ怖クテ近寄リタクナイ」
「OK。それでいい。早く案内してくれ」
 怖くて近寄れないほどの強さだったのか。
 すぐキレたりするし、ミスも多いからそこまでと思ってた。
 まぁ案内役ができたのはラッキーだ。
「よし、じゃあ出発だ。すぐに行くぞ」
「私を忘れるんじゃないですゥゥゥ――――――――――――ッ!!」
「あ」



 ゴブリンに案内を頼んでから数十分。未だアジトまでたどり着けていない。
「おいまだか。こっちは人質の命が危ないんだ」
「一番ノ近道ヲ通ッテルヨ! モウスグダ」
 ずっと道のないところを進んでいる。木の枝や岩が当たってあちこちにすり傷ができている。
「モガモガ……早く案内…モグモガ……するです」
「食いながら喋るんじゃあない」
 先ほど危うく忘れていくところだったル―シィは網から出ると真っ先に肉に食らい付いた。とんだ食い意地である。
「ていうかル―シィさん、そんなバッチィの食べるなよ。腹壊すよ」
「ユウ、それは心配無用です。ちゃんと解毒、分解する薬草も食べるです」
 無駄な薬剤師スキル。
「あ、リョーマ。……モサモサモサ………そういえばさっき捻挫に効く薬草見つけたです」
「マジか、早くくれ」
 食べてる音が『モサモサモサ』っておかしいだろ。
「採ってません」
「お前はアホか!」
 じゃあ言うなよ。さっきから痛んでしょうがない。
 こんなんでユージュと戦えるのかな。
「あったですよリョーマ。今見つけたです」
 ル―シィは生えていた薬草を採って細かく千切り、僕に差し出した。
「それを一気に飲み込むです」
 僕は千切られた薬草をすこし躊躇いながらも一気に飲み込んだ。
 ウェ、にが……。
「ま、まぁこれで捻挫治るだろ」
「いえ、それは解毒、分解する薬草です」
「お前が飲めや!」
「私は見せただけです!」
 紛らわしいわ。
 あー口の中が気持ち悪い。
「オイ、人間。捻挫ナラコノ薬ヲ浸ケルト良イ。即効治ル」
 と、ゴブリンの一人がちっちゃいビンを差し出した。
 手に取り、傾けてみると中からドロリとした青いゲル状の何かが出て来た。
「ソレヲ患部ニ塗レバスグニ治ル。タップリ浸ケルンダゾ」
「ふーん……」
 言われた通りたっぷりと手に取り、足首に塗りつける。
 おおぅ、ヒンヤリして気持ちいい。足首がス―ッとしてくる。
 すると不思議なことに痛みが引いてきた。
「おースゲー。治った」
「ソレハゴブリンノ秘薬ダ。痛ミヲ和ラゲル」
「サンキュー、ゴブリン……いてっ」
 急にゴブリン達が止まるからぶつかってしまった。
 さらに傷が増えてしまう。
「ったく。急に止まるなよ……」
「案内ハココマデダ。見ロ」
 ゴブリン達が指さしたところ、そこには洞窟と呼ぶには少し小さい。穴蔵といったところか。そんなものがあった。
「あそこにいるのか? えーとなんだっけ……そうだユージュだ」
「ウム。ジャア俺達ハ戻ル。二度ト会ワナイコトヲ祈ル」
「あぁ、ちょっと待て」
 僕はちょっと茂みの方へ向かう。

「ドーシタンダ? アイツ」
「おしっこじゃね」
「ユウ、デリカシーがないです」
 ボッゴォォ――――ン
「何ダ!? アイツノ行ッタ茂ミノ方カラ聞コエタゾ」
「なにやらまた魔法を使ったみたいだけど」
「あ、戻ってきたです」

「ただいまー。何やってんだ?」
 茂みから出るとなにやらル―シィ達はゴソゴソしていた。
「オ前ガ行ッタ方カラ爆音ガ聞コエタガ……」
「あぁ魔法でちょっとコイツを」
 後ろからソレをゴブリン達に引きずってくる。
「コレハ『イノシシ』カ?」
「おう。さっきそこをうろついてたからな。魔法で仕留めた。なかなかデカイだろ」
 体長二メートル程の大イノシシ。異世界のイノシシはこんなデカイのか。
そのイノシシの脇腹に少し焦げ目がついている。
 『シュプレンゲン』で爆破した痕だ。
「これ、お前らにやるよ。あの罠もル―シィが引っ掛かっちゃったし、案内までさせたしな。晩飯が無いんだろ。お礼にやるよ」
「オ、オ前……」
 なにかゴブリン達が震えている。
 どうしたんだ?
「オ前ッテ良イヤツダッタンダナァ―――ッ」「ウォォ―――ッ」「ソコニシビレル! アコガレルゥ!」
「オイッ、ひっつくな! 鼻水とか涙とか付くだろーがッ! キタネェって」
「コレデ何日カハ持ツゼーッ。本当ニアリガトナァ――ッ」
 ゴブリン達は涙をダーダー流しながら手を振り、イノシシを引きずり森の中へ消えていった。
 いいことするって気分がいいなー。
「リョーマ、かっこいいね」
「見直したです」
「ハッハッハッハ――――ッ」
 何度も言ってくれ。心が晴れ晴れとする。
「じゃあおだてるのはこれぐらいにして行こうか」
「行くです」
 うわー悲しい。
 まるで猿じゃん。
「………よし、じゃあ行くとするか」
 僕等は穴蔵へと向かっていった。


「結構奥まで続いてるんだなぁ」
「奥が真っ暗です」
 穴蔵を進む三人。
『ヴァルメス・リヒト』を使ったので辺りは明るいが奥までは照らせない。
道幅は三人がギリギリ横に並んで歩けるほど。高さは四メートル程か。
「罠とかあるのかな」
「さぁな。あったとしても引っ掛かるなよ。助けるの面倒だから」
「あれ、このボタンなんです?」
 ル―シィが壁にあったいかにも怪しげなボタンを見ていた。
 いや、あからさま過ぎるだろ。
「おい、それは絶対に押―――
 ポチッ
―――すなよ……ってもう押しやがったな」
「テヘッ、です」
 ぶっ飛ばしてやろうか。
 ゴゴゴゴゴゴゴ………………
「なんか嫌な音がし始めたんだけど」
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
 音のする前方を見てみると……。
 デッカイ大岩が転がってきた。
 その大岩は天井スレスレの大きさだ。どこにも避けれそうな横穴などはない。
「なんか転がってきたですゥゥゥゥ」
「どーすんのどーすんのどーすんのォォォォ!」
「お前ら、こっちに来い!」
 精神を集中し、手のひらをだす。
 ただし前でなく足元に。
「『ヴューレン』ッ」
 ボゴォッと、
 足元の地面に大穴を『掘った』。その大穴の中に三人はスッポリと収まる。
「頭下げろォ―ッ!」
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…………………
 すぐ頭上を大岩が転がって行った。なんとかギリギリ免れたようだ。
 大穴の淵に手を伸ばし、這いずり出る。
「危なかったぁ」
「まったくリョーマ、何やってるですか」
「この穴に埋めるぞ」
 お前のあのボタンのせいだろうが。
「でも何で穴を作ったんですか? いつもみたいにドッカ――ン、ボカ――ン、ズドドド―――ンと爆発させればいいのにです」
「爆弾魔みたいにいうなよ。穴掘ったのは体力をあまり消費したくなかったからだ」
 物を爆破するような大きい力より穴を掘る方が疲れないのだ。
 ここからゲームで言うボス戦になることだし、少しでも温存しておきたかった。
「だからこれから何かあっても触るなよ」
「こんなところにレバーが………」
「言ったそばからソコォ!」
 レバーに触るギリギリでル―シィを引き留める。
「お前はこの洞窟にいる間、何一つ触るな」
「はいはい、分かってですよ~」
 ホントかねぇ。不安でしょうがない。
 そんなことを話ながら先へ進む。
 途中、また何度かル―シィが罠を発動させやがったが、また魔法を使って事なきを得る。なので今、ル―シィが余計なことをしないように落ちてたロープで縛ってるとこ。
「お願いですぅ~。縛るのはやめるですぅ。動けないですぅ」
「動けなくていいんだよ。…………よし、できた」
 みの虫のようにグルグル巻きにされたル―シィ。これでおとなしくなるなるだろう。
 先に行ったユウの元へル―シィを引きずりながら急ぐ。
「おーい、ユウ………って何止まってんだ?」
「シッ、あれ見て」
 ユウが小声で指さす先。そこは行き止まりになっていて、壁に木の扉が付いている。どうやらあそこの奥にユージュとミキさんはいるらしい。
「あそこにミキ姉が………」
 ユウは奮い立ち、扉を開けに向かおうとする。
 僕はそれを手で制止させた。
「待て、迂闊に行くと危ないから気をつけて…………あれ、ル―シィは?」
 またいなくなった。
 なぁ~んか嫌な予感が……………。
「リョーマあそこ! ル―シィさんが!」
 なんとなく想像はできているが扉の方を見る。
 ル―シィが尺取虫のようにウニウニ動いて扉の方に向かっていた。
「お前なにやってんだァァ―――ッ」
 コンコンコン
 僕の声を無視し、あのアホは器用に結ばれた手を使ってノックしやがった。
 ガチャッ
「はい?」
 中からミキさんになり済ましたままのユージュが出てくる。ていうか出るのかよ。
「ちょっとすみませんです。ここからだと顔が見えないですがハサミか何かでこのロープを切ってくれないですか?」
 うつ伏せになっているル―シィがユージュに言った。やっぱアホだ。
「あー、はいはい。ちょっと待っててね―」
 ユージュは少し中に戻るとすぐに戻ってきた。
 右手にあの大鎌を持って。
 僕とユウは急いでル―シィの元へ向かう。
 が、いかんせん距離があって間に合うかどうか………。
「いやーすみませんです」
「いえいえ、困った時はお互いさまですよ………」
 ユージュがゆっくりと大鎌を持ち上げ、狙いを定める。
 やべぇ、間に合わん。
「リョーマ、なにか魔法で!」
「分かってる。でも距離があって間に合うかどうか……」
 爆破してもこの距離じゃ遠すぎるし、水や風は無意味。土の魔法だとこの穴蔵が崩れるかもしれん。
 早く動くような魔法が………。
「あぁッ! 鎌が振り下ろされ……」
「そうだ、『シュヴェルマー』!」
 シュバッ
前に向けた手から一筋の炎が飛び出た。
 射出された炎は目にも止まらぬ速さで『シュババババババッ』と走っていく。
この時点で何の魔法か分かる人もいるかもしれない。これは『ネズミ花火』の魔法だ。ホントに出るとは思わなかった。
 ユージュのすぐ傍まで行くと鎌を振りおろしていたユージュの手に跳ね、ぶち当たった。
「熱ッ!?」
 ガシャ―――ンッ
 大鎌を落とし、怯むユージュ。
 その間に追いつき、ル―シィを右手で抱える。
「わ、わ、わ……。何が起きてるです?」
「お前は今ユージュと話してたんだよ。危うく真っ二つにされるところだったぞ」
「ゾォ~~~~、です」
 危機感のない奴め。ホントにいつか死ぬぞ。
「じゃあこのロープ解いてください」
「おい、ユージュ! やっと見つけたぜッ」
「無視すんなです」
 だって解くとまた勝手に動き回るんだもん。
 怯んでいたユージュは落ち着きを取り戻し、大鎌を拾う。
「お前らか……。まぁ待っていたぞ」
 余裕の表情でこちらを見る。
 大鎌を肩に乗せ、ケラケラと笑う。不気味な奴だ。
「ユージュ! ミキ姉を返せ!」
「まぁ騒ぐんじゃあない、小僧。娘はちゃんとこの奥の部屋にいるわ。もっともぉ! お前らは今、ここで殺されて二度と会うことはな―――」
「『シュプレンゲン』ッ」
「ちょ、まだ途ちゅ」
 ドッッグォォォォォ――――――――――――――ン
 ユージュごと扉を爆破。目の前の壁が崩れ、瓦礫が積み重なる。穴蔵が揺れるが、崩れる心配はなさそうだ。
 部屋の中に進むとそこは質素な部屋となっていた。
 壁は穴蔵を掘ったままで岩がゴツゴツしている。小さな机の上にある蝋燭しか明かりはなく、薄暗い。他には粗末なベッド、本棚くらいしかない。
 そして部屋の隅に椅子に両手両足を縛りつけられたミキさんがいた。
 布で目隠しと猿ぐつわを付けられ、動けない状態だった。
「ミキ姉!」
 ユウの声を聞いたミキさんはうなだれていた顔を上げた。
 必死にユウを探しているようだ。
「今取ってあげるからね……」
 右手に抱えたル―シィを放り投げ、拘束を解くのを手伝う。後ろでル―シィがブーブー文句垂れているが無視だ。
 両手足の拘束を解き、目隠しと猿ぐつわも取る。
「ミキ姉!!」
「ユウ!!」
二人は目に涙を浮かべ、抱き合った。
姉弟の感動の再会だ、
「ミキ姉、怪我してない? 大丈夫だった?」
「大丈夫よぉ、ユウも大丈夫だったぁ?」
 ユウは頭を縦に強く振った。
 お互いの無事を確認し、また二人は泣いた。
「いやー感動の再会だねぇ、ル―シィ」
「うぐっ、えぐっ、ほんどーでずぅぅ~」
「もらい泣きしすぎだろ」
「みの虫状態なので顔が拭けないですぅ」
「………ったく。ほれ」
 僕はル―シィの顔をハンカチで拭いてやる。
「これでいいだろ」
「解いてくれるとかじゃないんですね」
 お前はここを出るまでその状態だ。
 さて、ここらでこの穴蔵を出るとするか。
「おーい、お二人さん。もうそろそろこの場所から―――」
「出さないわァァァ――――――――――ッ!!」
「生きてたのかッ! ユージュ!」
「当たり前よ! こんなもんじゃ死なないわ」
 突然の怒号。
 声の主はいつの間にか復活していたユージュだった。
「ぶっ殺してやる……。ぶっ殺してやるわァ…………」
 その顔は、鬼のような形相であった。


続く

リサイクル勇者6

リサイクル勇者6

本物のミキさんを救出するために大鎌の魔物を追う僕ら三人。 広大な森に入り探索していると意外な再会があった。 そしてついに救出か・・・・・・。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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