リサイクル勇者5話

立ち寄った診療所で泊まることになったリョーマとル―シィ。だがル―シィが攫われてしまう……。

午後七時半ごろ。外はもう暗かった。
「ご飯できたわよぉ」
「メシですゥゥゥゥゥゥーーーッ」
 ル―シィは獣のごとくその場で跳ね、雄たけびを上げた。
「お前は野獣か」
「だって村から食料持ってくるの忘れたです。だから食うもの無かったです!」
 そういえばル―シィが食事を作った時はル―シィの分が山盛りだった気がする。
「だからってがっつくなよ。一応泊めてもらってんだから」
「わーってるです。さ、早く行くです」
 ル―シィと二人で部屋から出て廊下を進む。一階へ降りるとユウもちょうど来たところだった。ユウに案内され階段近くにあった居間に入る。
「ほらほらほらぁ~。こっちにおいで」
 入ると中は結構広かった。
 机の上には大盛りのから揚げ、ポテトサラダ、パン、スープが並べられていた。この世界の料理は僕がいた現世となんら変わらないらしい。材料とかは違うと思うが。
「こっちに座って。たくさん作ったからいっぱい食べてねぇ」
「「「いただきまーす(です)」」」
「どーぞー」
 僕はル―シィと隣に座り、向かいにユウとミキさんが座る。
 ミキさんの作った料理は少し味付けが濃かったがとても美味しかった。
 特にポテトサラダが美味しかった。
「ル―シィ、このサラダの野菜って何?」
「……んー。分からないです。見たこともない野菜です。ミキさん、これってなんていう野菜です?」
「えーっとねぇ………。そう、これは庭で自生してたのよ。大丈夫、毒はないわぁ」
「かなり不安っすね」
「でも、少なくとも私の知ってる毒の味はしないです」
 薬草とかに詳しいル―シィなら多分大丈夫だろう。でも毒の味をなぜ知っているのだろうか。食ったことあるのかな。
「ユウ、このサラダ食べなよ。うまいぜ」
 見るとユウはほとんど食事に手をつけてなかった。
「……………」
「ユウ?」
「あ、うん。食べるよ」
 と、食べ始める。だが、またすぐに箸を止めた。
 やはり、まだ調子が悪いのかもしれない。
 そう考えながら食事の時間は過ぎて行った。



「「「ごちそーさまでしたー(です)」」」
「おそまつさまぁー」
 机の上に並べられていた料理はきれいに無くなった。
 ル―シィは恐ろしいほどのスピードでたいらげた。さながら吸引力の変わらない掃除機のようだった。
「お風呂はこの部屋でてすぐだからぁ。好きな時に入ってねぇ」
「ありがとうございます」
 僕達はお礼を言い、部屋に戻った。
 ル―シィと床に寝っ転がり、一息つく。そして少し考える。
 気になるのはあのユウの反応だった。
 ずっと頭から離れない。夕食のときだってほとんど食べていなかった。
 あの病気はそこまで深刻なのだろうか。それとも別の何かが……?
「ル―シィ、頼みがあるんだけど」
「なんです? その顔はセクハラするつもりですね」
「おかしいだろ。決めつけるなよ」
 ル―シィの目は節穴だ。こんなに爽やかな顔をしてるのに。
『いや、大概だと思うよ』
 お前は黙ってろ。
「ちょっとユウを診てやってくれないか? 診察みたいなことはできるだろ」
「まぁできるですけど……。どうしてです?」
「ちょっと気になることがあって」
「じゃあ今から行きましょう」
「もうちょい後で大丈夫だろ。なんか腹いっぱいで眠くなってきたから僕は寝る」
 さっきから猛烈な眠気がしている。
 やはりたくさん食べたからだろうか。美味しかったもんなぁ。
「私も眠いです……。起きてまだ遅くなかったら行くです」
「じゃあそうするかぁ……」
 もう限界だ。
 僕はそのまま眠りについた。



 起きると辺りは真っ暗。
 部屋の電気をつけておいたはずなのだが……。ミキさんかル―シィが消したのだろう。
 と、そこでおかしいところに気付く。
 
ル―シィがいない。
 
 壁にかかった時計を見ると午前三時過ぎ。丑三つ時というやつだ。
 あのル―シィだから爆睡している時間だ。トイレにでも行ったのか。
 一旦明かりをつけた。そこには明らかに異常があった。
 血が点々とついている。
 一滴一滴が点々と床に垂れていて、扉の向こうへ続いている。
 これを見る限りル―シィに何かがあったことは明らかだ。
 また、僕を狙う魔王の手先か? ならばまたル―シィを巻き込んでしまった……。
 …………考えてもしょうがない。ル―シィを助けに行かねば。
「おい、ミル。聞いてるだろ」
『はいはーい。みんな大好きミル君だよぉ~』
「いっぺん死ね」
『神に向かって死ねとは命知らずだね』
 悪いが遊んでる場合じゃない。
「ル―シィが攫われたかもしれん。なにか見てないか?」
『寝てた』
「ほんっっっっと役立たずだな」
『しょうがないよ。神だって休息は必要さ』
 ジャンプ読んでたりして暇ばっかだろ。
「とにかくサポートしてくれ」
『最近龍馬さぁ、ぼくをこき使ってない? 神使いが荒いよ。あと、ぼくこれからちょっと忙しくなるから無理だね』
「え? ちょっと合間にサポートしてくれるだけでもいいからさぁ」
『無理無理。忙しいもん。でも一つだけアドバイスしたげる』
 アドバイスするなら手伝ってくれ。
『ル―シィちゃんを攫ったのは魔物だね。そこの空気で分かるよ。それじゃあねー』
 ミルの声は聞こえなくなった。
 それはアドバイスじゃなくて悪い知らせという。
 そんなことよりも急がねば。ル―シィの身に危険が起きてるかもしれん。
 僕はゆっくりと扉を開けた。
「………………」
 思ったことを言おう。
 超怖い。
 真っ暗で明かり一つ点いていない。ほんのりと窓から入る青白い月明かりがあるが、それでさらに怖い。
 でもビビっていたらル―シィは助けられない。覚悟を決めて進むことにする。
 扉の外も血は点々と続いていた。それに続くことにする。
 暗い廊下は一歩進むごとに『ギッ、ギッ』と軋む。僕が重いわけでもない。
 ギッ、ギッ、ギッ、ギッ…………。
 足元に気をつけながら歩いていると明かりをつけるスイッチがあった。
 寝ているかもしれないユウとミキさんには申し訳ないが点けさせてもらおう。
 カチッ
 電気がつかない。
 カチッカチッカチッ
 何度やってもつかない。
 停電か? いや、僕がいた部屋はついていた。ならなぜ?
 やはりミルの言った通り魔物らしいな……。
『魔法使えばいいじゃん』
「あ、そっか」
 少し助言をくれたミル。
「『ヴァルメス・リヒト』!」
 手のひらから光の球が出てきて辺りを照らした。前に洞窟で使った魔法だ。
 ユウとミキさんを起こさないように少し暗くする。こういう風にコントロールするのは少し疲れるな……。
 光の球を頼りに血の跡に続く。階段を降りると居間より奥の方へ続いていた。
 居間を通り過ぎるとそこには外への扉があり、血もそこへ続いている。
 魔物は外へ?
 ゆっくりと扉を開け、外を窺う。
 診療所の裏に出たようで庭のようなところが広がっている。
 そして庭の中央にル―シィが横になっていた。
「ル―シィ!!」
「…………グゥ」
 急いでル―シィのもとへ駆け寄った。
 腕から出血していたが、そんなひどい怪我でもなく、ただ眠っているだけのようだ。
「よかった……」
「うぅ………リョーマ、臭いですぅ……」
「お前ホントは起きてないか?」
 ただ寝ぼけて来ただけなら僕はコイツを魔法でどこかに吹き飛ばす。
 ガサッ
 近くの茂みから、そんな音が聞こえた。
 耳を澄ますとまた聞こえてくる。しかも複数のようだ。
 ガサガサッ
 どうやら犯人たちのようだ。
 ここまで僕を心配させたんだ。ただじゃあ済まさない。
「グググッ………グガァ」「グギギギッ」「グルルルルルゥ」「グゥ……」
 茂みから何匹かの魔物が出てきた。ちなみに最後の声はル―シィの寝息だ。
 その魔物の見た目は実に奇妙であった。
 狼のようにスラッとし、毛が生えた体。だが顔は人のような顔がついていた。歯は抜け、生気のない青白い顔。老若男女様々だ。
 そんな魔物が十数匹。おぞましかった。
「グガゴ……リョーマ、ダナ」
 一匹が口をきいた。うわー。キモい。
「我ラガ主ノ……命デ、貴様ヲ殺ス………」
「主ってのは魔王か、魔王の配下の誰かだろ」
「…イカニモ………」
 そういうと魔物たちは戦闘態勢をとった。グッと体を構え、いつでも飛びかかれるような体勢だ。
「グゥガァァァァアアアアアア!!」
 バババッ
 と、何匹かは空を跳び、残りは地を走ってくる。
 完全に死角のない戦術。
「…………上等だぁッ!!」
 手のひらを天に突き上げる。そして力を込める。
「『フェルス』ッ!」
 唱えると地響きが起き始めた。
 地面はひび割れ始め、隆起し始める。
 ドッッグォォォォォォォォォォォォンッ
「グガッ」
 地面から無数の巨大な棘が出現し、その棘は魔物を瞬く間に貫いた。
 辺りに魔物の血が噴き出し、血に染まる。
 今唱えたのは『岩塊』という意味だ。
 まぁ棘になるとは思わなかったけど、初めて使った『土』の呪文の割にはいい感じじゃないか。
 相変わらず瞬殺だなぁ。
「オ……オ逃ゲ…………クダ…サイ………………」
 まだ息があった一匹が誰かに呼びかけた。
 すると、背後の方で物音がした。
 見ると屋根の上を跳びながら一匹の魔物が逃げていく。
その魔物はこの人面狼とは違い、人のような形をしていた。だが、月の光が逆光となり真っ黒で詳細は分からなかった。
「逃がすか! えーと、『シュプリッタ―』ッ」
 逃げる魔物に向けて棘の欠片が放たれる。
「グッ」
 当たるギリギリで魔物は気付いたらしく魔物の足をかすっただけで外れてしまった。でも多分傷を負わせることはできただろう。
 ちなみに今の意味は『破片』だ。
「おい! 今のはお前らの主とかいうやつか?」
「…………」
 さっきの一匹は絶命していた。
 とにかく『フェルス』を解除し、地面を元に戻した。ついでに死体も一緒に埋めておいた。魔物だから特に罪にはならないだろう。
 血は『ドゥーシェ』(シャワー)の呪文を使い、洗い流す。
 全部を片づけた時にはもう東の空が明るくなり始めた。ちなみにル―シィ爆睡中。
 ル―シィを背負って部屋に戻る。もちろん起こさないように、ゆっくりとだ。
 部屋に戻るとル―シィをその場に放り投げ、一息つく。
 魔法を何種類も使ったせいかすごい疲れている。
 もう寝よう………………。


 午前六時。
「…う、うぅ~………。あれ? リョーマ、早いですね」
「………………あぁ」
 寝ようと思ってたんだけど気になることがあって、考えてたら眠れなかったんだよ。その間幸せそうに寝てやがって。
 さてと………。
「ル―シィ、ユウの病気を診に行くぞ」
「こんな早くにです?」
「早くでいいんだよ。あと、多分起きてる」
「え?」
「まぁ行くぞ。支度してくれ」
 いまだ寝ぼけ眼のル―シィを急かし、支度を急がせる。
 準備ができると道具を持ち、部屋を出る。そのまま階段を降り、居間へ向かう。
「………やっぱりいた」
「!!」
「ホントに起きてたです」
 ユウが居間の椅子に座り、何かをしていた。
 僕等に気付くと、机の上にあったものをサッと隠した。
「いやいや、警戒しなくていいよ。ちょっと診察に、ね」
「そうです。私は薬を扱えるです。もしかしたらユウの病気を治せるかもです」
「……………分かった」
「ありがと。じゃ、ル―シィお願い」
「アイアイサーです」
 そしてル―シィは聴診器とかいろいろな器具を使い、体を検査した。
 隅々までしっかりと。
 だが。
「終わったですが……。おかしいです」
「どうだった? 診察結果」
「どこも異常はないです。まったくの健康体です」
「ふーん」
 見るとユウは青ざめていた。
「どこにも異常はなかったのか?」
「あるといえば…………」
 とル―シィは指をさす。
「ここです。足にまだ新しい切った傷が…………」
 と言った時にユウは走って逃げ始めた。
 逃がしてたまるか。
「『ヴァッザー』」
 居間のフローリング全体に水を発生させた。
 木のフローリングに水。
 ズルッ
「!」
 狙いどうり思いっきり足を滑らせるユウ。転んだところをすかさず押さえつける。暴れるが、この捕まえ方はなかなか抜け出しにくい。
「ど、どーなってるです!? なんでユウを捕まえたですか?!」
「見りゃ分かるだろ。僕は昨日魔物の集団に襲われた。その集団のボスは逃げたけど足に傷をつけれたんだ。そしてユウにも足の傷があって、それが見つかると逃げた」
「つまり……ユウが魔物、です?」
 ユウは何も言わなかった。ただ怯えていた。
「なんで、なんでリョーマを狙ったです?」
「そりゃ僕が魔王を倒そうとしているからだろう。魔王にとっちゃ僕が面倒になるし」
 とりあえず近くにあった救急箱から包帯を取り出し、椅子にグルグル巻きにする。訪台はなかなか耐久力があって破れにくい。
「これでよしっと」
 ユウは必死に逃げようとジタバタ動かす。でも破れない。
「やりすぎだと思うです……」
「大丈夫。すぐ離してあげるから」
 もうそろそろか………。
 朝っぱらこんなに騒いで近所迷惑かな?
 ……来た。
「ル―シィ………」
「なんです?」

「………伏せろッ!!」

「え?」
 いきなり言ったからか反応が遅れるル―シィ。なのでル―シィの頭を引っ掴み、強引に頭を下げさせる。
 
 瞬間、頭の上を物体が通過する。

 ゴウッ
「ヒイィィィィィィィィッ、です!」
「チィッ!」
 後ろから舌打ちが聞こえた。ていうか悲鳴にまで語尾がつくのか、ル―シィよ。
 すぐさま体勢を立て直し、後ろを振り向く。

 そこにはミキさんが立っていた。その右手には大鎌を持って。
 
「ミ、ミキさんです?! どうしてです?」
 ミキさんは忌々しそうにこちらを睨みつけ、大鎌を持ちなおす。
「もしかして………、魔物が姉弟で私たちを狙ってきたですか?」
「いや、魔物はミキさんだけだ」
「えぇぇぇぇッ!? じゃあユウは………?」
「詳しい話はまた後で。今は………うぉ!」
 また大鎌を振られる。
 ル―シィを危険でない範囲まで突き飛ばし、僕は大鎌を避ける。
「っぶねぇ……。話してる途中に攻撃とはとんだ下衆だな」
「…………フッ」
 ミキさんは不敵に笑う。
「ア――ッハッハッハッハッハッ」
 違った爆笑だった。
 あのニコニコしてたミキさん。今はその醜い笑いで顔が引きつっている。
「なぜ分かった? 後ろからの攻撃が」
「フローリングにまき散らした水で反射させてみただけだよ」
 元々こういう風に利用しようとしてただけだし。
「なかなかの策士だなぁ、リョーマ」
「いやいやそっちも結構な策士でしょ。自分の偽者準備しとくなんてさ」
 多分、昨日襲ってきたのはミキさんの方だ。
 僕を誘き寄せて殺そうとしたんだろう。でもそれも失敗し、さらには足に負傷をしてしまった。足の怪我は目印にもなってしまう。だからユウの同じ部分に傷をつけておいた。
 ユウは昨日からかなり不審な動きをしているからそっち側を疑うのは当たり前。その隙を狙った、というわけ。
 ご静聴ありがとうございましたー。
「だがどーしても分からないのだ、リョーマ。なぜ昨夜襲ったのが私と気付いた? 別の魔物なのかもしれなかったんだぞ?」
「それは簡単だよ。部屋に戻るとすぐに僕とル―シィが眠くなって寝たんだよね。満腹になったからってこんなに早いのはおかしいでしょ。多分夕飯に薬でも盛ったんだ。ユウは僕と一緒に降りてきたから無理。すると必然的にできるのは、アンタ一人だけ」
「ずいぶんと簡単なミスをしたもんだな、私は…………。フフフッ」
 また笑い出した。笑い上戸なのかな。
「フッフッフハハハハハハハハハハハ―――――――――ッ」
 ここまでくると、怖いな。
 ル―シィもドン引きしてる。
「ハハハハハハハハハハハハ―――――ハッ! チクショウメェェェェェェェェッ!!」
 ゴウッゴウッ
 大鎌が空を裂く。居間にあったテーブルや戸棚が一瞬でゴミとなっていく。
 ブチぎれたな。
「このやりようのない怒りはッ、どうすればよいのだァ―――ッ!」
 やつあたりだァ―――――ッ!
 ていうかここもそろそろやばい。ひとまずユウの拘束を解く。
「『クヴァルム』ッ」
 ボシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 大鎌の目の前で真っ白の靄がかかる。
「これは……『煙』かッ」
 よし怯んだ。今のうちに……。
「逃げるんだよぉ―――ッ。行くぞユウ、ル―シィ!」
 視界が奪われているうちに脇から逃げ、外へ出る。
 外へアイツが出て来た時に、一気に魔法でぶっ飛ばす。瞬間的ならば大丈夫だろう。
 でも、なかなか出てこない。
「中で窒息したんじゃ?」
「ユウ、それは多分ないと思うけど……。それより」
「どうした? リョーマ」
 僕はユウに向き直る。
 そして深々と頭を下げた。
「アイツを騙すとはいえ、お前を転ばしたり椅子に縛り付けたりしたから。ホンットにsマン」
「いいよ………。謝らなきゃいけないのはこっちだし。あの魔物に脅されてリョーマを連れて来たんだ。リョーマを騙したんだ……。本当にごめんなさい」
 ユウは心底申し訳なさそうに頭を下げる。
 その姿を見るとすごい罪悪感に見舞われた。
「いいって。あんなんに僕は負けねぇよ。魔法で一発だ」
「そうです。リョーマは私も守ってくれたです。あんな奴、ボッコボコのケチョンケチョンのプップクプーです」
「「後半意味分かんない」」
「ハモりやがったです」
 バリンッ
 診療所の窓が割れ、中からアイツが飛び出した。
 一瞬身構えたが、大鎌の魔物は空を飛び、町の外の方面へ飛んでいく。
「あれー? 逃げたかぁ?」
「恐ろしくなって逃げたですよ」
 なんか締まらない最後だなぁ………。
「い、いや………」
 だが、ユウは違った。
 何か思い当たる節があるようだ。
「あっちの方は………ダメだッ!」
 ユウは突然駆けだし、町の外へ走り出す。
「お、おい」
 僕等も急いで後を追う。
「何かあるのか? あっちに」
 ユウは走りながら話す。
「俺がアイツの言うことを聞いていたのは…………本物のミキ姉が人質になってるからなんだ。それであっちはミキ姉がいる方角!」
 ちょっと待て。アイツはブチぎれたよな……。
「アイツもしかして腹いせにミキさんを………ッ!」
「それはヤバいですッ!」
 でも走って追いつけるかな………。
『ホントに君はマヌケだねぇ』
「ミル! ちょうどよかった、なんとかしてくれ!」
『飛べばいいじゃん。魔法であの魔物みたいに』
「あ、そうか! サンキュー、ミル!」
『サポートはするんだよ、ぼくだってね♪』
 実は頼りになるミルだな! 例えるならウソップだ。
 僕はユウとル―シィの手を握る。
「どーしたです?」
「リョーマ、走りにくいぞ」
「絶対離すなよお前らァ!」

「『フリーゲン』ッ!」

 そして訪れる浮遊感。
 ユウとル―シィと僕。三人は宙に浮いている。
「わ、わ、わ、わ。飛んだです!」
「どーなってんの?!」
「ぶっ飛ばすぞォーッ」
 狙うは前方に見えるミキさんの偽者。
 アイツを追い詰めて、

 必ずブッ潰す


 続く

リサイクル勇者5話

リサイクル勇者5話

診療所で泊まることになったリョーマとル―シィ。 だが食事のあと、ル―シィが攫われてしまう。 助けるために追いかけるが、そこで魔物達の襲撃を受け・・・・・・・・・。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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