一輪の花
美しさが、こんなにも自分自身を苦しめることになろうとは思わなかった。これ以上に美しさが災いして、不幸になろうものなら、もう、この世から消えてしまいたい、自らの手で、自分自身を消し去りたい、と思っていた。
両親がいなくなってから、もう10年以上経つのか。あの日も、今日みたいにどんよりと曇り空で、肌寒い朝だった。買って貰ったばかりのお気に入りのコートを、自宅に忘れてきてしまったのを後悔し、ちょうど自宅へ引き戻そうとしたところだった。
少女時代の百合は、勉強が、ずば抜けてできるわけでも、運動神経が良いわけでもなかった。ただ人並みほどの力量はあり、
ただ、一度違うところと言えば、ひとなみ外れて容姿が美しいことであった。
百合は、その名の通り、クラス中では、一輪の百合の花のように美
一輪の花