世にも奇妙な男の夢 第1夜 歴史的な注文

皆様、ご無沙汰しています。Amelieです。久々に作品を投稿します。
「世にも奇妙な女の夢」シリーズに続き、「世にも奇妙な男の夢」シリーズも始めました。
第1回目は、ブラジル出身の元フィギュアスケーター(架空の人物ですが)、ルイス・デ・モレイラが主人公です。
さてさて、彼の見た夢とは。

世にも奇妙な男の夢 第1夜 歴史的な注文

プロローグ~ストーリーテラー登場

以前、私は皆様に5人の女性の見た奇妙な夢をご紹介しました。今回は、5人の男性が見た奇妙な夢の物語をお見せします。彼らが見た世界は、どのようなものでしょうか。


「歴史的な注文」


これは、ルイスがいつか見た夢である。

 ルイスは、自国にある、ケーキ屋を兼ねた1軒のカフェに入り、椅子に座った。彼は1人での食事を全く恥じる様子がない。メニューを一通り見ると、ウエイトレスを呼ぶボタンを押した。ほどなく、1人のウエイトレスが彼のもとに来た。
「ご注文はお決まりですか」
「いちごのショートケーキと、ガトーショコラと、フルーツタルトと、モンブランと、いちごのシュークリームと…」
 彼の注文は、長々と続いた。ウエイトレスも、かなり困惑した。
「…あと、コーヒーゼリー」
 ウエイトレスは、ふうと一息ついた。
「…ご注文を…繰り返します。いちごのショートケーキがお一つ、ガトーショコラがお一つ、フルーツタルトがお一つ…」

 そんなこんなで、注文の確認が終わった。
「…以上でよろしいですね?」
「ああ」
「では、少々お待ちください」
 ウエイトレスは、去りながらため息を漏らした。ルイスの隣に座っている、夫婦とおぼしき客が、珍しそうに彼を見つめていた。

 約10分後、注文したときとは別のウエイトレスが、いちごのショートケーキを持ってきた。ルイスは、祈りもせずにフォークを持つと、ショートケーキを食べ始めた。彼は、僅か1分でそれを食べきった。2分後、ウエイトレスがガトーショコラを運んできた。彼は、それも1分前後で食べきった。次に運ばれてきたのは、フルーツタルトであった。彼はそれも僅かな時間でたいらげた。それも、ほぼ一口で…。それから、ウエイトレスはモンブランを持ってきた。ルイスはそれを90秒でたいらげた。
「うめへ~!」
 彼はそのカフェのスイーツを絶賛した。

 隣に座っていた夫婦は既に店を去り、その席には大きなレンズのサングラスをした1人の女性がいた。彼女の隣の席の客に、いちごのシュークリームとティラミスが同時に出された。ルイスは、それらを短い時間でたいらげた。いつの間にか、彼の周りには人だかりができていた。子ども連れの女性や若い男女、果ては仕事帰りとおぼしき数人の中年男性まで…。彼は、次のメニューが来る間に、グラスの水を1杯飲んだ。


 それから約30分後、彼は注文した商品を完食した。その数何と、ケーキ類15種類、アイス2種類、ゼリー系のスイーツ10種類、さらにはパフェ3種類と、合計30種類だった。それは、この店の出すスイーツ全品を制覇したことを意味していた。その店にいたすべての客が、拍手喝采した。
「こいつはギネスもんじゃねえか!?」
 1人の男性が興奮しながら言った。ルイスは、腹をたたいて満足そうに言った。
「ふー、食った食ったあー」

 ルイスは、財布を出した。しかし、その中にはコイン1枚しか入っていない。カードも家に置いてきてしまった。彼は口を開けてしばらく立っていたが、隣に座っている女性客のところに行くと、こう言った。
「悪い、俺の代わりに勘定払ってくれ!」
 伝票を置き、ルイスは店を去っていった。その女性は、頬を赤くした。
(これって、もしかしてプロポーズ…!?)
 勘定を払わされることになった女性は、サングラスの位置を直し、彼の後ろ姿を見つめた。


 その女性は、超有名女優のアンジェリカ・クルスだった。 ― 彼女は、超が付くほどのルイス・デ・モレイラの大ファンなのである ―

世にも奇妙な男の夢 第1夜 歴史的な注文

世にも奇妙な男の夢 第1夜 歴史的な注文

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted