ヘイズ〜1話〜
『欲』を持たない少年と全てのものに『違和感』を持つ少女の出会い
1 灰色
今日も空は灰色だった。
雲ひとつないのに灰色の空。視線をおろすと灰色の街。何かのフィルターがかかったみたいだ、とベットからおりながら思った。
空島長閑(そらじまのどか)はベットからおりながら少し首を傾げた。今までの14年の人生で長閑は空の青さを知らずに過ごしてきた。
これからもずっとそうだろう。
そう思うと嫌でも心は暗くなる。
「支度をしないと」
長閑は自分の部屋から台所のある1階へ降りる。そこでパンを一枚掴むとまた部屋に戻った。
そのほどよく焼けた美味しそうな色は長閑には空と何も変わらない色に見えただろう。
自分を構築する以外のもの全てに違和感しか感じない、ゆえに世界に灰色のフィルターがかかっている少女。
それが空島長閑だった。
それからほどなくして学校に着く。教室の決められた位置に座る。我ながらよくおかしくならないものだ、と長閑は思った。違和感に満ち溢れているこの世界で生き続けるのは並大抵のことではない。
長閑は机に手を置いてみた。
することがない。
それはいつものことだ。別に友達がいないわけではないが自分から話しかけることはあまりない。
長閑にしたらそこの消しゴムも人間も同じだ。どっちも自分と永遠に相容れない存在。それ以上でもそれ以下でもない。
長閑はクラスメイトというものをどうしても自分と同じ人間だと見ることが出来なかった。そこで『灰色の人型』と名づけてみた。その方が長閑にとってはまだ真実だった。
チャイムが鳴ったら『灰色の人型』が1人増えて話し出す。何も満足していない自分に満足している自分がいる。
世界はいつもどおりに廻っていた。
2 無欲
朝起きてカーテンを開ける。
すぐに太陽の光に晒されて目が冴えだした。窓から外を伺ってみると真っ青な空である。乾詩(いぬいうた)は時計に顔を向けた。
「まだ余裕だな」
しかし二度寝するわけにもいかないのでしょうがなくジャージを脱ぎ、制服に着替えだした。朝はまず着替えないとなんとなく落ち着かない。制服を着終わり、下におりる。ごはんを食べ終わったらそのまま学校へ向かう。
そんな日常が今にもく崩れけているのを彼はまだ知らなかった。
夕方、学校が終わり家に帰ってきた詩はかばんを床に放り出してベッドに寝転んだ。ふと天井を見上げる。
乾詩は自分のことが嫌いだった。正確にいうと自分の性格が、である。
詩には昔から『欲』というものがなかった。感情からすっぽりその部分だけ抜けている。
何も欲しがらず、何をする気も起きず。かといってほかのことがしたいわけでもなかった。
人と大きな部分が1つ違うとそれだけで組織にはいられない。理由は変わっているからだ。
やりたいことはない。今まで楽しかったこともない。楽しい、というのはそれをしたいという欲求がある前提の話なのであってそれは詩には存在しない。
ゆえに学校にも友達はあまりいなかった。
「もういいや」
詩は布団をかぶって暗い部屋に閉じこもった。
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ヘイズ〜1話〜
今回は人物紹介だけで終わってしまったので次からはちゃんと話を進めていきます!
いちおう詩と長閑のダブル主人公です
よろしくお願いします