猫よりももっとずっと
イケメン幕末の二次創作です。
お相手は沖田総司さん。
ヒロインの名前ははなとさせて頂きました。
名前変換はありませんが、気分だけでも夢小説として読んで頂けたら嬉しいです。
ねこガチャの沖田さんのミニシナリオのイメージですので、ネタバレ要素がございまのでご注意下さい。
まだあんまり沖田さんと親しくないため、別人でごめんなさい!
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「あんな可愛い猫が来てるんですね?」
剣の手入れをしていると、廊下からはなさんの声が聞こえた。
どうやら山崎に案内されて、こちらに向かっている様子。
俺に会いに来たのだから、呼んで貰えれば迎えに行ったのに。
迎えに行こうと行かまいと、彼女はここにやって来る。
結果には何ら変わりはないのに。
どうしてそんな事を考えてしまったのだろう?と、一人首を傾げて居た。
彼女は変な人だから。
見ていて飽きない面白い人だから。
そんな彼女と共にあるうちに、俺までおかしくなってしまったのかも知れない。
「沖田、はなさんを案内した」
襖越しに聞こえる山崎の声に、
「どうぞ」
と、応えた俺は、さっきまで考え事で止まっていた手を慌てて動かした。
別に待って居た訳じゃない。
あなたを気にしていた訳じゃない。
ただ剣の手入れをしていたんだと、まるで言い訳でもするみたいに。
「沖田さん、屯所に可愛い猫がいるんですよ」
入ってくるなり猫の話。
そう言えば彼女は、餅助の事も可愛がっていた。
俺に似ていると言われるうさぎの餅助。
よく屯所にやってきては、みんなが『沖田さん』と呼ぶうさぎ。
犬や猫じゃないから、そんなに懐かないのは当然なのだろうが、そのうさぎはいつも近藤さんに噛み付いていた。
『近藤さんがまた沖田さんに噛まれた』
そんな風に毎度みんなが騒ぐものだから、彼女は本当に俺が近藤さんを噛んだと誤解して、ひどく驚いてた事もあった。
「へぇ…。そう言えば、みんなが騒いで居ました」
興味なさげに返す言葉。
確かに騒いでるみんな程興味はないかも知れない。
かと言って、こんなに素っ気なく返す程、興味がない訳でもないのに。
なんだか胸がすっきりしない。
もやもやする何かが、胸につっかえているかのように。
「私、さっき、山崎さんに案内して頂いて、会ってきたんです」
いつも山崎で遊んでいる事に対する仕返しだろうか?
きっとこうなる事を見越して案内したんだ。
そう思って、でも、また考え直す。
山崎がそこまで考えて彼女を猫の元に案内するだろうか?
恐らく噂を耳にした彼女が、こんな風に興奮気味に話すから、それで案内したに違いない。
だとしても迷惑な話だ。
俺に会いに来たのに、今のあなたはここには居ない猫に夢中なのだから。
「そうですか」
また素っ気なく返す俺の声に、彼女の興奮は冷めてしまったようだった。
その素っ気なさを怒りと勘違いしたのか、伺うように俺を見つめる視線を感じた。
「あの…」
気まずい空気が流れるのをなんとかしようと口を開いた彼女。
けれど、それを遮るみたいに、子猫が鳴いた。
にゃ~。
聞こえたそれに、また彼女は嬉しそうに、
「聞こえましたか?沖田さん!凄い可愛い鳴き声ですよね?」
また興奮気味に話しかけて来る。
全く、懲りない人だ。
そんな彼女がおかしくて、クスリと笑い、俺は手入れをしていた剣を鞘に戻す。
カチッと言う音と共にすっと立ち上がり、彼女のそばに。
「おっ、沖田さん?」
近い距離に驚いた彼女は、大きな瞳をさらに大きく見開いた。
「はなさんだって、可愛く鳴けますよね?」
悪戯な笑みを浮かべて訊ねると、
「えっ!?」
驚いた様子の彼女。
けれど彼女は知っているから。
俺がこんな笑顔を見せる時には何かがあると。
だからだろうか?
分からないという様子ながらも、僅かに身構える。
「もっと、可愛く鳴けますよね?」
再び悪戯に微笑み、そう言った俺は、そのまま彼女の唇へと自らのそれを近づけて、彼女の唇の端を舐める。
「ひゃっ!」
驚いたような声を上げた彼女は、けど俺の意図する所が理解出来たのか、途端に頬を赤く染めた。
そうしていつもの困ったような顔を見せる。
例えば誰かがあなたを困らせるのなんて許せない。
けど、俺はあなたの困った顔が好きで。
それを見たくていじめたくなる。
だから彼女を押し倒した。
畳の上へと。
「えっ、あっ…あの、沖田さん」
驚いている彼女に構うことなく、その首筋へと口付ける。
襟元を肌蹴させて、そこから手を差し入れながら、
「ねぇ、はなさん、可愛いく鳴けますよね?」
そう問いかけながら胸に触れる。
「っあーっ」
甘く漏れるその声に、鼓動が高鳴る。
ほら、猫なんかより、ずっとあなたの方が可愛く鳴けるじゃないですか。
だからもっと聞かせて下さい。
「ねぇ、もっと大きな声で鳴けますよね?」
耳元に囁き、甘く噛みながら、右手を着物の合わせから忍ばせて、太腿を撫でる。
「あぁんっ、沖田さんっ!」
一層甘く聞こえる鳴き声に、思わず微笑んでしまう。
切なげに歪むその表情も。
俺の指に応えるように上がる体温も。
甘く鳴くその声も。
その全てが愛おしい。
「はなさんの方が…可愛く鳴けたじゃないですか?だから、もっと聞かせて下さい」
そう、俺だけに。
俺だけの為に鳴いて下さい。
可愛くて愛おしくて堪らない。
いじめたくなる位に。
みんなが猫に夢中になっているのより、もっとずっと。
俺はあなたに夢中なのかも知れない。
俺の愛撫に応えて、可愛く鳴く愛おしい人とその熱を重ねながら、そんな事を考えていた。
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猫よりももっとずっと
閲覧頂きありがとうございます。
また別なお話でお目にかかれましたら幸いです。