少年達が紡ぐ物語のようです その3

無銘

どうも皆さん長谷壱です。
すみません。今回は少し投下が遅れてしまいました。
夏は急激に温度が変わったりするので、皆さんも夏バテにだけはお気をつけください。

今回は物語のキーポジションのキャラが出てきます。
そろそろ展開が変わってくるのでお楽しみいただければ幸いです。

夢か現か

ここはどこだ。自分は何をしている。

辺りを見渡しても誰もいない。ただ暗闇と静寂だけの場所。

ふと、胸に激しい痛みが走った。身を裂くような、心を焦がすような。

そこで気がついた。自分の体は燃えているのだ。

暗く熱い炎。全てを溶かすような黒い闇。

気付けばもう痛みはなかった。暖かいとすら感じた。

だが、暗い闇の中にいても、自然と不安はなかった。

そう、自分がどんなに闇に堕ちようと、手を差しのべてくれる光を知っているから。

だから自分は、どんなに暗い絶望の世界でも、あの光を、あの日見た輝かしい記憶を胸に抱いて―――――



「…ン、ブーン」

「むにゃむにゃ……お前に食わせるタンメンはねえ……むにゃ」

「いい加減起きなさい!!ブーン!!」

「ぅわぁぁぁあ!!!!」

「やっと起きたわね…ここは家じゃなくて学校よ。」

呆れたような表情で目の前にいる金髪の女の子がふぅ、と息をつく。

「全く、アンタ一体どんな夢を見てたのよ…」

「まぁまぁ、そんなことよりおはようだお」

僕は起こしてくれた女の子――――――――津出ツンにお礼を告げる。
彼女もドクオやショボン達と同じ小学校からの付き合いである。

「……あれ?今何時だお?」

「無視かこのピザ野郎。今はとっくに昼休みよ」

言われて教室の時計に目を向けてみると、既に1時半を回っていた。
しかし、1つだけ気がかりな事があるので聞いてみた。

「あの垂れ眉クソ野郎は?」

「友達に対して言う言葉じゃ無いと思うけどね…」

そう、本来ならショボンが起こしてくれる手筈だったのだが、教室のどこを見てもあの男がいないのである。
不思議に思っていると

「まぁ、当のお友達さんはあんたの寝顔指差して笑いながらドクオと学食に行ったんだけどね。」

ツンから奴の所業を聞き、状況整理をする。
つまりショボンが自分の事を陥れて嘲笑っていたと。なるほどなるほど…

状況整理を終えてツンの方に向き直り、もう1つ大切な質問をする。

「把握したお。ところで野球部の部室ってどこにあるかわかるかお?」

「アンタが何を目的でそこに行くのか一瞬で理解したから、物騒なことは考えず早く学食に行きなさいな」

ツンに呆れた調子で言われてしまった。まあ確かにツンの予想通りなんだろうが。

「まあショボンの頭蓋の件はまた今度にして、ツンも学食一緒に行くお?」

仕方ないから取り合えず学食に移動しようか。そう考えてツンも誘ってみる。
ツンは少し悩んだ素振りをした後、別に予定もないし、と言うことで付いてきてくれた。

今では話す機会も減ってしまったが、昔はドクオ達と同じくらいツンとも遊んでいたのだ。

昔からツンツンした態度で僕に接していたが、時には笑顔を見せてくれたり一緒に馬鹿騒ぎをしていたり、最近は付き合いが減ったが今でも自分達の大切な仲間なのである。


そう、僕にとっては。

ふと、チャリンと音を立てて僕のブレザーから何かが床に落ちる。
僕の足元に落ちたそれを拾い上げて、ツンが謎めいたような、不思議そうな顔で見つめてくる。

「あんたにしてはお洒落なもの持ってるじゃない。誰か一緒につける相手でもいるの?」

そう笑って告げた後、僕に落としたものを渡してくる。

それを見て、ほんの一瞬だけ、心にズキリと痛みが走った。
彼女が僕に見せてきたものは、常日頃僕が肌見放さず持ち歩いてるものだった。

「エメラルドのピアスなんて、随分とキザじゃない?」

と、茶化すように笑っているツンからピアスを受け取り、胸ポケットにそっとしまう。

胸に刺した影を隠して、僕は笑ってツンに問いかける。

「ねえ、ツン。君はこのピアスに見覚えは無いかお?」

そう、これは大切なものなのだ。

僕と彼女が、あの日あの丘で、夕日を見ながら話したあの日。今でも胸に残る大切な記憶。

でも。

「……もしかして、それも覚えてなきゃおかしいことなの?」

ツンが不安そうな表情でこちらを伺ってくる。


そう、無いんだ。


「…いや、何でもないお!実はこれは僕の家に代々伝わる家宝でありまして……」

僕は彼女を不安にさせないように慌てて誤魔化す。

「…ぷぷ、突然何を語り出すのよアンタは……あはは!」

堪えきれなくなったのかツンが目に涙を浮かべながら笑う。


そう、僕にとって大切な思い出。あの日2人で話したこと、沈む夕日と、夜空に輝く星々を眺めながら2人で語り合ったあの日の事を。

この金髪の少女と想いを伝えあったあの日の事を



彼女は覚えていないのだ。何もかも。





6時間目の授業を終えて帰りの支度を整える。
と言っても、教科書などは全て学校に置いていくので実質只の軽い鞄だけなのだが。

ドクオが部活に行くという事なので、自分は今日1人で帰宅している。
背中に夕日の光を浴びながら家への帰路を物思いに耽りながら歩く。


小学校6年生の頃、僕とツンとドクオは3人でよく一緒に帰っていた。
二学期からは引っ越してきて家が近くなったショボンも含めて4人で笑いながら、この道を歩いて帰っていたのだ。

そしてあの日。たまたま僕とツンの2人で帰ることになったあの日。

僕らは公園で話し合った。

今の大人達の事、自分達が今よりも大人になった世界の事、お互いの夢の事。

黄金の光に照らされながら、僕たちは夢中で話していた。

気づいたら辺りは星空がキラキラと光出していた。
その美しい夜空の星達を、僕らは夢中で見入っていた。

そして、夢中だったからこそ気付けなかったんだ。

後ろから来ていた1人の大人に。





気づいたら僕は暗い夜の公園に倒れていて、辺りには騒ぎを聞き付けた近隣の人達が心配して駆けつけてきてくれていた。

そこで警察の人に聞かされたのだ。

ツンが誘拐されたことを。


聞いたときは頭の中が真っ白になった。さっきまで仲良く話していた女の子が誘拐されただなんて信じられなかった。

もう夜で暗いこともあって僕は家に返されたけど、寝床にいながら僕はずっとツンの事を考えていた。
自分がもう少し注意していれば、自分のせいでツンはこんな目にあってしまったんだと、そんなことばかり考えていた。

見つからないまま3日がたったある日。家に警察から電話が来たのだ。

最初は電話に出るのが怖かったが、親が話を聞くと急いでツンの家へと向かった。
そう、ツンが見つかったのだ。

ツンは無事なのか、何処にいたのか、何をされたのか、色々なことを考えながらツンの家に着いて、警察から事情を聞いた。

そして、またも信じられないことを警察の人から伝えられた。


犯人が今だ誰かわからないこと。ツンに目立った外傷は無いこと。


そして、あの日のツンの記憶が全て無くなっていることを。


警察の人が言うには、誘拐された先で犯人から何らかの危害を受け、そのショックからその日の記憶そのものを失ってしまったのではないか、ということだった。

言葉では納得できたが、頭では理解できなかった。

あの日、ツンが僕に見せてくれた笑顔。僕に伝えてくれた想い。そして、ツンに渡した宝物のピアスの事。

その全ての出来事が無かったことになってしまったことに、頭が追い付かなかった。

ツンは最初、僕の事さえ忘れてしまっていたが、何度ものリハビリにより僕の事を思い出すまでには至ったが、結局最後まで、あの日の出来事を思い出すことはなかった。


軽度とは言え、ツンの記憶を失わせてしまったことに責任を感じていた僕は、その日から無意識の内にツンから距離を取るようになっていったのだ。

もう2度と、彼女を傷つけないように。





遠い昔の事を考えながら、帰宅途中の僕は近くにあった自動販売機に近づく。

今日は暑い。こんな暑い日には冷たいコーラが飲みたくなる、という至極単純な思考だ。
小銭を入れ、コーラを購入すると近くの公園に寄った。
既に辺りは薄暗くなっていて、自分がどれだけゆっくりしていたのかを改めて実感した。

小気味よいプルタブの開く音を聞き、コーラを乾いた喉に流し込む。

「……昔の事なんて、もう忘れるべきなんだお…」

そう自分に言い聞かせるようにして、飲み干したコーラの缶をゴミ箱に投げ入れる。

「やっぱり、夏は嫌いだお。嫌なことばかり、思い出す。」

誰に言うでもなくそう呟いて、公園を出る。

何かに引き寄せられるかのように公園の方を1度振り向いたが、戻ることはなくそのまま家へと帰っていった。

少年達が紡ぐ物語のようです その3

読んでいただきありがとうございます。長谷壱です。
今回はブーンと新しく出てきた少女、ツンの過去のちょっとしたお話でした。

次回から本格的に物語が進み始めるので、少年少女達の葛藤や戦いを読んでいただければ、と思います。
それではまた次の投下で会いましょう。

少年達が紡ぐ物語のようです その3

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更新日
登録日
2014-08-08

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