遺灰
ある男が死んだ。知人に頼まれて借金の保証人になった途端にその知人は姿を消し、多額の借金を背負わされ、茫然として街を歩いているところを車に跳ねられ呆気なく男は死んだ。
何日か後、身内だけの質素な葬儀が執り行われた。その葬儀が終わりかけた時、男の妻が口を開いた。
「私はこの人と同じお墓に入りたくありません。この人のお骨は、お義兄さんのお家のお墓に納骨して下さい。」
男の兄が言った。
「うちのお墓にはもう納骨するスペースはありません。そちらで新しくお墓を買って夫婦一緒に納骨すれば…?」
「この人は真面目でお人好しだけが取り柄で、そのおかげでうちの家庭はずいぶん苦しい思いをしてきました。私は、もうウンザリなんです。死んでまでこの人と一緒にいるのはゴメンです。私が死んだらお骨は私の実家のお墓に入れてもらう事になっています。子供たちにもそう伝えてあります。だから、お墓は買いません。そんなお金もありません。」
男は常々、自分が死んだらお骨は海が見えるような景色のいい墓地に納骨してもらいたい、死後はずっと海を見て過ごしたい、そう思っていたが結局は遺灰はビニール袋に入れられ、ゴミの日に家庭ゴミと一緒に出されてしまった。
そして、焼却炉でまた焼かれ、その他の焼却灰と一緒にリサイクルされる事になった。焼却灰は粘土などと混ぜられまた焼かれ、レンガとして生まれ変わったのである。このレンガはやがて、道路の舗装に使われる事になった。とある女子高の前の道路の…。
「ありがとう、神様!!」
遺灰
男ってバカよね~。