私を見ない瞳

私を見ない瞳

これは、中2が書いてみたいと言う興味本位の作品ですので、ご期待に応えられない事がありますがご了承ください。

私を見ない瞳

窓から聞こえる春の風。
桜の蕾が花になる頃、街はすっかり卒業シーズンを迎えていた。
ピシッとした制服に身を包み朝一に登校した私は、いつもより少し寒い春の風を感じながら学校の渡り廊下を走って科学室に向かった。
静かに扉を開くと、そこにはとても優しそうな瞳をした男性がいる。

「おはようございます。」

「おはよう。今日は一番乗りなんですね。」

「はい」

そんな当たり前の会話をしながら私は、本題に入った。

「酒田先生は、もうこの学校に来ないんですか?」

「えぇ、アメリカに行くんです。」

酒田先生は、今年の卒業式。いや、今日が終わったらアメリカに行ってしまう。
アメリカの学校で科学を教えるらしい。
酒田先生の白衣姿も、酒田先生がいる科学室の景色も今日が終わり。
その前に、私が酒田先生と一緒にいる理由を無くせば酒田先生とお別れ。

〔そろそろ本題に入っちゃうのかな…?〕

嫌だ。私は、そう思ってる。思ってるけど、酒田先生だって忙しくない訳がない。
切り出したのは先生。

「ところで、あの歌どうでしたか?」

「実は、まだ聞いていなくて…」

嘘。酒田先生といたいだけ。お願い少しだけ…
そう思ったの。
そしたら、酒田先生は「そうですか。」と言って私を放送室に連れて行った。
そして、ディスクを入れた。

「勝手に使っていいんですか?」

「いいですよ。貴女に聞かせるために貸したんですから。」

再生するとゆったりしたイントロが流れ出す。
1度は聞いたメロディー、優しい音。先生の声みたい…
この歌を聞かされた私は、心底嬉しかった。

最後の音が響き曲が終わる。「素敵な曲ですね。」「えぇ。」
それでも、先生といたい私はいつもと同じことを言う。先生の優しさに漬け込んだ嘘。

「酒田先生。問題がわからないんです。」

「またですか。」と言って微笑む。そんな優しさが嬉しいけど、苦しい。
素直になれない、もし私が本当のことを言えば…。そんなことは無いのに先生が私から離れていくきがして、不安で仕方なかった。


◇勉強は、10分で終わった。卒業式まであと15分前後。
先生といる理由を無くした私は、科学室の先生の机を見ていた。
すると、1枚の写真を見つけた。女の人の写真。

「あっ‼」

私が写真を見てることに気付いた先生は、慌ててそれを取り上げた。
そして、今まで私が見たことの無いほどやさしい目をして写真を見た。

「奥さんですか綺麗な人ですね。」

「えぇ、僕にはもったいないくらいの人です。」

〔そんな優しい瞳でその人を見るんですね。〕その言葉は、意気地の無いわたしには、重すぎていえなかった。

「どんな人なんですか」

「そうですね…、優しくて、素直で、自分より他人で、さっぱりしてるそんな人です。」

私とは、真逆。素直じゃないし、自分大事で、ねちっこくて、いつだって傷つくのを恐れてたけど卒業しなくちゃね。
貴方の瞳には、私は生徒。私をあのやさしい瞳では見てくれない。
勝算は0。でも、何もしないで泣きたくない!

「私、奥さんが先生を好きになった理由わかります。」

「えっ」

「好きです、先生…」

沈黙があたりを包む。先生の顔見れない。時計の秒針が嫌に大きく鳴り響く。
数秒か数分か時が経過したときだった。

「ごめん。」

胸の奥を針で貫かれたように痛い。衝撃が走る。息が出来ない。
わかっていた。知っていたの!こうなるなんて分かっていたの!!
でも、それでも、思考が止まる。それ以上の否定を許さない。
喋りかけた先生に叫んでしまった。

「それ以上何も言わないで!」
「わかってた、わかってるから、知っていたよ!でも、あんな歌を聞かせて!忙しいのに笑って勉強を教えて…、ズルイ、ズルイよ!」

「落ち着いて」

先生が私に近づいてくる。

「触らないで!嫌、先生嫌。行かないで、アメリカになんて行かないで…!」

涙が止まってから先生の顔をみたらすごく困った顔をしていた。

〔私、また先生を困らせてる〕

「あはは、私だめだね。先生には、大切な人が居るのにね。」

私は、涙の跡を擦った。そして深呼吸をした。

「先生好きでした。」

そしたら先生は、困るでもなく静かに笑った。
その瞳は、生徒としてではなく、一人の女としてわたしをみてくれた。
だけど、私が望んだ優しい瞳は今でもあの人を映しているのですね…。


………貴方の瞳がすきでした。
     貴方の想いがすきでした。
      昨日見た貴方より明日は輝いているのですね♪……
                
                                             ~End~

私を見ない瞳

楽しんでいただけたでしょうか。
アドバイスなどをくれると、とてもうれしいです。
では、新作を出した時に会いましょう。

私を見ない瞳

短い恋愛小説です。 恋をするのは自由でも、恋愛するのは個人の自由じゃないですもんね。 甘くて、すっぱい恋ばかりじゃないんです。 ぜひ、苦くて切ない恋を読んでみてください!

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-08-06

CC BY-ND
原著作者の表示・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-ND