SS25 疑いを晴らせ
会社の機密書類が消えた。友人に掛かった嫌疑を晴らす為、僕は戦う。
会社の機密書類が消えたという噂が広まっていた。
課長の右手がひらひらと舞っているのは呼び出しの合図。席を立って参上した僕は、そのまま空いている会議室へと連れ込まれた。
要件は想像がつく。
課長の一番のお気に入りである僕が、原の数少ない友人だと知っているからだ。
事情を聞けば、彼が疑われているのは、昨夜残業で最後まで残っていたからだという。
誰の目も気にせずに書類を持ち出せたのは、彼しかいないということらしかった。
課長はまず、普段の彼をよく知る僕に、その印象を尋ねてきた。
「絶対原じゃありませんよ、そもそもこんな大それた犯罪を犯す理由がありません」
彼は石橋を叩いて渡るような慎重派、およそ背任行為に関わるとは思えなかった。
すると課長の切れ長の瞳がキラリと光った。
「いや、噂じゃ大分借金で苦しんでるらしいぞ。換金目的かもしれん」
「そうなんですか?」
「ギャンブルに嵌った挙句、何とかいうキャバ嬢にしこたま貢いでるって話しだ」
「あいつがそんなことを? 信じられないな」
「しかも奥さんと協議離婚の真っ最中で、慰謝料の額で揉めてるというし」
「……それが理由だと?」
僕はしばらく立ち尽くして考えに耽った。
「それでも絶対に彼じゃないと思います」
「どうして君にそんなことが言い切れるんだ?」
「だって……」
犯人は僕だから。
SS25 疑いを晴らせ