140字のお話集
二つのキーワードを140字で書きます。
Twitterに載せたものもあります。
深く考えず、雰囲気を楽しんでもらえたらいいかなと。
――― 「お題のキーワード①」「キーワード②」
本文140字
という構成で書いていきます↓
――― 「弁当」 「病」
彼は彼女お手製の弁当を食べている。あっという間に食べ終わった彼が顔を上げる。
口の端にご飯粒を付けたまま、おいしかったと笑顔で告げる。
「これで今日も生きてられる!お前の弁当がないと死んじまうからさ!」
そう言う彼は、好きな人の手料理しか食べられないという変わった病にかかっていた。
――― 「そんな」 「林檎」
白雪姫は老婆から林檎を貰った。
一つ、芯をうまく避けながら平らげる。林檎はとても甘く美味しかった。
「そんなに美味しいのかい?」
思わず老婆もかごの中の林檎へ手を伸ばす。
それが渡し間違えた毒入り林檎であることに気付かないまま、一つ、一かじり。
間抜けな老婆は二度と目を覚まさなかった。
――― 「退屈」 「赤」
退屈しのぎで始めた正義のヒーローごっこ。
赤い水たまりを作っては踏み越え、また新たな水たまりを作った。
繰り返すうちに、どっちが悪で正義かわからなくなった。
「もういいよな」
いつもより重量感を感じるそれをこめかみに押し当てる。
引き金を引いた数秒後、自分で作った赤い水たまりの中に沈んだ。
――― 「恥ずかしい」 「本」
本棚の一番高い所、手が届きそうで届かない。
背伸びして手を伸ばしていると、誰かの手が私の目的の本を簡単に取り出した。
その人はこの本屋の店員だった。
これは恋の予感かと顔を赤らめるが
「こんな本読むんだ」
その一言で全て恥ずかしい気持ちに変わった。
もう二度とこの本屋は使わないと心に決めた。
――― 「月」 「投げる」
海が月を映す。
「月が綺麗ですね」
あの日と同じように他意を含んだ言葉を呟く。
「死んでもいいわ」
そう言って本当に死んでしまったら笑えないよな。
鞄から小さな箱を取り出し、蓋を開ける。中身は左手薬指にある指環とお揃いのもの。
蓋を閉じて、投げる。伝えたかった言葉も想いも全て水の泡になった。
――― 「赤」 「画面」
深夜、PCで動画を見ていたら、突然画面が消えた。停電ではない。
不思議に思いながらもマウスを少し動かすと黒字の背景にERRORの文字が赤く浮かびあがった。
文字はどんどん画面を埋め尽くし、画面は赤一色になる。
PCのコンセントを抜こうとした瞬間、画面から伸びてきた手に引きずり込まれた。
――― 「歌」 「本」
木の下で本を読んでいた。
それは魔法やドラゴンが出てくるようなファンタジーもの。
こんな世界に行けたら楽しいだろうなと思った。
どこからか綺麗な歌声が聞こえてきて、思わず声の主を探しに向かった。
見つけた声の主は鳥だった。
鳥が人の言葉で歌うなんて、私の耳が可笑しくなったのか、それとも…。
――― 「先生」 「太陽」
先生が晴れの日に外を歩いているところをあまり見かけない。体育祭の時もずっと日陰にいた。
日差しが弱い人なのかと思って聞いてみると、そうではないと首を振られた。
「僕は太陽に嫌われているからね」と、
少し寂しそうに笑って言った。
「だから雨の日は好き。分厚い雲が太陽から守ってくれるからね」
――― 「もし」 「男子」
もし、僕が人間の男子だったら、君を守れただろうか。
僕のこの小さな体では君に降りかかる痛みを庇いきれない。
鳴き声しか発せられないこの喉では、暖かい言葉で君を励ますこともできない。
だから、切に願う。
「神様、僕を人間にしてください」
満月の綺麗な夜空に向かって、一匹の黒い猫が一声鳴いた。
――― 「空」 「ネクタイ」
思い返してみると、式典では必ずネクタイをしていた。
入学式、卒業式、入社式、結婚式。
ネクタイはいつも首元を飾っていた。
それと、俺は晴れ男らしく、祝いの日は必ず晴れた。
人生最後の式典はどうだろう。
ネクタイはしていないと思う。天気は晴れが良いな。
訪れたその日、綺麗な青空が広がっていた。
140字のお話集
140字で書くのは、難しいです。けど、面白い。
なんとなくでも、お話が伝わったらいいなと思います。
伝えられるように、がんばります。