輝く夏の物語
暗い。
怖い。
鼻を突くようなにおいがする。今どこに居るのだろう。
さっきまで、河原に居た事は覚えている。そのときに体の両側をつかまれた...そこで記憶は終わっていた。足がすくむ。その感覚さえも曖昧だった。
そのとき、天井が音を立ててはがれた。もう足が地に着いている感覚さえなかった。
頭の中を過去の記憶が嵐のように過ぎ去っていく。今生の終わりに走馬灯が見えるのは本当らしい。
無数の結晶が頭上から降ってきた。僕は現実を受け入れられなかった。
あのとき、河原には僕の仲間がたくさん居た。しかしそのときには既に僕の体はもう動かなかった。
なんで僕だけが…
僕の体の両側はまたつかまれた。気づけば、僕の体は投げ出されていた。
たどり着いた先は、真っ白な部屋だった。
目の前に居た者は、同類と思えないほどの美しさだった。もはや、透明と言い表す方がふさわしいかもしれない。
届かないなんて分かっていた。でもそのとき、僕は彼女を守ると誓った。
すると、迷ってるとも、落ち着いてるともどちらともつかない表情-さっきと変わらない表情でこちらを見ていた。もしかしたら、こちらを見ていなかったのかもしれない。それほど彼女は僕に取って眩しく、透明だった。
瞬間、彼女の体は尖った金属柱に突かれて、砕け散った。僕の目の前で消えてしまった。その体の一部は泡立つ液体の中に入れられ少しずつ融けていった。そしてまた別の一部は回転する刃で粉々に引き裂かれた。
僕は無力だった。つけもの石にできる事なんて何もなかったんだ。
登場人物紹介
つけもの石(河原の石)
塩(無数の結晶)
冷凍庫(真っ白な部屋)
氷(彼女)
アイスピック(尖った金属柱)
ジュース(泡立つ液体)
かき氷機(回転する刃)
輝く夏の物語