SS24 NOマンの正体
決して首を縦に振らない彼相手に飲む酒はうまい。
「おいっ、俺の酒が呑めねぇってぇのか?」
彼は無言のままゆっくりと首を振った。
「よーしよし、そうこなきゃな。ま、ぐっといけや。
所で今日の部長の言い種をどう思うよ? 俺をゴミ呼ばわりしやがってよ。ノルマに届かないっつってもたったの一件じゃねぇかよなぁ?
あれ? まさかお前までそんな風に思ってるんじゃないだろうな……」
とんでもない。
「くー、泣けるねぇ。そう言ってくれるのはお前だけだよ」
思わず抱き付くと、ガガガっと激しい音が鳴った。
「何だよ、俺に触られるのはイヤか?」
いえいえ。
「ちっ、涼しい顔しやがってよ」
二本目のビールもカラになり、「さて、そろそろ引き上げるか」と腰を上げると、彼はイヤイヤをするように引き留めた。
まだ、いいじゃないですか。そう言いたげに首を振るのだ。
「じゃ、もう一本だけだぞ」
***
一体いつまでやってるのかしら?
深夜、扇風機相手にくだを巻く夫の姿を、妻の悲しそうな瞳が見詰めていた。
……合掌。
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