青く、碧く、蒼く
2つの吐息
ハルとキスをした。
水中、誰にもバレずにキスをした。
キスは、俺からした。 ゆっくりと、唇を交わした。
ハルは目を見開いて、少し息苦しそうに俺を見た。
―その青い瞳が、他のどれだけ大切な宝物よりも綺麗で。
「…何やってんだろ、俺……。」
俺は、フゥ…と溜息をつく。
昨日のことが忘れられずに、脳裏で何かのもやもやが駆け巡る。
「真琴…?」
「あっ、ハル……。」
「どうした?ぼーっとして…熱でもあるのか…?」
ハルは、昨日のこと、覚えてなかったのかな。
何事もないように俺に話しかけてくる。
なんとも思ってなかったとか?……そうなのかな。
奥深くで
「そう言えばまこちゃん、朝から何か元気ないみたいだけど、だいじょーぶ?」
昼休み、ぼーっとしてたら渚に肩をたたかれた。
そうだ。キスの一つや二つ、気にすることなんてないじゃないか。
現にハルは無表情で(いつものことだけど)弁当の鯖を食べてるし。
「あぁ、大丈夫だよ渚!もうすぐテストだからかなぁ…?なんてw」
「なぁんだぁ!じゃあ大丈夫そうだねっ♪」
…でも、俺はハルが好きだ。
じゃあ、ハルは…?
ハルの気持ちも分からないまま、ただ重なった唇。
俺、どうしたらいいのかな。
わけのわからないもやもやが頭の中に残ったまま、時間だけが流れた。
ハルの青くて綺麗な瞳は、そんな俺の心をも見透かすかのように輝く。
「真琴…」
その声は、届かないほどにか細い。
ハルの想い
「真琴、この前のことだけど…」
「えっ?」
部活が終わって、2人だけの帰り道。浜辺の波の音が心地よく耳をくすぐる。
「真琴、この前俺にキスしたよな。」
「へっ!!?」
ハルの一言があまりにも突然のことだったから、俺はびくっと肩を震わせた。
「あ…え、うん、そう…だけど?」
さりげなくこたえようとするも、声が裏返って変になる。
「真琴にこんなこと言うのはおかしいかもしれないが…」
「ん?何?」
「俺、真琴にキスされた瞬間、凄く…嬉しかった。」
「……!?////」
一瞬、この時何が起きたのかは全く分からなかった。
「ごめん、先…帰る。」
「あっ、ハル…!」
通じ合えると思った。
「ハル……。」
目を閉じれば、あの時の光景が脳裏に浮かぶ。
網膜に焼きついた景色は、俺の前から離れてくれない。
「嬉しかった…。」
ハルのその言葉が、なんども聴こえてくるような気がした。
嫌われた。変に思われた。
……そんなことなかった。
ハルの口から出てきたその言葉、俺は素直に受け取ってもいいのだろうか。
ピロリン、ピロリン♪
「電話…?」
俺は携帯をとって着信に出た。
「もしもし、俺だけど」
「真琴か。俺だ。」
「は…ハル?どうしたの?」
「明日、少しだけ2人だけで話せる時間が欲しい。」
俺はそれに答えることはできたが、震えて後の声すら出て来なかった。
壊れそう
次の日、俺たちはまた部活が終わって2人きりになった。
部室で。
江ちゃんには鍵を閉めると言っておいたので、渚達と帰った。
「真琴…」
「うん…」
「昨日のことだけど…。」
小さな声で話すハルが可愛かった。
「俺、多分真琴のこと…す、好きなのかもしれない。」
「えっ…」
「キスされた時、ホントは男同士なのになぜか嬉しかったし…こんなこと
許されるはずがないのに…でも、俺はきっと真琴のことが好きなんだ。」
迷いのない青い目が俺を見つめる。
俺はハルが好きだ。
ハルも、俺のことが好き。
……と、言うことは…?
俺には先のことが見えすぎてしまって、どうも心が壊れそうだ。
重なる全てを預けて。
「好きだ。」
「俺も…好き。」
もう1度、あの時の景色を見せてあげてもいいのか。
「ハル…キス、してもいい?」
「真琴…」
目を閉じたハルの顔は、俺が手を差し伸べて、そっと触れてしまえば
音も立てずに消えそうなほど美しい。
わずかに濡れた髪とか、ほんのり赤く染まった頬とか、すぐ近くで感じる吐息とか。
このキス1つで全てを支配するような感覚が伝わる。
―――……
どれほどの長いキスだったか。
鼓動は熱く鳴り響き、ハルの鼓動までも感じ取った。
それから俺たちはもう1度甘いキスをして、
溺れたようにお互いを感じ合った。
青く、碧く、蒼く
最後まで読んでくださってありがとうございました!!
初めてのFree!、いかがでしたか?
個人的に作者は真凛や、渚怜が好きです。
Free!でもちょくちょく投稿させていただきたいと思っています。