その執事、火照。

黒執事の二次創作です。お嬢様となってお楽しみください。2010年のハロウィンに書いたお話。

『かぼちゃのおばけの

ジャック・オー・ランタン

みんなは君を怖がるけれど

僕はずっとずっと君の友達さ

一年に一度だけど

永遠を生きる君だけど

僕のとなりは君のモノだから

さみしくないよ

さぁ手をつなごう

君はかぼちゃのおばけの

ジャック・オー・ランタン』




「…はぁ。また貴方達は」

「「「ごめんなさーい!!」」」

今日も相も変わらず騒がしいのは我が屋敷。

使えない使用人が仕事を増やすのは当たり前。

ですが。

今日は少しばかり様子が違うようです。

「それにしても~メイリンさんは何の仮装をするんですか?」

「そ、それは!…夜まで、内緒ですだ。」

「ハイハイ、無駄話はそこまで。

貴方達が仮装大会をやると決めたのでしょう?

ならば速やかに自分の持ち場に戻り、準備をしてください。」

「まぁ、それはそうだけどよ。そんなに仮装大会の話をしたがらねぇってことは自信がねぇってことじゃねぇのか、セバスチャンよぉ。」

「…バルド。」

「ハイハイ、っと。じゃあキッチンに戻るかな。」

「くれぐれも、火炎放射器で調理はしないでくださいね。」

「わかってるよ!」

本当にわかってるんだか

そう呟いたのにバルドは気が付かない。

このオレンジと黒で彩られた玄関ホール。

ハロウィン。

少し妖しげな雰囲気漂うこの1年に1度のイベントは我が国ではあまり盛り上がるものとは言えない。

我が屋敷も例外ではない

…はずだった。

お嬢様と使用人達が盛り上がるまでは。

おかげで私は今準備に終われているのです。

客人を呼ぼうと言われた時には

変な貴族の方や赤い死神が呼ばれてもないのに現れそうだったのでさすがに止めましたが。

そして、どうやら今夜は仮装大会をするようです。

「うわぁー!すごい、ハロウィン一色だー!!」

「…お嬢様。お嬢様たるもの、そろそろレディの嗜みというものを」

「ねぇ、セバスチャンは今夜どんな仮装するの?」

「…別にこれといって決まったものはございませんが」

「えー!!そんなのもったいないよ!せっかくのお祭りなんだし、ね?」

「と言われましても…」

「じゃあ、今夜楽しみにしてるねー!」

「…御意。」

そう応えてもすでにお嬢様は扉の向こう側。

また面倒ごとが増えてしまった。




「はい!それではこれからおまちかね!仮装大会を始めたいと思いまーす!

司会は僕、フィニがさせて頂きますっ!」

ワーと盛り上がる会場。

…5人だけですが。

「はい、今宵の仮装大会はファッションショー形式で登場してもらいます!

ちなみに僕の格好はゲームの勇者をイメージしてみました。

この剣とかかっこいいでしょ?」

ヒラヒラと歩き、ターンをしたりしてみるフィニ。

なかなかの出来、ですね。

「はい、続きましてはバルドさんの登場です!」

その掛け声でバッとカーテンが開くと、バルドは「ガオー」と叫ぶ。

「おぉ!狼男なんですね!」

「おう!オレにピッタリだろ!?」

ガハハハ!とマンガの様な笑い声をあげるバルド。

ちゃんと尻尾まで付けてそれなりにリアリティーが出ている。

「いやぁ、すごかったですね!まぁ、バルドさんそのまま、という気もしますが。

さて続いては、使用人仲間の紅一点、メイリンさんでーす!」

開いたカーテンの向こう側にはモジモジとしたメイリンがいた。

「ど、どうですだかっ!?お嬢様に似合うと言われたんですが…」

そこにいたメイリンは、真っ黒な服にステッキ、とんがり帽子というスタイルだった。

「メイリン、名前はー?」

「お、お嬢様、アレを言うですだか!?

…ま、魔女っ子メイリンですだ☆」

「どこかで似たようなものを聞いたことあるような…」

「版権とか大丈夫なのか、これ?」

「まぁ、可愛らしかったのでいいでしょう!それでは次はセバスチャンさ…」

「フフフッ…」

「え?セバスチャンさん!?」

「どうしたセバスチャン!何か悪いもんでも喰ったか?」

「バルドさんの料理を食べたに違いないですだ。」

「おい、メイリン!」

「落ち着きなさい、貴方達!私は悪い物も、ましてやバルドの料理なんて食べてませんよ…。

ついにこの時がやってきました!

お嬢様の執事たるもの、完璧な仮装ができないでどうします!」

「「「「おぉー!」」」」

「かなりの自信ということで、セバスチャンさんカーテンの向こうで準備を!」

フフフ、やるとなったからには完璧な仮装をお見せしますよ。

短時間で考えたとは思えないクオリティ…。

必ずお嬢様を満足させて差し上げます!!

「はい、準備が整ったようなので、登場してください、どうぞー!」

ゆっくりとカーテンが開いていく。

その隙間からお嬢様とメイリンが

「吸血鬼とかだったらどうしよー!!かっこよすぎて倒れちゃいそう!」

「わ、私も考えるだけで鼻血が出そうですだ…」

と話しているのが伺える。

「ふ…

それだけじゃ、済ませませんよっ!!」

瞳を閉じて歓声を待つ。

1秒、2秒、3秒、4秒、5秒…

…ん?

反応が…ない?

いや、もう少し待ってみましょう。

6秒、7秒、8秒、9秒、10秒…。

流れる静寂。

そん中聞こえてきたお嬢様の声。

「…プッ」

プッ?

「プッ!アハハハハハッ!!ダメ、もう耐えられない!!何これ!?えーっ!?

え、何これ、セバスチャン、冗談だよね?

ジャック・オー・ランタン被ってるなんて!!」

「ギャハハハハ!セバスチャンよぉ…それはないぜ?」

笑い声が響く。

この視界の悪いかぼちゃの中からでも、4人が笑い転げているのがわかる。

こ、この私が…失敗?

あくまで執事の私が!

失敗!!

「お嬢様、しばらく暇をください。」

「わー!セバスチャンさんが落ち込んでるー!」

間違いないと思ったのに。

アンダーテイカーさんが間違いないと仰ってたのに。

(「小生は“極上のものを”と言われたから教えたまでだよ?ヒッヒッヒ…」)

「あ、セバスチャンさんが隅っこで体育座りしてるですだ。」

「なかなか観れねーもんだな!」

後で覚悟しておいてくださいね、今はただ前が滲んで見えるだけです。

「それよりも、お嬢様は仮装しないんですか?」

「えっ、私?いや、何も用意してないけど。」

「お嬢様もせっかくだからした方がいいと思いますよ!」

「そうですだよ!…あ、私の仮装セットにもう一つあったんでお貸ししますだ。」

「え、ちょっと…!」

「はーい!それでは、特別にお嬢様にも登場して頂きましょう、どうぞー!」

遠くで、カーテンの上がる音がする。

またしても無音。

しかし、さっきの私の時とは違うような空気。

「変じゃないかな…?」

「そんなことないですよ!!」

「あぁ、とんでもない!!」

「可愛いですだ!」

「ほら、セバスチャンにも見せてあげた方がいいですよ!」

ゆっくりと私に近付く足音。

カボチャは頭からはずしているが、体育座りの為何も見えない。

近づいた気配がそっと私を覗き込み、優しい声で私を呼ぶ。

顔をゆっくりとあげるとそこには

お嬢様のドアップ。

しかも。

頭には黒い耳が生えていた。

「…!!」

思い切り後退る。しかもよく見れば、お嬢様の後ろでは揺らめく長い尻尾。

「魔女といえば、黒猫がセット、お嬢様にピッタリですだ。」

「セバスチャン?どうしたの?顔が…」

「顔が赤くなんてないです!気のせいです!」

手当たり次第、あったものを被る。

「お、またカボチャかぶってるぞ!よっぽど好きだな、カボチャ。」

笑い声が響く。

今夜はまともにお嬢様の顔を見れそうにありません。



仮装大会は終わりを告げた。

片付けを始める使用人3人に隠れてそっと

柱の陰でお嬢様の手を握った。

「ん?」

と首を傾げるお嬢様であったが、

今日はその理由をちゃんと伝えられそうにない。

その執事、火照。

※ブログの内容を一部除きそのまま載せてます。

さてさて、毎回恒例のあとがきです~!

あ、引き続き風邪の為変なこと書くかもしれませんので、すみませんm(__)m

今回の火照はですね、ただ単に

セバスチャンにジャック・オー・ランタンをかぶせたい!!

という想いから書いたものです、はい(笑)

すごくシュールだと思いませんか?鹿の時も思いましたけど(笑)

じゃあ、他のキャラは何がいいかな?って考えた時に、

メイリンの魔女がすぐうかんだので(お話に書いた版権の意味でも(笑))

それで調べてたら、魔女と黒猫はセットだと。

某魔女の宅急便でもそうですもんねー(*^_^*)

そうしたら、これしかない!と思ったんですよ

その執事、火照。

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更新日
登録日
2011-12-30

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