SS23 おねだりの光景
スーパーで駄々をこねるのは止めましょう。
二人がいるスーパーのお菓子売り場は、多くの家族連れでごった返していた。
「ねぇ、これ買っていい?」
腰を屈めたまま、健次が顔を上げた。
「ダメ」
「じゃあ、これは?」
「ダーメ」
棚から取り出した商品を掲げてみせる度にママからNGが出る。
「何だよ、もう! どれだったら買っていいんだよ!」
ポテチを手に立ち上がった健次は、ママの腕を思い切り揺すって抗議した。
なのに買い物カゴを反対側に持ち替えながら完全無視を貫いて、ママは来客用のクッキーを吟味中。
「欲しいものがあるんなら、自分で稼いで買いなさい」最後はいつものキメ台詞が飛んできた。
「僕に働けって言うの?」
「当たり前でしょ」
隙あらばカゴにポテチを入れようとするその手を叩きながら、ママの呆れ顔がこちらを向いた。
「あんた、自分がいくつだと思ってるの? いい大人なのに……。いい加減にしてよ、まったく……」
SS23 おねだりの光景