その執事、誕生。

黒執事の二次創作です。お嬢様となってお楽しみください。ブログ1周年記念に6月6日に書いたお話。

やはり…

こう…雨というものは

どうしても鬱々とした気分になってしまいますね。

そして、こんな時には!!

「うはは、やっぱりねこにゃんの肉球だよなー♪

さすが、お前はこの地区で一番美人なだけあるよにゃあ。

うりゃーねこねこパーンチ!」

「セ、セバスチャン…?」

「…はっ!!

失礼しました、ねこにゃ…いえ、ねこを見つけるとどうも中の方の別の人格が出てきてしまい。

少々、取り乱しました。」

「いや、全然“少々”じゃなかった気が。」

「それより!どうかなされたのですか?

何か御用でしたら私から部屋に伺いましたのに。」

「いや…その、ね」

「?」

言い淀むお嬢様を見つめること、数十秒。

「お…」

「お?」

「お…お花を一緒に観に行きませんかっ!?

つまりはデートしませんかっ!!」

「…へ?」

花?デート?




…二人で?

「お嬢様には、今日やらねばならないことが山積みのはずですよ?

それに、それが終わるまで部屋を出てはならないと申し上げたはずです。

そうすれば、お仕置き、だと…」

「わかってる!だけど!!

…今日じゃなきゃ、ダメなの。明日じゃダメなの。」

強い意志を込めながらも、不安を宿して頬を紅く染めるお嬢様。

…つくづく、私はお嬢様に弱いと感じる。

「…はぁ。わかりましたよ。

特に押し迫った用もないですし、

明日は私の監視付きで徹底的にやってもらいます。

よろしいですね?」

「うんっ!!」

飛び跳ねるように玄関へ向かうお嬢様の後ろ姿を見つめながら、思案する。

今日じゃなきゃ…ですか。

あまりに思い当たらないため、考えすぎていた私は物陰からこちらを見つめる視線に気が付かなかった。

「…ふっ」




「見てみて~セバスチャン!新しいレインブーツ!

傘もね、水玉でお気に入りなんだ!!」

「あまりはしゃがないでください、みっともない。」

どこか遠くへ向かうかと思えば、お嬢様が向かったのは我が庭園。

一応、庭師という存在がいるのはいるが、頼りないため、私がすべての花の世話をしている。

「フィニに任せていれば、一瞬で荒地に変わりますからね、一種の才能だと思いますよ」

「そんなことしませんよ~セバスチャ…ふがっ!!」

「…?今、フィニの声が聞こえたような…」

「き、気のせいよ、気のせい!私聞こえなかったもん!」

「…そうですか。」

腑に落ちないが、まぁいいでしょう。

お嬢様の後を雨でゆるくなった道を歩く。

二人とも、特に何も言葉を交わさない。

ただ聞こえるのは、傘に落ちる雨音。

二人の心許ない足音。

そして、一面に広がるこの花達を優しく叩く雨音。

なぜだかわからない。

でも、私はおそらく人間の言うところの“幸せ”を感じていた。

「…着いたよ」

立ち止まったお嬢様の横をゆっくりとすり抜け、前に進むと

そこには白、青紫の菖蒲が咲いていた。

「これは…?」

このようなたくさんの菖蒲を自分で植えた記憶はなかった。

「へへへ、ここ使ってないみたいだったから、みんなで勝手に植えちゃった。」

「どうして…」

「誕生日おめでとう、セバスチャン」

「え…」

そう言うと、一本ずつ丁寧に菖蒲を手折っていくお嬢様。

わけがわからず、ただお嬢様を見守ることしかできなかった。

抱えきれないほどたくさんの菖蒲を抱えたお嬢様が私の前に来て、照れ臭そうに微笑む。

「セバスチャンって誕生日がないでしょ?

でも、お祝いしたいなぁって。

いつもいつも、こんな私の側にいてくれて。

私、セバスチャンに出会ってからすごく幸せなんだよ?

だからね、この菖蒲が咲いた時に伝えたかったんだ。

生まれてきてくれてありがとうって。」

そう言って、たくさんの菖蒲に負けないほどの笑顔も一緒に差し出す。

一瞬のことだった。

一瞬のうちに、菖蒲とお嬢様の香りが腕の中で香る。

「え…?」

後ろで持っていた傘が落ちる音が聞こえる。

お嬢様の傘で私達は濡れることはない。

菖蒲に付いた水滴で服がじわりと濡れる。

「セ、セバスチャン!!

菖蒲が潰れちゃうよ!

優しくしなきゃ!」

「…そうですね。」

後から聞くと、お嬢様の体を放した私の表情はとても柔らかいものだったという。

「優しく、しないとですね。」

チュ。

「え…?」




「ギャー!!セ、セバスチャンさんがお嬢様にキ、キ、キ…!」

「メイリンさん、お、お、お、落ち着いてください!!」

「なんだよ、お子ちゃまだな~、お前ら。

ほら、邪魔になるから突撃する計画は中止だ。屋敷の中で待ってようぜ」

「そ、そうですだね!!」



「ふふ…お嬢様?」

「…え?」

恐る恐る目を開けたお嬢様はしばらく固まった後、次第に顔が真っ赤に染まっていった。

「優しく、とおっしゃったので、

丁寧に私の唇とお嬢様の頬の間に挟ませていただきました。

まさか、何か期待しましたか?」

「!!

もう、セバスチャンなんて知らないっ!!」

湯気が出そうなくらいの勢いでズンズンと屋敷に戻るお嬢様の背中を見つめる。



そうですよ。

私は

この抱えきれないほどのたくさんの菖蒲と

抱えきれないほどたくさんのあなたへの想いと共に、

この瞬間に生まれた。

その執事、誕生。

※ブログの内容を一部除きそのまま載せてます。

さてさて、あとがきです!
今回は4日の深夜に書くことを決めました(笑)←出ました、THE☆無計画

相変わらず夜眠れないので、その時間を利用してお勉強しました。

そしたらなんと!

6月6日は悪魔の日じゃないですか!!

ちょうど1年前、

V6とB6が好きだから、6月6日がいいよね♪

と考えた自分グッジョブ!!

その執事、誕生。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-12-30

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