星空に願いをこめて。2

星空に願いをこめて。2

僕らの出会いは、少し不思議だった。

僕と加奈子との出会いは、少し不思議だったと思う。
クラスも離れていて、卒業するまで同じクラスになったことなんかなかった。
部活も、加奈子は書道部で、僕は帰宅部だった。
そんな僕と加奈子が出会ったのは、高校二年生の八月だった。


**


「淳!あんたまだ寝てるの!夏休みだからってー!もう夕方じゃない!」
母の怒鳴り声で目が覚める。嫌な目覚め方だ。
目が覚めるととても人が眠るような姿勢ではなく、机を目の前にして椅子に腰掛けてそのまま伏せて寝ていたようだ。さらに、パソコンを開いたまま、ヘッドフォンをつけたまま。
そこで状況を理解する。
昨日は夜中までパソコンゲームに夢中になっていて、そのまま寝てしまったのだ。
「あー……体が重い」
ひとまず立ち上がり、背伸びをする。
その時に携帯が震えた。
画面を見ると、メールが5件。
「優雅からか」
メールを読むのもめんどくさい。
僕は優雅に電話をかけた。
2回の呼び出し音ののち、優雅が電話にでる。
「もしもし、優雅ごめん、寝てたわ」
「寝てたってお前、もう夕方だぞ!?」
「つい夜更かししててさ、で、何の用?」
「いや、今日さ、ペルセウス座流星群が見れるんだよ。見にいかないか?どうせそんな感じじゃあ夜も眠れなくて暇だろう?」
「いやいい。だるい。無理」
「そうか。お前が行くなら学校の近くの展望台まで行こうと思ってたんだけどな。家から見るわ。んじゃな」
「おう」
そうして電話は切れた。
どさっ、とベッドに寝転がると再び眠気が襲ってきた。
やばい。寝そう。また母さんに怒られる。
仕方がないので、1階に降りていくことにした。ベッドにいるのが悪いのだ。
「あら淳、起きたの」
起きたの、じゃない。起こされたんだよ、母さん。あなたに。
「お母さん牛乳買うの忘れてきちゃったみたいなの、買ってきてくれる?」
「え」
「買ってきてくれる、よね?」
「……うん」
こうして母さんのお使い命令により僕は仕方なしに家を出る。
もう外は暗くなりつつあった。
近くのスーパーマーケットまで徒歩十分。
僕は一人で歩く。そしてスーパーマーケットにつき、牛乳コーナーへ。
牛乳がある場所に向かう途中にお菓子コーナーを通った。
そこに、なんだか見覚えのある顔が見えて僕は立ち止まる。同じ学校に居たような気がする。
「木村さん……?」
たしか、書道で入賞かなんかして前で表彰されていたのを見たことがある。
僕が立ち止まっていると向こうも僕に気付き、目を見開いた。
「……え?あっ……同じ学校の……?」
「……こんばんは」
とりあえず挨拶をしてみる。
「あ、こんばんは」
焦ったように挨拶がかえってきた。それから、僕の視線が自分の籠に向けられていることに気付き、顔を赤くした。
「あっ、これは違うの!あのっ、やけ食いとかそういうんじゃなくてっ」
籠のなかには大量のお菓子とジュース。明らかに買い過ぎだった。
「流星群をね、見ようと思って。それでそのお供に……」
ほそぼそと小さな声で俯き木村さんはそう言った。
「ああ、ペルセウス座流星群?」
僕がそう尋ねると木村さんの表情が明るくなる。
「うん、それ!」
「そうなんだ」
「うん……あの、えっと、名前、何だっけ?」
どうやら木村さんは僕の名前は知らなかったらしい。まあ、帰宅部だもんね。
「田辺淳。ごめんね、いきなり声かけて」
「ううん、ところで田辺くんは何しに来たの?」
そこで思い出す。本来の目的を。
「あ、やばい。母さんに牛乳頼まれたんだ!あんまり遅いとまたどやされる」
「お使いか!偉いね」
木村さんがおかしそうに笑った。
その笑顔は、なんだか悲しい笑顔に見えた。

星空に願いをこめて。2

星空に願いをこめて。2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-20

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