【鬼畜な美食家】

上・中・下巻・総集編

【鬼畜な美食家】



【一話】




 2014年。

 巷を騒がす猟奇的傷害事件に警察は振り回されていた。

 猟奇的殺人事件は数々あれど猟奇的傷害事件は少なく過去に例のない事案から警察は頭を抱えていた。

 2014年、6月頃から頻繁に発生した事件とは、生きた人間(おんな)から肉を削ぎ取りそれを本人の目の前で焼肉にして食うと言う、犯罪至上例を見ない残酷なものだった。

 そして生還した女性達は皆、食べる犯人と肉を削ぎ取って手当てする医師風の犯人の二人組だと言う証言を得られていたいたが、突然背後から注射され気絶し気付けば仰向けのまま両手と右足を金属製の何かで固定されていたと言う。

 目の前には丸いレストラン風のテーブルがあって仮面を付けた犯人が座り、その上には食器と調味料とワインが乗せられ更に炭の入った七輪が置かれていた言う。

 女性被害者たちはテーブルを前に座る犯人が食べたい部位を医師風の仮面をつけた別の犯人に言うと、尻や内モモ、乳房に裏モモと言った女性の部位を指定、医師風の男は生きたままの女性達にメスを入れその肉を切り取ったと証言した。

 そして切り取った部分を薬品を使って消毒し応急処置をするがことき治療をして、その肉をテーブルの上の七輪の渡し網の上に乗せたと証言した。 そしてその中でも殆どの女性がされた鬼畜の行為は、女性性器の大陰唇を左右を切り取られた言う。

 女達は痛みに悲鳴をあげ出血を伴いつつ、自分の身体から切り取られた肉を焼いて食する犯人に嘔吐を繰り返したと言う。 だが、中には事前に部分麻酔をされて肉を切り取られた女も居て犯人達は臨機応変のごとく犯行を繰り返した。

 左右の大陰唇を失った女、内モモや裏モモ、尻や乳房を失った女、更にはその全てを失った女と被害者は様々だったが、その殆どがミニスカートの似合う美形ばかりで且つ、女達が身に着けていたパンティーとパンティーストッキング類は全て持ち去られていた。

 生きたままの女性(おんな)の身体から肉を削ぎ取って食うと言う前代未聞の事件は既に数十件を越え、未だに犯人の手掛かりすら警察は入手していなかった。

 だがこの猟奇的傷害事件。 決まって食事後、犯人達は自ら救急車に連絡を取って姿を晦ますという行動をしていた。

 そして女性(おんな)達の肉を食ったであろう食器やフォークにナイフに調味料は全て現場に残し、死人は未だに出ていなかった。

 身動き出来ぬ状態で自らの身体から肉を削ぎ取られる被害者の心情を考えれば、背筋の凍りつく思いが警察関係者に伝わった。

 そして何れの犯行も犯人達は互いに口を利くことなく、食べる犯人は食べたい部分にサインペンで囲み、削ぎ取る役目の犯人はその部分に麻酔を打ち、或いは麻酔無しでメスを入れたようだった。

 女性(おんな)達は恐怖に震撼し狂乱して失神する者は別とし一部始終を見届けた女性(おんな)は最悪だったろうか。

 麻酔を打たれ自ら切除された乳房の片方が牛乳で血抜きされた後に、七輪の渡し網に乗せられるのを正気で見ていられる者など何処にも存在さなかった。

 ジュゥージュゥーチリチリと目の前の七輪の渡し網で大陰唇を焼かれた女性(おんな)は、切り取られた痛みも凄まじいモノだったがその事実に狂いそうだったと話す。

 目撃された二人組みの犯人達はその体形は略一致していて同一犯であることは間違いなかった。

 警察は捜査段階でも次々に襲われ肉を切り取られ食われる被害者の数に圧倒されていた。

 そして女性(おんな)達から削ぎ取られた肉は、塩コショウ、焼肉のタレで更にはソースや醤油など、部位によって調味料を変えられ自分の目の前で食われる激しい不快感を味わった。

 女性達(おんな)達がどんなに泣き叫ぼうと暴れようと二人の犯人は動揺することなく淡々と行為を進めて行った。

 そして警察は食われて尚も生還した被害者らの傷口の手当から、一人は医師又は相応の技術を持った者であると断定した。

 ただ、女性(おんな)達は警察の聴取に自分の肉を食う「クッチャクッチャ」と、言う耳障りな音が頭から離れないと号泣した。

 更に乳首だけを二つ失った被害女性は、乳首がフライパンに入れられバターで炒められている様子をハッキリと記憶していると言い泣いた。

 生きたままの女性から肉を剥ぎ取って食う拉致監禁、傷害事件はマスコミには一切を伏せられ警察は全力で極秘に捜査を開始していた。

 そして7月に入って間もなく再び複数の犯行が行われたため警察はこれをマスコミに流し、女性は夜間の外出を避けるよう異例の発表をした。



【二話】



 

 ある女性は麻酔を打たれ左足の内モモの殆どを生きたまま切り取られ、同時に止血処置され包帯を巻かれたと言うが、自分から切り取られた内モモの肉を牛乳で血抜き、そしてステーキのように焼かれたと言う。

 目の前で自分の肉が調理され肉の焼けた臭いがあたりに漂い女性はその臭いに嘔吐を繰り返したと言う。

 そして白い皿に移されクリームソースを垂らされた肉にフォークとナイフが入った所で気絶したと言う。

 また別の女性は、大の字にうつ伏せにされ自由を奪われ、左右の尻肉を薄く幅広く切り取られまるでトントロでも食うように犯人はワインを飲みつつ、塩を振った肉を食い千切っていたと言う。

 手掛かりを全く残さないその犯行は警察を悩ませ同時に多くの女性達を恐怖へと導き、街中は日没つと共に女性の姿は街から消え男ばかりが目に付く夜の8時、再び何処かで事件が発生していた。

 そして夜の9時半過ぎ、一本の電話が119番に掛かった。

「女性が身体から血を流して倒れている…」
 消防署は直ぐに警察に連絡すると指定された場所へと急行した。

 すると、女性は尻下の裏モモの二箇所に応急治療した痕跡が見られ、運ばれた病院では「人食い犯」の犯行であると断定し、女性は病院で治療を受けたものの、病院の医師の話では「これは腕のいい医師の手当て」であると断言された。

 事件発生から既に30人もの犠牲者が出ていたが、警察は一つとして手掛かりを得ていなかった事実に犯人は医師又は準ずる者との味方を強めた。

 そしてメディアは一斉に美女ばかりを狙う「人喰犯」や「奇妙な美食家」と、銘打ってその想像を書きたて、同時に「警察は寝ているのか!?」と、警察批判を繰り返していた。

 あるテレビ局に出演中の毎回新聞編集局長も被害女性たちの写真に密かに喉をゴクリと鳴らし、キャスターの質問に「確かに美味しそうな美女ばかり」と、コメントを出し世論から「不謹慎発言」としてバッシングされる場面もあった。

 更に週刊誌では「人肉食悪魔」や「猟奇犯」と、書きたて、新聞各社もまたトップを飾る報道を繰り返し有名なテリー加藤は「鬼畜に美食家」と、世間の非難を浴びブログは炎上を迎えた。 

 そんな中、被害者になりたくないと言う女性達は気温32度の猛暑にズボンを履き肌の露出を抑えるなどの工夫を凝らしたが、一部自分は「ブス」だからとミニスカートから太い足を出し男達の視線を巨大な尻で跳ね返していた。 

 そしてブログが炎上し世間の注目を浴びたテリー加藤の言葉が広まり、世間はこの犯人に「鬼畜な美食家」と、各社は伝えテリー加藤はメディアに引っ張りだこになりヒョウタンからコマとばかりテリー加藤は歓喜した。

 だが、世の中が鬼畜な美食家を追及する中、ヒッソリと犯行は繰り返され丁度35人目の被害が確認された頃、今までとは違うメス以外の鋭利な器具に着目していた。


「これは恐らくアイスクリームディッシャーのようなモノで抉られた形跡があります…」
 白衣の医師はうつ伏せの女性の左右の尻にポッカリと開いた球状の傷口に着目し、それを後に警察に伝えた。

 女性の精神的障害は著しく甚大で例えればレイプされた方が遥かにマシだったかも知れない。

 自分の肉を知らない人間(おとこ)に食われたと言う苦痛は計り知れない。

 だが、現場検証の結果、鬼畜な美食家は彼女から削ぎ取った丸い二つの肉を血抜きし、白い大きな皿に盛り付けレタスやトマトを回りに並べてドレッシングで喰った形跡が残っていた。

 ナイフやフォークには指紋はなく目撃者すら居ない使われていない廃工場の密室で、彼女は両腕を縛られうつ伏せのまま尻肉を削ぎ取られたようだった。  

 鬼畜な美食家は絶対に女性達をレイプしたり甚振ったりせず、痛みを伴わせずにただ肉を取り、同時にその部分を応急的に治療している点が警察を悩ませた。

 女性(おんな)達は皆、美しくその美貌たるや男なら誰しも貪りつきたくなる身体をしていたが、肉を取られた女達はその惨たらしい姿に正気では居られなかったようだ。

 そして鬼畜な美食家の犯行は延々ととどまることをせず、女性陰部の左右小陰唇にまでメスを入れ、更にはクリトリスさえも切り取って焼いて食していた。

 鬼畜な美食家は女の身体を舐め吸い味わうことなく、女性(にく)本来の味と香りを楽しんでいたに違いない。

 女性(おんな)達の切り取られた部位はその都度変化し、中には両方の耳たぶを失った者もいて性とは直接結びつかない場合もあった。

 恐らく鬼畜な美食家はその女性(おんな)の最も魅力的な部位に性的興奮を覚えたに違いないと警察は心理学者から学んだようだ。

 だが、厳重な警戒の中ですら誰にもその姿を見られずに、女性(おんな)を拉致誘拐し何処かへ監禁する大胆な犯行に警察は総力を挙げたが功をそうすることなかった。

 そして鬼畜な美食家達が100人目の被害者を出した途端、ピタリとその犯行は静まりかえったように止まった。

 
「た! 助けてえぇ!! 私! 私は女性(おんな)じゃない! 私はただの女装子なのよお!! 私は男なのよおお!!」
 高さ一メートル程の大の上に両手足を頑丈に縛られた女装子は声を震わせ顔色を変えて叫んだ。

 仮面をつけた二人の犯人達は自由を奪われた女装子をよそに何かをヒソヒソと話しあってはチラリと女装子を見て大きく頷いていた。

 そして席についていた美食家(はんにん)は無言で席を離れると、台に乗せられた女装子の横に立って着ていたモノをナイフで切り刻み全裸にした。

「これで解かったでしょ!! 私は男なのよ!! それでも私の肉を食べると言うの!!」
 女装子は助かると確信し仮面をつけた二人の犯人をチラチラと目で追った。

 だが次の瞬間、女装子は突然、白衣を着た別の犯人に何かを注射され翌朝まで気を失った。
 
 そして翌日、女装子は大勢の警察官や救急隊員の前で目を覚ました。

「助かったんだわ!」
 女装子はそう心の中で嬉しさを噛み締めた瞬間、携帯で話す警官の声に震撼した。


『ええ、被害者は無事なんですが、陰部を切断されているようでして…』
 女装子は首を持ち上げて自らの下半身を見ると、そこは白い布で覆われていたものの、陰部に感覚が無かった。

 そして救急車で病院に運ばれた女装子は性器の全てを切り取られていた事実を医師から聞かされた。

 鬼畜の美食家達の仕返しなのだろうか、女装子はその股間を女性(おんな)のように平らにされペニスは根元から一センチ奥の所で切断されていたようだった。

「畜生! 私は! お、俺はただ女装を楽しんでいただけなのに!! 女性(おんな)になりたかった訳じゃあないのに!!」
 女装子は性器の全てを失ったことを嘆いて泣き叫んだ。

 だが警察はここでも被害者から何の手掛かりも得られなかった。

「恐らく記憶を消す何かを注射された可能性があります…」
 警察病院と科捜研の二人の医師は口を揃え、警察はその記憶を復元できないか食い下がったが、二人の医師は難色を示した。

 そして現場検証の結果、現場から串刺しにされて丸焼きにされたペニスと睾丸が発見された。 そしてこのことが報道されると街中から女装子が一斉に姿を消した。



【三話】




 街中からスカート姿の女性が消えそして次に女装子がと、街中には女をイメージさせる人間が目に入らなくなった一方で、消えたはずのミニスカートや身体のラインが映る服を好んで着るものが徐々に増えだした。

 いわゆる、食べられてみたいと言う異常性欲者の女達と男性器を取りたいと言う変質者の集団であった。

 彼ら彼女らは鬼畜の美食家にとって百害あって一利もない異常者達であって、メディアもまた「ここぞ!」と、ばかりに取り上げ連日のように報道を繰り返した。

 当然、鬼畜の美食家達もこの報道に動きを止めていて100人目の女装子以来、形を潜めてしまった。

 まるで動きの無くなったことで街は安堵の表情を浮かべる者も少なからず居て7月の暑さに耐え切れずにズボンからスカートへと移行する女性たちもいた。

 だが、事は上手く運ばぬモノで当然のように7月の半ば過ぎには101人目の女性被害者が発見された。

 街外れの使われていない古い住宅の一室、拉致監禁された女性は全裸にされ右乳房と右尻を鋭利なアイスクリームディッシャーで抉り取られた状態の上、手当てを施され発見された。

 この事件もまた、119番への通報だったが、被害者は101人目までと同様に見た物の記憶を消されていたが、一つだけ記憶に残っていると言う白い蝶ネクタイだったらしい。

 鬼畜の美食家の一人は白い蝶ネクタイをしていると言う情報は直ぐに警察全体に広がったが、報道機関には知らされなかった。

 今回の被害者は22歳と言う若さでありながらも成熟したそのボディーは確かに、鬼畜の美食家の餌食に十分なりうる存在だった。

 だが、右乳房を乳首ごとそして右尻を抉り取られた被害者は自分の肉の焼ける臭いに焼肉屋を想像したと言い、計り知れない衝撃を受けてもいた。

 鬼畜の美食家の正体は何者なのか、警察は白い蝶ネクタイを付けていたこと以外何も得られてはいなかった。

 だが、ここに来て101人のうち、女装子を除く100人の女性被害者に関連しているのは、何れも剥ぎ取られたパンティーとパンティーストッキングが持ち去られていることと、100人全員がパンティーストッキングを履いていたと言うことに着目した。

 ただ例外もあってガーターストッキングやニーソックスも居たことで単純な変質者とは一線を隔していると警察は判断していた。 そしてそんな折、一人の女性刑事が囮作戦を自ら名乗り出たが、危険すぎると言う事でそれは却下された。

「下着とストッキングフェチの鬼畜の美食家か……」
 一人の刑事が背伸びしつつボソッと吐き出した言葉に、別の刑事が口を開いた。

「鬼畜の美食家(はんにん)が下着フェチなら肉までは喰わんだろう… 人間の肉だぞ!」
 机の上に両肘ついて考え込む刑事。

「まさか肉を食った後のデザートとか…」
 別の刑事は立ったままお茶を口に含んだ。

「おいおい、勘弁してくれや~ この糞暑い日に履いてたパンティーとパンストなんぞ臭くて敵わんだろう♪ あっははは♪」
 椅子を逆座りする刑事は馬鹿げているとばかりに大きな口をあけて大笑いした。

「それとも… 記念品か… 或いは肉は肉として喰いつつも、戦利品のようなものか…」
 机の上に両肘ついて考え込む刑事は眉をしかめた。

「だからって今更ながらだが肉まで喰うか? パティーとパンストだけ奪えばいいんじゃねえのか?」
 熱いお茶をのんで涼しげにしている刑事はコピー機に寄りかかった。

「一応、科捜研から凶器と同じに研いである同等のアイスクリームディッシャーを取り寄せたから見てみるといい。 あんなモンでサックリとやられたら柔らかい女の肉なんか造作もないぞ…」
 途中から話しに割って入った捜査係長(けいぶほ)は別の机を指差した。

「しかし… 気の毒にな~ 自分の肉を自分の目の前で煮たり焼いたり刺身にして喰われるんだから精神的なショックは相当のモンだぜ!」
 タバコを出して吸いそうになったものの禁煙場所を思い出して途中でやめる刑事。

「とにかく、お前らも家族や親戚には十分肌を露出しないようにいっとけや! まずは身内から守らんとな!」
 捜査係長は携帯灰皿を取り出すと、人目を気にしつつタバコに火を点けた。

 そしてそんな白昼の雑談会議の最中、消防署から緊急の連絡が突然入った。

 被害者は二十六歳の女性で左太ももを陰部付近の内側から裏側にかけて膝まで半分の肉を無くしているらしいと言い、刑事達は一斉に飛び足すとパトカーで現地に急行した。

 現地には鑑識の他に救急隊員も同時に到着したが、テーブルに乗せられ気を失っているOLは着衣をしつつ左の太ももを応急処理した包帯に血がにじんでいた。

 しかし、いつもと様子の違う処置に救急隊員は病院と連絡を取り出血多量を心配して、そのまま救急車で被害者を現場から遠ざけた。

 
「何かいつもと被害者の様子といい、現場と言い違いますねえ係長!」
 現場の様子を見回す刑事。

「多分、模擬犯だろうさ… 女の肉がどんな味なのか興味を持った変質者だろう… 見てみろ周りを、犯行に品がない… それに見てみろ! 肉を食ったがいいが不味かったのか吐き出した形跡がある!」
 捜査係長は刑事達に吐き出されたであろう汚物を指差し、鑑識は直ぐにその汚物を回収した。

 そして今回の件は鬼畜の美食家を真似た変質者の犯行であることが複数の証拠で落着したが、左太ももの半分を失った女性は病院へ到着し手術の甲斐もなく数時間後に他界した。

 鬼畜の美食家事件とは違う犯行だったが、初めての死者を出した事件でもあった。


【四話】




 メディアがこぞって過激報道を繰り返す中、巷では鬼畜の美食家に襲われた女は一流の女であると言う噂が流れ、女達は密かに襲われたいと言う願望すら持つ者も増加して行った。

 そんな中に紛れるように男性器を取りたいと願う女装子達もまた、鬼畜の美食家に狙われたいと女に見えるように自身を磨き上げていた。

 だが101人目を堺に何故か鬼畜の美食家の犯行はピタリと止まり8月を迎えようとしていた矢先、102人目の犠牲者が出ていた。

 拉致監禁された女は目隠しをされ、全裸で台の上に両腕を頭の上に縛られ両足を大きく開かされていた。

「助けてぇ! 助けてぇー!!」
 泣き叫ぶ女は自分が鬼畜の美食家達に拉致されたことを悟っていた。

 鬼畜の美食家達は泣き叫ぶ女の声に耳を傾け、まるでクラシック音楽でも楽しむように食事の用意をしていた。

 全裸で大股して泣き叫ぶ女の身体には数箇所に料理となる印がつけられ、女は肌を滑る蛍光マーカーに身悶えを恥じた。

 左内モモと左右の大陰唇、そして恥毛の直ぐ上と右乳首を含む乳房は蛍光マーカーの滑りに女の柔らかさに揺れた。

 女はこれから自分の肉が切り取られることを悟りいつしか叫びは涙声に変わっていた。

 鬼畜の美食家達の一人はフランス料理でも楽しむかのようにテーブルをセットし冷えたシャンパンとグラスを置き、別の一人は白衣に身を包み調理台に乗って両足をバタ付かせる女に全身麻酔を施した。

 そして両足がピタリとその動きを止めると同時に女の口からは涙声が消え、グッタリして動かなくなった。

 白衣に身を包んだ一人は手前に並べられた調理器具を見回しその視線を横たわる女に向けると、ゴクリと喉を鳴らしプルプルと触れるだけで揺れる乳房の片方を鷲掴みした。

 仮面をつけた二人の内、テーブルを前に座った一人がシャンパンをグラスに注ぐと、白衣を着た別の人間は女の両足を大きく開かせロープで固定、大陰唇をメスで切り取って滲み出る血液を止めるべく止血剤を注射した。

 切り取られた二つの大陰唇は牛乳に入れられ血抜きをされると、傍にあったガスバーナーでチリチリと焼かれ皿に盛り付けられた。

 そして皿に盛り付けられた二つの大陰唇にレモン汁を垂らし、付け合せにパセリが添えられた。 女は全身麻酔と局部麻酔で殆ど痛みを感じないまま恥毛の直ぐ上の肉を鋭利なアイスクリームディッシャーで丸く削ぎ取られた。

 削ぎ取られた丸い肉は直ぐに血抜きを施されると、その場でフライにされジュクジュクと油であげられ、更に乳首ごと柔らかい乳房もまた鋭利なアイスクリームディッシャーでサックリとその肉を削ぎ取られた。

 残された乳房と切り取られた乳房からはオビタダシイ量の血が滴り落ち、直ぐに傷口はその場で縫い合わされ止血剤を打たれたが、削ぎとられた乳房は直ぐに氷の入った牛乳に浸された。

 ボールの中の牛乳は直ぐに血液と溶け合いピンク色に変色したが、白衣の男は直ぐに乳房を取り出して厚さ1センチほどに輪切りし調味料を加え熱したフライパンで狐色になるまで炒めた。

 部屋の中は焼ける乳房の臭いで充満し、残された乳首は刺身としてテープルに運ばれ、料理(にく)を一人の男が「クッチャクッチャ」と、音を立てて噛み始めた。

 そして白衣の料理人は肉を取られた女の脈を取り血圧を測定した後、食事を続ける犯人を他所に後片付けを始めつつ、動く度にプルプルと揺れる柔らかい女の肉肌(はだ)を手を止めては凝視した。

 その頃、科捜研では被害者の体内から微量ながら失神性のある即効性の強い薬物を検出していて、警察は医学的知識のある者に的を絞って捜査会議をしていた。

 そしてこれ以上、被害者が増えることを警戒した警察はテレビやラジオを通じて男女の差の無い服装を心がけるよう予防対策を呼び掛けた。

 だが危機感を一向に覚えないモノは別としてOLなどの勤め人達は帰宅時間を早めにし、更に男女の差のない服装を心がけた。

 そんな中で、鬼畜の美食家なんて関係ないよとテレビのインタビューに答える女もいて世の中は混乱状態が蔓延してもいた。

 警察は全力で医療関係者を探り出し過去の経歴から些細なトラブルまで捜査したが一向に変質者の割り出しには至っていなかった。

 そして警察が犯人割り出しに全力を挙げる中、食べられて見たい変質的な女や男性器を取って欲しい女装変質者達は丈の短いミニスカートと身体のラインが浮きでる服装で街中を練り歩いた。

 だが8月を過ぎ9月になっても鬼畜の美食家達の犯行は止まることをせず被害者の数もまた300人を越えていたが、2割近い女達は警察への被害届を取り下げると言う奇妙な行動に出た。

 鬼畜の美食家に狙われたと言うことにステータスを感じた一部の女達は警察の説得にも応じずに、被害届を取り下げた。

 もはや街は噂が噂を呼び話しにオヒレがついた状態に陥り、何が真実で何が偽なのかと言う混乱期に突入、メディアもまた噂だろうが何だろうが裏の取れない話しを寝たに書きまくりテレビでは放送が高視聴率を獲得していた。

 そして鬼畜の美食家達を真似た変質者達が幾度と無く女を襲い、中には生きたまま麻酔もかけずに女の太ももに噛み付いて肉を噛み千切る事件まで勃発した。

 警察は全国から敏腕刑事を招集し捜査に当たったが何一つとして手掛かりを得るには至らず、鬼畜の美食家達の犯行は継続された。

 生きた女の肉を本人の前で喰うと言う神への冒涜ともとれる事件は終焉することなく続いたある日のこと、囮捜査を自主的にやっていた女刑事が鬼畜の美食家達の餌食と化した。

 鬼畜の美食家達は女が警官であることを知らずに拉致監禁したものの、台の上で縛られ全裸にされるや、鬼畜の美食家達は何もせずに女を眠らせ下着姿にして路街に放置、女が倒れていると警察に通報し姿を晦ました。

 そして発見された女刑事は首から三重重ねのブラパットを紐で括り付けられ、着ていた衣類は傍に捨ててあった。

 女刑事は拉致監禁されたものの「喰うには値せず」と、ばかりな屈辱を全国の警察に知らしめられ、女としてこれ以上ない恥辱に警察を退職して行方を晦ませた。

 能無し警察とメディアに叩かれた警察は威信をかけて囮捜査に着目、志願者を募ったものの身の程知らずのデブと鶏がら女以外に集まらず、遂には業者を密かに呼び男性警察官を女に仕立てるべく女装を試みたが吐き気を催す中で一人の美形警察官をファイルの中に見つけた。

 勿論、美形警察官であっても女装趣味はなく正義感溢れる警察官だったが、彼は何の抵抗もなく女装と化粧を開けいれ、完全に女化した彼は誰が何処から見てもグラマーな完璧な女に仕上がっていた。

 そして遂に女装子と化した男性警官の囮作戦が実施されようとしていた。


【五話】




 警察は女に化けた男性警察官の身体中につけた貴金属類の全てに発信機を取り付けヌーブラの中にさえも発信機を仕込んだ。

 これで鬼畜の美食家達に襲われれば間違いなく鬼畜の美食家達の新しいアジトに辿り付けると確信した警察は、本格的な囮捜査へと踏み切った。

 そしてこの囮捜査は全てのメディアに伏せられ美女と化した警察官は夜な夜な、尻を振って街中を練り歩き襲うに適している場所を意図的に選んだ。

 警察は次こそは鬼畜の美食家達を捕まえてやろうと用意万端でその時を待った。 だが偶々出会えないのか或いは動きを止めたのか鬼畜の美食家達はその行動を止めた。

 襲われたくない女達は男姿で職場と自宅を往復し、襲われたい変異的な女と女装子達はボディーラインの出る服装で肌を露出したことで、警察官の囮捜査は進行することはなかった。

 そして連日のようにテレビを含むメディアは襲われたい変異的女や女装子達を電撃取材し、それを報道し次の被害者が出るのを心待ちにしていた。

 メディアにとって次なる被害者こそがスクープとばかりにカメラを手に街中を男も女もウロウロしていた。 だが鬼畜の美食家達は一向に行動に出なかった。

 そして警察の囮捜査が始まって十日間が経過した頃、突然、鬼畜の美食家達は動き始めた。 

 だが警察の動きを察知してか或いは石橋を叩いたのか鬼畜の美食家達の犯行の仕方が若干、変更されたことに誰も気付く者はいなかった。

 鬼畜の美食家達は捕まえた女をその場で全裸にし、性別を確認して女性(しょくりょう)をアジトに持ち帰るやり方をしたことで、犯行現場にはパンテイーとパンストだけ残した女性から剥ぎ取られた衣類が散乱した。

 そして尚も警察の囮捜査の最中、一般市民である女性が再び鬼畜の美食家達に連れ去られ監禁された。

 パンストとパンティーだけの女が乳房を露にして鬼畜の美食家達の目前の台の上に乗せられ両腕を頭の上で緊博された。

 被害女性は男姿で会社からの帰宅途中だった。

 台に乗せられ緊博された女は全身麻酔にグッタリし虚ろな視線を鬼畜の美食家達に向けたものの、殆ど何も見えてはいなかった。


『何て美しい乳房だ… 早く味わいたい…』

 
 鬼畜の美食家達は彼女の乳房に恋焦がれ早く口に入れたいと武者震いに襲われつつ、見事な下半身に喉をゴクリと鳴らした。

「この獲物はどう調理しましょうか…」
 白衣に身を包んだ犯人は別の犯人に小声で尋ねた。

「乳房を丸ごと蒸し焼きに… 太ももは全体的にグルリと薄く削いで刺身にしてくれ… 飲み物は冷えた日本酒がいいだろう…」
 白衣の犯人にヒソヒソと耳打ちするモーニング姿の犯人はニヤリと笑みを浮かべ女の下半身からパンストとパンティーを剥ぎ取り、顔を埋め臭いを楽しんだ。

 女はこの後の数分後、右乳房を丸ごと摘出され同時に右の上モモ、外モモ、裏モモ、内モモの肉を厚さ8ミリ程度、根元から膝に向けて削ぎ取られ、肉は血抜きされた後にフグの刺身のように皿に盛り付けられた。

 モーニングに蝶ネクタイ姿の犯人はテーブルに置かれたフグ刺のような女の足の肉を漬け汁に浸しつつ口に運んで舌打ちしてニヤリと笑みを浮かべた。

 そして部屋中を蒸し焼きにされた乳房の匂いが漂うと、全身麻酔と局部麻酔をされた女はその生臭い匂いに咽て咳き込んだが、モーニング姿の犯人は鼻を突き出して敢えてその匂いを楽しんだ。

「追加を頼みたい…」
 モーニング姿の犯人は白衣の仲間に小声で尻肉の刺身を注文し、白衣の犯人は頷くと女を手当てしメスを使って女の右尻からプリプリした肉を多めに削ぎ取った。

 そしてこの日もまたディナーが終焉すると鬼畜の美食家達は119番に通報し証拠を隠滅してその場を立ち去ったが、食べ切れなかったのか、乳房の蒸し焼きと尻の刺身がその場に残されていた。

 おぞましい光景に救急隊員たちは背筋を凍らせた。

 そしてこの事件の一週間後、警察が放った囮捜査員の行方が途絶えたことで警察は騒然となっていた。

 犯行現場で全裸状態で貴金属の外された囮警察官は男であることを知られつつも何故か鬼畜の美食家達に連れ去られた。

 男は絶対に喰われないと思われていただけに、警察は青ざめる表情を隠しきれなかったが極秘に進められていた作戦故に、この件は一切メディアには発表されなかった。

 そして囮警察官が行方不明になって9月になっても10月になっても鬼畜の美食家達の犯行は止まることをせず、被害にあった女の数も既に500人を越えていた。

 警察は鬼畜の美食家達と行方不明になった囮警官の捜索で夜を徹しての必死の捜査が続いていた。

 そして10月も半ばを過ぎた頃、行方不明になっていた囮警官が異様な状態で通報に拠って発見された。

 その男性警官はその胸をCカップに豊胸され、下半身は完全に性転換されていたことで保護した警官達は呆然とし、囮警官本人は精神に異常をきたし警察全体は震撼して止まなかった。

 鬼畜の美食家達からの贈物(けいかん)は、顔すらも整形されていたことで警察全体を恐怖へ陥れた。

 そして囮警官のハンドバックから「皆さんの望みどうりにして差し上げました」と、言う機械打ちの手紙が発見された。

 拉致監禁され顔を整形、そして豊胸と性転換をされた囮警官は二階級特進の後、婦人警官として運転免許試験場へ配置転換された。

 未だに謎のままの鬼畜の美食家達は一体何者なのだろうか、そしてその後、鬼畜の美食家達の犯行はピタリと止まり1年以上が経過していた。


【上巻・完結】

 


【鬼畜の美食家・中巻】




【一話】




 そこには三人のタキシードを着た白、赤、青と色違いの口元の開いた仮面をつけた何者かがテーブルを前に並んでいた。

 そしてテーブルの向こう側には白衣を身に纏った一見、医師ともコックとも思える仮面の人物が居て、手術道具を左右にその真正面に仕事帰りを思わせるスーツ姿の女性が気絶していた。

 タキシード姿の人物達の前には食器と調味料そしてワインとグラスが置かれ三人は微動だにせずジッとしていて、そこへ白衣の人物が何やら白いメモとサインペンを持ち運んでテーブルに置いた。

 するとタキシード姿の三人は白いメモ紙に書かれた人型の裏表に印をつけ始め同時に、女性の衣服の部位を書き記した。

 ブラジャー、パンティー、パンティーストッキングと個々のメモに記された用紙は白衣の人物に個々に手渡されその動きに何本も立てられた蝋燭の炎がユラリと揺れた。

 そして三人の見ている前で次々に衣服を剥ぎ取られた女性のパーツは順次、三人の人物達り前に静かに置かれた。

 それはまるでディナーの前の香りのプレゼントのようであった。

 三人は仮面下の口元に笑みを浮かべてニヤニヤしつつ両手に持った衣類の匂いを嗅ぎ始め徐々に顔を埋めて鼻で深呼吸していった。

 その間、白衣に身を包んだ人物は無言で気絶している全裸の女性の両手を頭の上で縛りベッドに固定すると、今度は右足のみをベットに固定して縛った。

 三人の仮面人物達は目の前の女性から剥ぎ取った衣類を思い思いに楽しみつつ、三人の要望に従って削ぎ取る肉の部位に印をして全身麻酔をされ気絶している女性の生肉にメスを入れた。

 メスが入るとその部分から血液が溢れだし白い肌を伝ってベッドシーツを赤に染めたが、女性の衣類にウットリしている三人の眼中には入ることはなかった。

 蝋燭を灯りに使っている部屋の中は三人の荒い吐息だけが漂っていて、肉を削ぎ取られる女性はその痛みすら感じず目を瞑ったまま動くことはなかった。

 女性は全身を真横にされると左尻の肉を幅3センチ、長さ10センチ程に切り取られ即座にそり部位を治療され、今度はその左足の内モモの肉を同じだけメスで切り取られた。

 オビタダシイ量の出血を伴いつつもも直ぐ傍の血圧計のモニターには乱れはなくこれをも即座に治療し終えた。

 白衣の人物は女性を仰向けにし左乳房を乳首ごと直径8センチほど切り取ると見事に手際よく止血し処置を施した。

 そして仰向けの女性の両足を大きく広げると、軽く火を通しただけの肉に大陰唇と小陰唇の間にベッタリと張り付いた女の白い汚物をスプーンですくい取ると、白い更に盛り付けた女の肉に万遍なく塗りつけ三人の人物の真横から料理を出した。

 三人の人物達はフォークとナイフを巧みに遣い出された料理(にく)を口に「クチャクチャ」と、生きの良い肉に舌鼓を打った。

「ご注文は谷はありませんか?」
 白衣に身を包んだ人物が声を窄めると真ん中の赤い仮面の人物が女性の大陰唇をメモに記して渡し、白い仮面の人物はクリトリスを、青い仮面の人物も大陰唇をメモにして手渡した。

 そして焼き具合を口にした白衣の人物に対してレア、ミダアム、ウエルダムの順に三人の人物は言葉を使わずにメモを見せた。

 気絶したまま微動だにしない女性の身体から大陰唇がメスで切り離されている間、三人はニヤニヤしつつワインで口中をスッキリさせた。

 白衣の人物は女性から切り取った大陰唇に三本の鉄串を刺して両手で手馴れた手つきで炭火の熱を通し室内には肉の焼ける匂いが充満した。

 そして三人目のクリトリスは一センチほど深く抉り取って止血をすると、一本の串に縦に突き刺して炭火でコショウを振ってあぶり焼きした。

 美食家達は思い思いの味と香りに個々に唸り声を上げサラリとワインを理度に滑らせた。

 
 こうして半年以上も動きを止めていた鬼畜の美食家達は再び一人の美女の肉を腹に収めたが、模擬犯と思われる変質者が半年間に述べ数十人が警察に逮捕されていた。

 鬼畜の美食家達は警察に動きを察知つせずそして一つとして手掛かりを残さぬまま、自ら救急車へ通報しその場を立ち去っていた。

 だが、鬼畜の美食家達に狙われ身体の肉を喰われた女達は個々の不幸に耐え切れずに苦しみ続けていたが、世間では鬼畜の美食家に狙われることこそ美女の証と言う風評も出回っていた。

 鬼畜の美食家達は美女しか狙わない。 そして一度でも狙われたら決して逃れることは出来ない、女性にとって恐怖の存在であった。

 世間からは警察は何をしていると言う声が毎日のように繰り返され、操を守ろうと女達は必死で男装して自宅と会社、或いは学校を往復した。

 そんな中、肉を削ぎ取られた女達は個々にその苦しみに耐え医師又は看護師に涙ながらに心境を語った。

 鋭利なアイスデンジャーで尻肉を丸く削ぎ取られた女は治療の過程においてポッカリと空洞のごとく開いた尻の穴を指でなぞり、医師の助言を思い出しつつ止まることのない涙で枕を濡らした。

 そして同じく乳首ごと乳房を片方なくした女は気が触れたように自身を忘れ、内モモの肉を削ぎ取られた女や大陰唇、小陰唇そしてクリトリスを無くした女もまた同様であった。

 警察は本星である鬼畜の美食家を追う一方で多発する模擬犯に苦慮していた。 人間が人間の肉を喰うと言う前代未問の事件はその数を増す一方で社会をあらぬ方向へと導いてもいた。

 鬼畜の美食家に食べられてみたいと言う女も少なくない一方で、鬼畜の美食家に拉致されれば性器を取って貰えると言う性転換願望者もまた数を増やしていった。

 そしてそんな社会事情を知ってか知らずか、鬼畜の美食家もまた、一度捕らえた獲物(おんな)の顔から化粧を完全に落とし、その素顔の美しき者のみを食すと言う動きを見せた。

 中には一旦拉致監禁されたものの、化粧を落とされ何もされずに路上に放置された女や、腹いせとでも言うべきかブタのように鼻を上に向けられる整形を施された化粧美人も多数存在した。

 鬼畜の美食家は最早、神業的な力量で警察の捜査を振り切りゴットハンドとでも言うべきかその手術力に全国の医師たちを震撼させた。

 



【二話】




 薄暗い十畳ほどの洋間の真ん中、一人の女が意識を失って寝台の上にグッタリしている。

 それをニヤニヤして眺めるタキシードの白仮面の人物は寝台の手前から同じく黒仮面を付けた白衣の人物の方をチラリと見て直ぐに視線を女の方へ戻した。

 寝台の手前には仮面をつけた二人の人物が立って居て、寝台の向こう側には医療器材と電子機器が設置されていたが、それはいつもの光景だった。

 白衣を着た人物は頭にコック帽をかぶりその素顔もまた他の者たちと同様に見ることは出来なかったが、白衣の人物は小声で三人の人物達に囁いた。

「今夜は各自このスプーンを使って思い思いの部位を御賞味頂けます。 但しここにある部位は命の危険があるため御容赦頂きます。 尚、股間関係は私が執刀致します」
 白衣の人物は男とも女とも付かない機械を使った声で自らの後ろに張られた人型の書かれた大きな張り紙を参加者達に指差して見せた。

 参加者達は一様に大きく頷いて白衣の人物に視線を一致させつつ、白衣の人物の指示で女から衣類を剥ぎ取っては口から漏れそうになる歓喜を堪えた。

 女は三人の参加者達に見る見る間にその素肌を明るみに照らし艶々した色白の揺れる肌を晒し仰向けにされた。

「では、この図を見ながらお手持ちのスプーンでこの素晴らしい女体を御賞味下さいませ…」
 参加者達は白衣の人物の後ろに張られた絵図を見つつ、スプーンの角度や深さを頭に入れ震える手を深呼吸して落ち着かせた。

 女の甘酸っぱい香りが部屋中に充満していたが、参加者達はプリンのように揺れる尻、そして尻を支える裏モモに異様に執着してかその柔らかさをスプーンに感じつつ、掬い取った血の滴る肉を目に香りをそして白さを楽しんだ。

「調味料を必要な方は小皿に肉を移してお使い下さい…」
 白衣の人物は一歩後退して、身体から肉を掬い取られる女体に満足をうかがわせ微笑を見せた。

 女は時折全身をヒクヒクさせたが気付く様子はなかったが、参加者から大陰唇を食したいと言う申し出や、乳房をとの要望が続けざまに出された。

 参加者達は個々の席に移ると、目の前の白い小皿に血の滲む白い肉に個々に置き調味料を手にとって笑みしていた。

 白衣の人物は参加者達の食事中、慣れた手つきで肉を削がれた部分を止血し同時に治療しはじめた。

 尻、そして裏モモを包帯で覆った女は仰向けにされ、両足を大きく広げさせられると、参加者達の視線は女の恥ずかしい部分に注がれ、そして白衣の人物が両手の指で割れ目を開くと静まり返った部屋に「ニチャッ」と、恥ずかしい音を響かせた。

 女の恥ずかしい部分の中はピンク色の内肉にベッタリとその汚れが張り付き、所々に黄色がかった白色の汚れが付着していた。

 参加者達はそれを見ると一斉に喉をゴクリと鳴らして見入り、白衣の人物は早速、二つの大陰唇と二つの小陰唇そしてクリトリスに手早くメスを入れ大皿に盛り付けると、内肉に張り付いた汚れをスプーンで手早く採取しソースとして肉の周りを飾った。

 そしてテーブルの略、中央に置かれた大皿を取り囲むように三人の人物達は注文どおりの肉にソースを塗りつけ生のまま口に放りこんだ。

 耳障りなクチャクチャと言う異様な音が静まり返った部屋に響く中、白衣の人物は再び慣れた手つきで事後処理に追われた。

 そしていつものように証拠隠滅を入念に果たした鬼畜の美食家達は救急車を要請しその場を離れたが、数日後メディアは一斉にこの件を大きく取り上げ警察に一掃の圧力を加えた。

 警察は一旦収まった犯行が繰り返されたことに苛立ちを隠せず遂に異例の「緊急事態宣言」を、発表したがそれはそれで再びメディアを刺激し世の中は蜂の巣を突いたように大きく揺れた。

 そしてその間も模擬犯と思われる自称、鬼畜の美食家達が次々に証拠を残し捜査をかく乱していった。

 



【三話】

 

 


 日本各地で頻繁に発生する模擬犯の変質者の犯行に警察はその対処に憤りを隠せず、メディアもまた今度こそは本物かと全国を飛び回り振り回された。

 そんな中で本物である鬼畜の美食家達には一向に捜査の手は伸びることは無く被害者からの事情聴取からも手掛かり一つ見出すことは出来なかった。

 変質者なのか或いは人食い人種なのか警察はお手上げ状態で、メディアはあること無い事を書きたて世間を鬼畜の美食家(はんにんたち)よりも騒がしても居た。

 警察は余りのメディアの大騒ぎに釘を刺すかのようにメディア規制を強制的にかけ、一部のメディアは反論するかのようにその事実を書きたてた。

 そしてそんな中、幾度と無く繰り返される鬼畜の美食家達の食事(はんこう)は止むはなかった。 その一方で模擬犯は徐々に減少して行った。

「事件のことは知っていました… でも残業で終電にも間に合わず徒歩で帰宅しようと…」
 被害女性の一人は、人気の無い街中の歩道を歩いていて気付いた時は病院の中だったと話す一方で、首の後ろに突然チクリと何かが刺さったと証言した。

 それを切っ掛けに警察は全ての被害者から聞き取り調査を実施し、その殆どが首の後ろであったり横であったの半袖から突き出た腕だったりしたことを明かした。

 だが、既に被害者の身体からはその痕跡は消え、警察は新たな被害者達から早急に聞き取りを実施した。

「鬼畜の美食家(ヤツラ)は何らかの方法で被害者の身体に薬物を撃ちつけた可能性が強いな…」
 刑事一課、強行班の係長である警部補はそう、課長である警部に言葉を絞った。

 鬼畜の美食家(はんにん)達は遠くから被害者に気付かれぬよう何かを撃ち付け、倒れたところを拉致したと警察は断定したが、何れも最近の被害者でさえもその痕跡は残ってはいなかった。

 果たして警察の断定した通りだったのだろうか。

 この件に科捜研は被害者の全身に一つとして痕跡が見当たらないと真っ向からそれを否定して見せた。

 同じ事件を追う警察と科捜研の対立は複雑化していった。

 では、一体被害者達が口を揃える何かがチクリと刺さったと言う証言はどうなるのか、捜査は再び暗礁に乗り上げた。

 生まれ故郷、在住地域、年齢や学歴など一切の共通点のない被害者達は一体、どんな手法で拉致監禁されたのか誰一人として気付くことは無かった。

 そして今夜もまた、誰も解からぬまま美しい女性が拉致監禁気絶させら、その美しい尻肉の片方を失った。

 獣と化した鬼畜の美食家達は女から切り取った美しい尻肉を三人で分け、白衣の人物の手によって血抜きをした後、レア・ミディアムで静かな部屋の中に耳障りな歯音を立てた。

 左尻の殆どを失った女は何も解からぬまま応急治療を施され、然る後、119番通報によって一命を取り止めたものの事実を知った女は泣き叫び狂乱のごとに頬を涙で塗らした。

 そして落ち着いた頃、尋ねてきた刑事に「右腕に何かチクリと触った」と、鮮明な記憶を話したが法医学者が数時間かけて検査したが虫刺れ一つとしてその痕跡はなかった。

 被害女性の記憶はそのチクリから全てを失い気が付いたのは救急車で運ばれた病院だったと言い、謎は深まるばかりだった。

 そんな中、報道規制を強いられていたメディアの一つはスクープ欲しさに女性社員を囮として街に数名放ったが、鬼畜の美食家達の手に掛かることなく終わった。

 そして警察もそんなメディアの動きを知りつつも口を閉ざしていたが、一人の刑事が独り言のように署内で放った。

「共通点は痕跡の無いチクリとした痛みか…」
 捜査に疲れきった表情をする数人の刑事の一人が放った言葉を法医学者、そして科捜研の二人が聞いていた。

「もしかしたら…」
 法医学者と科捜研の二人がガックリと肩を落とす刑事達を前にして放った言葉に、刑事達は一斉に困惑した顔を上げた。

 そして遂にその謎に迫れるかも知れないと法医学者、そして科捜研の二人は慌ててその場を離れた。


【四話】



 うっそうとした森の中にある使われていない別荘の一室、口元以外を仮面で覆い隠した三人の人物の前、同じく仮面をつけた板前風のいでたちをした人物が小声を放った。

「今夜はあぶりネタで握りずしを握りましょう… お好みの部位を注文下さい。 尚、あわびは二つしかありませんので…」
 板前風のいでたちをした人物の声に三人の同席者は笑みを浮かべ首を大きく頷いた。

「尻肉を…」
 一人が小声を発するとと、腰、裏モモと続けざまに声が密室に響き、板前風の人物は慣れた手つきでメスを女の身体に入れた。

 気を失っている女の身体から次々に肉(ネタ)が切り取られ酢飯で握られるとそのまま客達の前に出された。

「こっちにはアワビを貰おうか…」
 女は仰向けに大またを客達の前に晒すと、メスで右側の大陰唇をスッと切り落とされ直ぐにガスバーナーでチリチリとアワビを焼かれた。

 女の股間からオビタダシイ量の出血があったが、板前風の人物は即座に止血し冷酷無慈悲に左の大陰唇をも切り取った。

「こっちには内モモの刺身を頼む…」
 伸ばされた左足の内モモ部分を縦十センチ、横二十センチ厚さ一センチの大きさに捌かれた内モモのプルプルした肉は斜め切りされると横長の皿に盛り付けられ、客の前に出されると板前風の人物は速攻で女の足を止血し包帯で処置した。

「悪いがもう一貫、こっちにも尻を頼む…」
 板前に扮した人物は巨大なまな板の上の女の身体を真横にすると、再び客が指差した部位の肉を切り取って握った酢飯の上にネタを乗せバーナーでチリチリッと炙り焼きして出した。

「これは美味い!」
 プリンプリンと揺れる炙り焼きされた鮮度抜群の尻肉を頬張った客は、唸るように板前風の人物のほうに視線を向けた。

「こっちには乳首の串焼きを頼む」
 板前風の人物は首を大きく振ると、サッと包帯だらけの女の身体を仰向けにし見事なメス捌きで乳首を二つ切り取って串に刺すと、小さな七輪の上で両手を使って回し炙りして客に出した。

 巨大なまな板の上に乗せられた女の身体は見る見る間に血の滲んだ白い包帯だらけになり、首下だけで数十箇所を数えた。

 三人の客達はビールと日本酒に酔い痴れ、包帯だらけになった女を目の前にニヤニヤと笑みを浮かべ一人の客が声を発した。

「今日の趣向は中々のモノ… 上出来だ。 上がりに包み蒸しを頼む」
 板前風の人物は笑みを浮かべると無言で頷いて、女が一日中着けていたパンティーの当て布部分に小さな握り飯を乗せると、丁寧にパンティーで包んで電子レンジで加熱し皿ごと客に出した。

 ホクホクと蒸気が立ち上がるパンティーを開くと、女の汚れが染みこんだ飯の匂いを嗅いだ客はニンマリと笑みして箸で摘んだ飯をそのまま口に運んだ。

「こりやぁ美味だ! 美味い!」
 客はご機嫌とばかりに静まり返った部屋に歓喜な声を発した。


 その頃、法医学者と科捜研の担当者は類似したことを考えていた。

「もし針に刺された痛みのようなモノが本人による錯覚だとしたら…」
 被害者達が言う部位を必要以上に調査した二人は、何故被害者たちに共通して起きているのかその理由を考えていた。

 だが、依然としてその謎が解けないまま時間だけが経過して行った。

 そしてそんな中、再び別々の場所に居た二人に警察から連絡が入った。

 数時間後。

「酷いもんだ… 全身の至る箇所に肉を切り取られた痕跡が… 状況から言って寿司ネタにされたようだ! 無残なもんだよ被害者は! 恐らく喰ったヤツは三人と調理したのは一人… 喰い残した炙り焼きした串焼きの肉片が皿に残されていたよ!」
 一人の刑事が現場を見たまま法医学者と科捜研の二人の女性に事実を伝えた。

「オマケに御丁寧にいつものごとく証拠、手掛かりは一切無し。 目撃者もいず、被害者は今、口の聞ける状態じゃあない! 応急処置されて巨大なまな板の上で発見されたが、削ぎ取られたり切り取られたりで医者も目を反らしたほどだ!」
 真っ青に顔色を変えた刑事は壁を手のひらで叩くと怒りを堪え法医学者と科捜研の二人の女性を強張らせた。

「だが今回も同じで神業的な応急処置が施されていたらしい…」
 刑事の話しを聞き入る二人の女性は息を飲んで壁に背中をまたれさせた。

 法医学者と科捜研の二人の女性は医師の下を尋ね、紙に書いた人型の絵に傷の箇所を記させると瞬きを忘れた。

「恐らく好き勝手に肉を切り取って食したと思われます…」
 処置した医師は強張る表情を抑えつつ声を絞った。

 そして被害者と話せるか聞いた科捜研の女性に、首を横に振って傷の手当とカウンセリングが先だと念を押した。

「今回もレイプ… 性的暴行は無いのですか?」
 法医学者の女性が医師の目を見ると、医師は黙って小さく相槌を打った。

 そして待合室の刑事達。

「女が肉を削がれて苦しむ姿を見る訳でもなく、レイプする訳でもない… 全身麻酔をかけ被害者を眠らせて肉だけ取って喰う… そして自ら119番とは… 一体、何者なんだ! くそ!!」
 待合室で大気する刑事達は握った拳を開こうとはしなかった。

「ヤツラにとって女は性的な興奮を覚える生き物じゃなく食材なんだ! だから変質者の類とは訳が違う! 今まで被害にあった女性(ひと)達の心も身体の傷も一生消えることはねえ!!」
 一人の刑事は握った拳をそのまま振り下ろした。

「俺が話を聞きに行ってきた女性(ひと)はケツが! ケツが二つともねえんだぞ!! オマケに乳首も!! 何が鬼畜の美食家だああ!!」
 別の刑事は椅子にドスンと座ると両手で頭を抱えて叫んだ。

 数日後。

「やはりそうですか… チクリと何かが首に…」
 法医学者と科捜研の二人の女性は刑事達から被害者からの聞き取りに耳を傾けた。

 警察の会議室。

「刺されてもいないのに痛みだけがあって、実際にはソコには何もない…」
 科捜研の女はテーブルを前に左手で頬杖付いた。

「待てよぉ~ 確か以前、大学の実技で… 催眠術を実施した時… 掛けられた学生が片足が鉄のように重くなったって… 催眠術かぁ~ 有り得なくはないけど…」
 法医学者は目を閉じて当時の記憶を辿るように天井を向いた。

「催眠術!?」
 科捜研の女が法医学者に鋭い視線を向けた。

「痛みがあって気を失ったとみせるための偽装工作…? でもどうやって…?」
 両腕で頬杖を付いた法医学者の女は科捜研の女に視線を重ねた。

「………」
 互いの目を見詰め合う二人の女達。

「もし偽装工作なら被害者達の言っていることの裏づけが取れるけど… そんな簡単に掛けられるモノではないはずだし、犯人達が犯行前に被害者達に掛けて… でも失敗したら? 元も子もない… 被害に遭った時は既に被害者達の意識は無い訳だから、掛けるとしたら犯行前か…」
 両腕を組む科捜研の女。

「でも、そんなに素早く掛けられるモノかしら… だって実際には掛からない人も半分くらいはいるはず… もし掛からなかったらその場で被害者達は抵抗するか逃げ出すかするはずわ!」
 両腕で頬杖付く法医学者の女。

「確かに… 私だってもし突然の催眠術に掛からなかったら悲鳴をあげて逃げ出すわ。 第一、掛からなかった人が一人くらい居てもいいはずなのに、一人も該当者が居ないってのは変だわ…」
 タバコに火を点ける科捜研の女。

「やっぱり催眠術ってのは無理があるか…」
 同じくタバコに火を点ける法医学者の女。

「だよね…」
 煙を吸い込んで吐く科捜研の女。

「でも… もし、もしも、数日前とか数ヶ月前から… ああ、でもそれだったら変質者だってことで警察に報告があがるはずだわ!」
 同じく煙を吐き出す法医学者の女。

「取敢えず警察にはそれらしい報告がなかったか問い合わせて見てもいいわね…」
 タバコの火を消す科捜研の女。

 二人は気乗りしない表情のまま会議室を立ち去ったが、その翌日、二人の下へ警察から過去1年間に遡って調べたがそんな報告は何処にも無かったと伝えられた。



【五話】
 
 

 

 
 鬼畜の美食家達の餌食にされた被害者は既に数百人を越え警察は一刻の猶予も許されない状況下だった。

 しかしながら目撃者も物証も何も無い中で捜査は難航を極めメディアから警察は無能呼ばわりされていた。

 そして被害者もまた同じ証言を繰り返した。

 チクリと何かが刺さった瞬間、気絶したと言う被害者の証言は法医学者と科捜研の二人の女性の提言である偽装工作ではないかと言う仮設が警察内部に浸透し始めたが、推論にしか過ぎないと言う警察幹部達の前に消滅しかけていた。

 そして極秘扱いされていたはずの仮説が何故かメディアに漏れ、メディアは一斉に鬼畜の美食家達の偽装工作だと報じ、仮説にしか過ぎない催眠術の件をも報じられた。

 メディアは一斉に法医学者のいる大学、そして科捜研にオビタダシイ数のメディア関係者が張り付き二人の女性は身動きを封じられた。

 大学そして科捜研の前では連日のようにテレビ局のマイクを持ったリポーターが張り付いて緊張の度を増した。

 だがその様子を静観視する数人の人物達もテレビを前で黙していた。

 フランス料理、中華、焼肉に寿司、刺身と言った日本食に女性の身体の肉を利用する鬼畜の美食家達を、メディア達は既に賛美することなく有りのままを伝えた。

 顔を隠した被害女性達の絶望の泣き叫びをひたすら流すテレビ局に、鬼、悪魔と言った物言いのトークショーに至るまで鬼畜の美食家達はメディアによる集中攻撃を受けていた。

 ただ、そんな中で何処から漏れたのか解からない法医学と科捜研の推理を、鬼畜の美食家達は黙して何処かで見ていた。

 そして素性の解からない鬼畜の美食家達はその報道の内容に個々に笑みを浮かべていた。

 果たして法医学と科捜研の推理は的を得ているのか、或いは的外れなのかは鬼畜の美食家達のみが知る真実であろうか。

 そしてインターネットのウーチューブには当事者と思われる被害女性が顔にモザイクを掛け切り取られた片方だけの乳房を生々しく映像として放映し、別のニクニク動では尻の片方だけが切り取られた映像が流され、世界中のユーザーにその凄まじさが連日伝えられた。

 だがそんな中において鬼畜の美食家達は、まるであざ笑うかののように次々に女性を、まさしく「食い物」に、して行った。

 年齢もバラバラ、身長や体重、その他の一切に共通点の無い女性達は夜だけにとどまらず昼日中でさえ被害を受けるに至って行ったが警察は何も出来なかったが、唯一の共通点は美形であると言うこと。

 そして警察では。

「真昼間なんだぞ!! 真昼間でどうやって拉致してるんだ!!」
 幾度も開かれる捜査会議の席上、アチコチから飛ぶ怒声は既に限界を超えていた。

 そしてそこへ。

「催眠術です! それしか考えられません!! 犯人達は何処かで事前に何らかの方法で被害者達に催眠術をかけて、偽装工作をして拉致してるんです! それしか考えられません!!」
 法医学と科捜研の二人の女性は無断でドアを開いて中に入って周囲の刑事達を見回した。

 すると本部長は。

「だったら!! 物的証拠なり科学的でも医学的でもいいから立証してもらいたい!! このままではそんな推論に捜査の手を向ける訳にはいかん!!」
 捜査本部の席上、普段は温厚な本部長が机を叩いて立ち上がった。

 法医学と科捜研の二人の女性は、口調を合わせるように本部長に催眠療法の実験をさせて欲しいと視線を向けた。

 本部長は上級庁と話して来ると言って会議を終わらせ会議室をそのまま出て行った。

 果たして法医学と科捜研の二人の推論は立証されるのか、そして犯人逮捕に繋がるのか、それは未だ計り知れない新たな挑戦であった。



【中巻・完結】


鬼畜の美食家【下巻】



【一話】




 鬼畜の美食家達の巻き起こした事件から既に1年以上が経過し、その間も警察は必死の捜査を行っていたが、何一つとして手掛かりは掴めていなかった。

 また、法医学と科捜研で立ち上げた合同の催眠術療法による事件の糸口もまた、被害者を対象として数十人に実施したものの、警察同様に何一つとして手掛かりを得るに至らなかった。

 そして事件が止まって一年以上を経過した現在、鬼畜の美食家達を追うメディアは殆ど消え去り、世間の記憶から薄れて行った。

 被害者は女装子(おとこ)は別として女性だけで400人以上いたが心の傷の癒えぬまま時を過ごし、世間は事件があったことを徐々に忘れて行った。

 街中ではショーパン、ノースリーブ若しくはミニスカートと言った肌を露出する女性の服装が目立ち始め、ピチピチとそしてプリンプリンと柔らかい肉肌を人目に晒していた。

 そして気温が33度を超える猛暑日には一段と肌の露出が度を越して行った。 女達は恥ずべき部分を蒸れに蒸れさせパンティーを内側から汚し脇の下からは甘酸っぱい酸化臭を放っていた。

 それでも鬼畜の美食家達は一つとして行動を起こさず、何かを待つがことく動きを見せなかった。

 そして翌年、事件発生から三度目の夏、再び恐ろしい事件が発生した。

 24歳の被害女性は両尻から膝までの血管と筋のみ残された形で肉を全て切り取られていた。 まさに神業と呼ぶに相応しい悪魔の所業に手当てに当たった医師団は呆然とその状態を目の当たりにした。

 そして陰部に至っては、大陰唇と小陰唇を失いクリトリスに置いては数センチ奥から抉り取られ、右乳房を全摘出されて無残な姿だった。

 被害者は集中治療室に運ばれた風呂桶のようなものに首まで漬け込まれ特殊な液剤で守られるように上蓋をかけられた。

 まるで何かの人体実験のような状況だったが、両尻から両膝まで身体を支える肉が無くなっていたことでの苦肉の策だった。

 そして犯行現場には数本のビール瓶とコップや皿、そして焼肉のタレに肉を焼くのに使った使用済みの割り箸が残されていた。

 人間を人間とも思わぬ悪行は七輪の渡し網にこびりついた肉片をみれば誰にでもわかることであって、現場検証を行った刑事や鑑識の誰もが嘔吐しかけていた。

 一方、蓋を掛けられ風呂桶から頭だけ出している被害者は気付くことなく眠りに落ちていて、医師達はなんと説明して良いやら苦慮していた。

 そしてその頃、鬼畜の美食家達の一人は何の苦労もなく次の御馳走を誰にするかパラパラと卒業アルバムにも似たデータブックをパソコンの中で調べていたが、その数が数万人にも達していることを誰一人知る者はなかった。

 そして大学病院の集中治療室の中、首だけを出し両腕を後ろ手に縛られたまま、蓋をされ風呂桶に入っていた被害者が目を覚ました。

 集中治療室は被害女性の悲鳴とみ喚きとも取れる驚愕に怯えた声が響き、落ち着かせようと数人の医師と看護師達が慌しく動き回った。

 数分後、ようやくここが病院であることを知った被害女性は首だけ出した風呂桶の中で、医師達から身体の状態を聞かされ両尻から両膝まで肉が無いことを告げられるとそのまま失神した。

 両尻と両足から肉だけを取ると言う神業的な被害を受けた女の下半身は特殊溶剤に漬け込まれていたが、首から無数の点滴の管が左右に広がり無数の機械が彼女を管理していた。

 そしてこの治療法を助言したのは誰でもない、鬼畜の美食家の調理人とも言えるべく白衣の人物であった。

 俗に言う骨や太い血管と筋、リンパ等の付属物はそのままに肉だけを奪われた被害女性の苦痛は計り知れないものであったろうか。

 そして無くなった性器の表面も含めて特殊溶剤は少しずつ彼女の下半身に必要な細胞(にく)を組織していった。

「恐らく以前と同様の復元は不可能ですが、立って歩くことには支障はないと我々は考えていますが、数週間はこのまま安静にしていて下さい…」
 気を取り戻しつつも呆然とする被害女性に説明する医師の額に汗が滲んだ。

「医学は進歩していますが… まずは下半身を修復しそれから整形と言う形で元に近づける以外、手立てはありません」
 説明する別の医師もまた心苦しい表情を彼女に見せた。

 集中治療室は重圧な空気で充満していた。

 その頃、法医学者と科捜研の二人の担当女性は、今回の被害者の言う何かがチクリと刺さったと言う証言に、催眠療法を行う医師と掘り下げる年代について話し合いをしていた。

 これまで過去3年前後の過去に掘り下げていた年代を5年、10年と掘り下げられないか検討をしていたが、被験者にかかる膨大な負担を危惧する催眠術医師の回答は重かった。

 被害女性達が事前に偽装工作をされた時期が解かればそこから糸口が見出せるかも知れないと言う法医学者と科捜研の二人の担当者の熱意は固かったが、催眠療法担当の医師は被害者達の記憶障害を懸念していた。

 



【二話】




 所々に破損形跡のあるコンクリート製の壁。 灰色に囲まれた小部屋の天井からぶら下がる裸電球。 何処かの民家の地下室と思われる一室の真ん中、古いスチール製のパイプベッドの上に寝かされた一人の獲物(おんな)を見て、俄かにニヤニヤする三人の人物。

 何れも顔半分を覆う仮面をつけ用意されたパイプ椅子に腰掛ける。 白衣の人物が獲物(おんな)の衣服胸元をナイフで切り裂いたのを見て、前屈みにかって三人の人物達は両手に拳を握った。

「申し訳ありません… 獲物(おんな)では無いようです…」
 白衣の人物の言葉に椅子に座っていた三人は首を傾げて立ち上がると、獲物(おんな)の乳房を見据えた。

「最近は妙な雑魚(おとこ)が多くて困ります… 恐らく女性ホメモンを使用しているのでしょう…」
 白衣の人物は男が履いているスカートをナイフで切断すると、黒い網タイツをピリピリと両手で破りその股間から白いパンティーを剥ぎ取った。

 男の睾丸は袋ごと萎縮して体内に埋れベロンと小さなペニスが左右にフラっと揺れた。

「そこまでして獲物(おんな)になりたいのか… ならば願いをかなえてやることにしよう。 性転換とまでは行かなくても二度と男の身体に戻れぬよう処置することにしよう…」
 白衣の人物は獲物(おんな)と差ほど変わらない男を全裸にすると、三人の人物達の見ている前で両足を大きく広げ膝立ちされて両足首をベッドに縛った。

「見たくない方は御退室して頂いて結構です…」
 白衣の人物は男の股間に局部麻酔をすると、慣れた手つきで男の体内に埋もれた睾丸を肉ごと抉り取ると、小さなペニスの気等部分を竿から切り離した。

 男の股間は見る見る間に血だらけになったが直ぐに止血した白衣の人物は、男の竿を根元から抉り取ってそこへ切り離した亀頭を埋め込むように縫い付けた。

 そして抉り取られた睾丸箇所をまるで縫い物でもするかのように手早く縫合すると、亀頭を囲むように肉肌が小さな割れ目を形成した。

「これで雑魚(コイツ)の夢は叶えられたでしょうね… フッ… もっともここまで萎縮していれば性転換は不可能でしょうから…」
 白衣の人物は男の股間をT字包帯でしっかりと固定すると、今度はバックから取り出した注射器にシリコンを注入し、男の膨らんだ乳房を鷲掴みして乳首にシリコンを注入した。

 乳首は見る見る間にその大きさを女性(ほんもの)のように変えた。

「乳輪は何処かのクリニックでやってもらえばいいでしょう…」
 三人の観客はその手際の良さに思わず白い手袋をした手で拍手して見せた。

「ところでこの肉… 食して見たいと言う酔狂な方は居られますか? 獲物(おんな)の肉と違って歯応えがあると思いますよ」
 白衣の男は両手からゴム手袋を外すと、洗面器の中の消毒液で手を洗い三人を見回した。

 白衣の人物は大きく頷いた一人の人物を見据えてニッコリと笑むと、男から切除した肉片と竿、そして睾丸を水洗いし塩水に漬け込んで揉み洗いしてパッと水切りしてザルに移した。

「まあ、元を正せば女と勘違いした我々の所為なんですが、雑魚(コイツ)も食べて貰えて幸せでしょうね…」
 白衣の人物はザルの上に置いた肉に二本の金属串を差し込むと、七輪で肉を丁寧に炭焼きし小部屋は肉の焼ける匂いで充満し、白衣の人物は直ぐに換気扇を回した。

 深夜、古民家の煙突から肉の焼ける匂いが風にのって辺りに漂った。

 そして翌日、病院のペッドの中で自分に起きた事実を聞かされた女ホルを使っていた男は唖然として点滴をしようとする看護師に右腕を差し出した。

 数時間後。

「何だってぇ! 君も! 君もチクリっと何かが刺さったと言うのか! 確かに君は女顔だが……」
 事情聴取に来た数人の刑事達は唖然として、被害者が差し出した自撮写真を携帯の中に見せて貰うと、その美形に息を飲んだ。

 女装コンテストで何度も優勝経験を持つと言う被害者は刑事達にその時の写真の全てを携帯の中に見せた。

「てことは、鬼畜の美食家(はんにん)達は君を女性と勘違いして…」
 刑事達は手帳にメモを書き込むと慌しくその場を離れたが、一人残された被害男性は性器を取られたことではなく、肉を喰われたことに涙を頬に伝えた。

 更に数時間後。

「これ以上は無理ですね! 限界です! いくら催眠術と言っても15年前まで遡れば被験者に何らかの悪影響が出る可能性は否定出来ない! 私は医師として警告している!」
 催眠療法担当の医師は法医学者と科捜研の女性二人を前に豪語した後、横に居た数人の警察幹部を睨み付けた。

 この時、催眠術では既に14年前を探索していたが、15年前を要求した二人の女性達に医師は困惑していた。

 現在25歳と言う被験者は、起こされたリクライニングベッドの上で上半身をユラユラと揺らしていた。

「やって… やって下さい…… 憎い… 憎い犯人をやっけるために…」
 被験者はユラユラと上半身を揺らしながら虚ろな視線を一人の医師と二人の女性に向けた。

「兎に角、今日はここで終わります!」
 医師は看護師達に被験者を部屋に戻すように指示すると不機嫌な表情を諸にだして部屋を出て行き、法医学者と科捜研の担当の二人はガックリと肩を落として部屋を後にした。

「14年前でも無理か… もしかしたら15年、いや16年前、それ以前かも知れないと言うことか… 或いは的外れか……」
 数人の警察幹部の一人がボソっと語るとそのまま部屋を後にした。

 警察関係者は被害者の供述の裏を取ろうと催眠術による捜査を行っていたが、厚い壁に突き当たっていた。

「医師(せんせい)! やらせて! やらせて下さい! 私の身体も人生もボロボロにした憎い犯人を捕まえるためにも! 15年でも16年でも!」
 片方の乳房と片尻、そして内モモと陰部を失った被害者の女性は個室の仲で催眠術の医師に涙ながらに嘆願していた。

 催眠術の医師は硬い表情をしたまま被害者の部屋を無言で出て行った。




【三話】



 目立たない路地裏の準備中と書かれた喫茶店の奥。 小部屋でヒソヒソ話しをしていた仮面を付けた数人。
「どうでしょう、そろそろ一旦止めませんか? 獲物(おんな)は順次育っているようですが警察も何かを掴んでいるかも知れない。 この辺で一旦食事会を停止すると言うのは…」
 
 白い仮面をつけた人物の言葉に赤、青、黄色の仮面をつけた者達は一同に無言で頷いて見せると、赤い仮面の人物が自らの念願を小声で口にした。

「一度でいいから♪ 太もも… 生きた獲物(おんな)の内モモの肉をガブリと直接噛み千切って見たいのだが…」
 白い仮面の方を向いた赤仮面は無言で返答を待った。

「いいでしょう。 但し、人間の歯では噛み切れませんからねえ~ そうですねえ~ 歯の上から… そう何か鋭利な物を被せて… いや、切り口さえ付ければ普通に喰えるか… これから長い停止に入りますからね。 夢は叶えて差し上げますよ」
 白仮面は斜め上を見上げ、入れ歯を想像しつつ獲物(あし)の噛み切り方を想像し、仮面一同を白から見回した。

「それなら私も、一度でいいから乳房を… では私は尻肉を!」
 青仮面が乳房の話をすると慌てて黄色仮面は自らの願望を急ぎ言葉で割って入った。

「それなら獲物(おんな)は一人では足りませんね… 三人… 最低でも三人は必要ですね… まあ、これだけの人数ですからね~ それぞれ、好みの獲物(おんな)の番号をメモしといて下さい」
 白仮面は三人の仮面たちの前のテーブルに厚みのある一冊のファイルを置いて押し付けた。

 三人の仮面たちは落ち着いて一ページ目から身を寄せ合って見つめ始めると、指を指して写真を追った。

 そんな仮面たちをそのままに白仮面は席をクルリと左に回し足組して紅茶を飲み始めた。

「焦らないで下さい… 最初は白仮面さんから決めて頂き次は青さん、そして黄色さん順です…」
 物静かな物言いをする白仮面は席を立つとノートパソコンを立ち上げ、街の地図を見始めると、紙で出来た無数に印のついた地図と照らし合わせて見始めた。

「しばらく活動を停止しますからねえ~ 在庫も欲しいところですね… 三人と言わず一気に数十人から肉を頂いて冷凍保存しておきますか… ところで黄色仮面さん、警察の動きはどうですか?」
 三仮面の方を振り返らずに黄色仮面に口を開いた白仮面。

「警察では今のところ獲物から被験者を募って、催眠術(いし)に依る催眠療法でチクリの謎を糸口として追っています…」
 自らに背を向ける白仮面に黄色仮面は小声を発した。

「そうですか… チクリから糸口をねえ…… まあ、無駄骨に終わるでしょうねえ… いくら催眠療法と言えど、あの年代まで疎か昇ることは不可能でしょう… 仮に偽装工作と思われているチクリが解かってもそれ以上のことを突き止めるのは無理でしょう…」
 白仮面は黄色仮面を向くことなく小声で落ち着き払った物言いをした。

「でしょうね… まさか獲物に7歳頃から種蒔きしているなどとは現代の医学を持ってしても突き止めるのは不可能でしょうね…」
 腕組して少し声を弾ませる黄色仮面。

「無理すれば被験者になっている獲物の人格そのものをも破壊してしまうプログラムが形成されていることも、ヤツらは知らない…」
 目の前のコーヒーを飲みつつ言葉を発した青仮面は、笑みを浮かべて見せた。

「まあ、時限爆弾付きの催眠術(すべ)ですからね… 獲物には罪は無いにしてもプログラムに近づいた時点で、獲物は人生の全ての記憶を消去してしまう… 危険なプログラムです……」
 白仮面は地図に新しい印を付けると、その一部分のみを切り取って残りの地図を細かく千切って灰皿の上、ライターで火を点けて燃やした。
 
「次のレストランの場所は決定しましたよ。 まあ、十分なスペースでしょうか…」
 地図を燃やしきった白仮面はイスをクルリと回して三仮面のほうを見ると、ファイルは青仮面に移っていた。

「ところで赤仮面さん。 次のレストランの場所の下見チェック。 またお願いしますよ…」
 赤仮面は無言で頷くと白仮面をチラッと見て目印をしてある小さな地図を受け取った。

 そしてファイルは青仮面から黄色仮面へと移動した。

「今回は皆さんの夢を叶えると同時に冷凍保存用の肉も取らないといけません。 大人数になると思いますから手当ての方もお手伝い頂きますよ」
 白仮面はその場に立ち上がると三仮面を見回し皆、無言で頷いた。

「では、この店はもう使えませんから次回は別の場所で……」
 白仮面に言われた三仮面達は正面玄関と裏口から個別に外へと出て互いの顔を見ることなくチリジリに店を離れた。

 そして白仮面はテーブルに置かれた獲物の書かれたメモとファイルをバックに仕舞うと、自らも裏口から外へ出てその仮面を外し離れた。

 その頃、警察では聞き込み捜査と平行して10歳代までの催眠療法を試していたが、被験者の協力的姿勢も空しく何も出ては来なかった。

 だが、科捜研と法医学の推理は当たっていたものの今一つの詰めに苦しんでいた。

 四仮面達の獲物の作り方は5歳以下の女児を対象に行われたモノであって、万一にも催眠療法などがその年齢に達すると自爆するかのように、被害者達はその人生の記憶の全てを抹消される恐ろしいプログラムがなされていた。

 5歳児から既に獲物として深い催眠術によって構築された女性達は、15年~20年でも鬼畜の美食家達からの暗号のようなモノで操られ、拉致監禁されたのではなく自発的に指定された場所へ集まるように仕向けられていた。

 そして今も10年後、15年後の食料(えもの)のために鬼畜の美食家達は女児に深い催眠術を仕掛け続けていた。

 科学の力も医学の力も及ばない恐ろしい計画は秘密裏に警察の目をかいくぐり様々な場所でそして美少女達に仕掛けられていた。

 それはまるで獲物(おんな)達の牧場のようなシステムであって、喰われる者が自らを喰う者のところへ移動する仕掛けでもあった。

 将来、自分が喰われることを知らぬままに操られる獲物(おんな)に哀れさを感じる。

 そしてそれから数日後、獲物(おんな)達は電話で白仮面に意味不明な言葉を告げられると目を虚ろに電話を切った。

 一人、また一人と総勢25人の獲物(おんな)達は次々に電話で呪文を聞かされ目を虚ろにとある場所へと自ら出向き待ちかねたように、何処かの大きな廃屋の部屋で白仮面に出迎えられた。

 獲物たちは全員(みな)一様に目を虚ろにさせ白仮面の指示したベッドに仰向けに静かに倒れると、そのまま静かに瞼を閉じた。

 スーツスカートの獲物やジーンズ姿の獲物、そしてショートパンツの獲物にワンピース姿の獲物と、それぞれが夫々の服装でベッドに倒れ横になって行った。

 そしてそこへ別の部屋から来た三仮面の人物達は御目当ての獲物(にく)を探しに右往左往して探し回った。

 総勢25人の獲物のうち22人の獲物(おんな)をハサミを使って全裸にし麻酔を打つ白仮面を手伝うように三仮面達もまたハサミを手に獲物(おんな)達を全裸に、使用済みの下着やストッキングの匂いに鼻息を荒くさせた。

 そんな中、白仮面は三仮面達を振り向くことなく、三仮面指定の獲物(おんな)の喰われる部分に局部麻酔をし食い千切りやすいようにメスを入れてあるいた。

 プリ~ンとした内モモ、尻に乳房と獲物(おんな)達は何も知らぬまま自らの柔肌に入るメスに微動だにしなかった。

「今夜は最後の晩餐。 心行くまで肉をお楽しみ下さい…」
 白仮面の言葉に従うかのように赤仮面は目の前の女の汚れた割れ目に舌を押し付けると下から上へとペロリと舐めそして吸い付いて味わってから、御目当てのプリンのような内モモに歯を立ててかぶり付いた。

 血液の溢れるメスの入った傷口に前歯を押し付け口元を血だらけにした赤仮面は、そのままグイッとプルプルした生肉に下顎を使って貪り付くと再び激しい血しぶきが赤仮面の口元に吹き飛んだ。

「難しいでしょう… やはり生は?」
 白仮面は赤仮面の肩をポンポンと叩くと下顎の辺りにもメスを入れ肉を切り裂き、赤仮面は首を振って礼を言うと再びガブリとプルプルした内モモに被り付いた。

 そしてその横で尻肉に被りつく黄色仮面と、その左横に居て乳房を噛み切ろうとする青仮面の額に脂汗が滲んだ。

 白仮面はそんな三仮面を見ることなく獲物(おんな)達から肉を削ぎ抉り取って袋に入れその都度、獲物(おんな)の手当てに奮闘した。

 そんな白仮面を気にも留めない三仮面は個々に仮面もろとも地シブキに顔を真っ赤に染め、噛み込んだ肉を噛み切ろうと奮闘していた。

 そして四十分を過ぎた頃、三仮面の獲物を別にして白仮面は全ての獲物から肉を奪い事後処置を済ませていたが、チラリと三仮面を見回すとソコにはオゾマシイ血だらけの三仮面が噛み千切った肉を口に銜えたまま立っていた。

 白仮面は慌てて三仮面に近づいて獲物(おんな)達の生存を確認すると、慌てて消毒と事後処置に奮闘し、三仮面達は肉を銜えたまま後ずさりして大きな白い皿の上に肉を落とした。

 血に染まった真っ赤な肉とその血生臭い匂いに三仮面達はニヤニヤと笑みを浮かべつつ、白仮面の指示で洗面所で血を洗い流すことにした。

 三仮面達は互いの仮面の下を見ようとせずに只管に顔に水で洗い流すと、再び仮面をつけて血に染まった上着を脱いで別の服に着替えると、炎の燃え盛る暖炉に血の滲んだ服を放り投げて燃やした。

 暖炉の炎は音を立て火柱を大きくしつつ三仮面の上着を飲み込んで行った。

 そして白仮面が用意していたテー部目の前に立つと、用意しておいたパイプ椅子に腰掛けた三仮面を見渡した。

「如何でした? 夢が叶った気分は…」
 テーブルの上に置かれた白い大皿に乗った、内モモと乳房と尻の肉を見回した白仮面に三仮面は大きく頷いて笑みを浮かべた。

「で、召し上がり方は如何なさいますか?」
 三仮面を見渡す白仮面は全員に白いナプキンを手渡した。

「私のは刺身で! 刺身で頼みます!」
 赤仮面は前のめりに声を興奮気味に弾ませた。

「私のは串刺しでミデアムで焼いて貰いたい…」
 赤仮面に釣られるように興奮気味の青仮面もまた上半身をせり出した。

「私のはスライスして軽く炙りで頼むよ…」
 興奮から覚めたように尻肉を前にした黄色仮面は口元をナブキンで拭いてシャンパンを一口飲んだ。

「かしこまりました… みなさん、相当のお楽しみでございましたねぇ~ まるで狼のようでしたよ…」
 口元に笑みを浮かべる白仮面は後ろに用意された調理器具を使って指定通りの料理に取り掛かった。

 三仮面は待ちきれないとばかりにワインをそしてシャンパンで血生食い口の中を洗い流した。

「取敢えずここ一年分くらいの収穫はしておきましたから、ご安心して下さい…」
 白仮面は三仮面に背中越しに取れた肉の話しをしつつ、何やら頬を微笑させた。

 総勢25人にもたっする獲物(おんな)達は、自らの身体から肉が奪われたことすら気付かずに眠り、そしてその横では舌堤を打って食事をする三仮面がいた。

 



【四話】



 包帯に包まれた総勢25人にも達した獲物(女)を左横に見つつ、食事をする三仮面に対して白仮面が声を少し張り上げた。

「今回でお楽しみは暫く停止しますことは皆様存じているところですが、今回は特別にもう三人の獲物を用意しています。 獲物は隣室にて一人に一体ずつ食して頂きます♪」
 白仮面は食事途中の三仮面に声を弾ませた見回すと隣室に視線を移した。

 そして数分後。

「な! 何だこれは!!」
 隣室へと移動した三仮面は一斉に驚きの声を上げた。

 パイプベッドの上に置かれた獲物(おんな)の前に置かれた小テーブルがあって、その上に白い大皿とスプーンが置いてあった。

「今夜は一時停止を祝して、スプーンで何処でも好きな箇所を好きなだけ召し上がって頂けます! 但し、スプーンの深さは2センチ迄に限らせて頂きます♪ さあー! 何処でも思う存分召し上がって下さい♪」
 白仮面は盛大に声を弾ませて三仮面の前に横たわる全裸の美女達を指差した。

「うおおぉーー! これは良い趣向だ♪」
 三仮面達は鋭利なスプーンを手に握り締め思い思いの調味料を見回して、皿を手に獲物(おんな)の周りを右往左往してみせた。

「これはまるで生きたプリンのようだ♪ 正しく鬼畜の美食家にピッタリの趣向♪」
 三仮面達は獲物の両足を大きく開かせ、または真横にさせ更にバックスタイルをさせて肉の柔らかさと肉肌の匂いを楽しんだ。

 美女ばかりを狙った鬼畜の美食家達のオゾマシイばかりの食欲に、白仮面は口元を微笑させつつ、三仮面達の動きを楽しんでいた。

 そして女達は見る見る間に全身が血に染まり、染まった部分を忙しく白仮面が応急処置をして回った。

 その白仮面の動きたるや楽しげにスキップするがごとく軽やかだったことを三仮面達は見る余裕は無かった。

 合計28人の獲物(おんな)達は我が身に起こった事実を知ることなく深い眠りの中にいて、全身が穴だらけに、そして陰部や乳首を削ぎ取られ無残な姿へと変貌して行った。

 そしてその一時間後、三仮面達は満たされた食後のデザートとして獲物(おんな)達が身に着けていた衣類や下着やストッキングの匂いにウットリしつつ、酒で喉を潤した。

 三仮面達の唾液の付着した獲物(おんな)達が身に着けていた物は全て焼却され、携帯も腕時計も指輪もイヤリングにネックレスさえも高温で炎に包まれ灰と化した。

 いつもながら見事な事後処理に発見した警察も法医学者も科捜研の誰もが舌を巻いた。

 そして都度、犯行現場を変え遺留品を一切残さず、神業とも言える治療を施して119番して忽然と姿を消す鬼畜の美食家達は何者だったのか、謎のまま数年間を経過させた。

 この事件は結局、何一つとして手掛かりを見出せぬまま蔵の中へと収められたが、隠密裏に捜査は続けられた。

 だが鬼畜の美食家と名づけられた犯人に対して、自らの肉を喰われた被害者の無念は晴れることはなく、被害者達は我も我もと催眠療法に名乗りを上げたが、結局、警察は何一つ掴めぬままこの事件は終わった。

 そして5年目の夏。

 再び悪夢のごとく鬼畜の美食家達が動き始め、あれよあれよと言う間に一ヶ月で15人の犠牲者が病院に運びこまれた。

 警察は今度こそと活き込んだが前回同様に鬼畜の美食家(はんにん)達は何一つとして残さなかった。

 だが前回と違っていたのはその残忍さだった。

 自ら犯人のアジトへ出向き拉致監禁された獲物たちの身体からは、二つの乳房と両足の内モモ、更には左右の尻肉と陰部までも剥ぎ取っていた。

 犯人自らが119番通報した被害者達は、全員が瀕死の状態で肉は鋭利なモノで剥ぎ取ったのではなく、噛み切った痕跡が多数を占めた。

 女性達は間違いなく複数の人間に身体を噛み千切られた状態だった。

 メディアは鬼畜の美食家復活と書きたて、何も出来ない警察をあざ笑い無能警察と書き捲くった。

 だがその遣り口に、あるメディアは鬼畜の美食家改め、鬼畜の人でなしと書き綴った。

 一人の女性の身体を複数で噛み千切って喰う所業は最早、鬼畜の美食家とは到底呼べないものだった。

 二つの乳房を無くし両足のモモ肉と尻肉そして陰部までも無くした女性達は入院する病院で回復後に自殺を図った。

「こんな身体で生きていけない!!」
 被害者達は次々に自殺を図り病院は已む無く患者達の両腕をベッドに縛り付けた。

 そんな状況を省みることなどしない犯人達は次々に美しい女性達を誘き寄せては、血の滴る生肉に舌堤を売って口元を血に染めた。

 だがそんな犯人達は以前と全く違い犯行現場に残留物を残していた。

「ヤツラは鬼畜の美食家ではない!!」
 犯行現場を直視した警察は元より法医学者、科捜研の意見は一致していた。

 鬼畜の美食家を真似た模擬犯にしては未発表の犯行現場に酷似しているものの、その残忍な遣り口といい残された遺留品といい鬼畜の美食家達とは全く違っていた。

 そして捜査の結果、第二の犯行を前に鬼畜の人でなしは5人全員が逮捕交流されたが、不思議なことに逮捕された5人は互いの顔も素性も何一つ知らなかった事実が判明した。

「催眠療法を! 催眠療法を使わせて頂きたい!!」
 法医学者と科捜研は強い信念を持って警察上層部と協議を始めた。

「恐らく被疑者本人の承諾は得られないだろう… それに了承無くして実行しても証拠採用されない恐れもある」
 警察上層部は催眠療法の使用に消極的だった。

「裁判所の! 裁判所の許可を! 是非!!」
 法医学と科捜研は零冊上層部に対して数時間の説得を試みた。

「恐らく今回の被疑者は何者かに催眠術を掛けられています! ソコから前回の鬼畜の美食家(はんにん)への糸口が見つかる可能性も!!」
 警察上層部は難色を示しつつも説得に応じ検察を交え裁判所と掛け合って見ると言う返答をした。

 そしてそれから数日後。

「畜生ー!! 一体どんな方法を使ったんだ!! 催眠術をかけると同時に被疑者達はそれまでの全ての記憶を無くしてしまう!! これじゃあパソコンじゃあないか!!」
 ガラス越しに催眠術専門の医師を前に、法医学者も科捜研も警察さえもが机を力任せに叩いた。

 すると科捜研の担当者がポツリと呟いた。

「パスワード… パソコンならデータ消去される前にパスワードを打ち込めば全消去は免れるはず!」
 科捜研の担当者の周りを取り囲んだ法医学者や警察達はその言葉に瞬きを忘れた。

 すると立ち会っていた検察官。

「テレビドラマじゃあるまいし……」
 検察官の言葉に全員が大きな溜息をしつつガックリと肩を落とした。

「だが… 待てよ…… パソコンなら一度全消去しても後から復元てのが出来たはず……」
 一人の刑事が呟いた。

「そうか! 一度失敗して全消去させた被疑者の記憶を復元出来れば!!」
 別の刑事が声を大にして叫んだ。

「復元か…… 人間の記憶を一度リセットして復元させていく… しかしそんなことが可能なのか?」
 検察官。
 
「地道な作業ですね相当… しかし、いくら被疑者と言えどそこまでする権利が我々にあるんでしょうか…」
 若手の刑事が声をすぼめた。

「……………」
 全員が言葉を失い一人、また一人と部屋を出て行った。

 そして最後に残った科捜研と法医学者の二人の女性だけがガラス越しに被疑者を見つめていたが、両手に拳を握った二人の手の平からは爪が食い込んで真っ赤な血が滲んでいた。

 この難関を切り開くのは警察か若しくは法医学者か或いは科捜研か、はたまた第三の人物か! そしてこの話は最終局面へと突入する。
 
 次回、最終章へと続く。



【完結】
 

 

 
【鬼畜の美食家】総集編



【一話】



 猛暑日となったこの日、サラリーマン達は肘に背広を抱え黙っていても額から湧き出る汗を時折拭いた。

 そしてOL達もまた、余りの猛暑にストッキングを履いている者も少なく、時折スカートの中に入り込む風に一息ついて信号の変わるのを待った。

 気温35度。 路面温度は50度にも達しようとしている頃、勤め人ではない女達は個々に体温を逃そうと涼しげな風情を見せていた。

 ムッチリした太ももを揺らすミニスカートにショートパンツそしてプルプルと揺れる胸ラインの見えるノースリーブ。

 否応なく男達の視線は軽装な女達に向けられ、女達もまたその視線と太陽の熱さに顔を背けた。

 そんな中、巷の記憶から遠いていた鬼畜の美食家もこの暑さと、蓄えていた肉の減少に耐え忍んでいた。

 事件発生から既に3年を経過しようとしていたこともあって、捜査本部は事実上解散し鬼畜の美食家達のことを口にする者は何処にもいなかった。

 検察は被疑者不詳のまま刑事告発したが、全身に傷を負った女達の心は癒えることはなく、時効成立まで僅か数年というところへ来ていた。

 だが、一度でも獲物(おんな)の肉の味を覚えた鬼畜の美食家達はその時効を待たずに、成熟した獲物(おんな)達を見て、時折喉を鳴らして見入っていた。

 ただ生きた人間(おんな)の肉を切り取って喰うと言う前代未聞の事件は再び繰り返されようとしていたが、一人として死に至らしめることなくその全てが傷害事件であった。

 平成16年12月31日までの傷害事件の時効は7年。 平成17年1月1日からの時効は10年へと法整備されていたこともあったが、鬼畜の美食家達にとってそんなことはどうでも良いことであった。

 現に鬼畜の美食家の一人は、既に獲物(おんな)を遠くから覗き見てはその視線を太もも、尻、胸へと忙しく移動させ、同じくして他の者も同じようなことをしていた。

「血の滴る尻の刺身が食いたい…」
 鬼畜の美食家の一人は心の中でそう思いつつ、コンビに入る獲物(おんな)を見てはニヤニヤし喉をゴクリと鳴らした。

だが、それはあくまでも妄想であって自分が鬼畜の美食家の一員であることを本人は知るよしもなかった。

用心深いシェフはディナーを終えると決まって全員を個々に風呂に入れ、そして個々に催眠術をかけていた。

 そして犯人達は自分達が鬼畜の美食家の一員であることは普段は忘れシェフによってコントロールされていた。

 そんな中で再びシェフから鬼畜の美食家達へと、ある手段を用いて集合がかけられた。

 シェフは自らの携帯電話を取り出すと、マイクに向かって事前録音されたバーコードのような周波数音を聞かせた。

 その周波数音を聞かされた鬼畜の美食家達は操られるようにとあるはせ諸へと自らが移動し、そしてその場に到着すると自発的に自らがシェフに呼ばれたことを認識した。

 一方、同じやり方で自分に掛かってきた携帯や卓上電話の耳元に流れる周波数を受け取った獲物(おんな)達は、直ぐに催眠術に陥り、相手先の電話番号をすぐさまその場で消去したものの、相手は常に自分手は無縁の携帯電話を使用していた。

 そしてその頃、自らの仕事の途中でシェフは高層ビルの窓の下に見える街並みの中に、自らが催眠術を掛けて回った5歳~6歳の女の子達のことを想い出していた。

 シェフは密かに将来成熟したであろう美貌を持つ女児を思い浮かべつつ、時間を見つけては個々に催眠術を掛け住所や連絡先などの情報を収集しファイル化して保管していた。

 15年後を20年後を見据えたシェフは、長期的犯行として獲物(おんな)達が女児の頃より既に始まっていた。

 そして獲物(おんな)を食したいと言う異人と接触しつつ、その異人にさえも催眠術を掛け、万一にも美食家(いじん)達に催眠療法が行われれば瞬時にして全ての記憶を奪い去ると言う恐ろしい自爆的催眠術を強いていた。

 こうしてシェフは腕を振るうべく数万人の中から第三の獲物(おんな)狩を始めようとしていたが、世間は勿論のこと警関係者の誰一人として気付くことは無かった、

 そして一度(ひとたび)、シェフが電話を用いて、或いは直接耳元で特殊な周波数を用いれば、途端に被害者となる獲物達は呼び出された場所へ自らが足を運びその餌食となっていった。

 食べてしまいたい程にいい女と言う言葉があるが、現実としてシェフは食べてしまいたい欲求を素直に獲物にその気持ちを向けつつも、同じ想いを抱く美食家達を招集しそして解散を繰り返した。

 そして互いが互いの素性には興味を持たぬよう事前に催眠術を用いて万一に備えてもいた。 そんな中、再び女性が犠牲となった。


「いやあ! 実にいい獲物(おんな)だ… 太ももの色艶、尻の張り具合といい胸も相当な物!」
 赤仮面をつけた人物は目の前の寝台に斜めうつ伏せになっているショートパンツ姿の獲物を見て思わず声を張り上げ弾ませた。

 そして一瞬、青仮面と黄色仮面は赤仮面を睨み付け同時に白仮面のシェフもまた、赤仮面を注意するよう睨み付けた。

「ここでは多言無用に願いたい… 美しい食材に見とれるのは結構だが獲物に礼を忘れてはいけない…」
 赤仮面はその瞬間、立ち上がって周囲に無言のまま頭を下げ再び椅子に座ると顔を俯かせた。

「それから毎度のことで恐縮たが、食材への性行為は一切禁止です。 食材は粗末にせぬよう。 我々の会はキャッチ&リリースがモットーです…」
 白衣を纏った白仮面こと、シェフは寝台の向こう側の椅子に腰掛ける三仮面を見回して声を強めた。

「では今回の獲物を捌くため不要な衣類の剥ぎ取りを行います。 香りを楽しみたい方はメモに一品のみ記入して頂きたい。 尚、重なった場合は抽選とさせて頂きます!」
 シェフは三仮面にペンとメモ用紙を渡すと、三仮面達は夫々に欲しいモノを書き込んだ。

 三仮面達はまるで話し合ったかのように、ブラジャー、パンティー、ニーソックスと用紙に書き込みショフに提出すると、シェフは無言のまま斜めうつ伏せの獲物から衣類を剥ぎ取って次々に手渡した。

「スゥーハアァ~ スゥーハアァ~」
 三仮面達は鼻の穴を大きく広げ、個々に無言で渡されたモノに顔を埋め鼻息を立てた。

 獲物(おんな)は全裸状態のまま再び斜めうつ伏せにされると、シェフ自らがその弾力とスベスベした肌の感触をゴム手袋越しに堪能し時折確かめるように指先でムニュムニュと押し付けた。

「さて、そろそろメニューにはいりますが、もうお決まりでしょうか?」
 再びシェフが人型図の書かれたメモ用紙を配ると、三仮面達は個々に自分の希望する部位と調理法を要望として書き込んだ。

 そして30秒後。

「さてさて弱りましたね… 大陰唇(アワビ)が三人分… 乳房が二つと内モモが両方に尻が二つ… これでは獲物の処置が困難… どなたかA型の肩はおりませんか? 輸血が必要になります」
 シェフの言葉に三仮面達は仮面越しに顔を見合わせ、赤仮面と黄色仮面の二人が手を上げた。

「結構です。 お食事後にお二人に御協力を願います」
 シェフは言葉を穏やかに仮面越しに二人の目を見て頭を軽く下げると、獲物の全裸に印を付け数書類あるメスと鋭利なハサミを必要順に並べた。

「この獲物の乳房… Dカップと少し大きいですからCカップほどにさせて頂きますが御容赦下さい…」
 全裸の獲物を見つめる三仮面達は喉をゴクリと鳴らして大きく頷いた。

「あと、大陰唇(アワビ)は左右二つを切り取ってから三等分しますが刺身は如何ですか? そのままの味を楽しめると存じます。 まあ、煮て良し焼いて良しのアワビですが、幸い汚物(クリーム)も付いてますから…」
 全裸の獲物(おんな)を仰向けにし両膝立てて広げたシェフは、大陰唇を左右に開いて中に見える白い摩り下ろしたような山芋風の汚れを三仮面に見せた。

 三仮面達は両手を机に付いて喉をゴクリと鳴らし前屈みに覗き込むと、三人同時に大きく頷いて口元に笑みを浮かべた。

 シェフは獲物の大陰唇を閉じたり開いたり「ニッチャニッチャ!」と、音を三仮面達に聞かせると、赤仮面は一瞬拍手をしそうになり気まずそうにその手を引っ込めた。

 そして数分後、シェフはスプーンで汚れを擦り取ると器に移し替え手に持ったメスが獲物の大陰唇を左側からゆっくりと切り取った。 そして空かさず右側の大陰唇を切り取ると、溢れてきた血液を止めるべく止血剤を用いた。

 獲物は自分の身に起きている事実を知ることなく声一つ立てずに眠っていて、続けざまに切り取られた両足の内モモと両方の尻肉にさえ痛みを感じていなかった。

 シェフは直ぐに止血の処置をしつつ、獲物の肉を三仮面達の見ている前で調理しながら獲物の脈を診て腕時計に視線を向けた。

 そして三仮面達は目の前の白い皿に置かれた三等分された大陰唇(アワビ)と、その上から掛けられた白い汚物にナイフとフォークを握り締めた。

 シェフは密室に響く「クチャクチャ!」と、言う耳障りな音を聞きながら、下半身の手当てをして獲物から白くてプリプリした乳房を二つ切り落とし手当てを施した。

 その手さばきたるや三仮面達は大陰唇(アワビ)の刺身を飲み込みつつ、ただただ唖然と見詰めていた。

 そして獲物の身体は見る見る間に全身を白い包帯で包まれつつも、同時にまな板の上でスライスされる乳房に更に三仮面達は目を見張り、炭火の上に置かれた渡し網の上で焼かれる二つの内モモの手さばきに固まった。

「私のことは着にせずに召し上がってください」
 シェフは網焼きされた二つの内モモを三等分すると、白い別の皿にパセリと一緒に盛り合わせた。

「いや、いつもながら見事な手さばきに… あ、いや、これは失礼!」
 つい言葉に出した青仮面は身を後ろに引いて頭を軽く下げつつ、スライスされた乳房の肉を氷水に浸したシェフの手さばきに視線を移した。

 そんな中で、シェフは淡々と仕事をこなし氷水に浸し血抜きをした乳房のスライスをフライパンの上で蒸し焼きにし始めた。

 ふたをしたフライパンの中から「ジュゥージュゥー」と、肉の脂の水の跳ねる音が密室に響いていた。

「申し訳ありませんがさきほどお願いしていた献血ですが、これからお願いします…」
 シェフの言葉に席を離れた二人は、まるで病院での採決のように血液を専用容器に必要最低限度摂取された。

「これだけあれば獲物の命に別状はないでしょう… 感謝します」
 シェフは寝台に仰向けの獲物(おんな)をそのまま手で押して隣室へと運ぶと、輸血を始め血圧と脈拍の測定に入った。

 そして数分後「そろそろいい頃合だ」と、独り言をいいつつフライパンのふたをあけると火を止め、別の白い更にスライスされ焼けた乳房の肉を配置し、最後に煮汁を上から回すようにかけた。

「今夜の料理はこれまでです。 残り時間三十分、ごゆっくり御堪能下さい」
 シェフは冷えたワインを三仮面に注いで回ると、最後に自らも寝台のあった壁際の椅子に座り足組してワインを口中に転がした。

 この夜の晩餐会は三十分後に終わりを迎えたが、食材となった獲物(おんな)は輸血の他に数種類の点滴を受け続け、その最中に一切の証拠を全員で消し去り同時に一人ずつシャワーで全身を洗った。

 そして最後の最後。 三仮面達は一人ずつ今夜のことを忘れるべくシェフの手によって催眠術をかけられ、万一にも情報が別の催眠術によって解き明かされそうになった場合の起爆剤を催眠術の中に仕掛けた。

 万一、別の催眠術によって解明されそうになった場合、三仮面達は自らの全ての記憶を失う結果だったが、シェフ意外にその真実を知る者は居なかった。

 



【二話】



 

 世間は再びやってきた恐怖に恐れおののき新聞各社はこぞって「鬼畜の美食家」到来を、社会面トップで取り上げテレビを含むマスコミは勿論のこと司法を含む政界にまでその恐怖は及んだ。

 そして次々に起こる難事件に再び捜査本部が設置され科捜研、法医学も新メンバーを迎えつつ捜査協力に激闘を開始した。

 一人、また一人と被害者が続出し、多いときは複数の女性達が身体の数箇所を奪われていったが、事件現場には被害者以外の遺留品は髪の毛一本残さない巧妙な手口は過去の事件と一致していた。

 だが、そんな中で再び行われた被害者の内の一人の女性が催眠療法に基づく被験者として奇妙なことを話した。


「私が全身麻酔で動けず話すことも出来なかった時、誰かが私の顔を覗き込んだ瞬間、微かに香水か化粧を感じたんです… 覗きこんだ人なのか或いは何処からか漂ったのか解かりませんが、確かにその場に女性が居たような……」

 被験者は声を細め震えさせるとそのまま再び眠りに入った。

 催眠療法実施の医師は直ぐにそのことをガラス窓の向こう側にいる警察関係者に話した。

 警察、科捜研、法医学者たちは唖然とした。

 女性の身体から肉を取りそれを喰らう輩の中に女性らしき人物が居たと言う証言に夫々に耳を疑った。

 すると突然、一人の刑事が大笑いした。

「あっははははは♪ そんな馬鹿な♪ 最近じゃ男でも香水をつけてるヤツも多い♪ 女とは限らんでしょう♪」
 刑事は左手を壁に寄りかかって唖然とする周囲の顔を見回した。

「そ! そうですよ♪ 被害者の傍に同性が… あ、いや! 女装マニアかオカマかも知れないし、それに香水の類なんて誰でも…」
 別の刑事が壁際の刑事に話しを合わせた途端、周囲が賛同しないことに黙りこんだ。

「考えられないことではないわね… 彼女の肉を調理したか或いは食べた側かはわからないけど…」
 科捜研の女性担当者は法医学者の女性医師に視線をゆっくりと移動させた。

「香水か… 化粧か~……」
 法医学の女性医師は両腕を組んで直ぐに右手をアゴに腕杖をついて歩き回った。

「もしも犯人の中に女性がいるとしたら… 被害者に容易に接近出来るかも知れないわ……」
 科捜研の女性は歩き回る法医学の女性医師に声を向けた。

「せめてそれが香水か化粧かが特定できれば…… 一歩前進かぁ……」
 立ち止まって科捜研の女性に身体を向ける法医学の女性医師。

「ですが、今時は男だか女だか訳の解からん中性ってもいるし、それこそ性転換者とかゲイかも知れない。 無意味ですよその情報は…」
 窓ガラスに背中をもたれさせた刑事は会話の全てを否定した。

「そうですよ。 女が女の肉を喰うとか調理するなんて考えたくないっす!」
 若手の刑事。

「被験者(かのじょ)が目を覚ましたらもう少し聞いてみる必要があるわ!」
 法医学者の女性医師は窓ガラスの向こうのベッドに居る被験者を見つめた。

 数日後、警察関係者が再び病院を訪れたものの、被害者は自分に起こった不幸を知り話しを聞ける状態ではなかった。

 両乳房と両尻、そして両側の内モモと性器を失った被害者の泣き叫ぶ声をドア越しに刑事達は無言で立ち去るしかなかった。

 そしてそうしている間に再び被害者が病院へ運び込まれた。

「既に600人!! 過去を含めると600人の被害者が出ていると言うのに何をしとるんだ貴様らは!!」
 警察庁幹部は怒鳴り散らす長官を前に一言の言葉もなくただ黙って俯いていた。

「何が何でも犯人を捕まえろ!!」
 警察庁長官は頭から湯気を立ち上らせ机に拳を叩きつけてその場を立ち去った。

 鬼畜の美食家達の犯行は淡々と行われる一方、警察は総力をあげて捜査に当たったが手掛かりは香水か化粧臭だけと言うだけだった。

 そして再び発生した事件の被害者がこう証言した。

「私は全裸で男達に全身を隅々まで嫌らしい手で触られた… ゴツゴツした手で身動きの出来ない私はその手に肌を犯され仰向けに、うつ伏せに、そして斜めうつ伏せにされた…」
 麻酔の効きにくい体質だった女性は肉を切り取られる瞬間、その痛みに泣き叫んだと言い、直ぐにその部分に注射をされ気を失ったと言う。

 被害者は両乳房と両側の裏モモを切り取られていた。

「やはり犯人は男と言うことか…」
 刑事達は警察署の中の喫煙コーナーで見えない犯人像を追いそして乳房を切り落とされる被害者の想像から感を反らした。

 だが、科捜研と法医学者は香水のような匂いと言う方向から離れずに居た。

「仮に立場はどうであれその場に女が居たとしたら、その女の役割は何?」
 二人は携帯電話で無言の数分を経て通話を切ると、あらゆる可能性を互いに想像しメモに書き留めては消した。

「絶対に何か共通点があるはず… 催眠療法でもわからない共通点が……」
 居場所を別々に二人は机を前に一点を見つめた瞬間、警察から一報が二人に入った。


「直ぐ現場へ来て下さい!!」


 二人は突然の電話に顔色を変え迎えに来た刑事達の車に飛び乗り再び起きた悪夢へと向かった。

「なにこれえぇー!」
 それぞれに刑事達と現場へ向かった二人が見たモノは、現場の床一面に散乱した女物と思われる髪の毛だった。

 その量たるや見た者を圧倒させるほどであって、鑑識も何処から手を着けていいか解からぬほどだった。

「もしかしたらこの中に鬼畜の美食家(はんにん)達の遺留物が……」
 何万、何十万本もあろうかと言う女物の髪の毛と、その意図が解からぬまま遺留物である髪の毛の全てが警察に押収され科捜研に持ち込まれた。

 そしてその頃、スクープとばかりに大声を発するリポーターをテレビの中に見ていた人物が口元に笑みを浮かべて居た。

 何故、遺留品を全く残さなかった鬼畜の美食家(はんにん)達が、突然大量の慰留品を残したのか、マスコミは一斉にその謎に有識者と名乗るコメンテーターを相手につまらない雑談を始めていた。

 変質者なのか、はたまた人食い人種なのかと、自称、有識者達は勝手な推論を展開しそれを煽るように無知なタレント達が突っ込みを入れていれ、司会者もまた画面一杯に顔をアップさせた。

 そして同時に何万、何十万本もあろうかと言う髪の毛を一本、また一本と電子顕微鏡で覗く科捜研のスタッフたちに混じり法医学者達も複数居た。

 果たして鬼畜の美食家(はんにん)達の残した遺留品の中に犯人の手掛かりはあるのだろうか。

 


【三話】



 
 薄汚れた何処かの地下室。 裸電球の下にある寝台に乗っている化粧の濃い茶髪熟した獲物(おんな)が一人横たわっていた。

 身体のラインが出る真っ赤なミニワンピースから突き出した脚を黒い網タイツが包み、寝台を軽く動かしただけで全身がプルプルとプリンのように揺れた。

 そんな獲物(おんな)を前に、白衣に身を包んだシェフがポツリと呟いた。

「こんな娘になっていたとはなぁ… 純真無垢で天使のようだったのに……」
 シェフは獲物の幼稚園時代を思い出し薄汚れた壁に遠くを見つめた。

 そして無言のまま獲物の上半身を脱がせブラジャーを外すと、再び「豊胸か…」と、寂しそうに乳房を鷲掴みし獲物の下半身を覆う網タイツをビリビリと破り捨て赤いティーバックを剥ぎ取った。

「くそ! こんなアバズレになってたとは……」
 大きく開いた両足の真ん中、大陰唇を左右に開いたシェフはその小陰唇の黒ずんだ肉の色に拳を握り絞めた。

「今夜のディナーは中止だな… こんな獲物(おんな)じゃ客に申し訳ない」
 シェフは獲物の両手を頭の上でベッドに縄で縛りつけると、準備していたモノを全て片付けてから証拠を隠滅しそのまま119番に連絡を入れ立ち去った。

 シェフからの電話に駆けつけた救急隊員と警察関係者は、全く無傷の被害者に毛布を掛けるとそのまま救急車で搬送した。

「まぁ、こんなこともあるさ!」
 シェフは投げやり的に言葉を吐き捨てると、電車を降りて駅から立ち去った。

 その頃、警察では初めて無傷で帰された被害者が入院している部屋の前で、医師が部屋から出て来るのをジリジリとまっていた。

 何故に無傷なのか、他の被害者と何がどう違うのか刑事達は解からぬまま時間が経過するのを待ち、そして出て来た医師に詰め寄った。 


「特別、変わったことはありませんね。 ハッキリ言って不謹慎かも知れませんが、美形そのもので不思議としか言いようがありません…」
 その場を立ち去った医師の後ろ姿を見つめた刑事達は唖然として見送った。

 そして出て来た看護師たちから時間制限を受け入室を許可された刑事達は、一斉に部屋の中へと足を踏み入れた。

 だが質疑応答の中で犯人に繋がる物証も証言も聞きだせぬまま時間が経過した。 そして彼女自身、何故自分だけが無傷だったのかその理由に苦慮していた。

 人工的に乳房を豊胸しそして擦れ過ぎて黒ずんだ小陰唇の所為だなどとは誰も気付くはずはなかった。

 だが客を待たせていたシェフは次こそはと密かにファイルから獲物を探し始めていたが、途方も無い髪の毛の検査に時間だけを浪費する科捜研と法医学者達だけは目の下に隈を作って作業に追われていた。

 そしてその間、警察は今回の被害者が何故に無傷で帰されたのかから、糸口を見出そうと見当違いの捜査に着手していたものの、シェフは「大量の髪の毛の謎」と、題されたテレビの映像を横目に鼻で笑っていた。

 警察は過去に何一つとして残さなかった鬼畜の美食家達の唯一の遺留品と、無傷で生還した被害者の辺りを懸命に捜査していたが、一向にはかどらない髪の毛の存在に苛立ちをも覚えていた。

 単に警察をからかっただけのシェフは「次は何を残してやろうか」と、ジョーク交じりに知恵を絞りつつ獲物ファイルを見つめていた。

 そして獲物を決めたシェフは「ニヤリ♪」と、大きく笑むと街中の公衆電話から獲物の携帯に電話し、なにやら呪文のような言葉を獲物に聞かせ電話を切った。

 
 数日後。


「待っていたよ… さぁ、楽しい遊びをしようね♪」
 草木に覆われた古民家へ、夢遊病者のように空ろな目をしたOL風の美形女性が入ってくると、閉じた玄関の中でシェフは彼女の耳元で囁いた。

 女性は無言でゆっくりと俯くと白衣を纏ったシェフの後をゆっくりと付いて行き、奥の部屋の寝台に自ら横に天井に顔を向けた。

「さあ、一緒にお医者さんごっこをしよね…」
 女性は無言のまま瞼を閉じると全身の力を抜いて、シェフに身を任せた。

 シェフは彼女の持っていたスーツをハンガーに掛けるとそれを壁際に、白いブラウスのボタンを一つ、また一つ外し白いスリップとブラジャーの肩紐をゆっくりと外した。

 乳房はプルルン~と、揺れシェフの目を楽しませつつも、シェフは持っていたハサミで彼女下半身からスカートを切り裂いて取り除いた。

 白いスリップを捲くり上げ、黒いパンティーストッキングに包まれた見事なプロポーションにシェフは黙って数分間見入ると、それを「スルスルッ」と、脱がして寝台に置くとそのまま白いパンティーを剥ぎ取った。

 更にハサミを使ってスリップを真っ二つに下側から切り裂くと同時にブラジャーをも切断し、彼女を全裸にさせ再び仰向けし甘酸っぱい彼女の体臭を鼻で大きく吸い込んだ。

「あんなに小さかったのに…」
 シェフは遠い過去を振り返りつつ無言で全裸の彼女の陰毛に鼻を密着させ再び鼻で大きく匂いを吸い込んだ。

「なんていい匂いなんだ…」
 無言で数回匂いを嗅ぎ取ったシェフは彼女の両足を大きく開かせて立ち膝させると、縦に割れた陰部の匂いを楽しみつつ、両手の親指で左右に開いた。

「なんて綺麗なんだ…」
 シェフはそのピンク色した肉に目を奪われ時折、刺激臭に咽ながら大陰唇と小陰唇の間をスプーンでなぞり女の汚れを取ると白い大皿にそのスプーンをおいた。

 そして今度は「さあ、お注射をするけどチョットチクッとするからね♪」と、彼女の耳元に囁くと、女性は小さく頷き、シェフは時計を見つつ彼女の腕に針を刺した。

「痛いかい…」
 耳元で囁くシェフに彼女は首を左右にゆっくりと振ると、シェフは「ニヤリ」と、笑みして神業的に慣れた手つきで局部麻酔して彼女の身体から右乳房を根元から切り取って素早く止血して手当てを終えた。

 それから三十分後、寝台の前に置かれた白いテーブルクロスの上、テーブルの大皿にはスライスされた乳房のソテーが斜めに盛られ、レモンが添えられていた。

 そして切り取られた二つの大陰唇(あわび)は、斜め切りされ一口大の刺身に盛り付けられ、スプーンに入っていた女の汚れとも言うべきシロップをトロリと流し垂らしパセリが添えられ皿の上には未使用の割り箸が置かれた。

 更に左足の内モモから100グラムほどの肉をメスで切り取り、それを串焼きに皿の横にレモンが添えられた。 笑みのは痛がる様子も見せないままに今度は同じ左の尻肉を200グラムほど切り取られ、血抜きをされた後、コンソメスープの具材として鍋に放り込まれた。

 シェフは短時間に手馴れた手つきで肉の切り取りと調理そして応急手当を完璧にこなし、白いテーブルクロスの上には気品さえうかがえる料理が並んだ。

 ただ、いつもと違っていた今回は一人の客も居ないことだった。

 シェフは手厚い看護を獲物にしつつ、ワインとグラスと料理の置かれたテーブルを見て「ニッコリ」と、微笑みを浮かべると再び獲物の脈をとってその場を離れ、街の公衆電話から119番に通報して立ち去った。

 そして駆けつけた消防隊員と警察関係者は驚愕の状態に身を凍らせ瞬きを忘れた。

 応急手当を完璧にされた美形被害者とその前側のテーブルに置かれた料理とワインを見た捜査関係者は嘔吐を催しその場を立ち去る者や、固まったまま動けぬ者とに別れたが消防隊員たちはその光景から敢えて目を反らし被害者を運び出した。

 シェフは何処の誰なのかそして一体何者なのか、更に男なのか女なのか何も解からないまま今回は遺留品は一つも検出されなかった。

 

 
【四話】
 

 


 鬼畜の美食家はあたかも捜査員たちに料理を振舞うかのようにしたまま行方を晦ませ、そのまま数ヶ月が経過した。

 捜査は一向に進展せぬまま、科捜研にある捨てられていた大量の髪の毛もまた、捜査上は無関係の物と判明した。

 まるで何処かの床屋の床から拾い集めてきたかのような大量の髪の毛は、単なる鬼畜の美食家の悪戯だったのだろうか。

 そして更に何事もないまま数週間が経過した頃、捜査本部に三人の男達が自首し「自分達が鬼畜の美食家(はんにん)である」と、言葉を揃え世間を大騒ぎさせた。

 各種のメディアは「スクープ」と、ばかりに書きたて、テレビでは連日のように鬼畜の美食家逮捕に沸き関係者は踊った。

 ただ、不思議なことに鬼畜の美食家として自首してきた三人の男達には何一つとして共通点も接点もなく、三人は別々の取調室でありながら全く同一の自供しかせず、捜査員達を混乱させた。

 ただ、一つ共通点があるとすれば三人の犯人達は全員が空ろな目をしていたことと、捜査員達の質問にも淡々と答え個別の取り調べでありながらも肝心なところへ来ると黙秘を貫いた。

 そして捜査員達の半数以上が自首自体を鬼畜の美食家の作為と捉え、捜査をなんらかの理由でかく乱していると判断していたが、自分達が鬼畜の美食家(はんにん)であると口を揃える男達を釈放するわけにも行かず警察は困惑した。

 誰が首謀者で誰が調理したのかと言う捜査の要になると三人の男達は黙秘し貝のように口を閉じたと言うより、知らない様子だったと言った方が正しかった。

 だが捜査員達から見れば「そんなはずはない!」と、言う意見が大勢を占め、何とか口を割らせようとしたものの、犯人達は追い詰めれば追い詰めるほどに自らの記憶を失って行った。

 これは催眠術によるモノだという法医学者の意見に従い捜査員達は、本人達の同意無く催眠療法に踏み切った。

 だが、催眠療法をした直後、犯人達は我に返ったように自らの無実を訴え始めた。

 彼らは自分達が何故、警察(ここ)に居るのかさえ解からないと言う態度と言動で捜査員に迫り捜査員達もまた困惑の色を隠せなかった。

 彼らに掛かっていた時限爆弾は、警察が催眠療法を用いることを事前に察知した真犯人のジョークだったことに落胆した。

 そして犯人の誰なのか解からぬまま数ヶ月が経過しその途中において、自首した三人は証拠不十分で釈放を余儀なくされた。

 一度は犯人逮捕の報道に涙を流して喜んだ被害者は既に1000人を越えていたが、嫌疑不十分で釈放されたことを聞いた被害者達は怒りを露に警察に雪崩こんだ。
 
 そしてあれから20年を経過し既に時効は成立していたが、真犯人は名乗り出ることなくそのままになっていて警察は一つとして手掛かりを得ることが出来ぬまま再び事件は御蔵入りした。

 延べ20万人を動因した警察の完全なる敗北で幕を閉じた鬼畜の美食家事件は科学そして医学を持ってしても太刀打ちできるものではなかった。

 だが、その事件を知る全国民の中、或いは世界中の何処かに真実を知る犯人が必ず存在することだけは警察も確信しているところであった。

 そして1000人を越える被害者達は自らの身体を復元できぬまま地獄のような生活を強いられ、中には数人が人生を悲観し自らの命を絶った。

 人間が人間の肉を貪り喰うと言う恐ろしい事件はその後も一切起こっていない。

 ただ、街外れの小さな診療所では今日も病気で訪れた女児達の耳元で何か呪文のような言葉を囁いている一人の医師がいたことを誰も知ることはなかった。

 果たしてその医師は男なのか女なのかは診察に行った者しか知る由はなかった。



【完結】

【鬼畜な美食家】

【鬼畜な美食家】

  • 小説
  • 中編
  • 成人向け
更新日
登録日
2014-07-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted