魔法とサクラ

もし‥現実とは違う世界で魔法が当たり前に行使されていたら、その世界はどんだろう
そして、現実では母親に殺されかけ父親は顔すら知らない。そんな、愛を知らない、世界で人生を送ってきた長瀬義之(ながせ よしゆき)。
義之はある日、空から落下してきた、少女を保護する。
少女の保護によって魔法と出会い。その少女はサクラ。魔法界の戦いで鍵を握る重要人物。
一人の少年と一人の少女の出会いが魔法界の運命を変えた。

主要登場人物

長瀬 義之 (ながせ よしゆき)
子供の頃に、母親に殺されかけた経験を持つ。冷静で成績も上位のランクインだが、恋愛沙汰に関しては動揺が多い。黒髪で長身であり、顔も整っていて、学校ではそれなりにモテる。特に上級生に。昔から武術の心得がある

藤宮 莉奈 (ふじみや りな)
義之より、一つ年上だが同級生。性格は結構なツンデレである。長髪の金髪で細身。容姿は外国人寄りである。プロポーションも抜群である。

四ノ宮 竜二 (しのみや りゅうじ)
義之の悪友。金髪でヤンキー風の容姿だが、友達想いの優しい青年である。身長は義之と変わらず長身。体格は良い。大雑把な性格。

サクラ
義之たちの住む、街に落下してきた、少女。最初に義之に発見され、家で保護をしていた。しかし、記憶をなくしており、名前以外を覚えていない。

第一章・出会いと魔法学院

2014年4月26日埼玉県の某所
もし‥突然、目の前に少女が空から降ってきたら、どうする?
いや、実際降ってきた。
その影響で、この先の人生が変わってしまったら。
一人の親に捨てられた、秀才の少年。学校の高嶺の花と言われる、女の子。親に捨てられた、少年を過去から受け入れて、長年を共にした少年。
そんな3人の人生が変わった。
そして、その変化の最後の分岐点に直面している、彼はその少女をお姫様抱っこで受け止めた。その少女との出会いが全てであった。
少女は気を失っているようで、彼の腕の中で眠っている。安心したように。
これが3人の魔法に出会うきっかけになった。

少女を抱きとめた、その彼、長瀬義之(ながせ よしゆき)の隣で驚愕の表情で、義之の腕の中を凝視している金髪の女の子。藤宮莉奈(ふじみや りな)。莉奈は、学園では美人であると学校では人気ある。金髪で細身である、何処かの異国のお姫様のような容姿は男を惹きつけるのには充分な条件だった。

「ちょっと!義之!あんた‥お姫‥様‥抱っこ‥あたしだって‥」
莉奈は顔を真っ赤にして怒るが、途中から口をパクパクさせ、後の言葉が出なかった。
目の前で義之が見ず知らずの女の子を抱っこ、しかもお姫様抱っこしているのを見て、急に羨ましくなったのだろう。

「そう言ったて‥莉奈、このまま地面に寝かせるわけにもいかないだろ」
地面は義之たちの帰宅途中であったので固いコンクリートであった。さすがに、コンクリートに寝かせるのは良くないと義之は思った。なにより、このまま放置するのも、義之の人柄としては、考えらられないのだ。義之は莉奈の講義を流し、とりあえずこの子を家まで運ぶことになった。

義之の家には、誰もいない。義之は父親の顔を知らず育ってきた。出ていったのか、死亡したのかさえ知らない。母親は数年前、死んだ。幸い、金は親の保険金のお金が出たが、母親の親族は待っていたかのように、保険金を8割ほど横領した。義之の母親の親族は名うての弁護士を雇い、綺麗に遺産問題を解決させた。否、解決させられたのだ。幸いに残りの2割は義之の元へと出た。このお金で生活費には困らず生活できている。義之にとっては、10割入るよりも、少しの金で満足だった。
そして、義之は過去に母親に殺されかけた経験がある。
実の親が子を殺すはずがないのは、ただの一般論だ。一般があれば、必ず例外はいる。どの分野にでも通用する論理である。
義之は度々に殺されかけた記憶が脳内をフラッシュバックする。どこかの廃工場で突然、目が覚め首を絞められて殺そうとしてきた。しかし、義之の母はそれまでは普通に愛情を注がれ、生きていた。それがある日突然、殺そうとしてきた。なぜ、そんなことをしたのか、問い続けても答えはない。ただ、何度も考えてしまう。
この事件で義之が唯一覚えているのは、赤髪のの女性が母親に耳打ちをし、廃工場の奥へと連れて行き、義之は一人取り残され、一人家に帰宅した。翌日‥母親は赤髪の女が連れて行かれた先で遺体となって発見された。死因は不明であったが、警察は自殺と断定した。
しかし‥義之はあの日の赤髪の女が犯人だと思っている。しかし‥母親を殺そうとした目的はいくら考えても分からない。
それでも考えてしまう。
決して母親の仇を取るつもりなどない。ただ、理由が知りたいだけである。
だが、なぜか分からない‥

そんな、無限ループの思考繰り返す。
そんな思考から莉奈は義之を呼び戻す。

「義之?また、思い出しそうになったの?」
莉奈は不安気に尋ねるが、義之は気に留めた様子もない。義之は莉奈には概要だけでも話している。しかし‥赤髪の女については話していない。

「あぁ‥大丈夫だよ。さぁ、この子を運ぼうか」

義之は先ほどの少女を二階寝室に運び、莉奈に様子を見ててもらい。コーヒーの準備のために、一階のキッチンへと向かった。


この少女を保護した瞬間に義之たちの運命は変わっていた。
それは、違う世界で時計が回り始めたように‥


義之がコーヒーの為の湯を沸かすために、ヤカンに火をかけた頃に、一本の電話が入った。
「竜二か‥」
義之は小さな声で呟くだけであった。ディスプレイも見ず、予測できる理由は簡単である。義之はそれほど友人関係が広いわけではない。と言うよりも、興味がないという感じである。そんな義之と関係があるのは、四ノ宮 竜二、藤宮 莉奈の二人だけであろう。義之には、そのクールに憧れの女子も多く、そのため、隠れファンクラブというのがあると、噂がある。当の本人は全く、興味がないであるが。友人関係が少ない、義之の電話を鳴らすの2人しかいない。
義之の予想通り、電話の相手は、義之の悪友でもある、四ノ宮竜二であった。

「竜二かどうしたんだ?」

『義之‥‥人が空を飛んどったって言うたら、信じてくれるか?』

竜二の突飛な話に常人は信じないが、義之は竜二がウソの話をするとは思えなかった。
竜二は見た目は不良だが根は優しい青年であるので、嘘などは嫌いである。
「たしかに、科学では解明できない、謎はあると俺は信じているけど、こうも身近に起こるとは‥驚いたな。で、どの辺でだ?」
義之は秀才ではあるが、空想に対しての持論を持っている。
それは、文明の中心は別にある。地球は端くれ過ぎない。故に他の文明のものが地球に来ているだけなので、そのため地球の科学では解明できないだけである。地球外から来た文明ならば、地球では解明できない。そうそれが例え、幽霊であっても。単純な道理である。
以前、竜二に話したが理解が難しいようで、聞き流された。と言っても、人が空を飛んでるなんて、信じる人間は少ない。

『方角的に‥多分‥お前の家の上を通るはずだ‥今、家か?』

「そうだ‥先ほど助けた少女が一緒だ」

『少女⁉︎お前、まさか!それって‥めっちゃ、びじ‥‥』

竜二の「美人」の言葉を遮るように義之は電話を切った。竜二は彼女はいないが、美人には興味津々である。電話からはツーツーと音が流れていた。
こんな、竜二の反応が楽しくてわざと言うのもあるが‥今回に限り本当である。
コーヒーの準備を終え、二階に御盆を持って、歩を進めた時

二階から

ドォォォーン‼︎‼︎‼︎

と、巨大な音が響き渡った。まるで、大爆発でも起きたように。

「莉奈⁉︎」
瞬間に二階からの爆発音だと判断し、義之は最悪の状況を起きてないことを祈った。そして、少女が無事であることを。



義之は真っ先に二階へ向かった。御盆を落とし、割れたコップの音さえも聞こえないほど義之は心配であった。
莉奈と、幼き少女が。

部屋の扉を開けるつもりでいたが、二階の階段を昇ったところで、外に繋がっていた。つまり、二階が全て先ほどの爆発のような音で吹っ飛んだのだ。
と義之は判断した。

「りなーーー!どこだーーー⁉︎」

義之は大声で彼女の名前を呼んだ。
外を見渡すが、爆発の煙なのか、視界が悪くて何も見えない。煙を吸わないように、口を押さえながら莉奈と少女を探し続けた。だが、煙は晴れず数分間そのままだ。

ーーー


爆発の数分前、義之の家から5キロほど離れた、町の上空に高速で移動する人影が2つ。地面に光の輪、いや魔法陣のようなものが浮かび上がっている。しかし、空中高度は少しずつ落ちている。

「レイモンド殿、サクラの所在地はトレースにより、5キロほどかと‥」フードを被っているので顔は分からないが、声からに女性だと判断できる。

「そうか‥確実に捕獲しておくぞ。周りの人間は消す。ワシの魔法有効範囲とて、こちらでは魔力は制限されるからの」


レイモンド殿と呼ばれた、男は左目に傷を負っていて、右目しか開いていない。そして、冷静な声であった。声からに察すると、経験を積んだ、者の声だたった。



そして、爆発が起こった。

ーーー



再び時は進み‥‥

爆発からの煙が晴れ、完全に消えた。義之の予想通りに家は二階は完全に消失し、一階のみになった。そして、煙突のように伸びた階段が残っているだけである。


そして、莉奈を探し続けていた、義之は何度も大声で叫び続けている。

「りなーー‼︎どこだーーー⁉︎」

視界が回復し、家の裏庭にあたる場所に莉奈と少女はいた。
義之は莉奈の元へ全速力で近づいた。

しかし、莉奈と少女は家の爆発の衝撃からの家の瓦礫の残骸の下敷きになっていた。
正確には、莉奈は少女を衝撃から守るように、莉奈だけ瓦礫の重みを受けたような姿だった。幸い、死ぬような怪我には見えなかった。

「り‥‥な‥‥?」

義之は世界の終わりのような目で莉奈を見て、瞬時にやるべきことを思いつき、莉奈の瓦礫をどかし始めた。命が大丈夫に見えても早く解放してやりたい、気持ちでいっぱいだった。


瓦礫をどかし終え、待っていたかのように、さっきまでは家の二階だった場所から声が響いた。

「何者だ?貴様は?」片目の男が威圧的に問いてくる。
隣にはフードを被った人がいた。
空を飛んでるのにも関わらず、義之にはそんな疑問は微塵も起こらなかった。
ただの怒りが義之を支配していた。


「お前が‥‥莉奈こんなことをしたのか⁉︎」

義之は怒りを露わにした顔で二人を睨みつけた。二人を傷つけた、レイモンドを。

「大人しく、サクラを寄越せと命じたが、拒んだため爆発させてもらった。それが偶然にも彼女に岩が落ちるとは思わなかった。恐らく、サクラは瞬時に魔具を使い防御魔法を発動させたのだろう。私の魔法使用の可能領域にいたのだからな。だが、魔具では私の魔法は耐えれない。たとえ‥三大の大賢者といえども、魔力を持たない者‥」男は当たり前のように冷然に答えた。
魔法などの言葉にかまっている状況ではないので、義之はピクリとも反応しない。
ただ、莉奈に対して起こした行動に怒り、体が支配されている。

「さて‥時間がないのでな、貴様ら二人を殺して、サクラを連れて帰ろう。メルトダウン!」

男はそういい、手に黒革のグローブを手につけ、義之と莉奈、サクラの前に手を出し、5メートルほどの炎の玉が現れ、義之たちに放たれた。グローブをつけ、2秒ほどで発射された。
義之は咄嗟に莉奈とサクラを庇うように抱いた。
それでは、意味がないと分かっていても。



しかし、義之たちの前に光の壁が出現し炎の玉が壁に当たった瞬間に消滅した。壁の手前、つまり義之たちの方に一人の女性が立っていた。
レイモンドは信じられないように片目を大きく開き、驚いていた。

「なるほど‥サクラのために、あなたが動くとは、5賢者のアンジェ・ホーリー殿。お初にお目にかかり光栄です」男はわざとらしく、お辞儀を見せた。

「あなたは‥レッドキラーの幹部のレイモンド・ミュラー。あなた方も、サクラを狙っているのですね。唯一、現実世界で魔法を使える、魔法使い。ですが、あなたの近くにいたから私も発動できたので、感謝します」
アンジェ・ホーリーと呼ばれた女性は男を見て、瞬時に男を見て、確認した。義之は幹部などと言われても困惑するしかない。ただ、すごい現場だということは、なんとなく理解できる義之であった。
アンジェ・ホーリーは何処かの制服のような服を身につけた、金髪のストレートヘアの綺麗な大人の女性だった。

「これは、これは。ご存知のようで。しかし‥あなたが相手では悪すぎますね。ここは撤退です」

レイモンドはアンジェ・ホーリーの出現は想定外の出来事のようでフードを被った女性を連れ、リターンと叫び、消えた。

レイモンドと言われた、男が消えた後、義之の家の扉の方から一人の眼鏡をかけた、一目みれば、理系の賢い女性にしか見えない人物が姿を表した。

「アンジェ、玄関の扉にこの男が倒れていました」
そう言った、女性の背中に背負われた者は、気を失ったていた。その者とは、義之の悪友である、四ノ宮竜二であった。
竜二は義之の助けた、少女を見るために家まで来て、爆発に巻き込まれたのだろう。

アンジェと呼ばれている、銀髪の少女は
「その者にも‥魔力が注がれましたか‥仕方ないですね、連れて行きましょう」
と言うが‥
義之は抗議する。
「連れて行くとはどういうことですか?」

それに答える、アンジェ、
「彼は魔法の影響を受けています、そして、貴方と彼女も」

アンジェの言葉に義之は耳を疑った。魔法と言う、身近に感じるが、空想のものに過ぎない単語が当たり前のように二人の女性は言っている。義之は驚きを隠せないでいた。

そんな義之を見て、アンジェは言った。
「大丈夫ですよ‥義之君、連れて行くと行っても、尋問や拘束などしません、ただ魔力を持ってしまった者を教育するために、魔法学院には通ってもらいます。それが我々の仕事ですから。それと、怪我の治療も必要でしょう」

「魔法学院?‥‥」
義之はどうしてもいいのか考えられなくなっていた‥


困惑する中、怪我の治療もあると判断し、アンジェに従った。

「賢い子は嫌いではないですね。では、行きましょう、レイド‥テレポートをお願いします」アンジェは先ほどの理系らしき女生に魔法らしき名前を頼んだ。

「なんで、私が‥魔具を使うんですか‥仕方ないか‥リターン!」
レイドは渋々了承し、手のひら大の青い石を空に掲げ叫んだ。瞬時にアンジェと義之たちを光が包み、消えた。

ーーー

その後、義之の家には爆発を聞きつけ、警察、消防隊、救急隊が駆けつけた。
しかし、魔法を使ったが、現代の文明は魔法は存在していないないので、原因は不明である。警察はガス管の暴発と断定し‥事件は闇に葬られた。
義之の家を見に来た、一般人の人混み中から、いわゆるやじ馬の中から、周りとは似つかわしくない、マントを頭なら被っている、人物がいた。
ミステリーものなら、この人物は犯人なのだが、マントの人物は先ほどの爆発を起こした、レイモンドでも、レイモンドの部下でもなかった。もちろん、アンジェでもレイドでもない。
マントの人物は不敵に笑い、人混みの中から帰る一般人に紛れ、姿を消した。
人混みを抜ける瞬間、フードの隙間から赤い髪がほんの一瞬見えた。
そして、一言だけ呟いた。
「ようやく‥見つけましたよ、長瀬 義之‥あの忌々しい女の子よ‥」

ーーー


レイドのリターンに連れられ、西洋風の建物の一室に飛ばされた、義之たち。義之が助けた、少女は義之の腕の中で眠っている。
「まずは、莉奈さんと、竜二くんの治療が先ですね。レイド、アリアを呼びなさい」
アンジェは着いた途端、レイドに指示し、魔法使いを呼んだ。
レイドは制服の懐から、端末らしきものを出し、アリアと連絡をとっていた。

そして、五分も経たないうちに、部屋の扉から義之たちよりも背の低い、少女が入ってきた。一見、小学生にしか見えない。義之の視線から、そのように感じた、アリアは義之を睨みつけた。
「僕は、13歳だらね」
アリアは義之の無言の質問に答えた。
アリアは女の子だが、一人称は僕と名乗っている。

「アリア、この二人の治療を頼みますよ」
「わかったわよ。回復特化型は仕事が多いわ。ヒール!」

アリアはアンジェの要望に、レイドと同じように、渋々答えた。
アリアの手から発した光の霧が、莉奈と竜二を包み込む。すると、瞬時に怪我が回復した。

義之は現状の説明をアンジェに頼んだが、二人が目覚めてからだと断った。理由は説明を二回するのがめんどうだと言った。結構、めんどくがりの性格のようだ。
アリアの治療を受けていた、莉奈と竜二は目を覚ました。
同時に義之たちが助けた、少女も目を覚ました。

「あなたは‥?」
莉奈は目が覚まし、最初に視界に入った、見たこともない、少女に問いかけた。
「僕は、アリアだよ」
義之への挨拶とは真逆に優しい、顔で微笑み、名乗った。どうやら、義之に対しては、小学生と感じられた、視線が気に食わなかったようだ。

「なんや‥ここどこや?」
竜二は体を起こし、辺りを見渡し言った。起きたら、異国の土地へ連れらた、気分だろう。

「さて‥全員が起きたところで、話しましょうか‥この世界について」
アンジェは全員が起きたのを確認し、椅子に座った。
アリアとレイドはアンジェの両隣で待機している。

「まずは、単刀直入に言いましょう。あなた方は魔法使いになってしまいました」
アンジェの言葉に、莉奈と竜二は驚きを隠せないでいたが、先ほど二人の治療の時間を有効に使い考えていた、義之にとっては予想通りの言葉だったようだ。

「なんですか⁉︎一体どうなって‥」
「待てや!どないなっとんね⁉︎」
「‥‥」
アンジェの衝撃の現実離れした、言葉に莉奈、竜二は声を揃って荒げた。義之は先ほどの回復時間に時間を有効に使い、考えていたので‥無言で聞くことにした。

「信じられないのはわかりますが‥真実です」
アンジェは再び、同じことを肯定した。
レイド、アリアは声をあげない、義之を興味深そうに見つめた。それもそうであろう、いきなり「魔法使いになりました」と言われ、莉奈や竜二のように抗議するのが普通である。それをしない、義之の聞き方に興味がないはずがなかった。

「一つだけ、質問いいですか?」
無言を守っていた、義之はアンジェに質問の提案した。

「なんでしょうか?義之くん」

「なぜ、魔法使いになってしまったのですか?」
義之の疑問は最もである。数十分前まで、ただの人間だった人物を魔法使いに変えてしまう。理由とは一体何なのか。莉奈と竜二は単純な疑問が盲点になっていたのである。

「これは、推測に過ぎませんが、あなた方が助けたその女の子‥サクラと言いますが、サクラは三大の大賢者の一人のでした。おそらく、サクラの魔力の制御ができずに‥あなた方の体内に流れ込んだのでしょう。しかし‥今ではサクラは魔力をほとんど失い、記憶がないようですね。三大の大賢者とは‥私のような現代の最上級魔法使い5賢者の更に上の魔法使いを三大の大賢者と言います。ですが‥三大の大賢者は大昔に消息不明となり、死亡したと言われていました。ですが‥サクラが生きていたとは‥正直、驚きました」
アンジェの質問の答えた。そして、義之の腕の中のサクラを見て言った。
サクラは急に見られ、ビックリして義之の腕の中へ顔を埋めた。
どうも、サクラは助けてくれた相手であるのかは分からないが、義之になついているようだ。


「わかりました‥この子が原因でしたか‥なら、仕方ないよな。莉奈、竜二?」
義之はサクラを抱き直して、莉奈と竜二に納得の同意の視線を向けた。

「そうね‥こんなに可愛い子の影響なら‥仕方ないわね」
義之の腕のからサクラを受け取り、まるで自分の子のように、サクラを抱いた。
サクラは莉奈の腕の中でも嬉しそうに、微笑んだ。

「しゃーないな、サクラちゃんの可愛さに免じて納得したるか」
竜二はサクラの頭を少し撫で、義之に返事を返した。


「意外にあっさり受け入れてましたね」
「あら、学院長には想定外でしたか?」
「えぇーあんたら、そんなので納得するの⁉︎」
アンジェ、レイド、アリアの三者の異なった意見は義之たちの耳に届いていた。

「えぇ、なってしまったのは、もう変えれません。なら今を受けいれるだけです」
「魔法が何なのかよく分からないけど、サクラのために頑張るわ」
「俺も二人に賛成やな」
義之、莉奈、竜二はそれぞれの言葉でアンジェたちに答える。
サクラは、義之たちの輪の中で満面の笑顔であった。

そんな、三人の受け入れを羨ましそうに笑顔で見ているアンジェであった。
簡単に魔法を受け入れた、精神は頼もしいとアンジェは感じていた。魔法は便利で危険なものでもあるのを知っている人物である。


そして、サクラは満足のいくまで、義之たちにあやしてもらい、眠ってしまった。
そして、莉奈の腕からサクラを受け取り、部屋の隅の椅子に座ったのは、レイドであった。

「さて‥受け入れたからには、魔法について話しておく必要がありますね。まず、私の名前は、アンジェ・ホーリー、5賢者の一人です。そして、魔法学院ホーリーブレスの学院長でもあります」
アンジェはレイドが椅子に座ると同時に話を切り出した。

「僕は、アリア・ジュライトよ。このSMMUの医療チームのリーダーをしているは。学院では、保健の先生をしているは、怪我なんかしたら僕に言いなさい!」
アンジェの隣の小さな少女は名乗った。

「私は、レイド・リライトだ。ギルドでの役職は一応、アンジェの側近だ。SMMUは後に授業できくだろう。学院では、ただの教員だ」
サクラを抱いたまま、レイドは名乗った。

それに続き、義之、莉奈、竜二も自己紹介した。


三人の自己紹介が終わり。アンジェは再び話し始めた。莉奈の留年の理由は突き止めることもなく。と言うより、義之がアンジェに聞かぬよう、目で合図をした為である。

「まずは、ギルドについてね。この今いる、世界は魔法界と呼んでいるは、魔法を行使できる世界。そして、ギルドとは大きく二つあるは、ホーリーブレスとレッドキラー。この二大ギルドが戦いを学院外でしているは‥今、この時間にも小競り合いのような事は起きているは」

「なぁ、学院長さん。なんで、ギルドなんているんですか?何か‥対立してるんすか?」
竜二の疑問にアンジェは満足そうに微笑んだ。

「良い指摘です、竜二くん。レッドキラーは現実世界、つまりあなた方が住んでいた、世界の社会を魔法で支配するが目的です。しかし‥ホーリーブレスは魔法は裏の力と主張します。何があっても、魔法を表舞台に出してはいけないのです。その思想の対立が現在の戦いを招いています」
竜二の質問に答えるアンジェだが‥その表情にいつもの笑顔はなく、悲しみに満ちた表情だった。
その答えは、過去に起こったある事件が、関与しているがそれを知る者は、アンジェ、レイド、アリアなどの昔から戦いを続けている、ホーリーブレスの上層部の者しか知らない。
義之は、アンジェの表情が何かを物語っていると悟ったが、あえて話題にはあげなかった。

アンジェはとりあえず、世界の基本だけ話して、魔法を話すには実際に見せるのがいいと言って、訓練場へと義之たちを連れて行った。レイドとアリアも同行する。もちろん、レイドの腕の中にはサクラが眠っていた。サクラは年齢不詳だが、見た目から6歳くらいだろと推測でき、女性が抱っこするのには、少々大変かもしれないが、レイドはそんな疲れは微塵は感じない。鍛えているのであろう。

学院の地図を覚えていない、義之たちはただついて行くだけである。廊下も幅は3mほどあり、豪華なつくりであるようだ。
途中、学院の生徒らしき人物に興味深い目で見られた。先ほどのアンジェたちの役職からすると、学院内では名がしれている、魔法使いであるとは容易に察せる。
そして、最初の部屋から学院内を5分ほど歩いたところで訓練場へと到着した。
訓練場の入り口の扉は最初の部屋と変わらなかった。
訓練場の中は、壁、天井、床、全てが白一色であった。大きさは普通の学校の体育館ほどであった。

「すごい‥広いわね」
莉奈は訓練場の部屋を見渡し、圧巻したようだ。
義之と竜二は言葉にならなかった。

「あんたら‥驚きすぎよ」
アリアは義之たちの有様を見て、すこしはにかんだように笑った。

「無理もないわよ‥アリア。この訓練所を見て、冷静でいたのは、過去に少ないは」
アンジェは義之たちの気持ちを尊重してくれた。

「さて‥魔法についての説明は‥とりあえず、三人とも‥このトランスを受け取ってください」
アンジェは言いながら、懐からグローブを取り出し、義之、莉奈、竜二、それぞれに手渡した。グローブには、魔法陣らしき紋章が書かれていた。

「これは‥グローブですか」
義之はグローブを着け、アンジェに尋ねた。たしか、さっきの襲撃したレイモンドとか言う男も着けていたなと、義之は思い出していた。
莉奈と竜二も着け、眺めている。

「そうよ‥手始めに、火の玉を頭でイメージして頂戴。躊躇いや怯えなどの負の感情は一切考えてはダメよ。まぁ、あなた達なら、問題はないでしょうけど。そして、そのままじっとしていて‥」
アンジェの指示に従い、集中していた。義之たちの先ほどの魔法の受け入れから魔法については消極的には捉えていない。もしくは、恐れてはいない。

20秒ほど経ったところでアンジェは叫んだ。
「竜二さん、メルトと叫んで、火の玉を打ち出す感じを脳内でイメージして!」

「メルト!」
竜二はアンジェの指示通りに手順をこなした。
そして、直径1mほどの火の玉が前方に発射され、壁に当たり、消えた。

続けて、アンジェは莉奈と義之に同じ指示を出した。

発動の速かったのは、竜二、莉奈、義之の順であった。
ちなみに、莉奈は24秒、義之は28秒ほどかかった。

「ほほぉー全員、最初の発動で30秒以内で一発クリアか‥逸材だな。SMMUに入る日も近いかもな。初の1年生の配属か‥」
レイドは満足気に、義之たちを見て言った。
アリアも同じよう頷いた。
通常、魔法展開は5秒ほとで済むが、最初のうちは1分はかかると言われている。勿論使う魔法にも誤差はある。この基準はメルトで定められたものである。5賢者は1秒もかからないと言われている。その他にも上級魔法使いは3秒ほどで、中級者が5秒ほどが基準とされている。


「すごいは!三人とも‥ここまで、簡単にこなすとは思ってなかったは!魔法展開の飲み込みが早いはね‥」
アンジェはお世辞ではなく、本当に褒めたおしている。たった、数十分で3人とも、魔法展開の所要時間が18秒まで、短縮した。

「今のが、魔法かいな‥!」竜二は手を開け、閉じながら興奮気味に叫んだ。
「こんな、簡単に火の玉が出るなんて‥」莉奈も驚きを隠せない。

「アンジェさん、魔法展開とは?」
2人の魔法を見た、興奮をよそに義之はアンジェに質問をぶつけた。

「魔法展開とは、魔法を唱え、発動までの過程です。この展開で重要なのはイメージです。そして、今のは基本形魔法の炎系統の魔法です。基本形魔法とは、炎系統、氷系統、雷系統の3魔法です。その他に、防御系統、回復系統、黒系統の補助魔法があります。そして、最後に補助魔法に属する、召喚系統、特殊系統の二つがあります。今の全てが基本形魔法です。その他にも、個人だけの専用魔法があります。この専用魔法の習得には結構な年数が必要となるので‥まずは、基本形魔法から学んでください」
アンジェの説明を呪文のように感じた、竜二を除き、莉奈と義之は理解したようだ。
義之は秀才であるため理解のための問題はなかった。莉奈も義之ほどではないが、人並みに学力はある。それに対し、竜二は乏しい。

「竜二くん?理解できましたか?」
アンジェは頭を抱える、竜二に面白そうに言葉をかけた。

なんとか大丈夫そうな竜二だったので、アンジェは説明を続けた。

「この基本形魔法は修行すれば、使えるのには‥一応、全員が使えます。さらに、1人1人にはこの基本形魔法のどれか一つが特化した、得意魔法と呼ばれるのがあります。この得意魔法は、その系統の魔法の潜在能力を極限まで発動する力があります。単に、得意魔法が一番使いやすいと覚えてもらって結構ですよ。他のことは、授業で覚えてください。とりあえず、あなた方はとりあえず、第一学年から始めていただきます」
アンジェは話を終え、後は授業に任せたようだ。


竜二は終始、難しい顔をして、話を聞いていた。


ーーー

魔法学院、ホーリー魔法学院は3年制の学院である。
第一学年で、基本形魔法の全ての発動をマスターすること。
第二学年で、得意魔法の修行及び、魔法戦闘の実戦。
第三学年で、専用魔法の能力引き出し、鍛錬。1対多数の魔法戦闘。
それぞれのノルマがあり、達成できなければ、留年もある。学習するのが魔法なだけで、その他は一般の高校とは変わらない。3年間通じて、魔法大戦の歴史や、魔法界についての講義の授業もある。
卒業後の進路は、一般には、ホーリーブレスに入るものがほとんどである。
その他には、自分たちでギルドを立ち上げるのも稀に存在する。
レッドキラーに入る者は、魔法学院には入らない。その理由は、魔法学院ホーリーブレスでは、魔法は裏のものと、考える方針を叩き込んでいる。もし、レッドキラー(以後、レッドに略称)に入りたければ、最初からレッドで魔法を習うのが多数である。
毎年、レッドのスパイとして、ホーリーに入る者も稀にいる。レッドはホーリーで魔法訓練をしたものも、ヘッドハンティングするのも目的だ。だが、このヘッドハンティングは中々引き抜けない、ホーリーでは前述のように魔法は裏のものと位置づけられていて、魔法で社会支配の思想のレッドとは、意見が合わないのが多い。
事実上、レッドよりも、ホーリーブレスの方が、一枚上手である。
そして、レッドはこの学院に襲撃はできない、理由はアンジェが構築した魔法結界、防御系統の魔法「シールド」が貼られているためである。

義之たちは、アリアに連れられ魔法学院の寮へと案内された。
学院を出て、魔法学院を見ると、普通の高校と変わらない外見である。内装は豪華だが。そして、寮も住宅にあるような、一アパートのような造りをしていた。
なぜ、アリアだけかと言うと、アンジェとレイドは仕事があると言い、アリアに一任した。サクラは義之の腕の中で眠っている。アンジェはサクラの保護をしようとしたが、サクラが義之から離れるのを拒んだため義之と一緒にいる。


「さぁー!ここがあなたたちの、寮よ!まぁ、僕やレイド、学院長も住んでいるけどね」
アリアは小さな、胸を張って喋っている。

「なぁなぁ、義之、アリアちゃん‥胸ないな‥‥ぐはっ!」
竜二は義之の耳元で感想を述べたが、アリアはみぞおちを喰らわした。耳はいいようだ。
義之と莉奈は呆れて、ため息をついた。

魔法学院ホーリーブレスの寮は、魔法寮と呼ばれている。
魔法寮は、5階の大きな建物である。男子は2、3階、女子は4、5階に部屋を割り当てられている。一階には、食堂、大浴場などと言った公共施設、そして学院長の趣味で裏庭には縁側と日本庭園が存在する。ちなみに、現実世界のように、エレベーターがある。原動力は雷系統の魔法を応用した構造である。
構造は魔法貯蔵タンクと呼ばれる、魔法を貯蔵できるタンクに雷魔法を注ぎ込み、動いている。最大の雷を貯蔵しておけば、約一年は動くことが可能である。
魔法寮の中や、学院もこの雷の応用で電灯などを稼働させている。
なんと、魔法寮、学院には自動販売機もある。販売と言っても、金は必要ない。

この説明に義之は疑問を覚えた。そして口にした。
「アリアさん、一体誰が、この飲み物や食べ物を作っているんですか?たしか、学院外は戦争でそんな状況ではないと思うんですが‥」

「義之君は相変わらず、鋭いな‥向こうの世界では学年順位は何位だったのよ‥。生産者はね、専用魔法が空間転移魔法の魔法使いが担当しているは。専用は一人一人違うから、同じものはないけど、稀に類似魔法も存在するは。この魔法で現実世界のものを運び、使用している。その他にも、召喚系統魔法で物を出すのも可能だが、出した術者が死亡した場合、召喚した物は消えるという欠点もある。この召喚系統魔法は、ドラゴンや死神などと言った空想上のものを出すのは不可能である。鉛筆やタンスや車までといった人間が創り出せる物なら生み出せると考えらている。
ちなみに、水は氷系統の魔法で巨大な氷を作り、それを炎系統で溶かしながら、水をためるんだ。風呂は溶かした氷を炎系統で温めてお湯にしている。何だかかんだで、生活するにはこっちの方が、環境にはいいよ」
どっちの世界が本物か見分けがつかず、困ると付け加え、義之の質問に返答した。

「そういえば、私たちの得意魔法って何系統なんでしょうね?」
ふと、莉奈が疑問を口にした。

「あぁ‥それなら、見てみようか?多分、学院長は調べてると思うけど‥。後で、言うつもりだったのかしらね。まぁ‥調べてみよう。アナライズ‥」
アリアはアナライズと唱え、目で3人を順に見渡し、教えた。

「まず、義之君は黒系統。莉奈が回復系統。竜二が炎系統だよ」

「おっ、3人もとちゃうんかいな。なんか、バランスえぇなー」


「そうだね、竜二はさっきの炎の玉が得意ということになるはね。ちなみに、得意魔法は回復だから、回復系統は魔力の回復も可能なのよ。それに、回復特化はどこのギルドも欲しているくらいよ‥。わざわざ、誘拐までして、そそのまかすのいるけどね」
そう言って、アリアは話を終え、案内を再開した。
魔法使いになってしまったら、魔力が尽きれば、死だと、付け加え。それ故、回復特化は逸材だと。

回復特化は、得意魔法が回復系統のことを言う。アリアの言うとおり、回復特化は魔法使いのなかでも、極少数だけである。その上、魔力回復という魔法使いにとっては、死活問題にもなる。

義之と竜二は同じ部屋を割り当てられた。
莉奈は1人部屋を与えられた。

部屋の中は、外見の洋風の造りの対称で純和風の内装だった。

「これは‥すごいわね、外見はあんなのだったのに」
莉奈の驚きに、アリアは嬉しそうに見ていた。

「でしょー、学院長は和風が好きなのよ。まぁ、僕の部屋も似たようなものだけどね」
アリアは子供のように笑った。

そのまま、莉奈とアリアは楽しそうに話していた。姉妹のように。


ーーー


「なんで‥俺は義之となんだ?美人の生徒さんとの相部屋は⁉︎」
3階へ昇ったところで、右に進んで、左手に見える5番目の部屋を与えられた、竜二は不満を口にした。

ちなみに、魔法寮は男子、150部屋。女子、150部屋の計300部屋である。全部屋、2人づつの配置である。教員用や学院長の部屋は別に存在する。300部屋とは生徒用の部屋だ。
魔法学院の最大生徒数は1学年、200人までで採用している。ここ例年は150人ほどであるが。クラス分けも毎年、採用人数で変動する。最大の生徒数は600人までとなる。

「仕方ないだろ、てか美人と相部屋なんて理想が高すぎるだろ」
義之は呆れながらも竜二の相手はしていた。

「まぁーいいけどよ!てか、魔法使いか‥イマイチ実感がわかねぇよなー」
竜二は魔法を出した時と同じように手を開いて、閉じながら、改めて状況を思い知らされた。

部屋で10分ほど休息した頃、義之と竜二は魔法寮の散策を開始した。莉奈も誘ったが、アリアと話していると言って、同行しなかった。義之はアリアと莉奈が仲良くなって良かったと、感じていた。莉奈の留年の原因となった、事件以降、女子の友達は全く一人もいなかった。そして、そんな莉奈を放置できず、義之は莉奈の心を開くきっかけの人物となった。

食堂、大浴場前など見て、裏庭へと向かっている道中で義之と竜二は二人の男女に話しかけられた。と言っても、裏庭に来るまで何人かの生徒らしき人物を見かけたが、声をかけられたのは裏庭が初めてだった。

「あら、あなたたち見ない顔ね」
そう言いながら、義之と竜二を交互に見た、女性は和服を来た、美人な人物だった。
あまりの容姿に義之と竜二はかけられた、声に返答するのさえ忘れていた。先に現実へと意識が戻って来た義之は慌てて、応えた。義之は現実世界でも女性にはモテていたが、本人は全く興味が無く、女性に堕ちるタイプでないと思われていた。その義之が見惚れたのは、莉奈とこの女性くらいであろう。

「すいません、思わず見惚れていました。俺は‥いえ僕は長瀬義之といいます」
正直に見惚れていたと言った、義之の言葉に言われ女性は面白そうに笑った。

「そう。嬉しこと言ってくれるわね。あなたも達も、十分にかっこいいわよ。よろしくね、私は坂井 綾香(さかい あやか)よ。よろしくね」
義之の言葉を聞き、一瞬戸惑ったようだが、すぐに喜んだように微笑み、名前を教えてくれた。

「坂井さん!俺は、四ノ宮竜二いうもんや、よろしく!」
いつのまにか、夢の世界から帰ってきた竜二は綾香に挨拶していた。


「ほぉぉ‥長瀬に四ノ宮か‥。お前らよ、俺のギルドに入らないか?待遇は良くしよう」
急に話に入ってきた、綾香と一緒にいた男は唐突にギルド勧誘してきた。

突然の勧誘に何と答えたらいいか分からず、立ち尽くす二人のために、綾香は助け舟を出した。

「はぁ‥ほんとにあなたは‥。二人ともごめんなさいね。この人は、神羅 雷(かみら らい)よ。見た目は、変人ぽいけど、腕はたしかよ」

神羅 雷と紹介された、男はルックスは義之にも劣らず、良いものだった。これで、腕がいいならモテる男とはこの人だろうと義之は思っていた。

その後、雷の話を永遠に聞かされ続けた義之、竜二、綾香だった。
結果、雷は生徒ではなく、SMMUの構成員の最高幹部とのことだった。雷の話によるとSMMUとは、正式名称、特別作戦魔法部隊。通称SMMU。構成員は上級魔法使いのエリート部隊。もし、この部隊が出動すれば現実世界での最強国家を壊滅さすのも容易であると言う。ただ、アンジェの思想により、そんな真似は絶対にしないが。その問題以前に、構成員の人選はアンジェ(マスター)とアリア(救護班リーダー)、及び現在は4人の最高幹部の同意が必要である。
SMMUは緊急の作戦や、特別任務、などの緊急事態が発生時に出動する。

義之はこの時、SMMUが後に、壊滅寸前に陥るとは思いもしなかった。


ーーー


義之たちが、魔法学院に入学して、1ヶ月が経過した。魔法学院の生活に慣れてきた、義之、竜二、莉奈。そして、魔法使いの才を開花させた。特に、義之は飛び抜けて魔力が飛び抜けいた。

その、義之はと言うと、現在SMMUの人選会に呼ばれている。
義之は入学以降、前代未聞の速さで上級の魔法使いまでなった。アンジェ曰く、自身でもここまでの魔法使いをアンジェは見たことはないと言う。
呼ばれたと言っても、人選会の部屋に義之はいないが。

「マスター!なぜ、ここまでこの男を推薦するのですか⁉︎こんな魔法使いの初心者などを⁉︎」
義之のSMMUの構成員の推薦に強く反対する人物は、SMMUの最高幹部の男、レン・クム。
彼には、なりたての魔法使いが名誉あるSMMUの加入が許せないのだろう。この人選会に、反対するのはレンだけだろうとアンジェは考えていた。だが、その問題以前に、義之はSMMUの加入に積極的ではなかった。しかし、雷は義之を気に入り、アンジェもそれを推した。その結果、こうなっている。

「ほぉぉ‥レンよ、貴様は俺の育てた魔法使いが信用できないか?長瀬の能力は、お前よりも上だと思うがな‥」

「フン!マスターの評価が高いからって調子に乗るなよ!神羅 雷!貴様の修行などあてになるか!」

「おいおい‥評価が高いのは当たり前だろう。俺は強いからな‥」

「‥‼︎」

雷、レンの論議はレンが言葉を失い、舌打ちとともに終了した。ここ、1ヶ月、雷の修行を受けていたが、雷の強さは圧倒的に強いと感じていた。
雷の説明通り、義之をたった1ヶ月でSMMUレベルまで育てたのは雷の単独指導だった。
それと大きなアドバンテージもある。それは、【魔法無言発動】である。【魔法無言発動】とは、最初の頃の魔法使いはグローブを使い、声を出して、魔法発動をしている。ただ、上級クラスになると、グローブ無しで無言で魔法発動が可能なことを言う。そもそも、グローブの使用と、発声は発動の補助の役割をしている。ただ、この二つを発動上で使うと、魔法展開が鈍化している。だが、精度は上がる。精度は上がると言っても、無言発動が可能な魔法使いは、グローブ、発声発動無しであっても、精度は高い。その理由は無言発動自体が高等技術とされているからである。初級の魔法使いが無言発動しても、魔法暴走か不発で終わるのが落ちである。
莉奈はアリアの回復特化の魔法の指導を受け、竜二はレイドの指導を受けていた。レイドによると、竜二はオールマイティに魔法が使えるとの、見解だった。魔法のオールマイティとは、非常に珍しい。大多数の魔法使いは必ず、得手不得手がある。このデータは例年というより、魔法使いに付く、絶対的な条件と考えらていた。だが、竜二の存在がその、条件を覆していた。

無論、義之たちは、学院の授業を受けながら、個別の指導を頼んでいた。
その結果、義之はSMMUの構成員レベルの実力を身につけた。

沈黙を破るように、アリアは口を開いた。

「レン、私も雷に同意見よ。義之君の能力はあんたより強いは。 あぁ‥それと学院長、私は藤宮 莉奈をSMMUの救護班のメンバーに推薦します。彼女の回復力は他の人員にも負けません。救護班の人選には、マスターの許可だけで充分でしょう?」


「アリア、貴様まで神羅に賛成するのか⁉︎」

「すこし、うるさいですよ。レン‥」

「‥‥すいません、マスター」

レンのアリアへの抗議を始めた瞬間、アンジェはレンを少し睨み、黙らせ、話し始めた。

「アリア、藤宮莉奈の加入の件は私は認めます。回復の人員は多いに越したことはないですからね。それよりも‥あなた方は、どうなのですか?」

アンジェは残り2人の、口を開かない、最高幹部を見た。
この人選会には、マスターと四人の最高幹部の同意が必要なので、四人とも来ているが、残り二人は、未だに口を開いていなった。
「まぁ‥良いんじゃないすっか。俺は、面倒なのは嫌いなんですよ」

「あら‥私も賛成よ。そもそも‥学院長は加入さすつもりでしょう?」

レンにとっては、不利な意見を出され、窮地に追い込んだは2人の、名はクライ・ランギュリー、ヨル・リーと言う者だ。
クライは見た目は、金髪でサングラスをかけた男で、いかにもその道の人と勘違いされそうな風貌だ。
それに対して、ヨルは白衣のコートを身につけた女性で、長い黒髪で科学者といった、格好だ。
実際に、科学者というのは事実であるが。
現在は、ホーリーの頭脳一であると言われている。

クライ、ヨルの同意の意見に、レンは言葉を発せず、数分の沈黙が続いた。
しかし、ヨルとクライの2人が賛成しても、レン一人が反対したなら、義之の加入は無理である。
沈黙の後も、議論を重ねるうちに、突如部屋の扉が開いた。
ノックも無しに、入ってきたので全員が扉に注目した。

入ってきた、男の魔法使いは息を切らせ、衝撃の報告をした。

「マスター!我が軍の管轄のエンドポイントの二つとも、レッドの奴らに占領されました!我が軍の、エンドポイントの防衛についていた魔法使いは全滅です!」

エンドポイントとは、現実世界での魔法禁止の原因の柱上の建造物のことである。エンドポイントは全部で7本あるとされている。現在は、内の2本をホーリーが発見し、防衛していた。この2本以外、場所は不明である。レッドがエンドポイントの発見を隠蔽していたら話は別であるが。しかし、エンドポイントの破壊は、特殊系統魔法のアナライズで、一週間の分析が必要とされている。最低でも、一週間の分析の結果でしか破壊方法は分からない。
アナライズとは、特殊系統魔法の分析魔法である。分析と言っても、普通の人間に対して、発動しても、身長、体重などと言った、ごく普通のものしか分からない。魔法使いに使えば、相手の得意魔法が判明する、その他にも条件によっては、専用魔法も判明する。機会に使えば、メカの内部構造や、故障した時の原因などの解析が可能である。唯一の欠点は、半径10mに対象者、あるいは対象物が無いと発動しないこと。
もし、一週間かかるなら、時間は十分にあるとこの場の全員は考えていた。だが、次の報告の瞬間、崩れ落ちることになる。

「それと、最悪の事態がもう一つ、奴らは柱の破壊を開始しています。襲撃から強奪まで5分ほどですが、破壊の算段の解析済んでいる模様です。このままでは、柱破壊の鍵である、魔法使いの大量殺戮が実行されます。すでにこの学院に侵攻しているとの報告が!ご指示を!」

「そうですか‥」
「なっ!」
「ほぉ‥これはまた‥」
「これは‥困ったことに‥」
「‥‥‥」

声を、あげたのは順に、アンジェ、レン、雷、クライ、ヨルであった。
報告係の男の言葉通り、これまで発見した2本のエンドポイント破壊には、魔法使いの大量の遺体が必要なのである。正確には、遺体よりも魔法使いの魂である。魂は生きた魔法使いの命である。命=魂というのが、現代の魔法学である。結果、魂の抜き取りのため殺すという結末に至るので、殺戮と変わらない。



その後、すぐさまエンドポイント奪還の作戦会議が開始された。まずは、学院に向かっているといわれた部隊を壊滅させる必要がある。いくら、防御魔法で守っているとなっても、もしシールドが破られては、学院の見習いレベルの魔法使いが殺されてしまう。それを防ぐためには学院外の戦闘しななくなる。あくまでも、シールドは保険であると、アンジェは考えている。

「緊急事態ですので、奪還作戦は私の決定に従ってもらいます。今回は、SMMUを出動させます。エンドポイントは二箇所あります、所在地は学院から見て、北に17km、南西に9kmなので、部隊を分けて出動してもらいます。北に向かう部隊に私とレンが指揮を執り、南西に向かう部隊には雷、あなたに指揮を任せます。クライとヨルは雷の部隊についてください。それと、雷‥良い機会です、義之君を連れて行きなさい。今の彼の実力なら、上級魔法使いとて相手にならないでしょう。クライ、ヨルは彼を見極め、後に報告しなさい。後の、人選の参考にします。以上、出撃!」

アンジェの言葉に、四人の最高幹部とアリアは無言で敬礼した。


ーーーー

雷から、先ほどの事実を聞かされた義之は驚いた。エンドポイントの占領より、自分にも出撃が出たことに対してだ。

「本当に‥自分でいいんですか?邪魔になるのでは?」

「長瀬よ‥謙遜するな。お前は、強い。もし、死にそうになったら助けてやる、心配するな‥」

「‥わかりました」

雷の言葉を信じて、自分に与えられた、指名を果たそうと決意した。

ーーー

作戦の出発時効は18:00。エンドポイント占領の報告が17:23だったので、いかにもアンジェが焦っているか、わかる。
義之は雷から、自分を含め、仲間を4人集めろと言われた。
作戦中は4人一組で行動するためである。この仲間集めには、特に制限はかかっていない。極端な話、ただの一般生徒を選んでも問題ない。ただ、本人の許可は必要だが。そして、鉄則が最低でも一人、回復特化の魔法使いを入れること。戦闘の場合には回復が欠かせない。

これらの条件で義之は仲間集めた結果。
莉奈、竜二、なぜか絢香となった。

「なぁ‥義之。なぜに、絢香さんだ?」

「だって‥俺の知っている魔法使いなんてそうそういないんだよ。で、頼んだらオッケーしてくれた」

「まぁ、いいじゃない、竜二君。私は、強いかもしれないけど義之君には勝てないわ」

竜二の質問に答える、義之を見て、絢香は助けてくれた。

そんな、やりとりを見て、微笑む、莉奈であった。

作戦開始時間が近くなり、四人は学院の外の大広場に向かった。
学院を出る前に、義之は一言だか言った。
「一つだけ、いわせてくれ。絶対に無茶はしないでほしい!」

その言葉に、3人は頷いた。

ーーーー

作戦参加人数は、両チーム合わせ、96(北48人南西48)となった。これが、限界であった、それだけSMMUは人員が足りていない。
だが、実際にはSMMUのメンバーは42人しかいない。残りの人数は、選ばれた一般生徒だ。

出発前に、義之は莉奈に声をかけた。

「莉奈‥大丈夫か?人が死ぬの直視できるか?」

「大丈夫よ。そんなことも言ってられないわ」

「すまない‥本当は連れて行くべきでなかったのにな」

更に謝る、義之を莉奈は笑顔で返した。


外の世界、つまり学院の外は、ただ広い、草原地帯と森があるだけだ。現時点の情報ではこの二つしか発見されていない。
外に、出た瞬間、二隊の分散した。

移動は、徒歩である。今のところ、移動系統、浮遊系統は一切発見されていない。
しかし、義之は疎かアンジェすらも、高速移動系統魔法があると、思いもしなかった。
その固定観念が大きな失策になった。

ーーー

義之が行動している、南西部隊は学院を出て、数十分で敵に遭遇した。
予定では、だいぶ先であるが、雷の指示により、全員が戦闘態勢に入り応戦した。

さすがは、SMMUといったところ。敵の一般魔法使いを容易に倒していた。
義之、莉奈、竜二も初陣とは思えないほどの戦いをしていた。

SMMUが徐々に敵の戦力を減らし、勝ちが見えてきた。
だが、急に高速移動したかのように、SMMCの陣の中に赤いローブを纏った魔法使いが現れた。しかし、わずか数人しか気づかず、戦闘が行われていた。

異変にいち早く気づいた、雷は敵に悟られないように、魔法を放った。
だが、それをシールドで防御した敵の手際さに雷は驚いた。

周りの、SMMUのメンバーも気づき始めた頃に赤いローブを纏った魔法使いは、不敵に笑い、サイコキネシスと唱え、雷の周りの魔法使いは目を紅くし、急に襲いかかってきた。その攻撃を躱し、雷系統魔法を放ち、魔法使いから距離をとった。
雷は状況から見て、呟やいた。
「サイコキネシスと言ったな?その人間を操るのがお前の専用魔法か?」

「えぇ‥そうよ。でも、あなたはかからなかった。残ったのは、僅か、10人といったところかしらね。この術はね、難しいのよ。よほどの強さがあり、簡単に絶望しない人間はかからない。さすがはSMMUね、10人もかからないとは」声から判断して女性であった。しかし、ローブに顔は隠れわからない

「そいつは、どうも。なるほどな‥強さか‥誇りでもいいだろう。要は、お前を見ても、気圧されず、絶望しない魔法使いはかからないといったところか?」

「そう、捉えてもらって結構よ。でも、かからないとは言え、全く、動じないのは、あなたと、長瀬義之だけね」

その、魔法使いの言うとおり、10人はかからなかったとは言え、残りの8人はやつれていた。莉奈、竜二、綾香、クライ、ヨルはかかってはなかった。

「さて‥この戦力で元SMMUだった裏切り者と戦って、どこまでもつかしらね。じぁ、私は向こうの北部隊の始末があるかまたね」

そういい、その場を後にした。高速移動をして、義之と雷は高速移動系統魔法を見て、驚いたが、それどころではなく、敵に視線を向けた。敵は、寝返ったメンバーも入れると、200人ほどだった。

「おい、長瀬!俺がこいつらを片付ける。その間に、意識を保っている、他の奴らの周りにシールドを重複しておけ!終われば、こっちを手伝え!そう長くは惹きつけれないからな」

「わかりました!すぐに合流します」

返事をし、義之はすぐに防御魔法の準備に取り掛かった。他は、名前も知らない魔法使いであった。しかし、全員が意識がない。気絶させられたようだった。

急いで、シールドの重複をするが、不幸なことに義之は防御魔法は管轄外であるため、時間がかかった。
10分ほどで全員にシールド貼り、雷の元へと向かった。

「雷さん!終わりました」

「やっとか‥長瀬よ、もうこいつらはダメだ。回復魔法をかけたが、容体は変わらない。殺すしかない」

「そうですか‥わかりました‥」

雷の重い決断に、義之は重苦しそうに答えるが、義之にも元に戻らないことはわかった。

「長瀬!俺は、ほとんど魔力を使い果たした!お前の専用魔法を見せてやれ!」

「わかりました。実戦で使うのは初めてですが‥。カオス‥」
雷が、修行で引き出した、義之の専用魔法、変身魔法というのが、わかりやすい。

義之の魔法展開に続き、義之の体が白煙に覆われ、黒い化身へと姿が変わる。身長は、人間と変わらないが、全身が真っ黒になり、黒豹が二本立ちしたというのが的確かもしれない。目は赤い眼球に変化していた。まるで、地獄の獄卒のようだ。
無言で、敵のど真ん中へと移動する義之。それに、気づいた敵は、一斉に襲いかかるが、体を回転させ巨大な竜巻を起こし、敵を殺していく。
それは、怒り狂った、バーサーカーにも見えた。
3分も経たず、全員を殺した後、変身をとき人間に戻った、義之は感想を述べた。

「なんか‥いい気分はしませんね。先ほどまで、味方だった人間を殺すのは‥」

「時には、冷酷な判断が必要だ。しかし、このサイコキネシスとやらは厄介だな。この先、脅威になるだろう‥」

「そうですね‥マスターに報告ですね」


こうして、南西部隊は奪還を諦めざるえなかった。
この戦いで生き残りは、たった10人しかいなかった。


ーーーー

雷たちが、敵を片付けた10分後、赤いローブの魔法使いはアンジェと戦闘していた。

「さすがは、ホーリーの頭ね。一筋縄ではたおせないはね」
赤いローブの魔法使いは不敵に笑い、アンジェに炎系統魔法を連続で放っている。

「はぁ‥はぁ‥」

「あら‥アンジェさん、ガス欠ですか?」

戦闘状況は、赤い魔法使いが優勢であった。

「おい!、さっさと片付けろ!もう、レイドは片付いたぞ」
その男の前では、レイドが倒れていた。その男とは、SMMUの最高幹部レンであった。
レンはレッド側の人間であり、ホーリーの裏切り者だった。

「早いはね‥じぁ‥アンジェさん、さようなら」
最後に、氷系統魔法を放ち、高速系統魔法で来た道を、帰っていく。とレンだった。

氷系統魔法【絶対零度】を受けた、アンジェはその場で倒れた。生き残ったのは、アンジェだけであった。
その周りには、元SMMUの死体の山であった。

作戦の結果はホーリーの惨敗で幕を閉じた。


ーーーー

その後、アンジェたちの元に雷たちの舞台が来て、アンジェを学院でアリアに診てもらった結果、3週間も安静にすれば、大丈夫だと言われた。レイドも同じく。
だが、この後の赤いローブの魔法使いの専用魔法「サイコキネシス」についての対策とエンドポイントの奪還作戦の後始末が山積みだった。

アンジェの回復までは雷が実質的にSMMUの指揮を執ることになった。
レンの裏切りは、全員が衝撃を受けた。プライドは高いが、マスターを尊敬していたレンの裏切りは受け入れがたいものだったようだ。
この作戦の結果により、義之と特例で竜二のSMMU加入が決定した。
あきらかの人員不足により、二人の加入に異議を唱えるものはいなかった。


「さて、これからは‥サイコキネシス使いの対策と、エンドポイント奪還の作戦だが。正直、ほぼ不可能だ。敵は、エンドポイントに増援をどんどん増やし、守りを固めている」

雷の簡素な作戦説明を聞いた、他のメンバーは重い空気の中過ごした。
ここにいる、全員は勝利などという可能性は微塵も思いもしなかった。それのもそのはずだ、SMMUがほぼ全滅した状況で、アンジェすらいないのである。
結局、先の戦いの生存者は義之、莉奈、竜二、雷、アンジェ、アリア、ヨル、クライ、絢香と雷の部隊にいた2名だけであった。この戦いにより失った最大の戦力は裏切り者のSMMU元・最高幹部のレン・クム、アンジェの側近のレイド・リライトの戦死であった。レイドとて、歴戦の魔法使いであったが、さすがにレンには敵わなかった。アンジェも例の赤いローブの魔法使いのサイコキネシスの術にかかった、SMMCの応戦で精一杯であり、赤いローブの魔法使いには手も足も出なかった。
この戦いにより、赤いローブ魔法使いを【狐】と呼称されるようになった。
会議の結果、魔法学院の上級生生徒とSMMUの残党での大部隊でエンドポイントの奪還作戦が決行されることになった。
作戦開始は、現在の時間から約6時間後の午前7時となった。敵の戦力集結を恐れるなら、今すぐにでも出撃したいが、ホーリー側は魔力がほとんど尽きてしまった。魔力回復のためにも、すぐには戦えなかった。
作戦では、義之は雷と【狐】の相手をすることになった。【狐】のサイコキネシスにかからず、万全の状態で戦えるのが2人しかいなかったからである。アンジェはしばらくの安静が言い渡された。無論、本人は出撃するといったが今のままでは全くの戦力にはならないと、アンジェを救出したアリアの決断だった。


学院の寮で休みをとっていた、義之は雷に部屋に呼ばれた。会議も終わり、体を休めようと思った、義之は少ししか休めずに、雷の部屋へと来ていた。

「まぁ、遠慮するな。入れ」
雷の部屋の前に来た義之は雷の手に促され部屋に入った。
義之の部屋とそう変わらない部屋で手頃な椅子に腰を下ろした。
「話は?」と義之が尋ねると、雷は信じられない予告をしてきた。
「長瀬よ、あの【狐】と呼ばれている、魔法使いはかつての三大賢者の一人(サイド・デドリー)だ。まさか、現存していたとはな」
義之は驚くしかなかった。そんな魔法使いと遭遇していたのか‥という、恐怖感が湧いてきた。三大賢者は昔の話であるため、都市伝説と同じような類であると思われていた。ちなみに、魔法使いとなったものは年齢を操ることができる。そのため魔法使いは見た目では年齢は判断できない。いくら年齢を抑制しようとしても限界はある。
しばらく、三大賢者を見つけたのはいなかったから全員死んだと思われていた。

だが、生きているを信じた、魔法使いも少なくなかった。とは言っても、数ヶ月前に義之はそのうちの一人である、サクラを保護したのである。サクラは正真正銘、三大賢者の一人である、サクラ・エンシェント。そして、記録によれば、エンドポイントの創設の責任者とされている。だが、サクラは記憶を失いただの子供になっていた。今では、莉奈の部屋で一緒にいる。

「‥そんなのに‥まともに戦って勝てるんですか?」
義之は敵の力量を聞き、戸惑っていた。
「わからん‥俺一人なら、無理であろう。だがな‥お前のその変身魔法があれば、あるいは‥勝てるかもな。お前の専用はかなりの異質であり強力だ。変身したら記憶は全くないのだろ?」
質問に答えない義之の態度を肯定だと受け取った雷は更に続けた。
「変身中のお前は全くの別の存在だ。暴走する恐れもある」
「分かりました。何だか、夢遊病みたいですね」
「面白い例えだな。さて‥奴と対峙できるのは俺とお前か‥。俺の見立てでは、莉奈嬢と四ノ宮もかかったと思ったのだがな‥」
「ですが、莉奈と竜二はかかりませんでしたよ」
気絶したとは言え、莉奈たちの数人は術にはかかっていない。
「これも憶測ではあるが、長瀬の周りに何らかの、魔法中和結界が貼ってある。
魔法中和結界とは、名の通り魔法を受けても結界にあたり相殺されるものである。
この魔法は特殊系統に分類されている
だが、義之はこの手の魔法を習得もしてなければ、発動すらさせたことない。
「何でそんなもんが‥?」
「わからん‥」


ーーーー


奪還作戦が開始された。
北のエンドポイントを目指したギルド【ホーリーブレス】の全戦力。
やはり、エンドポイントの周辺には計算通りに敵の大軍が配置されていた。
エンドポイントの中心を目指しながら、義之、雷といった主力が【狐】の姿を探す。
クライ、ヨルは敵の防衛作戦の指揮を執っていた元・最高幹部のレンと対決していた。
竜二、莉奈は敵の雑魚集団に、足止めをくらっていた。アリアは負傷者の回復で手一杯だ。エンドポイントに近づくにつれ、【狐】の姿を発見した。【狐】はエンドポイントのすぐ近くにいた。名は威厳があるが、実際のエンドポイントとは、縦横30×30cm高さ5mのただの鉄の鉄の棒である。

「おや‥長瀬義之と神羅雷ですか‥。神羅雷‥レッドキラーの幹部やボスまでが手を焼く専用魔法を持つ特異戦力‥」
「そうか‥だが、貴様らには付かんぞ。長瀬!一気にかたをつけるぞ!」
「了解です。カオス‥」
義之の魔法詠唱により、姿が変わる。
それを【狐】は面白そうに見て、笑う。
「変身魔法ですか‥あの女を思い出しますね。ねぇ‥義之君。いや‥長瀬茉祐子(ながせまゆこ)の息子さん」
「‥‥っっ⁉︎なぜ、その名前を知っている⁉︎」
義之は声を荒げる。だが、狐はそんな焦りを嘲るように言い放つ。
「知ってるわよ‥私が、サイコキネシスであなたのお母さんを操り、あなたを殺させようとしたのよ」
義之は狐の言葉が真実なのかどうか、迷うので頭がいっぱいだった。確かに、義之はあの日殺されかけた日には違和感があった。明らかに、あの母は様子がおかしかった。もう一つ覚えているのは、誰か自分と母以外にいたのを覚えている。もし、その人物がこの狐なら、殺すよりも話を聞く必要がある。やはり、狐の拘束が先決であると判断した義之は狐に距離を詰める。それを躱す狐。見事な身のこなしだ。
「こちらも、忘れてもらっては困るぞ」
雷は背後から炎魔法を放った。その魔法すらも躱す狐。
だが、義之もすぐに追い打ちをかける。今では、ホーリーのトップクラスの実力を持つ二人なら、三大賢者といえども、闘いにはなる。
「なぜ、専用魔法を使わない?雷」
「俺の専用魔法はリスクがデカイのでな」
義之は雷の専用魔法を見たことがない。
「そうでしたね‥death-time。対象者を必ず殺せる、究極にして、最大の禁止魔法。魔法かければ、対象者と同時に自信も死ぬ」
狐の説明に義之は目を見開いた。
「‥‥そうだったな‥。お前は、5年前に一度見てるんだったな。よもや、生きてるとは思わなかったが‥」
義之は雷の返した言葉にも驚いた。今の会話からして、初対面ではないのは容易に想像できた。
「あの日までの、あなたはまさに殺人兵器だった。だが、あの女と出会って、お前は変わった。全く‥せっかく呪縛を解いてあげたのに‥」
「黙れ!お前が、あいつを殺しことだけは許さない!」
そんな、聞いたこともない雷の怒鳴り声に面をくらった。
そんなの、計算通りのように狐は冷ややかな目を向ける。
「なら、なぜdeath-timeを使わないのです?」
「それは‥あいつは!俺が死ぬのを望んでいたない!だから、専用魔法以外でお前を葬る!」
雷はサイズの思うツボであった。
「そろそろ、時間ね。エンドポイントの全破壊は完了した。勿論、7本ともね」
あり得ないことを口にするであるが、サイズ・デドリーの言うことは真実だと、直感した。
サイズは不敵な笑みを浮かべ、消えた。そして、エンドポイント否‥元・エンドポイントと言うべきか。現在の魔法制限の柱は跡形もなく、消えていた。そして、敵の守備兵も糸が切れたように、動かなくなった。レン以外は。どうやら、後の残りは全て、操られていたようだ。

「長瀬よ‥すまん、頭に血が上った。どうやら、現実の世界では大混乱になるだろう‥」

結界、ホーリーブレス・マスター代理神羅雷の敗北となり、エンドポイントの全ての消滅により作戦は終了した。
この後、現実の世界では地獄に等しい、光景が広がった。
サイズ・デドリーのサイコキネシスにより、ほとんどの人類は操られて、人間同士の殺し合いが発生した。そして無差別殺人を止めるため各国では軍が操られた一般市民を殺したりもした。この事件は、【魔法テロ】と名付けられた。
そして、事件により魔法の存在が明らかになる。サイズの手によって。
生き残った、人類は魔法使い全体を恨み、妬んだ。


ーーーー
だが‥2年経った、現在サイズの魔法はあの日以来使われていない。
ただ、魔法界は【魔法テロ】の後、消滅した。義之はサイド・デドリーが消滅させたと考えているが。そのため、代替えのエンド・ポイントは現実世界にある。
だが‥それを知らない、人類はホーリーを含む魔法使いを恨んでいる。
結界、サイズ、レン。及び、レッドの残党、中小ギルドの行方は分からない。

ここから、現実世界での魔法使いの逃亡しか手段がない。


ーーー

2年後‥元・ヨーロッパの小さな街での廃墟の家で。
「義之さん。朝です、起きないと追ってが来ます」
女性の声で廃墟の家での小さなソファで仮眠をとっていた義之は目覚める。ソファで寝ていたので体のあちこちが痛い。
「朝か。沙奈(さな)、見張りごめんね」
「いえ、追われていた所を助けてくれたのですから。これくらい、お礼させてください」
そんな、義之より3歳年下の蛍野沙奈(ほたるの さな)は天使のような笑顔で微笑んだ。


沙奈の言う通り、彼女が夜、街中でたちの悪い連中に絡まれていたのを助けたのは義之だった。だが、義之は魔法を使って助けた。【魔法テロ】以降、人類に見つかれば、処刑や、拷問をされかねない。でも、義之は優しすぎた。それでも、彼女を助けていた。
助けた後、魔法を初めて見たのか驚いていたが小声で
「あなたって、魔法使いなんですか?」
質問されたが、義之は正直に答えていた。
「あぁ‥そうだよ。長瀬義之っていうんだ。ごめんね、驚かせるつもりではなかったけど‥。じゃぁ、俺は行くよ」
そう言い、踵を返し去ろうとするが、沙奈の声が声をかけてきた。
「義之さん!私も、あなたと一緒です!助けてください」
沙奈は義之に泣きながら、抱きついた。
「あなたの、噂知ってました。【魔法テロ】の時に作戦に参加していた。黒い化身って義之さんですよね?写真で見たことがあります!」
「そうだけど‥」

あの事件以来、サイズは一つのゲームを告げた。それは、自分以外の魔法使いを見つけ、連れてきたら、賞金と引き換えだと。
この一言で、事情を聞いた途端、集団ヒステリックの用にサイズ以外の魔法使いを孤立させた。ただの一般人ならば、魔法を使えば容易に撃退できるだろうが、どういうわけか魔法使いだった者は、ほとんど使えなくなった。無論、義之などの例外は存在していた。
義之はあの事件以来、専用魔法・変身魔法【カオス】により、黒豹のような容姿になり、身体能力などが飛躍的に上昇する。そのためについた異名が【黒い化身】であった。ただ、今となっては変身魔法は使えなくなり、基本形魔法と補助魔法しか使えない。義之は原因を他の魔法使いが魔法を使えない理由と関連があると考えている。義之とは違い、基本形魔法も使えなくなった、魔法使いは人類の格好の餌食となり虐殺されてきた。
「やっぱり!お願いです。私を助けてください」
少女の申し入れに義之は
「分かった。ただ、一つだけ約束してくれ。絶対に一人になるな。今の人間は狂ったのがほとんどだ。捕まれば、殺される」
と言い、少女を真っ直ぐ見つめ、真剣に言った。
義之の言葉にしっかり頷いた少女であった。


ーーー

そして数日間を元・ヨーロッパで過ごした、義之と沙奈。
テロ以降、義之を含むホーリーブレスのメンバーは行方不明となっている。雷や莉奈や竜二、アンジェ、アリア。そして、サクラ。
かつての大都市は魔法使いを捕らえるために、戦闘機、ミサイル、中には核を使う国まで現れ、廃墟と化した。
今、残っていて、一般人が暮らしている普通の町は、元・アメリカの一部、元・ヨーロッパの一部(義之がいるのは町ではなく廃墟)、元・日本の一部。元・東南アジアの一部。この4つが主要都市として存在している。それ以外の場所は無法地帯と化している。
無法地帯となった場所で暮らす、人間はホームレスのように暮らすか、ゴロツキとなり町を徘徊するのが多い。町に行けば、魔法使いにとっては、袋の鼠となってしまう。それほどまでに、現存している一般人は完全な魔法使い差別者が大多数である。それ故、魔法使いは町を離れ、サバイバルのような生活をしてきた。
唐突に後ろから声をかけられた。この連中こそ、ゴロツキ近いなと思う義之。
「あんたってたしか、黒い化身とかいう、化け物だような?」
ため息を吐き、沙奈を自分の後ろに下がらせる。沙奈が下がってから相手を睨みつけ冷たく言い放った。
「だったら、何なんだよ?」
男の見た目は、義之がここ元・ヨーロッパの地に訪れてから、何回も見た姿に似ていた。破れた服。切れ目のあるズボン。ただの下町の人間にしか見えない。おそらく、魔法使い差別者の一人だろうと判断した。
「お前は高値で取り引きされていてな。魔法使いとか言われてるが、何か知らねぇけどこっちじゃ使えないんだろう?死ねやコラァー!」
男は叫びながらナイフを突きつけながら、義之に突進していった。
その姿を見ても、義之は動かなかった。
男が義之の2mほど前に来たところで、何かにぶつかったように全身をぶつけ、そのまま脳震盪を起こし気絶させた。
何かとは、義之の防御魔法のシールドであった。まさか、魔法が使えるとは、男も思わなかっただろう。
「悪いが、魔法を使えるのは少数ながらいる。サイドの情報に呑まれすぎだ。せっかくだ、お前にも見えるようにしてやろう」
義之はシールドを目視化できるようにした。オレンジ色に近いシールドが貼られていた。
「殺しはしない‥」


「沙奈。終わったよ、大丈夫だったか?」
「義之さんって、本当に強いんですね!」
沙奈の絶賛に照れるように顔を背ける義之だった。

そのまま、男を放置して去って行く義之。
そもそも、義之が元・ヨーロッパになんている理由は、行方不明の仲間たちを見つけるため。敵であり、【魔法テロ】主犯格のサイド、レン。レッドキラーの行方。何より、サイドが漏らしていた、母・茉祐子の名。一体、自分は何の為に生まれたのか、何をすべきか。そして、あのテロ以降、ずっと疑問に思っていた、【魔法】とは一体何なのか?いつから、あるのか?存在理由は?
元・ヨーロッパに訪れた理由は、義之には似つかわしくない理由。
それは、魔法といえばヨーロッパという固定観念があったためである。しかし、2年ほど調査を続けた結果、めぼしいことは分からないまま。当面は、この少女を助けながら調査を進めようと考えを決心していた。

ーーー

現在の世界人口・約40億ほどに半減していた。半減した最大の理由は、魔法使いを捕らえるために、全国家戦力が出撃したのが大きい。また、テロ以降の世界は自国復興に国力を使いきっていて、しばらく国単位での魔法使い殲滅はないだろうと考えられている。
だが国が動かないにしても、反魔法使いの一般人はそうはいかない。襲われたとき、魔法使いの対抗術といえば、体術など凶器に頼るしかない。ただ、魔法が使えるならそれで退ける。過激度が増していら、返り討ちで殺すのもある。
義之も何度か魔法を使えたままの魔法使いを見たことある。
会ったと言っても、すぐに別れたが。
中には、やたり殺すのもいた。義之は殺さずに回避してきたがいつまで耐えれるか分からない。集団で襲われたら、殺すのやむ得ないと考えている。
ただ、そんな光景は沙奈には見せたくないと思っている。
そして義之は一つの決断を昨日にしていた。それは元・ヨーロッパを離れて、元・日本に行こうと思っている。理由はもちろんある。
2年ほど元・ヨーロッパで過ごしたが、有力な情報、仲間の行方、敵の情報などほぼなかった。
なので、情報収集場所を変えようと。ただ、気がかりは沙奈はどうするか?。
自分について来てもいいことはない。ただ、こんな不幸を背負った女の子を見捨ててもいいのか。
聞けば、沙奈は幼い頃に両親に捨てられた。しかも、日本人である沙奈はヨーロッパで捨てられた。両親が沙奈が魔法使いであったのを知っていたのかは分からないが、結果、沙奈は今となっては元・ヨーロッパになったがこの地である日本人夫婦に拾われ、育てられた。しかし、拾ってくれた夫婦は数年前に他界した。そんな沙奈の境遇が再び義之の頭の中で思い出され、やはり、置いていけないと思った。
「どうしたんですか?」
沙奈の境遇ついて考えていたら、気づかず見つめていたのに義之は沙奈の言葉で我に返った。
「いや何でもないよ」
「変な義之さん‥」
笑いながら顔を逸らした沙奈。義之はその笑顔にドキッとした。歳は離れているが沙奈は莉奈にも劣らない美貌だと判断している。
(かわいい‥)
と心の中だけで呟き、元・日本への出発を話そうとした。
「沙奈、俺はこれから元・日本に行こうと思う」
真っ直ぐに見つめ沙奈の返答を待つ。
「そうですか‥あの!私もついていったらダメですか?」
上目遣いで義之の顔を見て、問いかける。そんな、反則技に義之は内心困ったが表情を切り替えた。
「でも‥いいのかい?ここは拾ってくれた両親のお墓もあるし、俺について来てもいいことなんてないよ?」
「いいんです!また、お父さんとお母さんには会いに来ます。それに‥義之さんについて行きたいです!」
義之が考えていた問題はあっさり片付いた。
「分かった。でも‥これからも、俺の元を離れて行動はしないようにね。いつ、反魔法戦力が襲ってくるか分からないからな」
ただ、元・日本はここよりもまだ安全だと聞いたことがあると記憶している。
「分かってますよ。もといい、義之さんからは離れません!」
そして、義之は沙奈と元・日本へ行くのを決めた。元・日本の情報はそれほど詳しく知らない。行きあったりばったりになるだろうと思っている。そもそも、魔法使いが街に入るのは数える程しかない。街の中は魔法使いにとっては危険すぎる。いつ、襲われ、捕まるか分からない。人が多すぎるのだ。ここで、義之はそんな数える程の数しか入ったことのない元・ヨーロッパの街である一つの噂を聞いた。たった一つの単語しか聞こえなかったがはっきり覚えている。その単語とは【魔法強化人間兵器】。言葉の通り、魔法を人工的に使い強化人間でも作りそうだなとという、レベルでしか義之は考えてなかった。そう、そんな単純な計画ではないのだ。世界基盤を揺るがしかねない計画であることは義之はまだ知らない。

魔法とサクラ

魔法とサクラ

魔法の世界「魔法界」 現実世界での実権の獲得を狙う、ギルド「レッドキラー」 魔力を持つものの制御、使い方を学ばせ、正しい道を歩ませる、魔法学院「ホーリーブレス」 レッドキラーの目的の実権獲得のためには、現実での魔法使用の可能化。現在、現実での使用は不可能である。 使うためには、「魔法界」での7つの「エンドポイント」の破壊。 現在、「エンドポイント」の2つは「ホーリーブレス」が保護し、厳重に警備・防衛されいる。レッドキラーは0本。残りの5本は未発見である。 「エンドポイント」の存在の目的、理由、時期は不明。 魔法の現実に流出を望まない、「ホーリーブレス」と「レッドキラー」の戦い‥その戦火の中に足を踏み入れる、義之、莉奈、竜二。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-17

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