ドラキュラ

ドラキュラ

1

正直に言って、僕は浮かれてた。


大好きなミュージカル。
もう何度目になるだろう。

沢山苦労を積み重ねて
ミュージカルでも認めて貰えるようになった。歌で感情を伝えることがこんなに楽しいだなんて、改めて思えるようになるきっかけを与えてもらえた。

だから、浮かれてた。
またミュージカルをできる
それだけで。

2

「チャンミナ!」
「なんですか、ヒョン。朝から大きな声出してぇ~。僕まだ眠いんですよ」


チャンミンとの久しぶりにゆっくりとできる時間。朝ミュージカル出演が決まったという連絡が来て、僕はかなり大声を出していたみたいで、チャンミンに嫌そうな顔をされる。

いつものことなんだけど。

「僕、ミュージカル決まった!」
「ん?ミュージカル?……ほんと、凄いですねヒョンは…」

嫌そうな顔してたわりには
頭を撫でてくれる。

「で、何の役ですか?」
「聞いて驚くなよぉ…」
「はいはい、それで?」
「ドラキュラ!!!!」
「…ヒョン」
「ん?」
「血吸えるんですか?」
「でぇぇ?なんてこと言うかっ!」

(どんなミュージカルに仕上がるかな?)

3

そして、ミュージカルの稽古が始まった。
毎日、毎日疲れはてるまで稽古をして、ミュージカルが素晴らしいものになるように準備をした。

でも、ドラキュラとだけあって、内容が濃い。ラブシーンなんて、普段の僕にはとてもできるものじゃなかった。







だから、チャンミンには秘密にしてた。
かなーり濃厚なラブシーンがあるってことは。

4

CM side
ヒョンが出演するミュージカルの公演がとうとう始まった。稽古が始まってからというもの、ヒョンからの連絡は滅多になかった。きっと一生懸命準備をしているんだろうと思っていたから、さして寂しさは感じていなかったけど。

ヒョンは天才だから。
歌に愛されてる。
だからヒョンも歌を愛してる。
歌っているときのヒョンは本当に凄いと思っている。普段とのギャップはさておき。

にしても、ドラキュラって言ってたけど、ヒョン大丈夫なのかな?
なんかこう、ドラキュラといえば魔性なイメージがある。それをヒョンにできるのだろうか?そして何より内容が気になる。

ヒョンからの連絡がないぶん、ミュージカルの情報もなにも入ってこなかった。



濃厚なラブシーンがある、と
噂には聞いていたけど。
せいぜいキスくらいだと、思っていた。


だから、公演初日にミュージカルをこっそり見に行ってやった。

すると、まあ…ね。
飛び付いてきた女を片手で支えてベッドに押し倒してみたり、激しくまさぐりあってみたり。それはそれは濃厚なラブシーンを見せつけられた。

5

正直、嫉妬した。




ジュンスとは出掛けたり、お互いの家に行くことはあっても、それ以上はなかった。


ヒョンが嫌がりそうだから。
我慢してた

でも、まさかこんなラブシーンを見せられて我慢できるわけもなく。

ヒョンを呼び出した

6

JS side

件名:無題
本文:今夜、来て


公演が終わり、なんとも言えない感動に浸っていると、短い着信音が鳴った。

久しぶりにチャンミンからメールが届いた!
僕頑張ったんだよ、チャンミン。

(わ、か、っ、た。と)

了承の返事をして、チャンミンのもとへと急いだ

ドラキュラ

ドラキュラ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-17

Copyrighted
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