一夜物語
好きや嫌いも関係無くきられる契り。
そんな時代がありました。
「あんたさぁ。わかったから、行きなよ」
整えられた黒く長い髪を払いながら、脱げかけた着物をはぐった。
「いるんだろ?」
言い返せなかった。
「あんたの手つき、みてればわかるから」
白く透明な肢体を月に照らしながら御格子を静かにあけて腰掛けた。
口元が微かに緩んで、その薄く真っ赤な唇から漏れ出る言葉が一言と一言と自分にぐさりと刺さるのがわかる。
俺は腰まで布団につかっていた。
「今からじゃ遅すぎる。」
「あっ、そう。」
冷たい態度が少し気に触れた。
「好きでもない女の枕を弄って…楽しい?」
一夜物語