SS22 ダイエット食品の怪

食べるだけで痩せるダイエット食品。売り出した社長の思惑は外れた。

 ”あまり信じてなかったんですが、食べただけですっごい効果があって驚いています。”
 ”本当にもう、みるみる痩せていくんです。ぜひ他の人にも勧めたいです。”
 ”五キロも体重が落ちました。もう手放せません。”
 送られて来るのは感謝の手紙ばかり。苦情など一件もない。
 おかしいな……。社長は首を捻った。
 中身は小麦粉に味を付けただけ……。はっきり言ってインチキだ。
 これは誰かに担がれているのかもしれない……。
 事情を知っているのは社員だけ。僅か十人ほどのオフィスを見渡しながら、彼は意図の分からぬ企みを見透かそうと目を細めた。
 もしかしたらこれは遠回しな内部告発なのかもしれない。そう思い付いたのは、噂が広がれば偽物だとバレるリスクが格段に上がると思ったからだ。
 手紙もここにだけ送っているのではないのかもしれない。
 ちょっとした出来心で始めたことだったが、急に恐ろしくなった彼は、慌てて製品の出荷を止めるよう指示を出した。
 しかし翌日、鳴り止まぬ電話がさらに社長を困惑させた。
「次はいつ入荷するの?」受話器から飛び出すのは発送状況の問い合わせばかり。
「一体どうなってるんだ、これは?」

 ***

 製造を委託している工場が勝手に材料を変更し、いかさま商品が奇跡のダイエットフードに変貌した事実を、彼はまだ知らない。

SS22 ダイエット食品の怪

SS22 ダイエット食品の怪

食べるだけで痩せるダイエット食品。売り出した社長の思惑は外れた。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-16

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