BABY BABY 

BABY BABY BABY

妻が風疹にかかってしまった。
病気の方はなんともなかったが、
妊娠3ヶ月。
もうどうしていいのかわからないと妻は今夜も泣いた。
今は僕の隣ですぅすぅと寝息を立てて寝ている。
ずっと2人の子どもがほしかった。
結婚して8年。
待望の妊娠。
ここまで来るのに、
本当に色々あった。
両親からのプレッシャー。
近所の人からの無言のプレッシャー。
友達からの無言のなんていうんだろう、気遣い。
妻と僕は不妊治療に通い、
やっと、本当にやっと、
授かった命だったのに。

おろすことは全く考えていない。
そんなことは非道徳すぎるし論外だ。
でも・・・
涙が頬を伝う。
耳が、目が、どうにかなっていたらどうしよう。
愛するわが子を抱く僕を、
いつも夢みてきた。
でも、でも、でも。
隣で眠っている妻の髪をそっとなでる。
くせっけが可愛く弧を描いている。
僕がなんとかしなくては。
でも、でも、でも。
今日の午後妻に付き添って
産婦人科に行くことになっている。
医者からはなんと言われるんだろう。
それとも生まれるまでわからないのか。
涙があとからあとから溢れる。
我が子に会えるならそれだけでいいなんていうのは
建前で、やはり自分の子どもとなると
五体満足の健康な子どもがいい。
人間なんてそんなものだ。
他人の子どもなら「それ」が許せても
自分の子どもとなると「そう」なることが許せない。
受け入れられない。
自分の心の汚さに嫌になる。
でも我が子には健康体で外の世界に出てきてほしい。
時計の針の音と妻の寝息だけが静かに響き渡る。
今、なにしてる?
まだ耳は聞こえないのかな?
また涙がでてくる。
今、なにしてる?
お母さんのおなかのなかで、眠っているのかな。
起きているのかな。
早くパパはお前に会いたいよ。
でも・・・・
どうしたらいい?
どう運命を受け入れればいい?
こんなにも、
こんなにも君を愛しているのに・・・



BABY BABY 

BABY BABY 

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-16

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND