うちとばあちゃん
うちとばあちゃん
ばあちゃんの夢をみた。
ばあちゃんは変わっている人だった。
「ばあちゃんばあちゃん、うち優しい?」
確かそのときばあちゃんは大きな布団を押入れに直すところで、私はそれを手伝っていたところだった。
「あれ、なんでかねえ?」
ばあちゃんは不思議そうな顔をして尋ねた。
「だって、今ばあちゃんの手伝いしよるけん。お手伝いしよる人は優しいっち先生いいよった、みよちゃんそれで褒められよった、やけん、うち優しい?」
昨日の保育園での出来事を思い出しながら、きっと私は褒めて欲しくてそのようなことを尋ねたのだろう。
みんなの前で褒められるみよちゃん、目立つことはあまり好きではなかったが褒められることが大好きで、ちょっと見栄っ張りだった私にありがちな行動だと思う。
「なるほど、でも、ばあちゃんは手伝ってゆうて、手伝ってもろたよ。頼まれたことするんは当たり前やないかね。」
ばあちゃんが私の隣に座る。
「頼まれたことするんは当たり前なん?」
私もそれに習う。
「手伝ってゆうて、手伝ってもらえんかったら、悲しないかい。」
ばあちゃんがこちらをみる。
「悲しいなあ。」
「じゃろ、やけん、頼まれたことするんは当たり前やから、それじゃあ褒めれないなあ。」
私の褒めて欲しい欲求を見抜いての発言。
私は気づかない。
「じゃあ、じゃあ、どういう人が優しい?褒めてもらえる?」
ばあちゃんに詰め寄る。
「そうやなあ、いっぱい褒めて欲しいんか。」
「うん!」
夏の空に響く、私の元気の良い返事。
「たくさん褒めてもらうのと、少しだけどすっごく褒めてもらうん、どっち。」
私はきょとんとして、そして、悩む。
「ばあちゃんはな、少しだけどすっごく褒めてもらいたいんや、やけんそのコツなら教えてあげられるがな。」
「じゃあそっち!」
正直どちらがどう違うかわからなかった私、教えてもらえる方をと、返事をする。
ばあちゃんはニコニコしながらいう。
「尽くすこと、なにかをすることを誰かのためって思ったらいけん、してあげたって思ったらいけん、してあげることを選んだんは自分だから、それが受け入れられなくても、卑屈になってはいけん。尽くし続けること。そうしたら、きっといつか、褒めてもらえる。」
急に難しくなったばあちゃんの言葉、私にはさっぱりだった。
「どういうこと?つくすって?」
「まだちと難しかったなあ、人に、何かをしてあげるときにな、褒めてもらおうって思ったらいけんってことたい。」
私はどきっとした、さっき手伝いをしたのは褒めて欲しくてした。あれはいけないことだったのだ。
「ごめんなさい。」
私は謝る、夏の空に雲が出てきた、夕立でもきそうである。
「なんで謝るん。」
ばあちゃんはニコニコしてる。
「さっき、うち、褒めて欲しくて手伝いしたん。」
「しっとーよ。でも手伝ってもらえてばあちゃんは助かったからそれでいいと。でもばあちゃんは褒めんよ。」
ばあちゃんが立った。
「洗濯物いれんと!!」
私はばあちゃんより先に庭に出た。
洗濯物を入れる。
やっぱり少し褒めて欲しいって思っている。
でもばあちゃんは
「ありがとうな。」
それだけだった。
うちとばあちゃん