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百二十六





 空に雨が降ったりする。傘が驚き閉じてしまい,光に干されて帽子のつばが広がっていく。みるみるうちに窮屈になるからそれを脱いで,胸に大きく抱きしめたら風に後ろから盗まれ,その帽子はお家に先に帰ることになっていたことをあとから知る。それまではただ驚いて,顔を合わせて笑うらしい。じゃあ,ということでぴったりの裾幅も捲くし上げ,女の子は男の子のように小麦の中を走り抜けていき,おっ!と声を出す男の子は,しかし出遅れても喜んでそこから駆け抜け,姿が見えない匂いを辿りながらいつも二人を見失わないようにした犬が最後を追いかける。赤いリボンがときどき見える,反対方の長い吹き流しにあっている。
 頁の間の隙間みたいに。片方がまだまだ厚い。
 手にした胡椒挽きをテーブルの上に残してきて,朝みたいな目玉焼きと焼け焦げそうなところでお皿に乗ったトーストとバターの関係は熱いものだとママがいう。飲み物に口をつけるパパは喋れないし,寝転がる犬の広告は新聞紙として一面に向かい合う人にウインクをしている。真似をしようにも両目を開けて,両目をつむる子供には目の前の野菜と果物のどちらから手をつけるかということが何より大事なのだということをこの犬は知らない。窓の外の数羽が鳥として訪れ,庭の別宅で鼻を舐める子もいる。散歩から帰って来たのっぽのかげが明るい日差しを連れ帰り,くるくるまわる傘はときどき振り返っている。鏡の前の寝返りには天井から吊るされた役目に応じて,名乗りと眠りが繰り返される。
 あとは不思議なところがないままに。パンの欠片は上手に取り除いて。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-14

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