スイカ 甘いか しょっぱいか

スイカ 甘いか しょっぱいか

みや

知沙はスイカが嫌いだった。
もともとあまり味のしない水くさいスイカが好きではなかったが、去年の夏に弟の知樹がひいおばあちゃん家から持って帰って来たカブトムシにスイカをあげているのを見てから、ますます嫌いになった。

カブトムシと同じものを食べるなんてイヤだ!と言うのが知沙の言い分。
それになんだかスイカを食べるとカブトムシになったような気持ちになる。
そう言うと弟の知樹に、ぼくはカブトムシになった気持ちにならないよ、お姉ちゃんいいな、うらやましいな、と何故か羨ましがられた。

今年の夏もひいおばあちゃん家に遊びに行った知沙達。ひいばあちゃん家は田舎で周りには何もない。山や川はあるのだけれど…
弟の知樹は親戚の子供達とセミやカブトムシを捕まえるのが楽しくてしようがない感じだけれど、虫の嫌いな知沙にとっては苦痛でしかなかった。

セミやカブトムシなんてゴキブリにしか見えない…

知樹や親戚の子供達がセミ捕りに行くと出掛けても、その日は知沙は行かなかった。早く自分の家に帰りたいな…なんて考えながらひいおばぁちゃんの家の居間でゴロゴロしているとひいおばあちゃんがキンキンに冷えたスイカをテーブルの上にどん、と置いた。

「ちーちゃん、皆には内緒な」嬉しそうにそう言うひいおばあちゃん。近所の誰々さん家のスイカで…とひいおばあちゃんは話していて、ごめんねひーばあちゃん、私スイカきらいなの…とすぐには言えなかった。

ひいおばあちゃんはスイカにパラッと塩を振りかけて美味しそうに食べ始めた。スイカに塩を振って食べる食べ方は知沙の父も母もしていなかったので、知沙は不思議に思った。
「ひーばあちゃん…美味しい?」
「美味しいよ、すごく冷えてるからお腹の底から涼しゅうなるわ」
「わたし、スイカきらいなの…」知沙は申し訳なさそうにひいおばあちゃんに言った。
「そうなんか、きらいなんか。けどスイカは夏しか食べれんし、今食べとかなもったいないよ。甘いアイスみたいに美味しくないかもしれんけど…冷やすと甘味も落ちるからなぁ。けど生ぬるいスイカほどマズイもんはないしな。そやから塩振ったら甘味がますんよ」
「スイカを食べると、なんかカブトムシになったような気がするから…」知沙がそう言うとひいおばあちゃんは楽しそうに笑った。

「ちーちゃんはカブトムシの気持ちがわかるんやね。すごいわ。それやったらカブトムシになったつもりで夏を楽しみ。セミもカブトムシも夏のもんや。小さい今しか楽しめん夏やな。楽しまなもったいないよ」

ひいおばあちゃんは知沙の分のスイカにもパラッと塩を振ってくれた。
知沙がカブトムシになったつもりで食べてみると…

「甘い…ひーばあちゃん、美味しいよ!」
塩を振ったスイカはとても甘くて、そして少ししょっぱかった。

スイカ 甘いか しょっぱいか

スイカ 甘いか しょっぱいか

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-13

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