はるかなる・・・
私立風ノ上第2高校 2年生の早乙女 結城は
3日前からリアルで非現実的な夢を
見るようになっていた。
第1章
「はぁ、はぁ、・・・・・っう!」
チャラッ
月明かりに照らされて、銀色の鎖が光る。
鎖をまいたような左手で、血がドクドクとあふれ出す横腹をおさえる。
「っく・・・こ、んな、とこ、ろ、で、まだ私は・・・」
?
「ケッケケェ???!!」
「っち、まだ残ってたのか」
突然、謎の黒い怪物(人型)が、真っ暗な茂みから飛び出した!
まっすぐこっちへ向かってくる!
彼女は横腹を左手でおさえたまま、右手を振り上げ、
なにかを呟く。
そして振り下ろした。同時に風がうなりをあげる。
「ッケ?」
すると、謎の生き物の腰(らしきところ)から上、がずり落ちた。
ドサッ サラサラ―――。
そして粉のようになって空へ舞い散った。
あたりは心臓がとまるほど静けさに満ちていた。
っといきなり、彼女が目の前で崩れるように倒れた。
「あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!っ・・・・・」
「っっ!!」
はっと目が覚めた。
見たことのある天井。
あぁ、と落ち着く。自分の部屋の天井だ。
「・・・・・クッ、まただ、またあの夢。いったいなんなんだよっ・・・」
それから4日後、この夢がとんでもない事件にまきこまれるきっかけだとは、
まだ知るよしもない。
第2章ー1話
「オッス!姫っ!!」
そう言って座っている俺の背中をたたくのは、
俺があまり友達だとは思われたくない男だった。
「あっれぇ?どしたの早乙女君、寝不足?」
「お前には関係ないだろ、つうかその呼び方やめろって」
「ふむ・・・」
そんなやりとりをして嵐山 拓馬は俺の前の席に座る。
「結城君」
声をかけてきたのは委員長の小野田 小百合。
「体育祭の立案プリント、まだ未提出なのだけど。」
「あぁ、悪い。今日の放課後までに出すよ。」
「・・・・そう・・・」
そう言って委員長は俺の後ろの席に着く。
ここは風ノ上第2高校。
上の中程度の学力であればだれでも入れる市立校。
そして俺はここの2年生。
委員長はかわいくて校内でもかなり人気だし、
嵐山はスポーツ万能でやっぱり人気。
俺は取り立てて目立つこともないありふれた凡人。
なのに委員長と嵐山はやたらと俺に話かけてくる。
俺は知ってる。
あの2人が俺に近寄るから、周りの奴らは陰で言ってることを。
口をそろえて
「どうして?似合わないのに」
俺は知ってる。
そしてたぶん、あいつらもわかってるはずなのに。
なんでなんだよ・・・・・
はるかなる・・・