時間と罪

橘 洋介

人はいつも時間に縛られて生きている。
寝るとき、食べるとき、仕事するとき、遊ぶとき、恋愛するとき
全てのことをするときにおいて必ず時間と言うものが絡んでくる。
なぜ、時間というものが存在するのか。このことを解明出来る日はくるのだろうか。

鳥のさえずりが響くなか僕は目が覚めた。「もう七時か」そう呟き時計から目を外す。何十年も続けてきたこの行為に、はぁ とため息をつき大きくけのびをした。階段を下り母におはようといい、洗面所へ向かった。顔に水をあて無理やり眠気を覚ました。その後食卓につき、なにげなくテレビをつけニュース番組にチャンネルを変えてぼーっとニュースをみていた。
「今日の未明、一人の男が奇妙な言動を繰り返し、次々と人々を刺すという事件が起こりました。容疑者はその後自ら腹に包丁をさし死亡したとのことです」「事件が起こった現場に中継がつながっています。現場にいる寺野さん」「はい。こちら大阪の道頓堀に来ています。現場は騒然としていて、所々に血痕が残っています。警察によりますと容疑者は十代後半の男で、薬物などは検出されていませんが、当初とても興奮した状態だったと証言があります。容疑者の男が死亡したことで詳しい動機などは分かりませんが、無差別に被害者たちを襲ったとの事です」「わかりました。ありがとうございます。」
「こういった事件は怖いですね。無差別とはいえ未然に防げなかったのでしょうか?」「いやー、こういった事件はほとんど動機が些細なことなんですが、容疑者は十代の子供だそうなので、何か悩みをかかえていたんだと思います」「そうですね。本当に痛ましい事件だなと感じます。警察が詳しい状況と動機を早急に調べるとのことです」「続いては芸能ニュースです」
「ほんと、物騒になったわね」そう言い母は朝食を持ってきた。「あんたと同い年の子がおこしたらしいわよ。あんたも気を付けなさいよ」と言われ「分かってる」そういいつつもあまり気にしなかった。

「佑哉(ゆうや)おっはよーー」と後ろの方から騒がし声が聞こえた。振り向くと近所に住んでいる親友の新(あらた)が走って来る。「今日も元気ないねー」といつものセリフを言ってきた。「お前が元気すぎるだけだろ」とだるそうに答えた。「なんだよー、朝から不機嫌だな」といいつつも声のトーンを下げてくれた。こいつは本当に気が利いて、優しいなと改めて思う。「そーいや、今日のニュース見た?」あまり興味はなかったが一応見たよと答えた。「あの容疑者健介(けんすけ)ってよ!」新の発言に「ふーん」と答えたがどこかで聞いた名だった。「えー、何か興味無さそうだね」と冷めた顔で言われた。内心を当てられてギクッとしたが「だって大阪のやつとか俺らに関係ないじゃん」そうこたえたが「小さい頃一緒に遊んでいた子覚えてないの?」と新はそう続けた。小さい頃の記憶はあんまりないが新同様よく遊んでいた男の子を思い出した。「あっ、思い出した。近くに住んでいた健介ね!」何となく思い出したのでそう言った。「そう、あの健介。突然引っ越していなくなった」健介は十二年前に両親の都合で引っ越してしまったのだ。「その健介が今回の事件を起こしたんだよ」と興奮気味に語った。突然の接点にびっくりしたが、それよりも驚きでいっぱいだった。「なんで、あいつが?」この事件の詳細を知りたくて食いぎみに問いかけた。「俺もまだよく分からないけど、健介が犯人らしい」と新は言った。関わりのあった人が世間を騒がす事件を起こしたんだ…その日は事件の事で頭がいっぱいになっていた。

一時限目心理学の講義で教授が今朝のニュースについて触れた。「この事件は非常に興味深いものです」教授はそう言い長々と語り初めた。僕は健介のことで頭がいっぱいになっていたので話が全然入ってこなかった。
昼休み、学食で新と昼食をしていた。「あの事件の犯人、そうとうヤバかったらしいよ」「なんか、彼女にフラれて起こしたらしい」そんな根もない噂話で周りは盛り上がっていた。〈何も知らないくせに勝手な事いいやがって〉そう思いながらも怒りをグッと堪えた。「ねぇ、今度の土日何か予定入ってる?」突然新がそう言った。
「うーん、特に予定はないけど…」 「じゃあさ、昔遊んだ公園や山巡りしない?」
あんまり乗る気はなかったが今回の件もあるのでいいよと答えた。
「じゃあ、決まりね。車は俺が出すから」そう言って会話は終わった。

家に帰りベットにダイブしてまたため息を漏らした。〈なんであいつが〉心の中でそう呟いた。健介とは新よりも前からの友達で家族ぐるみの付き合いがあった。
健介は好奇心旺盛で、昆虫を観察するのが大好きだった。僕はそこまで興味はなかったが、それに付き合っていた。近くの山に行ってカブトムシやクワガタなどをよく捕まえにも行った。 健介は毎日笑顔で楽しそうにしていたのを今でも覚えていた。そんな健介が人を殺したりするはずはない、そう思いながらゆっくり目を閉じた。「佑哉、ご飯出来たわよ」 母の声で目が覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。大きなあくびをしながら階段を下りていった。今日は大好物のカレーだったがあまり食欲が湧かなかった。
「最近、学校の方はどうだ」父がそう聞いてきたが「普通」とぶっきらぼうに答えた。
「今日は元気ないわね」母が父にそう話していた。「ご馳走さま」そう言って片付けをしてテレビをつけるとワイドショーで今朝の事件を取り上げていた。「犯人どんな人だろう」母が興味深そうに呟いた。僕は犯人が健介なんだよとは言いきれなかった。

時間と罪

時間と罪

昔の友達は…

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted