ダブルクロスお試し企画最終回

ダブルクロスお試し企画最終回

・これは過去に別場所で公開したF.E.A.R.出版のダブルクロスthe 3rd editionの疑似リプレイを小説として書き起こしたものです。何卒。
・鬱、流血表現なども含みます。閲覧のほどは自己責任でお願いします。

特待生たちはダブルクロスをプレイするそうです

ダブルクロス、お試し企画最終回


GM:と、言うわけで「汝は人狼なりや?」シナリオはこれで終了となります! お疲れ様でした!

四人:お疲れ様でしたー!

GM:いやー、みんなよくやり切ってくれた!

ルカ:おまwwwあんな鬼畜シナリオ持ち出した本人が何言ってるんだよwww

凛:最後の展開は何も言えねえwww

夕月:もうどうすれば良かったのwwwと言うか一人くらい助からなかったのwww?

羽月:本当にそれだよwww

GM:あ、マルチエンドだったから他のエンディングでは東雲さんとかは生存できてたぞw

ルカ:安藤か神原を何とかしてやってくれよwww

GM:神原は一応ルートあるけどほとんど無理でござるw
  それよりバックトラックを始めるぞw

凛:ドンドンー♪

羽月:ぱふぱふー♪

夕月:わーわー。

ルカ:棒読みをやめろw

GM:その前に全員にエネミーが取得しているEロイス分のボーナスだ。安藤ほのかが4つ、神原純が3つ、東雲恵美が1つ。更に「無知の罪(アイロニー)」を特別ボーナスとしてカウントして合計9個をまず振ってくれ。

ルカ:おお、結構ボーナスもらえるんだな。

夕月:減らされたいの?

ルカ:殺す気か。

凛:とりあえず振ろうぜw


>ボーナス分

伊月 9D10 → 33
椎堂 9D10 → 53
四方坂 9D10 → 49
那智 9D10 → 37


>伊月空也の侵食率減少 171% → 138%
>椎堂臨の侵食率減少 160% → 107%
>四方坂都の侵食率減少 147% → 98%
>那智の侵食率減少 155% → 118%


羽月:あ、生還確定したなw

凛:私も帰れそうだなw

夕月:結局余裕あるの最初から余裕あった二人だけじゃんwww

ルカ:と言うかダイスの女神様におもいっきり裏切られたw

羽月:期待値49,5だっけかw

凛:そうやってみると全員酷ぇなwww

GM:で、倍振りするかしないかの宣言頼む。

夕月:念の為倍振り。

ルカ:俺も。

羽月:俺はやらない。

凛:俺も。

GM:よし、じゃあしない二人からダイスロールだ。凛、「戦闘用人格(デュアルフェイズ)」の効果忘れるなよ。

>補足。「戦闘用人格(デュアルフェイズ)」所有者はバックトラック時のダイスが1つ減る。


>椎堂・ロイス分の侵食率減少(ロイス3人ー1人)
2D10 → 8
>椎堂臨の最終侵食率 107% → 99%(生還!)


>四方坂・ロイス分の侵食率減少(ロイス2 人)
2D10 → 10
>四方坂都の最終侵食率 98% → 88%(生還!)


羽月:よっし生還!

凛:イェーイ!

ルカ:このやろうwww

夕月:凛がギリギリだwww

GM:じゃ、残り2人もダイスロールどうぞ。


>伊月・ロイスの2倍分の侵食率減少(4人×2)
8D10 → 43
>伊月空也の最終侵食率 138% → 95%(生還!)


>那智・ロイスの2倍分の侵食率減少(3人×2)
6D10 → 33
>那智の最終侵食率 118% → 84%(生還!)


GM:全員、お帰り!

ルカ:よっし!

夕月:全員ギリギリだったねw

GM:ホントだよwで、これからエンディングフェイズに移ろうと思うんだが演出の希望は全面的に受け付けるぞw登場に侵食率上昇も要らないw

凛:有ったら私が死ぬw

ルカ:だなw

GM:それじゃ、エンディングフェイズに移ろう。



 安藤ほのかと神原純の死は、不慮の事故として表向きは処理される事になった。
 彼らは雨で視界が悪い中バイク事故で死んだ事になり、しばらくは学校中で噂が流れていた。だがその噂も一週間としない内に立ち消え、花瓶の置かれていた二人の机すらも撤去される。こうして二人は記憶の底に忘れ去られ、何事も無かったかのような日常が始まるのだ。


「じゃーね! 都、また明日ー!」
「ばいばーい!」
「ああ、また明日!」

 四方坂は極普通の女子高生として友達と別れ、待ち合わせ場所の喫茶店へと向かう。窓際の日当たりのいい席に、すでに相手は座っていた。

「よぅ。すまんな、ちょっと遅れた」
「いや、私も来たばかりだ」

 そう言って待ち合わせ相手、もとい椎堂はアイスコーヒーの氷をストローで掻き回す。その氷はあまり溶けておらず、言葉はその通りなのだろう。四方坂は向かいの席に学校指定のカバンを下ろしながら腰掛け、アイスコーヒーとドーナツのセットを注文する。
 しばらく事の顛末をどう説明しようかと四方坂はほんの少しだけ思考を巡らせ、そして口を開いた。

「あの二人の処理は完全に終った。これで、もう赤ずきんの話もおしまいだ」
「……感傷に浸りはしないのか。一般人上がりなのにずいぶんとドライだな」
「一般人風情がそんな事をいちいちしてたら身が持たねーっつーの」

 苦笑いを浮かべる椎堂に四方坂は肩をすくめて答える。
 椎堂はしばらく四方坂の着ている青基調の学生服の校章を見つめ、手の届かない日常に少しだけ目を細める。望んだって、手に入る事は無い。大丈夫、もう慣れている。
 そんな椎堂の視線に気付いたのか、四方坂はウエイトレスから受け取ったアイスコーヒーを口に運んで含み笑いをしてみせる。

「唐突に一つ聞いていいか?」
「うん?」
「お前好きなやついる?」
「ぶふぉっ!?」

 咽せた。
 気管に入ったコーヒーに咳き込み、顔を真っ赤にして椎堂は言い返す。

「唐突すぎるだろ! いや、いないけどさ!」
「ふぅん……そうかそうか。いい男、紹介するぜ? 美人のクセにオトコの一人もいないなんて勿体無いぞー」
「……都さん、何でそんなに楽しそうなの……?」

 ニヤニヤ、と至極分かりやすい笑顔でスマホを弄ぶ四方坂に椎堂はため息混じりに答える。

「……なんつーか、さ……今回のやつとか見てると……護るべき者がいるってのは、ちょっと怖いな」
「あー……」

 今回のやつ。神原純と安藤ほのかの、事件。
 あの後、現場処理の間伊月は魂が抜けたような表情でその場に座り込んでいた。無理も無い。彼を日常に繋ぎとめていた最も大きな物を二つも同時に失ったのだから。
 むしろ四方坂は、伊月がそのまま自棄な考えを起こすのではと危惧していた。ああ言った事件が原因で失踪するオーヴァードは決して少なくない。失踪したのちジャームとして発見された者も自殺した遺体として見つかった者も四方坂は知っている。

「……俺はそれでも……何かに、しがみついていたいかな。すまんな、元一般人のサガだよ」

 こんなクソったれな世界にしか生き場所が無い椎堂にそんな事を告げる罪悪感から来る苦笑を浮かべながら四方坂はそう言って肩をすくめる。気恥ずかしさを紛らわすためか丁度手の空いていたウエイトレスにテイクアウト用の紙袋を頼む四方坂を椎堂は目を細めて眺めていた。
 そして結局ひとつも手を付けなかったドーナツを紙袋に詰めながら四方坂は不意に思い出したかのように言う。

「そう言えばさ、ここの支部って俺んとこと統括されるらしいな」
「……そう、なんだ」

 覇気の無い言葉に四方坂はドーナツを詰め終えた紙袋を丁寧にテープで止め、机の端に寄せてコーヒーを口に含む。

「俺が上司は不服か?」
「いや……そんなんじゃなくてさ……ただ」

 歯切れの悪い返答。
 浮かない顔の椎堂に四方坂は無言で続きを促す。

「……もう一人、の事は都さんも知ってるだろ?」
「ああ」
「多分……迷惑、かける。だから、」

 そこまで言いかけた椎堂の言葉を遮って四方坂は立ち上がると、学校指定のカバンを肩にかけてドーナツの紙袋を抱える。そして伝票をテーブルから抜き取って椎堂に渡した。

「ワケありなやつの扱いには残念ながら慣れてる。それでも迷惑が云々言うんならココの支払いでチャラって事で」

 しばらく四方坂の顔と伝票を交互に見ていた椎堂だったが、微かに笑って伝票を受け取るとレジへと向かう。そんな彼女の後ろ姿を眺めながら、四方坂はこっそりと肩をすくめた。
 どうやらまた護るべき者が増えてしまったらしい。これだから上に立つ仕事は大変なんだ。
 だが、そんな日常も、悪くは無かった。

「……な、椎堂。お前花屋に行った事あるか?」
「いや、無いけど……それがどうかしたのか?」
「俺も無いんだよな……さてはて困ったもんだ」



 街から遠く離れた、ポツンと佇む墓地。
 そこに、二人の青年の姿があった。

「……」

 墓の前にしゃがみこみ、手を合わせて目を閉じている伊月の後ろ姿を那智はじっと見つめていた。
 項垂れた後ろ姿と不器用に供えられた赤と白の花が真新しい墓石と相まって、一枚の絵として静かな痛ましさを湛えている。那智はこの死を身近に感じる場所があまり好きでは無かった。
 いつか、全ての人間から忘れられた時消える那智にとって、忘れられる事と死ぬ事は等しい。だからこそ、死んだ後も覚えていてもらえる普通の人間が羨ましかった。

「……俺さ、本格的にUGNで働こうかと思うんだ」

 不意に、伊月はそう呟く。那智には伊月の表情が見えなかったが、何かを覚悟しているかのような口調に無言で続きを促した。

「もう、護りたかった日常なんて何処にも無い。それならいっそ、」

 もう、戻らない方がいいと思うんだ。
 そう言って小さくため息をつく伊月に、那智は何も言えなかった。
 伊月はこの世界がどんな物かを知り、戦い続けてその先に何も無い事を知ってなお覚悟を決めたのだ。それに那智が口を挟む筋合いは無い。
 今更気にする事では無い。この世界ではよくある事なのだ。ただ、誰でもが持ち得る最悪の可能性を彼がたまたま引いてしまっただけで。
 単純に、運が悪かった。そしてこの世界が残酷過ぎた。たったそれだけの話なのだ。

「やっぱりここに居たのか」

 不意に、そんな聞き慣れた声が背後から投げかけられて二人は振り返る。そこには、青と白を基調に作られた花束を持った四方坂と紙袋を片手に複雑げな表情の椎堂が立っていた。
 彼女の持っている花束の意味を察したか墓前から伊月が離れると、四方坂は一度手を合わせてから花を花立に入れ始める。

「あー……青は失敗だったか。これじゃフランス国旗じゃん」

 色味が合わない事が不満なのか不服そうな表情で四方坂は花の向きや配置を手際良く整えて行く。そして不満げながらも見栄えを綺麗に整えると、よし、と言って立ち上がり後ろに下がった。
 伊月が供えた時の赤と白だけの花から大きく印象が変わり、不思議な佇まいを見せる花立を四人はしばらく見つめる。

「……少し思った事があるんだ」

 そんな中、椎堂が不意に口を開く。
 彼女は伊月にチラリと視線を送ると、再び墓を見据えて言葉を選びながら話し始めた。

「『境界線』……安藤ほのかが抱いていた恐怖ってさ、日常を失う事に対する恐怖だったんじゃないのかな……って」
「……」
「暗示として、森を精神世界に例えるような話はそれなりに多いんだ。誰もが心に狼がいる……狼に食べられるか、機転で脱出するか……それは赤ずきん次第」

 そして彼女は、言葉を切って。

「そして、喰われないために足掻き続ける馬鹿が私達だ」

 自虐に似た響きの椎堂の言葉に、三人は苦笑に似た笑みを漏らして同意する。
 そして花を包んでいた包装紙を四方坂がビニール袋に突っ込んで後片付けを始めたのを皮切りに全員が動き出す。と言ってもその場にあった物もごく少なく、数分で片付けは終わった。
 先導する那智の後に四方坂と椎堂が続き、最後に伊月が並んでその場を立ち去ろうとした時。


『     』


 不意に聞き慣れた、そしてもう二度と聞こえないはずの声が聞こえた気がして、振り返る。
 伊月が振り返った先にはただ真新しい墓が佇むだけで誰もいない。その筈なのに、微かな風に揺れる花の立てる音の合間に親友達の声を聞いた気がして。

「……じゃあ、またな」

 しばしの別れを告げるための言葉を呟いて、伊月はその場を後にした。
 それは、雨の止む頃に終わった童話の後日談。



GM:これでエンディングフェイズを終了する。みんな、よく頑張った! 最後に経験点配布を行うぞ。

ルカ:長かった……!

凛:そりゃあんな怒涛の展開は疲れるなw

夕月:とにかく経験点配布だから落ち着いてw


GM:じゃあまずは「セッションに最後まで参加した」。
  これは言わずもがな。みんな、よくやってくれた。1点あげる。

  次に「シナリオの目的を達成した」。
  「安藤ほのかの処置」。よく決断してくれた。4点あげる。
  「神原純の生存もしくは死亡」。これもお見事。2点あげる。
  「『無知の罪(アイロニー)』の究明」。裏設定までぶち抜かれた。2点あげる。
  「情報項目オールクリア」。お見事。1点あげる。

  以上9点に加えてEロイス8個と特殊Dロイス1個を経験点として加算。合計18点、お受け取りください!

ルカ:だいぶ貰えたな。

夕月:と言うかEロイス8個って普通のシナリオじゃあり得ないよねwww

羽月:全員ジャームコースも夢じゃ無いなw

凛:初心者だらけだったのになw

GM:w。次に最終侵食率による経験点配布。全員最終侵食率と倍振りしたかの宣言を頼む。

ルカ:95%だな。倍振りしたぞ。

凛:99%。倍振りはしてないぜ。

羽月:93%。同じく倍振り無しだ。

那智:83%。倍振りしたよ。

GM:それじゃあ倍振りをした伊月と那智は経験点3点。倍振りをしてない残り2人は5点となる。
  次に「良いロールプレイをしたか」。これは言わずもがなかな。全員に1点あげる。
  次に「他のプレイヤーを助けるような発言や行動を行ったか」。主に経験者が上手く動いてくれて助かったよ。1点あげる。
  次に「セッションの進行を助けたか」。みんな上手くやってくれたね。1点あげる。
  次に「場所の手配、提供、連絡や参加者のスケジュール調整などを行ったか」。かなりの長時間を耐えてくれてありがとう。1点あげる。
  最後に「Sロイスを守り抜いたか」。伊月に5点あげる。

  合計で最終経験点は伊月は31点、椎堂と四方坂は28点、那智は26点。好きに持っていけ!

ルカ:結構貰えたな。

凛:最初の経験点も合わせると60点前後か。

GM:これでシナリオは全て終了になります。お疲れ様でした!!

夕月:終わったーw

羽月:長く苦しい道のりだったw

ルカ:でもいくらか疑問は残ってるけどなw

GM:ん? 質問にはいくらでも答えるよ?

ルカ:まず、どうして神原純の衝動を「自傷」に設定したんだ?

GM:「自傷」はね、自分の体を傷つけるだけが自傷行為じゃ無いんだ。大切な人を傷つけるのはとてつもなく苦しい、失うのはもっともっと苦しくて嫌だ。なのにその最大級の苦しみを衝動が求めてやまないから敵対行動。これが大まかな流れだな。

凛:じゃあ俺からも。安藤ほのかに生存ルートはあったのか?

GM:ああ。一応安藤ほのかには生存ルートがあってね。それを選んだら全ての破滅を受け入れるバッドエンドに到達するよ。

夕月:……ああ、成る程ね。伊月も神原純と同じ命運を辿るエンディングか。

羽月:うわぁ……このド鬼畜が!

GM:なんとでも言ってくださいw

ルカ:とりあえずどうあがいても絶望。

凛:最後まで抗った結果がこれだよ!

那智:で、次回のシナリオの予定は?

GM:次回は永い後日談のネクロニカ自作シナリオ、「Ark」をプレイする予定だぞ。
  で、夏休みに入ったら特別企画で再びダブルクロスだ。ついでに手持ちのルールブックがガンガン増えてるから気が向いたら単発でそっちもやるかもな。

羽月:よっしゃ、ようやくウロボロスが使えるぜw

ルカ:確か最近はビガミまで追加したらしいな。ホントお前何やってんだ。

凛:どうせなら早くサタスぺのデッドマン追加してくれよ。

那智:あれ? サタスぺって一時発行中止になってなかったっけ?

羽月:というかさっさとTRPGディクショナリ書き上げろよ。何も知らない人が困り果ててるだろ。

GM:それはおいおいですなw
  さて、長くなりましたがダブルクロスお試しシナリオはこれで完結です! ありがとうございました!

四人:ありがとうございましたー!

ダブルクロスお試し企画最終回

「ダブルクロス the 3rd edition」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。一切の著作権はF.E.A.R.に帰属します。

※サムネイル画像はCROSSRED MATERIAL(http://cross.x0.com/red/)様よりお借りいたしました。

ダブルクロスお試し企画最終回

特待生たちはダブルクロスをプレイするようです。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-07-12

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