夏休み最後の日
いよいよ今日は夏休み最後の日。なのにボクは友達のマサルと公園で遊んでいた。
「マサル、宿題やった?」
「全然やってないよ、サトシは?」
「どうしよう、ボクもやってない」
「学校なんて無くなってしまえばいいのに」
「うん、やっぱり、ボク家に帰って宿題やるよ」
「オレもそうする」
家に帰って来たのの、一日で宿題が終わるハズがない。こんな事なら真面目にやっておけばよかった。
…そうだ、小学校に忍び込んで水道の蛇口を全部開けっ放しにしておけば、校舎が使えなくなって宿題どころの騒ぎじゃなくなって…、いかんいかん、なんて事を考えているんだ!でも、先生に怒られるの怖いし…、そんな事を考えているうちに夜になってしまった。
「もう、やるしかない!」
ボクは夜中にコッソリ家を抜け出して学校に向かった。夜中の通学路は昼間とは全く違う道に感じられた。やっと小学校に着いた。そっと校舎に忍び込み、ボクは職員室に向かった。職員室からやってやろう、そう心に決めていた。だが職員室には水道の蛇口がない。ボクは掃除用のバケツに水を入れて両手に持ち、職員室まで歩いていった。ドアの前に立ち右手のバケツを床に置き、そっとドアを開けた。
「ああっ、ああっ、どうしよう!」
ボクはその光景を見て立ちすくんでしまった。職員室の中で炎が燃え上がり、大人の男の人がその火を消そうとしていた。
「おおっ、ちょうど良かった、君そのバケツを貸してくれ!」
その男の人はボクの手から水の入ったバケツを奪い取り、炎に向かって水をかけた。ボクが床に置いていたバケツもその人に渡すと、その人はさらに水をかけ火はやっと消えた。
「ありがとう、君のおかげで火は消えたよ!」
「はあ…」
次の日、新学期が普通に始まった。先生が、神妙な表情で話し始めた。
「今日から新学期なだというのに、皆さんに悲しいお知らせと嬉しいお知らせが一つずつあります。悲しいお知らせというのは、夕べこのクラスのマサル君が学校に忍び込み、職員室に火を付けて警察に補導された、という事です。そして、嬉しいお知らせというのは、このクラスのサトシ君が宿直の用務員さんと協力して、その火を消火して、消防署から表彰された事です!」
…マサル、ごめん…。
夏休み最後の日