E l e n a

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南城洋

初老と言うより老人の域に入った私の最後の物語になる予感がして書き続ける。これはドキュメントであり、現在進行中の物語です。
悲劇か単な笑い話で終わるか今の自分には想像出来ない、
自分にとって最後の物語になる予感がする。

エレナと知りあったのはFacebookの友達申請からだった。どちらが申請したのか記憶に無い。私のタイムライン上に時々イイねをくれるようになり、そのうち毎日アクセスしてくるようになった。ある日、エレナからメッセージが来た。「昨日の貴方は寂しそうだった。元気出してね!」彼女はネット上で行き交う私の言葉や絵から何かを感じ取っていたのだろう。それ以後、毎日のようにメッセージの交換をしだした。

タンゴ

台風一過の蒸し暑い日曜日だった。
「おはようエレナ!!気分はいいかい? 素敵な日曜日の朝に君とダンスをしたい」
facebookを開けていたのだろうか、早速返事が来た。
「おはよう。ありがとう。元気よ。ダンスミュージックは何?」
私はダンスはほんの少し知ってるだけで、踊れると言うほどではない。エレナは女優だからダンスは得意なはずである。今、目の前にいるわけではないし現実に踊るわけではない。
「タンゴ!」・・・と言ってしまった。

タンゴはダンスの中で最も情熱的で美しい。ブエノスアイレスでタンゴの撮影をする映画監督マリオと美しいダンサー、エレーナの恋を描く”タンゴ ”の華麗なシーンが官能的なタンゴの調べに乗せて華麗に踊るタンゴが目に焼きついていた。

「私も踊りたいわ」
「しかし、私はタンゴは踊れないよ。夏の朝だからワルツだね」
そうするとすかさず、ダンス絵画の動画のアドレスを送ってきた。
「これ最高よ!http://www.youtube.com/watch?v=gvUg7KLAclA#t=39 」
動画の中にはロートレックやルノアールなどの巨匠から現在の絵までコレクションされていた。
「貴方のタンゴを踊ってる絵を描きたい」
「タンゴの写真が欲しい?」
舞台衣装のエレナノ写真が送られてきた。
黒いドレスに真っ赤なショールの女性だ。彼女のイメージと違う。
「これエレナ? 美しい!! 本当に美しいよ」
「あはは・・・。私は女優よ。役で変わるのよ」
いすに座って長いキセルを細長い指で支えて口に咥えようとしている写真だった。
「女優は、映画や舞台で人々に夢を与える。私は貴方に出会えて嬉しい」
「Ooo , wonderful。thanks a lot 」

エレナは自分をネット上で誇示するところが無い。自分のページに自分の写真は載せていない。仲間がエレナが写っている写真をタグ付けしている位だ。その写真を見ると、それでも、テレビのトーク番組に出演したり舞台の写真が数枚ある程度。奥ゆかしい控え目な女性だ。西欧では人を押しのけるように自分を出さない反対に潰される社会だ。そこでそのようなエレナが生き残っていけるのは、それだけ存在価値があるのだろう。
私は、彼女と彼女の住む町を散歩する姿を想像してみた。

アイコンは顔のアップで取分け美女と言うわけでもなく自己紹介にも目に留めなかったが、メッツセージを何度と無く交換するようになり改めて見た。職業・女優と所属劇場が書かれていた。検索で劇場を入力すると日本の俳優座とは比べてその豪華さと立派な建築に驚いた。芝居のポスターも掲載されているが、どのポスターも素晴らしいデザインだ。公演の写真も掲載されていたがそれも、本格的な舞台作品だった。改めてエレナの投稿写真を見ると、テレビ出演の写真や公演のスチール写真が出ていた。
多分、ルーマニアでは相当な仕事をして来たのだろう。スチール写真を見ると存在感のある女優だった。
それがどうして名も金も無い地位も無いただの老人にと考えてしまった。年は最初、40前後かと思ったが多分もう少し上かもしれない。自分の年くらいになると人間で相手を選ぶ。
人間で一番大事なのは素敵な感性を持っているかが判断の決め手になる。いくら美女でも 感動の無い女性は飾りにしかならない。そんな物で見栄を張るのがいかに虚しいか分かっている。

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  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2014-07-11

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