SS21 サプライズ誕生日
今年の誕生日はどんなサプライズが待っているんだろう?
「茜ってば聞いてよ」
やっぱり自慢話が始まった。
「カレはさ、毎年私の誕生日にサプライズをくれるんだけど、今年のはとびっきりだから期待してくれって言うのよ」
紅茶をスプーンで掻き混ぜながら、亜希子は優越感丸出しの微笑みを浮かべた。
「相変わらず、あなたの彼ってマメなのね」
「でしょ? そう思うでしょ? だから言われた通り、明日は一日家で待ってるんだ」
「あらあら、ごちそう様」
気のない返事も彼女にはまったく通じない。それもそのはず、どこか遠くを見詰めた彼女の瞳は閉じられて、心ここに在らずの状態だった。
「早く明日にならないかなぁ」
夢見るような亜希子の態度に呆れ果て、茜は紅茶をがぶりと飲んだ。
***
--翌朝。
亜希子はほとんど眠れないまま起き出した。
サプライズの内容もさることながら、今日着る服装に悩んでいた。
抱えきれない花束、こっそり友達を集めた盛大なパーティー、電光掲示板に映されたハッピーバースデーの大合唱。
これまでは外で待ち合わせてから”会場”に連れて行かれたが、今年は少し勝手が違う。
何があってもいいあってもいいように、でも身綺麗に見せるにはどうしたらいいだろう?
結局、鏡の前であれこれ試している間にお昼になった。
ようやく支度が終わったのが午後三時。あとはひたすら待つだけだ。
だが、どうにもお尻が落ち着かない。
立っては座り、何度も携帯の着信を確かめながら部屋の中を行ったり来たり。その内にはたと亜希子は閃いた。
家にいるよう言い付けるからには、何か届くのかもしれない。
亜希子はサンダルを突っ掛けて、アパートの外廊下を窺った。
でも左右を見渡したところで、廊下にプレゼントの類は置かれていない。
ついでに郵便受けを覗いた亜希子は、チラシに混じって白い封書が届いているのに気が付いた。
「これかな?」期待を込めて腕を伸ばすと、それは披露宴の招待状。
最近、近しい人のそんな話しを耳にした覚えはないけれど……。
「一体誰が結婚するんだろ?」
裏を返すと、そこにはカレと茜の名前が並んでいた。
SS21 サプライズ誕生日