街角のサンタクロース
女の子がひとりごとのようにつぶやいた
クリスマスなんてなくなればいいんだ
隣にたたずむ男
どうして
だってサンタはわたしんちには来ないもん
夕刻の町に
ケーキやプレゼントの入った
大きな袋をさげた
大人たちが
女の子の前を行き交う
男は小さな靴下の菓子を
女の子に差し出した
これあげるよ
小さいねと女の子
ごめんねと男
それでも女の子は
小さなプレゼントを
両手でかかえて
なんどか男のほうを振り返って
にっこり笑いながら駆けて行った
男は小さく女の子の後姿に手を振った
女の子にあげた小さなプレゼントは
男の朝からの稼ぎのすべてだった
その夜はまたいちだんと冷え込んだ
その後男はその町にも
世界中のどの町にも
現れることは無かった
街角のサンタクロース