3ストーリー ①
今回は、モデルの女の子の物語を書きました。
杏奈は今売れ行きのモデルで、幸せな事ばかりでした。
そんな時、お父さんの死。
杏奈の成長を感じ取っていただけたらと思います。
「あんちゃーん!」
「はーい」
今、渋谷のスタジオで雑誌の撮影中。
私、下北杏奈。中学1年生の13歳。
「あんちゃん、小道具入りまーす!」
スタッフさんにぺろぺろキャンディーを渡される。
10カットぐらい撮って、終了。
「あんちゃん、この表情が一番いいんじゃない?」
「そうですね!コレもいいかも」
カメラマンさんとチェックタイム。
自分が別人になったように楽しそうに笑ってる。
「じゃあ、今日はコレで終わりー」
「お疲れ様でした」
急いで楽屋に戻って先輩のモデルさんに挨拶。
最初は北島エリカさん。
「忙しいのに、挨拶まで来てくれてありがとう。頑張ってね!」
応援してくれるとありがたい。
次は小田美奈子さん。
「わざわざありがとう。勉強も頑張ってね!」
勉強のこと、心配してくれる。
最後は堀江真理さん。
「なんか不安な事があったら、構わず言うのよ~」
頼りになる・・・。
このとおり、先輩たちは皆やさしい。
一通り終わったところでマネージャーが迎えにきたので帰ることにした。
帰りの車でマネージャーが言う。
「明日は中学校行くのよ。で、夕方からラジオ。夜は歌番組の収録ね。」
「はい。分かりました」
「運転さん、ここで下ろして」
「了解ー」
「じゃ、また!」
私はマネージャーと二人で住んでいる。
都内のマンションで二人暮し。
部屋でゆっくりしていると、携帯が鳴った。
「はい?杏奈ですけど・・・」
「杏奈、お父さんが大変なの!」
「え?何があったの?」
一瞬、硬直する。マネージャーも?と言った顔で電話に耳を近づけてきた。
「お父さん、癌らしいのよ。今、緊急手術してるんだけど」
「嘘・・・」
ショックで涙も出ない。あまりにも突然すぎる。
マネージャーがすぐさま代わった。
「お母さんでいらっしゃいますよね?!斉藤です。」
「ぁぁ・・斉藤さん」
「今、杏奈は忙しいピーク時です。お父さんの癌も本人も不安だと思いますが、活躍に害を与えてはいけません」
「そうですよね・・・」
「なので、帰るときは帰らすので、もう少しだけ待ってください!」
「はい。わたしも頑張りますね」
「失礼しました」
通話は終わった。
「マネージャー・・・」
「今は仕事に集中!帰られるときは帰らすからね」
「もうちょっとのしんぼうよ。」
私はもう何がなんだか分からなくて頭が回らなかった。
いや、今考えると回らなかったほうが、状況がよく理解できなかったほうが、良かったのかも。
私は睡眠をとって、癌なんて忘れる事にした。
それから数ヶ月経ち、お父さんも回復に向かっていると知らせを受けた。
ほっとして、仕事にも精を出していた。
2019年8月5日ー・・・
この日は大事な収録だった。
初めてMCを努める番組で、緊張していた。
その時、マネージャーが電話を向こうに泣いていた。
そのときは何だろう?と思っただけで、緊張が少しほぐれた。
それから21時にマンション内へ戻り、マネージャーはつげた。
「お父さん、永眠だそうよ」
?・・・え、永眠?ちょっと待って。永眠?死んじゃったの?えい・・・みん・・・。
「奇跡的に笑ったように息を引取ったそうなの」
「あなたには、まだつらいことや苦しいことが沢山ある。この事実はうけとめなさい。」
受け止める・・・。あの日、私は一歩成長したのかもしれない。
現在ー・・・私はモデルとして働いている。
杏奈という一人の人間として。
天国のお父さんに感謝するよ。
3ストーリー ①
実は、これ続くんですよ!
次回は強気で頑固な女の子の物語でも書こうかと思います。^^