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神からのお知らせ

遠くから声が聞こえた。
夢の中なのか。なんだかふわふわした感じで
聞こえた


「みなさん明けましておめでとうございます。」

(・・・・・そうか、今日は元旦だ。)


「ここでみなさんにお知らせがあります。この日本は今年1年間、私が神となりました。」

(・・・・・神?)


「みなさんはこの1年、生きる意味を持って生きてください。」

(・・・・・え?どうゆうこと?)


「もし、生きる意味をなくしたものは・・・私からの制裁があります。ではみなさん、素敵な1年を!!」





そして俺はハッと目を覚ました。

テレビではお正月の特番が流れていた。


「あら晃、もう起きたの?おはよう。明けましておめでとう。」

いつもと変わらない母さんがそこにはいて、なんだ、ただの夢だったのか。
そう思って

「明けましておめでとう。」

俺はそう返した。





冬休みが終わった始業式。

俺はいつもと変わらず友達の一哉と登校した。

「あーきーらーなあ、聞いてくれよ~昨日凜花かがさーあー」

「お前、またその話かよ(笑)いい加減仲良くしろよな(笑)」


凜花とは一哉の彼女。いつも喧嘩ばかりでその話を聞いてる。

いつもと変わらない会話。いつもと変わらない風景。


そうして新学期が始まると思っていた。




体育館で始業式をしていると一哉が

「なあ晃、お前さどんな初夢みた?笑」

「は、お前なんだよ急に(笑)」

「いやさ、変な夢見たんだよ。」


一哉は夢の話をし始めた。


「どこからかさ、声がすんだよ。今年1年間、生きる意味を持って生きろって。」

「・・・え??」
俺は驚いた。一哉も同じ夢を見ていた。

「神とかゆうやつがさ、そういうんだよ。」

同じだ。まったく同じの夢を見ていたんだ。


不思議に思った俺は、他のやつにも聞いてみた。
みんな、同じだった。俺と、同じ夢を見ていたんだ。




これは偶然なのか?

いや、偶然にしてはあまりにも同じすぎる。





俺はまだ知らなかった。



神の恐ろしさを

ターゲット


”生きる意味を持って生きてください。”

どういう意味なんだろう。


そう感じてはいたが、気にしないようにしていた。


始業式からしばらく経った頃、担任の酒井が言った。

「誰か、西原のところへプリントを届けてくれないか。」

西原とは夏休み明けから不登校になっているやつだ。
たぶん原因はいじめだろう。
もともと気の弱かった西原をねらい、いじめグループが集団でいやがらせをいていたのを見たことがある。
西原とは中学から一緒で、昔からおとなしかったから尚更ターゲットになったんだ。

でも俺は、それを止める勇気なんてなかった。
西原とは話したことはほとんどといっていいほどない。
助けて、もし自分にターゲットが回ってきたらと思うと、怖かった。



「おお、晃。西原と同じ中学だったんだよな。悪いが頼むよ。」

酒井はそう言うと俺にプリントを渡してきた。


*まじかよ・・・

そう思いながらも放課後、西原の家に行くことにした。




ピンポーン


呼び鈴を鳴らすとすぐに、女の人の声が聞こえてきた。

「・・・・はーい。」

「あ、あの、西原君と同じクラスの遠野晃といいます。プ、プリントを届けに来ました。」

「ああ、真の。ちょっと待っててね。」

母親らしき人の声は澄んだきれいな声だった。


ガチャ。

ドアが開くと、声の通り、きれいな女の人が出てきた。


「ごめんね。真なかなか部屋から出てきてくれなくて・・・・」

「いえ・・・あ、これ、プリントです。」

俺は早々とプリントを差し出した。
できれば早く帰りたかった。
話したこともない。そんな奴の家に長居しても、どうにもならないからだ。


「ありがとう。よかったらあがっていって。お茶でも出すわ。」

「え、あ、はい・・」

そういわれ、断ることもできず、家の中にあがった。



西原は自分の部屋から出てこないらしい。
いわゆる引きこもりになっているようだ。

「わざわざありがとね。真、友達少なくて、こうして家に来てくれる子もいないのよ。」

母親は勝手に話を始めた。
俺ははい・・なんて言って、流すようにしていた。



しばらくすると、真の部屋に案内された。
早く帰りたかったのに。



でも、部屋に着いたとき俺は何かを感じた。
部屋から出る、いや、影のような濁ったなにかを。
それは俺にしか見えていないようで、母親は何も感じないようだった。

「おい、西原?俺・・・同じクラスの遠野だけど。」

部屋から反応はない。

「お前、なんで学校来ないんだよ。来たらさ、楽しいこといっぱいあんじゃん。」

すると部屋の奥から微かに聞こえてきた。


「なんで・・・なんで善人ぶる。・・・お前も・・・見ぬふりしてたのに。」


俺は何も言えなかった。
見て見ぬふりをして逃げてきたから。


「僕は・・・僕なんてゴミなんだ。ずっとそう言われ続けてきた。いらないんだ。」

西原の声はかすれていてそう言った。



「僕はいないほうがいいんだ。ゴミは処分されるんだ。」


前に、西原がいじめられているところを目撃したことがある。
ゴミ捨て場で、次から次へと頭に生ごみやガラスまで。



「おい、西原何言ってんだよ・・・。」

俺は言葉に詰まった。
何を言ったらいい?わからなかった。


「・・・・・・帰ってくれ。偽善者。」



西原の言葉は俺の心にグサッて強く刺さった。



「ごめん。」



そう言って俺は足早に西原の家をあとにした。




西原の言葉。そしてあの部屋の嫌な気配が俺の頭に残った。

制裁のスタート


翌日

俺はずっと西原の言葉が離れなかった。

「偽善者」


そうなのかもしれない。いつだって俺はいい方へと向いてきた。
反発とか、そういうのが嫌だった。
いや・・・・・・・怖かったんだ。


「おいって!!!!」

ハッとした。一哉の声で俺は我に返った。

「晃どーした?調子でも悪いのか?」


「いや・・んなことねえよ。」



気にしないようにしよう。



そう思った。





教室に入ると、隣のクラスが騒がしいことに気付いた。

”竹内が死んだ”って
そう聞こえてきた。


竹内とは静かな女の子で、割と孤立していることが多かった。

学校は一時その話でおさまりが尽きなかった。
先生たちも、生徒もざわめくばかり
自殺なのか、原因は不明らしかった。



そしてどこからか聞こえてきた

”生きる意味を持たない者は制裁を受けるのです。”


・・・・・・・え?


俺がハッと振り向いてもそこには誰もいなかった。
神が?制裁をする?まさか。あの夢が?

そう頭をよぎったけれど、なわけないって思いこんだ。


放課後、帰ろうとすると一哉が

「おい、晃!」
と廊下を走って向かってきた。

「なんだよ」

「すげー情報手に入れた!!」
一哉は息を切らせながら言った。


「竹内のやつ、誰かに殺されたらしいぜ」


「え、殺された?」
そのときまたふっと聞こえてきた

”生きる意味を持たなければ、制裁を受けるのです。”



「・・・・制裁」
俺はその言葉が頭から離れなくなっていた。



これは神からの・・・



だがこれはまだ、ほんのスタートにしか過ぎなかった。

まだスタートライン

これが本当に制裁なのかわからなかったが、
竹内が死んだのは事実。


それから一週間経った。
噂は膨らむ一方で自殺なんじゃないかなんていう奴も出て来た。


俺自身もどこからかの声で制裁かもと思っただけで
神なんて信じる方が馬鹿だろうと感じていた。


キーンコーンカーンコーンとチャイムがなる。

HRが終わり、帰ろうとすると

「晃、悪いがまた西原のとこに届けてくれないか?」
と酒井がプリントを渡して来た。

……自分で行けよ

そう思いながらも

「わかりました。」

と了解してしまった。



''偽善者''


そう言われた日から心はチクチクと痛んでいたが
またもあの家に行かなくてはならないとなると、足がすくんた。



偽善者ぶるなと言われるだろうか。



そう考えていると


「あっきらーかーえーろ!」

と軽快に一哉が後ろからるんるんと来ていた。


「あれ!?また西原ん家行くの?」

「あぁ、酒井に押し付けられた」
ため息交じりに俺はダルそうに答えた。



すると一哉は言った。


「なぁ、俺もさ…行っていい?」



え?
俺は驚いた。

一哉は面倒くさいことはやらないタイプで
何より西原とも接点がない。

「そんな驚くことか?笑」

一哉は俺のびっくりした表情に笑っていた。



そして、俺と一哉で西原の家にまた向かっていった。




今度は一体何を言われるだろうか。

そもそもまた西原に会わなければいけないのだろうか。



心の中で考えていた俺は、
一哉が何故一緒に西原の家に行こうと言ったかなんて
まだ少しも考えてなどいなかった。


ピンポーン



また、呼び鈴をならす。


「・・・・・・・はい。」

母親だろう声が返ってくる。
しかし、前に来た時よりもどこか暗い、低い声だった。


「同じクラスの遠野です。プリントを、、」

そう言うとすぐに

「あぁ今開けますね。」

と返ってきた。




ガチャッ


玄関が開き、母親が出てきた。


その瞬間、俺は言葉を失った。


顔はやつれ、どこか疲れきっている表情だった。
以前来た時と同じ人とは見えなかった。

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  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-05

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  1. 神からのお知らせ
  2. ターゲット
  3. 制裁のスタート
  4. まだスタートライン
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