梅雨

白っぽく単一色の空
乱反射で全体が同じ明るさだ
肌寒くない
外へ出てみると細かい雨が降っている
ポツポツと肌に落ちる重さは感じない
二三歩あるくごとに一つ二つ
腕に針の先くらいの冷たさを感じるがすぐに消える
路面も光ってなくて夜のうちに雨が降ったようすはない

空全体に水蒸気を含んだ綿色の雲が広がり
地面をすっぽり覆っている
雲と地表の間にふだんあるはずの空間がかんじられない

自分の歩く靴の音が昨日とちがう
風邪をひいたときのように耳がふさがったかんじで
まわりの音が聞こえにくい
地上遥か上の天空の中をひとりあるいているようでもあり
自分の心の中にとじこもっているようでもある
不思議な感覚だ
自然のなかで静寂を体感しているのでなく
部屋のなかに密閉され外界と音が遮断されているような

ちょっと離れた公園の池から
牛ガエルがグエー・グエーと鳴いているのが聞こえる
その振動が歪んで割れている
朝から無理をして全力で鳴嚢をふるわせているのか
そしてときどきポンというおかしな音もする
おおきくふくらませたお腹を前足で叩くカエルの姿を想像する

遠い山は薄色に塗られ乳白の空とうまく隣り合わせになって融合し
近くの山は緑を濃くして樹木の葉があることがはっきりわかる

にわかに小川の水面にあちこち輪ができだした
雨粒が大きくなっていくつかの波紋も一瞬に広がり互いに重なりあう

やっと梅雨か

梅雨

梅雨

今年の梅雨はまったく梅雨らしくありませんが、ごく最近のある朝それらしい雨が降りかけたときがあって、そのときの状況をかいてみました。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-07-04

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