堕天使
私は堕天使かもしれない。
亜希は昔からそう自分でも感じていた。
学生時代から何故か他人の好きな人や恋人を好きになってしまう。
それまで全く意識していなかったのに、他人が好きだと言うものに強く惹かれてしまう。そしてそのものを他人から奪ってしまう。
悪い癖ね、そう思っても亜希にはこれっぽっちの罪悪感も無い。
だって欲しくなるの。他人のものが。
何人目かの他人から奪った恋人とのデートの帰り道に、亜希は真っ暗な夜道で一人で泣いている小さな子供に出会った。
育児放棄された子供?可哀想にね。けれど子供嫌いな亜希は声も掛けずに通り過ぎようとする。
「…子供きらいなの?」
泣いている子供は亜希にそう話しかけた。亜希はドキリとして振り返る。子供をもう一度見ると、背中に白い羽のようなものが生えていた。
「何?天使なの?」
「あなたがそう思うのならそうなんだろうね」
まさかね。どっちにしても気持ち悪い…亜希は咄嗟にそう思った。
「嫌いよ。大嫌い。特にあんたみたいな泣き虫はね」
「…そうなの。わかった」
天使のような子供はそう言ってパチンと指を鳴らした。
すると亜希は突然腹部に激痛を感じた。
「…何…何したの…」
天使のような子供はにっこり微笑んでいた。
「子供きらいなんだよね?だからあなたは気付いてなかったけれど、お腹にいるあなたの子供も消してあげたんだよ。もう一生あなたを子供を抱くことも、産むこともできなくしてあげたからね」
堕天使