『task』
『task』とは
1 (一定期間内にやるべき)仕事, 課業, 学業;自発的に請け負った作業;職務.
2 骨の折れる[つらい]仕事[事業].
印欧語根には、触る、扱うの意味がある。
(※ここに書かれている症状、病名などはあくまで私の知識であり、正しいものと主張するものではありません。また、当小説読んでの苦情などに関しては当方は一切の責任を負いませんので予めご了承ください。)
前の日
〜♪〜♪
『ん…』
真夜中だというのに、先日買ったばかりのスマートフォンが鳴り響く。
薄ぼんやりと目を開け、光るディスプレイに手を伸ばし電話の応答ボタンを押す
『はぁい…どちら様?』
掠れた声で答えれば、昔馴染みの懐かしい声が帰ってきた
《よぉ、俺だけど、明日の時間教えてなかったよな…って、もう今日か。
悪りぃ。さっきまでずーっと手術してて時間の感覚くるってんだ》
『はいはい…んで、明日ってなんだっけ…?』
《はぁ?お前もしかして寝ぼけてんのか?》
さっきまで夢の世界にいた人間に寝ぼけてんのかとは、随分おかしな話だ。と救は思いながら明日の予定を思い出す。
………そうだ、明日は確か新しい病院に赴任する日だ。
『ごめんごめん、明日何時に行けばいい?』
《朝9時に受付の所に来いよ、詳しいことはまた話す…んじゃ俺寝るわ、おやすみ》
よほど眠かったのか返事をする前に通信が切れる。
一つため息をついて再び布団に潜り込み、羊を数える間も無く眠りに落ちた。
赴任当日
あの電話から何時間寝たのか、程よいすっきり感と眠気が体にのしかかった。
…が、実際にのしかかっていたのは飼い猫のルリだった。
『ふぁ…重いよ、ルー…』
やっとの事で起き上がり、猫と自分の分の朝食を用意する
ふと時計を見れば、約束の時間までそう余裕もなかったため、急いで残りを口に放り込み適当に着替えをすませる。
自分がいない間のご飯と水を新しく用意し、猫を一撫でした後玄関へと急いだ
『ルー、お仕事行ってくるから、お留守番よろしくね』
にゃあんという声を背中で聞き、鍵をかけてマンションの階段を駆け下りる。
家からはそう遠くないため徒歩で病院まで急ぐ
大和救、27歳。
今日から中央病院で働くことになった新人の精神科医だ。
ちなみに彼女はいない。車の免許は昔取得したがしばらく乗っていない。
最近は運転が出来なくともバスやタクシー、汽車などがあるから随分と便利になったものだ。とぼんやり考えながら道を急いだ
**
『はぁ…はぁ…』
急いで院内に入ると、空調からの心地よい風が吹いて汗を収めてくれる。
ふと時計を見やると9時3分。ギリギリセーフ……かと思いきや、受付前には腕を組み仁王立ちでこちらを睨む人物がいた。
長めの金髪にイヤーカフの付けた風貌の男は、見た目に似合わず白衣を着ている。
彼こそ昨晩の電話の主であり、この病院で医者をしている救の友人、秋斗だ。
「昨日俺、9時っつったよな?」
『ごめん秋斗』
「ったく…久々に会ったと思ったらこれかよ…
んで、ちゃんと朝食は摂ったんだろうな?」
『うん』
「ならいいけどよ、…ほら、こっちだ」
朝食を摂ったかの有無で機嫌が治るなんて相変わらず変な奴だ。
思えば秋斗は昔から、人を寄せ付けない雰囲気を出している割には情に厚かったり、医者の割には喧嘩っぱやかったり、どこか掴めない人間だ
そんなことをぼんやり思い出しながら彼の後ろを歩いていく
しばらく行くと、とある診察室についた。
「ここがお前の城だ」
八畳ほどの広さの部屋は、オフホワイトの壁に、吊棚の付いた机。横の壁際にはベッド、そして柔らかい日差しが入る大きな窓。
市内で1番大きな病院の割りに、部屋は思ったよりこぢんまりとしている。
よくよく周りを見渡してみるとどうやら前は倉庫として使われていたようで、未開封の脱脂綿やゴム手袋、ティッシュなどがしまわれていた。
「なんか必要なもんあったら言えよ、経費で落とせるから」
『うん、助かるよ』
『task』