コードネーム魔法少女
アニメ、漫画、小説、ニュースや無駄知識・・・それらに触れるたんびに頭の中で様々なシナリオを作ってしまう私
しかし、私が死ねばそのシナリオは人知れずに消えてしまう、ふとそんなことを考えた私はついに立ち上がった・・・ではなくパソコンの前に座った!そして電波発射!!・・・まあ生暖かく見守って下さい
初めに
世界中の人々が天災や飢餓に襲われても争うことをやめ手を繋ぎあい明日を作ろうとし始めた近未来
その最中出現した人を捕食する怪物(カリデュー)
それらを極秘裏に撃退するため日本政府は魔法少女を製造した・・・
1-1上下 UpandDown
どこかの海に何本かの四角い岩が顔を出している。実はここは水没してしっまった東京である。(水没しているのは埋立地)年はAD2019年、度重なる天災と荒んだ人々の心によって日本は荒れている。
おやっ水面に顔を出すビルに二つのおいかっけこをする人影が見える。一つは風の如く疾走する少女であった。彼女の名前は一人奈(かずりな)ラブカ、真っ黒なセミロングの頭のこめかみには赤いリボンが垂れている。服装は黒がベースの白い筋が数本入ったノースリーブのゴスロリの様なかんじで(見た目は可愛いが頑丈で一着10㎏)健康的な腕の先にある手には黒いレーシンググローブがはめられていた。十四歳の彼女の顔は大人のようにえる。
ラブカは15㎏程のバズーカを背負いながら時速60㎞で走行している。このような行為は常人には不可能である。では、彼女は何者であるのか。答えは一つ、魔法少女である。それは日本政府がある存在を駆逐するために極秘裏に作った生物兵器(この表現は誤りかもしれない、理由は後ほど)である。
さて、遅くなってしまったがもう一つのラブカを追いかける影についても書いておかなくてはいけない。それは魔法少女が駆逐しなければならない存在枯獣(カリデュー)。正体不明の人を捕食する怪物である。今回の枯獣キーンは身長2m程で耳の内部の様な形をしている。白いラッパのような目のない顔、耳小骨のようなへなへなとした胴体と四肢、背中には緑色の巻貝のような突起物がある。
キーンは喉からブーンブーンという音を出しながらラブカを水面から50mほど顔を出すビルの屋上の隅に追いつめた。すると、ラブカは何食わぬ顔をしながらビルから飛び降りた(ラブカは頭を下にしながら地面に対して垂直に落ちているためパンツは見えない、男子諸君ゴメンね)。キーンも続けざまに飛び降りる。
海に落ちる10mほど前でラブカは体を丸めてからビルの壁を蹴り続けざまにキーンの胴体を踏み台にして先ほど飛び降りたビルの端に着地した。と同時にキーンが海に墜落してドッボーンという音が何もない東京に響いた。
ラブカはとっとと墜落したキーンをバズーカで始末しようと考えていたがそれはできなかった。なぜなら目が痛くて痛くてたまらなかったからである。彼女は目を押さえながらうめき声をあげた。
いったいラブカはどうしてこのような事態に陥ったのである。話を彼女が飛び上がる場面に戻そう。確かに魔法少女の身体のスペックは素晴らしくラブカは一分間に1840cal分の力(計算メンドクサイ、とりま彼女は強い)を出すことができ(これは最大出力であり普段から出しているわけではない、もしこの力を出せば自分で自分の体を破壊することになる、常人も最大出力を出せば自分の腕の骨を折ることができる)、ジャンプ力は約10mほどである。 しかし、50mのジャンプは不可能である。そこで、彼女は特殊能力・重力操作を使用したのである。
では、重力操作とは何か。簡単に言えば自分にかかる重力の量を調節する力である。魔法少女はこれを使い重力の量を減らして飛び上がったり、逆に増やして体を地面に固定して銃火器(弾の一発一発は国民の血税で作られている)を使用する。
一見便利そうに見えるこの能力。ところが、弱点が存在する。それは体にふたんがかかってしまうことである。(眼球は特に重力の変化に弱く常人に50Gの力がかかると目玉が飛び出して失明する恐れがある、ついでに地球での重力は1G)
というわけで話を戻すとラブカはいつまでも目を押さえながらうめいている場合ではなかった。そんなことをしていても痛みがひくわけではないしいつ敵がビルをよじ登り反撃に出てくるかも分からない。第一負けず嫌いの彼女は他人に自分の哀れな姿をさらしたくはなかった。
ラブカは目を開けることはできなかったが何とか立ち上がり膝を軽く曲げ顎を引いて戦闘態勢に入った。耳を澄ますと海の波の音の中にブーンヒタヒタという音が聞こえてきた。海に落ちたキーンが自分を目指してビルをよじ登っているに違いなかった。ラブカは次に塩の臭いを感じ取った。
「三時半の方向か・・・」
そういうが早く三時半の方向に時速120㎞のつま先蹴りをお見舞いした。キックはキーンの左足に命中しそれはひるんで数歩後退した。だが、敵も負けずに頭突きでラブカを3mほど吹っ飛ばす。彼女は着地する際に受け身を取りすぐさま立ち上がろうとしたがキーンはそれをさせまいと接近してくる。
その時タタンビシュッビシュッボスッ(タタンは銃を撃つ音ビシュッはキーンに弾が命中する音ボスッ外れた弾が床を砕く音)ラブカが痛みが引いた目を開くとそこには血まみれになりながら地面を転がりまわるキーンの姿があった。
すぐに状況を判断した彼女は背負っていたバズーカを構えロックを解除し引き金を引いた。ちゅどーん次の瞬間キーンの耳小骨のようなパーツ、赤黒い液体、床の破片が飛び散った。
1-2社会 情け求む
枯獣攻撃隊(KaridooAttackTeam)通称KAT(カット)、日本政府直属(事実上は難民保護省管理下の日の丸難民救済センターの下にある)の秘密裏に作られた枯獣の研究及び魔法少女の製造を司る機関である。
その拠点である施設の一室。青い壁にはシーラカンス(実はサメより歴史が浅い)の化石がかけられている。部屋の中央には物が多くとも整理された机が一つ。そして、椅子には一人の女性が座っていた。
頭の後ろで三つ編みにされた長髪、赤縁眼鏡の中には意地悪そうな目に赤いブラウス。KAT最高責任者倉道(くらど)セラケである。机の向かい側には藍色のタートルネックとGパンを着たラブカの姿があった。
「とにかく現地では虚弱体質を演じるのよ。」
「はい、飛び級(2094年の日本では飛び級が認められている)の許可には感謝します。」
「それともう一人紅公高校に転入する同僚がいるわ。」
倉道は眼鏡の位置を直しながらそう告げた。その瞬間ラブカの顔は闇に染まった。(要するにすごく嫌そうな顔をしたってこと)
なぜラブカは飛び級のために一生懸命勉強をしたのか。それは他の魔法少女同様の日の丸難民救済センター(世界中にあふれた難民の他国内のよりどころのない子供の面倒を看る福祉施設、ラブカの入所理由は後者)が運営する中学校に通いたくなかったからだ。その理由は彼女が同年代の人が苦手であったからである。
「平エイ、第三世代型(2094年最新モデルの魔法少女、ついでにラブカは15人いた第一世代型のたった一人の生き残り)のあの子よ。」
ラブカは嫌そうな顔をしつつもきいてみた。
「なぜですか彼女は学力が一歩足りていなかったような。」
すると倉道は薄い笑みを浮かべながら
「特訓したのよ、確かに間の抜けた所のないあなたなら人ごみに混ざったとしても正体をさらすことはないと思うわ、でもいざという時の備えは必要よ。互いに互いを監視しあえばトラブルに遭う可能性は一気にさがるわ。」
「確かにそれは正論ですね。」
ラブカは作り笑顔をしたままその場に固まった。
「そろそろよい子は寝る時間よ、おやすみ。」
ラブカもおやすみと言うと部屋の外に出ていった。彼女は自分の部屋に戻るためのエレベーターの中で独り言を呟いた。
「ヨイコ?どうでもよい子のまちがいでは?間が抜けてない?いやみ?」
約30分後シャワーと歯磨きをすましたラブカは本と缶コーヒーで散らかった個室のベットの上でジャージ姿で小説を読んでいた。
ピンポーン「俺だ鈴木だ。話がある。」
太い声が聞こえるとラブカは本を閉じ面倒くさそうにドアを開けるとそこには鈴木コバンという大男がいた。短く切られた立った髪、いがぐりのように尖った顎ひげ、がっしりとした体格に軍服。役職はKAT魔法少女教育部部長である。
「何か用ですか?」
「分かっていることを言わせるな。話すことはただ一つ、今日の作戦中の貴様の動きについてだ。」
「独走した件ですか、それとも失明の件ですか?」
「逆質問(その場の罪から逃れたい人が無意識に行う行為の一つ)か、とりあえず貴様の言い分を聞いてやろう。税金払ってる国民を納得させてみろ。」
「あの枯獣は機動性が高くて3人でかかれば相打ちを招いていた。また、私が陽動になることによって敵の動きを止めることにも成功した。」
「でっ失敗すれば貴様は敵に殺されて国民の血税はパーだ。貴様の体の維持にいくらの金がかかっていると思っているんだ?」
「それでも結果は出しました。」
ラブカはそう遮った。するとコバンは呆れた顔をしながら
「素晴らしい、それなら結果と今の利益にしか興味を持たない大衆は納得するな。で、貴様自身はどうなんだ、この仕事にやりがいを感じているのか?」
「別にやれと言われれば。」
「なら命令だガンジス川の水を全て飲み干してこい。」
「えーと。」
「今のは冗談だ。とにかく今の貴様は死への道を突き進んでいる。ただ単純に一人で敵の懐に突っ込んで結果を出し言われたからやった。」
「それはあの2人(ラブカの所属するイカルンジ小隊の仲間のことで1-1でキーンに銃弾を浴びせたのはこの2人)が私の動きについてこれないからですよ。」
「なら、貴様がしゃがめばいい。どんな世界においても強者が弱者に手を貸してやらん限りは成り立たん。たとえば・・・今日の日本の路上を見てみろトップレス(よい娘のみなさんは真似しないでください)・・・ではなくホームレスだらけだろ。原因は政府と大企業の怠慢だ。政府は企業にばかり減税して消費税(2094年の消費税は25%)だけ上げて貧乏人はろくな飯も食えとらん大企業は利益を内包する(2094年に始まったことではない。果たしたグローバル化の先には幸せはあるのか?)から日本の金は出回らん。以上人の振り見て我が振り直せ。それからラブカ、明日は笑顔で学校行って来い。」
そう言うと鈴木は回れ右をして去っていった。ラブカはしばらく頭の整理がつかなかった。「死への道とは何のことであるのか。多分ちょっとやそっと考えたところでわからなそうだったから彼女はさっさと寝ることにした。
1-3登校 I can see
AD2094年の日本の朝。いつの時代になってもこの国の朝は慌ただしい。ブラック企業もホワイト企業も社員が朝一番に出勤するのは当たり前。電車内はイモ洗い、バスも寿司詰め状態。ただ一つ二十一世紀初頭と違うところがあった。無数のホームレスが橋の下や公園を占拠していた(ネットカフェ難民等も含めると四千万人くらいいる)。自治体は彼らを追い出したいところであったが無理な話であった。何しろ数が多すぎてきりがないからだ。
「華の法治国家は法治国家になってしまったのね。」
電車で通学するラブカは窓から過労死した人を不法埋葬するホームレス達の姿(もちろん死者の持ち物は彼らがもらう。それなりの敬意はこめつつ)を目にした。彼女の隣には金髪ポニーテールの同僚平エイがいた。2人とも灰色のセーターに赤いネクタイ、青いスカートの紅公高校の制服を着て肩からバッグを提げていた。
「ラブカ先輩もう少し明るい顔をしてみたらどうですか。」
「それも悪くはないかも。」
彼女の少し怒ったような顔は無表情に変化した。どうやら昨日の説教がまだ頭に残っているようである。
「ところで今、誰が私たちを監視しているのかしら。」(現時点で監視者を発見できたとしても電車を降りる頃には人が交代するため探すのは無駄な行為、プロの尾行は多人数で行うのだ)
「気になりますか?」
「私達はKATに24時間こういうプライベートゾーンですら見張られていると思うときになるわ。」
ラブカがそういうとエイは顔を真っ青にしながら腕で胸を覆った。
「本当ですか?」
ラブカはハッと気づいた。
「・・・ゾーンは余計だったわ・・・うん・・・あと学校では先輩て呼ばないでね。」
公立紅公高校にて自己紹介と午前中の授業を済ませたラブカはエイの誘いを断って一人で弁当(KAT製)を食べることにした。弁当箱を開ける彼女、別におかずが貧相であるわけではない、ところがその顔は悲しみに満ちていた。彼女が気にしてきたのはその量の少なさ(常人にとっては丁度良い量)であった。
魔法少女の摂食量、それは力士をはるかに上回る。バケツ一杯分のカツカレーを十分で空にすることも夢ではない。一日絶食しようものなら自身の細胞は共食いを始め(この現象はセルフカニバリズムという)死に至る。彼女達は新陳代謝と再生力がとても強くもはや口からの摂取だけでは体の維持ができない。そのため定期的に高濃度の栄養剤を注射器で腕に打たなくてはいけない。
「私にとって食事は身体ではなく精神の滋養なんだ、きっと。」
そんな彼女に話しかける女子生徒がいた。
「あの、ラブカさんでしたっけ、隣いいですか?」
「ええ。」
ラブカはエイの時とは違ってOKを出した。彼女は少しばかりワクワクしていた。ついに年上と話ができる。(ラブカ及び作者は自分から知らない人に話しかける勇気がない)
「私はイルカ、趣味は読書あっそうだ飛び級おめでとう。」
「ありがとう、私も少しは本読みます。」
そんなわけで2人の言葉のキャッチボールが始まった。ラブカにとって本を読んでいるイルカの話は面白いものであった。しかし、彼女は満足したわけではなかった。イルカは本の中の世界の事を語るが世界情勢には疎い。また、高校も中学とあまり変わらずやかましかった。
昼休みが終わりに近づいた頃イルカは眼鏡をかけた。
「イルカさんって目が悪いんですか?」
「そうなの、それともう言葉はタメでいいよ。ところでラブカちゃんは?」
「6ぐらいあったかな。」(作者の全盛期は2.5以上なのだ)
そう言われたラブカは西を見ながら
「ここ1週間のうちに中国はチベットの独立を認める。」(2094年といわずに今にも認めて欲しいものだ)
「えっ?」
この場においてイルカはその言葉の意味が理解できなかった。しかし、3日後に彼女はテレビの前で腰を抜かすことになる。
2-1攻防 サバイバル
「あと5発、ジャムり(弾づまりするってこと)ませんように。」
朝四時、過疎化した村を模したKAT(カット)地下魔法少女訓練ドームにてサバイバルゲーム(エアガンでやる戦争ごっこ)形式の訓練が行われていた。ルールは紅白に分かれてペイント弾(訓練用の弾、当たると塗料が付着する)を使ってどちらかのメンバーが全員被弾するまで戦うといったものだ。
というわけで先ほどの独り言の主京儀(きょうぎ)シュモク目線で話を進めよう。彼女はイカルンジ小隊に所属しているため戦闘服のレイアウトは色が赤い以外はラブカと同じである。
サブマシンガンを構えながら民家の模型の影や雑木林に身を隠しながら移動していた。時たま聞こえる銃声や悲鳴に耳を澄ませつつ訓練の序盤にはぐれた仲間を探す。 ふとザッザッとこちらに近づいてくる足音に気がつく。
「味方でありますように。」
彼女は素早く物陰から飛び出して銃をかまえる。銃口の先にいたのは彼女と同じく赤いハチマキをつけた魔法少女であった。だが、様子がおかしい。気絶していて顔の上には生きた沢蟹が乗っけられていた。
それを見たシュモクはすぐに判断した。これは、敵の注目を引くための罠だ。と思うが早く回れ右をして銃を構えなおす。シーンガサガサ、聞こえてくるのは遠くで誰かが動く音だけであった。
その時、後ろから激しい足音が聞こえてきた。彼女は再び回れ右をして銃の引き金を引くが何者かは手刀で銃を弾き腕につかみかかる。彼女は敵の手を払い、間合いを取るためにバックを試みる。ところが、敵はえげつなくも彼女のツインテールの片方を引っ張り組み伏せさらに、のどにサバイバルナイフをつきつける。
「紅組全滅、全員エリア3に集合。」
シュモクの耳につけられている無線から教育部部長コバンの声が響いた。すると、敵はつきつけていたナイフを鞘に収め、シュモクを解放する。
「ラブカ・・・髪っていうのは女の命なのよ。」
「アフロであろうとモヒカンであろうと死体は死体よ。」
白いハチマキをしたラブカはそうつぶやくと気絶した魔法少女の上に乗った沢ガニをつまむとキョロキョロと辺りを見回り。
「一番近いビオトープは・・・待ってねまどかちゃん(カニにつけたニックネーム)。」
「バカモノッ!P07(魔法少女には整備番号がつけられている)人間とカニどっちが大切なんだ。」
無線越しにコバンは怒鳴る。ラブカはため息をつくとカニをゆっくりと地面に置き、気絶した魔法少女を肩に担ぎ上げシュモクと一緒にエリア3に向かった。
「罰ゲームは鼻鉛筆?水垂らし?(読者諸君前者は顔に後者は心に永久に治らない傷を作る、絶対に真似しないように)」
気の早いシュモクは妄想していた。
数分後、整列した魔法少女12人にコバンは言い放った。
「紅組はスクワット5百回、白組はシャワー浴びてから学校に行け。以上解散。」
去る者、スクワットを始める者、みんなバラバラの動きをする。
パッチーン
遠くで響いた。どうやら研修生(ラブカやシュモクのように小隊入りしていない魔法少女、今のところ30人くらいいる)がアキレス腱を切った(常人であってもアキレス腱が切れるとすごい音がする)らしい。
(たくさんの筋細胞が死んだ、まどかちゃん(カニ)もほっておけば干からびて死ぬ、世の中は死で溢れている、なのになぜこの国の人々はすぐに「死ね」の一言を・・・)
ラブカは少し悲しそうな顔をした。
その後、彼女はシャワーを終えると更衣室で仲間が出てくるのをまった。だが、別に彼女が仲間思いであるわけではなかった。単にこめかみに垂らしている赤いリボンの付け方知らないために仲間に着けてもらおうと考えているだけだった。
待つ間小説を読むものの集中できないラブカ。なぜならシャワー室の中から悲痛な会話が聞こえてきたからだった。
「髪にペイント弾撃ち込むなんてひどい、取れない!」
「足の指がありえない方向に曲がってる~」
「私なんて鼻からオタマジャクシが出てきたわ、ねえみんな、良さげな仕返し思い浮かばない?」
それを聞くとラブカは身震いした。
「私は今何人分の恨みを背負っているのかしら。」
2-2食肉 鶏とバッタと鯨
ピクニックに行きたくなるような素晴らしい天気。そんな日にいきなり氷河期(2014年現在も実は氷河期の最中である、南極か北極に氷が残っている限りはそう識別される)が訪れるなんて誰が予測できるのか・・・
公立紅公高校にてラブカのクラスは体育の時間であった。毎日のように地下ドームで訓練するラブカとエイ。2人とも外で思いっきり体を動かしたい。ところが、三つの大きな壁がその願望を阻んだ。
その①、魔法少女の身体能力は常人を遥かに超えている。片手の握力だけでドリアンを粉砕してしまう。常人にデコピンをしようものなら全治二週間病院送りだろう。
その②、質量が大きすぎて危ない。身長148㎝のラブカ、体系はスマート(体がほっそりしていることを示すのは日本ぐらい、欧米では賢いなどといったニュアンス)であるが高い骨密度と凝縮された筋肉のせいで体重は85㎏ある。(エイは身長157㎝体重82㎏)
その③、魔法少女の体液は紫外線を反射して青白い光を放ってしまう(そういうタンパク質は実際に存在する、サンゴや魚の一部は紫外線を反射して光る)ことである。そのため彼女達はKAT(カット)の施設から外出する際には必ず肌に専用のクリームをぬって光を放たないように注意している。
そんなわけで彼女達は体育の時間は虚弱体質を装って見学せざるを得ないのだ。
「二人とも見学?」
「そうなの、私達激しい運動をすると蕁麻疹がでるのよ。」
「イルカさんは?」
「私も今日は見学。」
全く何の問題もなさそうなイルカはそういった。
「二人とも運動以外に何かやっちゃいけないことや食べちゃいけないものはないの?」
(エイ)「運動以外にはとくにないわ。アレルギーはないし牛肉なんて力の源って感じ。」
「よくあんなに効率の悪いもの食べられるわね。」
「えっラブカちゃんそれってどういうこと?」
「牛肉の消化には大量のエネルギーがいるのよ(牛肉の持つ脂肪の融点が人の体温よりも高いためである)。それに牛一頭育てるとなったら水と穀物のロスがひどいわ。」
「とすると、ラブカちゃんは豚派?」
「鳥ね、味も効率も最高。」
「ラブカせん・・・いやラブカ~効率ならバッタの方がいいのでは?」(2094年、日本でも海外でも昆虫食は広まっていて貴重なタンパク源として重宝されている)
「それも一理あるわ。そう考えるとこの国の上の組(2094年、日本では貧富の格差が大きくなり、状況はアメリカや中国に近くなった。上の組は毎日獣肉を食べることができる)の私達は幸せね。」
「でもやっぱり食べるなら動物か魚がいいわね。」
(エイ)「うーん、穀物を消費しないで済む肉か。」
「人間とか?」
(エイ&イルカ)「えっ!?」
2人が大きな声を出すと白い手袋わはめた(これをはめずに素手で生徒を指導すると敏感な親に痴漢扱いされる)教師が人差し指を縦に唇の上に置く。
(エイ&イルカ)「しつまれません!」
すると、ラブカはエイの口の前に手を置きフォローする。
(イルカ)「すみません。」
(エイ)「失礼しました。」
生徒の方に向き直る教師、ホッと胸をなでおろす2人。
「で、人の肉をどうするの?」
「この国には毎年三万人近くの自殺者が出るそうよ。安楽死が認められた今、自殺権を主張する人も増えているようね(少子高齢化が進んでいるため国は嫌がる、何しろ死を望む人は高齢者ではなく企業にこき使われる労働者であるため)。」
「死んだあと人はどうなるのかしら。」
「死ぬまでは分からないわ。ついでに人肉って豚の味がするらしいね。でも、食べ過ぎると病気になるのがいたいわね(どうやら共食いを防止するためのプログラムが遺伝子中に組み込まれているらしい)。」
(イルカ)「陸上だけで無理なら海の方はどうかしら。」
「種類にもよるけど魚って大量の卵を産むから養殖して増やせばいいんだ。」
これで問題解決か?しかし、ラブカはそこに水を差した。
「ところで、その魚のエサってどこから持ってくるの?もしかして陸上から?」
「しまったのだ。」
「まったく大変ね、たとえば私一人が・・・イルカが頑張る?そうよ、鯨は?」
「言われてみれば鯨一頭を狩れば彼(?)が食べるはずだった魚も確保できるわね。」(それはプランクトン食のセミクジラ科ではなく魚食のハクジラ科を狩った場合)
「しかし、まだ反捕鯨国が頑張っているような。」
「確かに鯨って賢いし、殺される直前では泣くそうね。」
「脳ってそんなに尊いの?差別よ差別、そもそも海に帰化した連中(鯨やウミガメのこと)は一日中泣きっぱなしよ。」(涙を利用して体にたまった余分な塩分を放出するため)
(エイ)「それでも『聖書』を信仰する人々は反対運動を続けるわ。」
「そうそう、鯨って人前で交尾しないからね。」(イエス様にも子供がいるし彼自身人間である、そういう行為を罪と識別するキリスト教の考え方にはいまいち納得ができない)
次の瞬間エイとイルカの背筋は絶対零度を感じ取った。
「うっ」
「禁句よ、それ。」
しかし、ラブカは何食わぬ顔をしながら凍える二人を無視しながら見学者レポートを記入するのであった。
今日は天気がいい、でも氷河期は訪れた。
2-3出現 Emarge
「ほらっ、避難急いで、もう一人捕食されたわ。魔法少女の配備はまだなの?」
無数の電話機とパソコンの置かれた2×7mはあろう長机のあるKAT(カット)作戦司令室で最高責任者倉道(くらど)セラケは部屋の奥で指揮を執っていた。枯獣(カリデュー)が出現したのだ。
「鈴木部長、状況は?」
「ヒョウモン小隊は約七分後に現地に到着する、サブのイカルンジ小隊は一時間で手配する。」
「フカ君、敵は?」
「今回の枯獣は丸っこくて大きさは大型犬程度、確実に弾を当てればいけます。」
「ヒレ君、仕事終わった?」
「はい、自治体には有毒ガス発生と伝えておきました。」
「よし、第一種戦闘配置よ。」
一方その頃、学校帰りに本屋でホビー雑誌を立ち読みするラブカ。後ろから見知らぬ男に話しかけられる。
「お嬢ちゃん、この近くに喫茶店はないかな?」
「ここを真っ直ぐ行けばペドレオンって店があるわ。」
「ありがとう、ご褒美だ。」
男はそう言うとラブカに飴を渡す。男が去っていくと彼女は飴の包み紙ををはがして飴を口に運ぶと包み紙の裏を見つめる。
「招集か。」
ギャーパンパンガシャン
白くて丸っこい体に赤い血管のような筋の通った体と尖った足を持つ枯獣カワク。大きな口は巨大な目玉に占拠されている。
走り回るカワクを銃を乱射しながら追いかけるヒョウモン小隊の三人の魔法少女。だが、全く攻撃を当てることができず苦戦気味である。
「M19M20共に負傷、M19は情緒不安定、M5はアドレナリンが出過ぎてます。」
オペレーターのフカは悲惨な状況報告を続ける。それに耐え兼ねたヒョウモン小隊顧問は焦りながらコバンに頼み事をする。
「このままではシイラ、ウツホ、カジキ、は全滅だ、イカルンジ小隊に交代できんか。」
「チョウさん、そんなにいきり立っては血圧が上がりますよ。心配はいらん。」
コバンは無線を取ると
「M05(シイラ)M20(カジキ)・・・M19(ウツホ)を守りつつ退却だ、すぐに回収班を回す。」
次にチャンネルを変えると
「ノコギ、ラブカの火器を装填しろサブマシンガンだ、バズーカは当たらん。」
「了解」(この言葉を目上の人に使うのはふさわしくない、適切な言葉は「かしこまりました}ETC)
KAT職員の車で現地に送られたラブカは青いトラックを見つけると後ろの貨物庫のドアに指を押し付ける。すると、ガチャっという音がしてドアのロックが解除される。実はこのドアに欠陥認証システム(指の血管をパスに使う機械、指紋よりも偽装が難しい)が搭載されていたのである。
ドアを開け貨物庫の中に入ったラブカは銃の整備をするシュモクとノコギにと鉢合せになる。
「バズーカの方よろしく。」
(ノコギ)「ごめん、今回はサブマシンガンを確実に当てろって鈴木さんが言っていたわ。」
「そう、私が着替え終わるまでに銃剣つけといて。」
(シュモク)「やっぱり近距離戦の一撃にこだわるわけ?」(ラブカは敵を一撃で仕留めたがる、今回の彼女はどうやら銃剣を敵に突き刺してから、そのまま零距離射撃でケリをつけたいようだ)
「言っておくわ、私は射撃が苦手だ、私は射撃が苦手だ。大切なことだからもう一度言っておくわ、わた・・・」
(シュモク&ノコギ)「もう結構です!」
数分後、ラブカの着替えも終わり、三人は耳に着けている無線をオンにする。
(ラブカ)「イカルンジ小隊準備良し。」
「よし、行け。今回の枯獣はとにかくすばしっこくて獰猛だ。独走しようものなら命の一つや二つはパーだ。分かったな。」
「了解、P07(ラブカ)行きます!」
「M11(シュモク)出る!」
「M13(ノコギ)出撃する!」
三人はそう言うとトラックから出て、サブマシンガンを構えながら小走りで戦場に向かった(銃身を安定させるためあまり上半身を揺らさない、また、三人で仲良く一列に並んでいくような真似もしない、ラブカが少し先を行き残りの二人が横と後ろに気を配る)。
「あの~出撃時の掛け声をを統一しとかなくても大丈夫なのですか、部長。」
司令室にて天然パーマの女性オペレーター・ヒレはコバンに尋ねた。コバンの回答はこれだった。
「個人の自由は尊重せねばな。」
「魔法少女に自由なんてありませんよ。そもそも人なの、アレ。」
フカは四角い眼鏡を光らせながら自分のロン毛をいじるとKAT制服(水色がベースの軍服風)の前のチャックを締め直しながらそう言った。
コバンは顎髭の目立つ恐ろしい顔をフカの方に向ける。それでも全く動じないフカ。コバンはメインモニターに顔を向けなおすと小さなため息をついた。
(チョウ)「あのラブカですよ、部長、絶対生還しますよ。」
「心も体も無傷ならいいのだが。」
3-1起動 プレグナント
誰もいないさびれた町、目立つものと言ったら他の建物より少し背の高い錆びついた工場(こうば)がポツン。ここは避難が始まるまでは豊かであるとはいえないが、平和な町であった。しかし、今は魔法少女と枯獣(カリデュー)が彷徨うおぞましい狩場に成り果てている。
夕方ごろ、イカルンジ小隊の三人はラブカを先頭に町の中に身を潜めつつ目と手で合図を送りあいながら町工場を目指して少しずつ進んでいた。
一方、KAT(カット)作戦司令室にて腕を組むコバン
「ラブカめ、また独走し出さんといいが。」
「してもらわないと、世界平和のために。」
色っぽい笑みを浮かべる倉道(くらど)セラケは更に
「積極的に敵に絡むあの戦法、使えるわ。」
「私は一回のビッグチャンスより百回の確実な生還を望みます。この前ラブカにはしっかりと弱者の立場を考えることの大切さを伝えました。ちゃんと実例もつけて。」
「ふっ。」
(フカ)「イカルンジ小隊、工場に到着しました。」
「よし、無線オープン(コバンはラブカに独走させないためにあえて三人の無線を切らせておいた)、敵は狭い建物の中にいるから逃げ場を確保するように言っておけ。」
工場の勝手口で待機するイカルンジ小隊、無線で命令を聞き終えるとドアを蹴飛ばして工場の中に突入する。ラブカはすぐ、シュモクとノコギに建物の右側を捜索するように左手で指示し、自分は左側に進む。数分後、ラブカは無線の送信ボタンを押し
「こちらP07、敵発見できず、どうぞ。」
「こちらM11(シュモク)、発見できず、どうぞ。」
(コバン)「合流してから二回に上がれ、床の一部はもろいから気を付けろ。」
「了解。」
三人は合流した後、二階に行くと素早く陣を作る。三人はそれぞれの背中をくっつけ、三方向を見張る。
バタバタチュン
いたか!陣を崩し、音のした方向に銃を向ける三人、だが、違った。窓から飛び去るスズメの姿が見える。つい見とれるラブカ。
(かわいいな、君たちは自由に空を飛べるんだね・・・いやっ、飛ばないと自由を得ることができない?)
おっと、ラブカはいつまでも考えているわけにはいかない。ノコギの合図にはっとした。左手でキツネを作っている。これは敵を発見したという合図である。
枯獣カワクは廊下の曲がり角で口の中を占拠する巨大な眼球で先ほどのスズメを見ながら大人しくしている。が、三人に気づくといきなりノコギに突進してくる。
ノコギは0,01秒で反応し0,05秒(常人は外からの刺激が来てから行動をとるまでに約0,1秒の時間がかかる、魔法少女の場合は個人差はある者の常人の8~10倍の速度で反応することができる)で左ストレート(パンチ)をカワクの胴体(カワクは一頭身であるが胴体といわせてもらいます)にお見舞いする。吹っ飛ばされたカワクは壁を破壊しつつ個室の中に倒れこむ。
一方、青と白のゴスロリの様な戦闘服をはためかすノコギの姿は爽快なものであった。ところが、彼女は三秒後にぎこちない動きで壁にもたれかかる。さらには悔しそうな顔をしながら左手をさする。何かがおかしいと感じたラブカとシュモクは銃口を敵に向けつつノコギに目をやる。
「どうした?」
「大丈夫?」
「脱臼した。」
それを聞くとラブカは無線のスイッチを押し
「こちらP07,M13負傷。」
彼女はスイッチを切るとノコギに
「わるいけどあなたの身は自分で守って、その銃はブルパップ方式(ひじで反動を吸収する方式)だから片手でも使えるわね、とりあえず十分以内にけりをつけるわ、回収されるまで待ってて。」
パチッパチッ
先ほどの壊れた壁の向こう側から不自然なまばたきの音がする。再起したカワクが口の開閉を繰り返しながらジリジリと近づいてきているのいるのだった。
シュモクは敵に狙いをつけるとすぐに銃の引き金を引く。カワクはサッと避けると2人に背中を向けて逃げ出す。2人は走り射程圏内まで敵に近づく。ジグザグの動きを始める敵に対してシュモクは銃を乱射するもののラブカは五秒に一度ぐらいのペースでしか撃たない。すぐに弾を切らした(彼女たちの使うサブマシンガンは1クリックで5発の弾が出る、35回クリックすると弾が切れる)シュモクは弾倉を取り換えながら叫ぶ。
「ラブカ、もっと派手に撃ってよ。」
「確実に一撃で仕留めるのよ。」
「何のために予備弾倉があるのよ。」
「貴様はさっきから全弾外している、税金の無駄だ!」
(コバン)「貴様ら、喧嘩する余裕で策を講じろ。」(普段は魔法少女の行動は衛星カメラで監視されため、建物の中で戦われると監視できない、よって今回は司令室は具体的な指示が出せない)
「了解、シュモク、左の廊下から回り込んで挟み撃ちよ、それとこれはやる。」
ラブカはシュモクに自分の予備弾倉を投げ渡すと、敵の足元に数発発砲して牽制を図る。敵が再び彼女に背を向けて逃げ出すと彼女は無線を使い
「シュモク、そっちに行ったぞ。」
「OK・・・ニャー床が~。」
次にバキッドスンという音がラブカの耳に響く。どうやら、シュモクは床のもろい部分に足を置いてしまったらしい。(シュモクの身長は146㎝、体重は80㎏)
「貴様~もう知らない!白兵戦闘します(要するに接近戦をするってこと)これは独走ではなく合理的な任務遂行手段だ!」
ラブカは無線にストレスをぶつけると、左拳を右胸の前に置いた後に曲げていた左ひじを伸ばして拳を床に向ける。(某巨大ヒーローの動きを参考にしました)
「プレグナント」
いったいプレグナントとはどういうことであるのか。簡単に言えば魔法少女が大きな力を出すために全身の細胞を活性化させることである。この状態で魔法少女の出力は最大になり、さらに重力操作(この説明は1-1をご覧ください)が使えるようになる。
ラブカは自分にかかる重力を減らし、ジャンプをして天井に到着すると同時に天井を蹴ってその反動を利用して敵の死角に侵入する。次に重力の量を戻し、銃の引き金を引く。敵は回避しようと動くものの13発の弾が体にめり込む。そして、最後はカワクのご自慢の目玉に弾を撃ち込んでフィニッシュか。
ところが、あろうことかラブカは目玉を撃たずに銃を投げ捨てた。
3-2大木 内側と外側と
「残弾はいつでも把握しておく、戦場での基本。あっ銃剣つけていたんだっけ・・・もったいないことをした。」
ラブカが銃を捨てた途端にカワクは今がチャンスと言わんばかりに彼女を噛み殺そうと近づいてくる。
ラブカはすぐに反応すると、目の前に迫ってきた敵に自分の重力を減らしつつ張り手をお見舞いして自らは反動を利用して敵の下から離れ、先ほど捨てた銃がある位置に着地する。弾切れの銃を拾うとそのまま敵に投げつける。案の定避けるカワクであったが、彼女は敵の重心が一瞬不安定になるところを見逃さない。
ラブカは敵に駆け寄ると自分の重力を大幅に増やし、強烈な両足飛び膝蹴りを敵に命中させる。すると、ラブカとカワクの重さに耐えられなくなった工場の床はベキベキと音を立てて崩壊する。落ちる2人(?)。
ラブカは敵をクッション替わりにして無傷。一方、カワクは上下からの衝撃によりグロッキー状態になる。それでもカワクは起き上がって反撃に出ようとする。
しかし、ラブカはそれを絶対に許さない。時速170㎞のかかと落としでカワクを地面に叩き付ける。さらに、敵に馬乗りすると時速150㎞のパンチを二秒に一回のペースで五発。
「固い、、ならば。」
彼女はカワクの口をこじ開けようとする。だが、この選択は間違いであった。敵は一瞬のスキを突きラブカの左腕に噛みつく。
「しまっ、長袖着てくるべきだった。」(ノースリーブは作者の好みではない、では、なぜ魔法少女の戦闘服はノースリーブなのか?実はこれは放熱のためである、魔法少女はタンパク質でできた生ものであるため仕方ない。)
慌てて対応する彼女、まずは尻餅をつき右腕と両足で敵を挟んで動けないようにいする。(蛇等の歯の鋭い生物に噛みつかれた際は大人しく噛ませておくと無難、無理に振りほどこうとすると肉を持っていかれることもある)次にプレグナントを解除。(プレグナント中魔法少女の血圧はかなり高くなるため傷口から大量出血する恐れがある)それが終わると、左腕の激痛をこらえつつ次の策を考える。
(あの二人が来るのを待つか、いやっ、来るまで私は持つのか、あれっここは。)
気がつくと周りが真っ暗になっている。しかも左腕の痛みが引いている。もはや自分の体というものが認識できない。
「あー死んだかも、神様、いるなら綺麗なお花畑でも用意しておいてね。」
「みたけりゃ心の中に描くのよ。それよりあんたが見るべきは物は明日に咲く花の色よ。」
「貴様は誰だ。」
「演技お疲れ様。」
「えっ?そういえば私って・・・」
「まだ生きているわ。」
その時ラブカは驚いた。知らない間に目の前にマングローブ(この名前の植物は存在しない、この言葉は熱帯の海岸に森林を作る木の総称っである)のような巨大な木が立っていたからだ。木の幹を下から見上げていくと何かが見える。半透明な球体が分裂を繰り返した後にその一つ一つが合体してミミズのような物体が出来上がる。次にそのミミズは魚に変化して平べったいトカゲになり獣となりサルとなり・・・
「これって進化の歴史?」
木の枝の横側を見ると果実をかじる獣、その獣を捕食する別の獣、死んだ獣を食べる虫たち、虫たちの死骸の中から木が生え再び果実が作られる。
「この大自然には弱肉強食だけでは説明できない繋がりが。」
木のてっぺんを見ると自分に似た誰かがいる、その誰かは泡の様な何かを外に出したり、逆に外から受け取ったりしている。
「見る物見たら前向いて。」
「前?」
「そういえばどっちが前か後ろかはあんたが決めることだったね、今とは逆の向きよ。」
自分の体を認識できない中困惑するラブカ。まずは目の前の木に背を向ける自分の姿を想像する。すると、左腕がズキズキする。彼女は思わず痛む場所を押さえる。気がつくと体の感覚は復活している。
「体がある?」
「正しくはあなたが見られている姿、あるいは中と外の世界が混ざる場所に生じる自分と感知されるもの。」(人は何を自分として認識しているのか、脳や魂と答える人が多いと思うが、この物語においては体の感覚器官が体の外の世界を感じ取った時に発生する信号を自分として感じ取っているということにしておく)
「じゃあ、さっきまでの私は?」
「ちょっとボケたあんた。」
「どうもしっくりと来ないわ。ってこっちにも木がある。」
「これはさっきからあんたが取っ組み合いしている奴よ。」
それを聞くと観察を始めるラブカ
星が引かれあって黒くて大きなものができていく。上には・・・これって誰かが一生のうちに見てきた記憶?てっぺんらへんは後ろのやつに似ている。うーん、この光景と私の頭だけでは答えが出ない・・・」
「まだ分からない?中陰陽、この三つ・・・」
ゴトッパキッ
ラブカの腕を食いちぎろうとするカワク、敵を動かすまいと必死に押さえつけラブカ、彼女は夢から覚めたらしい。
(ちっ、敵を倒すためのヒントなんてないじゃない)
このままでは無線をいじることもできない彼女は大量出血か何かで死んでしまう。だが、その時彼女は活路を見つけた。少し離れたところにある自分が捨てた弾切れの銃である。状況を判断した彼女は右手で地面を押し敵の丸い体を利用して銃が落ちている場所までコロコロと転がっていく。
彼女は銃に手の届くところまで転がると素早く銃刀を銃から外しそれを腕つごと口の中に突っ込む。カワクは何があったのかとキョトンとする。
クチュックチュッブチッバカッ(生肉を包丁で切るとこんな音が聞こえる、時代劇等で使われるズバッて音は多分嘘だ)
ラブカはカワクの顎の筋肉を切断すると、強制的に口を開かせる。彼女は左腕が解放されると座ったまま敵を蹴って転がす。
「本部、手榴弾を所望する。」
(フカ)「了解、M11(シュモク)を送る。」
「えっちょっ彼女は・・・」
通信を切られた彼女は仕方なく血と汗でベチョベチョになった左腕を押さえつつ虫の息の敵を見張る。気絶しているシュモクに何ができるのか、彼女は不安であった。
「ラブカー無事だよね。あっまだ枯獣生きてる。ラブカの事だから当の昔にミンチにしてると思ったけど。」
「シュモク!貴様は私を見殺しにするつもりだったのか、どの面下げけ来た。」
「まあ落ち着いてよ。あの後本部からノコギ連れて退却するように言われたのよ。大丈夫、お望みの品は持ってきたからってラブカ左腕・・・」
「もういい、焼き払え。」
「了解。」
シュモクは手榴弾のピンを外すと敵の下に転がす。次に2人は爆風等を避けるために物陰に隠れた後にうずくまって頭を守る。
ドカン!アチー
爆発音と共に枯獣の断末魔が工場内を支配した。
「こちらP07、本部、敵は活動停止、私は負傷、回収班と医療班を所望します。」
「了解、百秒で回す。」
「あっ来た。」
宇宙服のような防護服を着た回収班が到着し、シュモクはお先にと退散する。
「ナマ、アシマ、負傷した魔法少女を回収だ、他は残骸処理。」
(回収班他)「オー。」
ラブカはすぐに担架で運ばれる。
「急ぐぞ、死なれたら俺ら減給だぜ。」
「にしても重いなあ、俺の彼女の二倍はあるぜ。」
「バカッ聞かれてる、終わってからにしろっ、えーとお姉ちゃんそれでもえーといい足してるね、こんな足で踏まれたら俺天国行っちゃうかも。」
(この国の男は大丈夫なのか?)
今、夜の星空を見上げるラブカの感じる不安の大きさは戦闘時のそれを超えていた。
3-3夜襲 ナイトレイド
殺人、誘拐、政治家の着服、テレビからはろくなニュースが流れてこない。明るい話題は株が上がってこれから経済が良くなるだろうということぐらい(いくら株が上がっても国民全員にその恩恵が届くわけではない、読者諸君はくれぐれも騙されないように)。
「ラブカっち~チャンネル変えようよ、つまんない。」
日の丸難民救済センター所属病院にてベッドの上で脱臼をいやすノコギ。その隣のベッドには左腕に包帯を巻いたラブカが上半身を起こしながらテレビのニュースを見ている。前日の戦闘で負傷した2人の魔法少女は一日中安静にしているように命令を受けていた。
「天気予報終わるまではダメよ。」
「ニュース見て何が楽しいのよ。」
「目をそらしたら負けよあなたを含めた国民諸君(民主主義のシステムにおいて国民の仕事は政治家の動きを監視すること、それを怠れば政治家は好き勝手な行動をとる、本当に困った時にはデモを起こすのも一つの手、ただし暴力は避けてね)。てかスポーツコーナー邪魔。」
患者用の白い服を着たラブカはそう言った。
「ニュース見て何の得ががあるわけ?そもそも私達まだ選挙権ないし。」
「確かに私達将来選挙権もらえるかどうか怪しいわね、けどね、二十歳になってからいきなり誰にするか選べる?何でも後回しにするあなたなんて特に。」
「あっしまった、宿題忘れていた、あー頭痛い明日は接骨医じゃなくて脳外科に診てもらいたい。」
「あのね・・・」
「大丈夫だって、怪我治ったら本気出すって。」
「その台詞聞き飽きたわ、来週まで本気出せなかったら?」
「来月!」
「来月になったら?」
「来年!」
「死ぬ直前は?」
「来世!」
「終わった。一生クズよあんた。」
「あんたあからさますぎよ。」
「なら、グズ。」
言い返す言葉のないノコギは頭の後ろで手を組みながら横たわる。ラブカは少し言い過ぎたかと心配した。だが、その必要はなかった。
「オムツと根性は断然あなたが上ね、しかし、スタイルならね、へっへっへ。」
「オムツとお頭(つむ)の違いぐらいねえ・・・あーはいはい悪かったねえ、チビの貧乳の腹筋割れで。」
片足をベッドから床に下ろしてノコギに飛びかかろうとするラブカであったが左腕の包帯を見ると足をベッドの上に戻す。
「今回のお仕置きは脳内再生で勘弁してやる。」
「だからってちょっとどこ見てるのよ?そんな目で私を見ないで~。」
彼女の目は獣そのものであった。
次の日の朝、医者はラブカとノコギを検査してもうほとんど治療する必要がないと判断した。しかし、次の日にがん検診(高い再生力を持つ魔法少女の身体はがんのリスクがかなり高い、お亡くなりになった第一世代型の魔法少女のうち八人の死因はがんである)を受けさせるために、もう一日だけ病院に止まらせることにした。
そんなわけでラブカは病院の敷地内を散歩していた。一方、ノコギは病室にお見舞いに来たシュモクと話をしていた。
「その時は特に気にしなかったけど今となっては。」
「なるほどね、それでラブカはブラではなくインナーウェアを着用していたってわけね。」
「見たいような、見たくないような、腹筋。」
「ここまで来たら見ようよ。」
やたらと張り切るシュモクはさらにノコギを説得する。
「私達魔法少女はいつ死ぬか分からないのよ。やりたいことはやっておかなくちゃ、今夜しかないのよ、今夜しか。」
「そうね、ところであなたはどうやって今夜ここまで来るの?」
ノコギの言う通り魔法少女は規則正しい生活を強制されているために夜無闇に外出できない。だが、シュモクには案があった。
「仲間の事を心配した私は一晩だけあなた達と同じ病室で寝ることにしたっていうのはどうかしら。」
「ナイスアイデア、よし早速鈴木さんに電話を掛けよう。」
その夜、シュモクとノコギはラブカのいる病室で狸寝入りをしていた。2人ともラブカが熟睡するのを待っていた。深夜、シュモクはベッドから静かに降りる。ノコギもそれに続いて懐中電灯を持ってラブカの寝るベッドの前に立つ。
「ノコギ、ライトよろしく。」
シュモクはひそひそ声でそう言うと布団をめくる。よし、起きない。次にパジャマをめくってノコギは腹を照らす。
「断崖絶壁!」
「これはすごい、私の胸の谷間より深いかも。」
(ノコギ&シュモク)「いいものを見てしまった!」
数々の修羅場を超えて鍛え抜かれたラブカの腹筋は見る者を魅了する。クルミを割る力を持っているだけのことはある。しかし、これを見て生き残った人間は一人もいないといわれている。(医者は別)シュモクとノコギも例外ではなかった。
(ノコギ)こんな感動久しぶり。」
(シュモク)「ねえ、ラブカの目開いてない?」
その時ラブカの真っ黒な目は二人を映していた。さらにその瞳は怒りに満ちていた。
「み~た~な~」
(シュモク)「話せば分かる。」
「問答無用。」
(ノコギ)「私達帰ったら結婚するのよね。」
(シュモク&ノコギ)「ねー。」
「ミンチにしてぐちゃ混ぜにしてやる!」
腰を抜かして抱き合う2人、その二人に容赦ない攻撃を加えるラブカであった。(ただいまお見せできません)
翌朝、天然パーマのKAT(カット)の女性職員ヒレがイカルンジ小隊の三人を迎えに病室に入ってくる。
「おはよう、今日はがん検診よ。あれっ三人ともクマが出てる。大丈夫?」
「別に眠れなかっただけですよ。」
「あいたたた。」
「ラブカひどい。」
「なんか言った?」
(シュモク&ノコギ)「いえ・・・」
「へー三人ともそんなに仲がいいのね、検診早く終わらせて昼食にしましょう。」
一瞬ムカッときた三人であった。
4-1愛情 オヤジたちは語る
魔法少女の日常はとにかく辛い。毎日のように匍匐前進して銃をぶっ放して訓練や戦闘を行う。体はもちろんのこと心も疲れる。彼女達は学校も訓練もない時には思い思いの娯楽を楽しむ。さらに辛いのは彼女達だけではない。彼女達の世話や指導を行う大人達にも安息の時が必要である。
「よしっ、ラブカとシュモク及びヒョウモン小隊の三人の退院を祝って乾杯!」
「乾杯!」
教育部部長コバン他三人のオヤジスタッフはKAT(カット)本部ビルの近くの居酒屋にて酒盛りをしていた。
「本当によかった。一時期はどうなるかと思ったわい。」
「俺はチョウさんがくも膜下出血起こしてぶっ倒れないか心配したよ。」
コバンの冗談に笑う一同。そんな中回収班責任者(戦闘が終わった魔法少女及び彼女達が倒した枯獣(カリデュー)の残骸を回収を行う部署の責任者及び管理者である、給料は他の職員よりいいが部下のへまの責任はすべて背負わなくてはいけない)酒田ドブロクは愚痴をこぼす。
「にしても魔法少女はもっとおしとやかに戦えないのか?」
「無理だね、手加減などしていたら当の昔に命はパーだね。」
「ハーここんとこ爆殺ばっかりだからな、破片拾いにスポイトでの吸込み作業、うんざりだ。」
(チョウ)「そんなに自分のクビが心配かね?けど、魔法少女と比べたらわしらの仕事は楽とは思わんかね?」
「そういえば酒田君、君のところの若造二人がうちのにちょっかいだしたそうだな。」
「その件か、ちゃんと叱っておいたよ、けどそんな所にまで首を突っ込むとわね。P07(ラブカ)に相当の愛を注いでいると見たよ。」
「歳の差約40とはあんたも好きねえ。」
アンボイナ小隊顧問のギンはそう茶々を入れる。
「なぜ愛情=H(エッチ)と判断する?」
「だってそういう感情は元々動物が子孫を残そうとする本能から派生したんでしょ。」
「おいおい、親の自分の子供を思う気持ちにそんなドロドロとした要素が含まれているとでも?」(自分の子孫を残したい 自分の子供に生き延びて欲しい 愛情を注ぐ、この一連の流れを見ると親の子供を思う気持ちはエロスの延長線上にあるという考えも間違いとは言い切れない)
「まったくうらやましいぜ、あんなにいい体した倉道はお前さんに惚れているんだぜ。その上未成年にまで手をつけるとは。あの世の妻が泣くぜ。」
「まあ、やめんか死んでいるとはいえコバン君もフツコさんもいまだに思い合っておる。」
チョウはそう言ってギンを止める。
「良いではないか、そもそもこの地球上において愛を感じ愛を分け合うことのできる生物と言ったら人間ぐらいではないか。」
「おっとそれは間違いだ、人類は自分達だけが特別であるという思い違いをして大自然の持つ愛というものを無視してきた。愛とは大自然における物と物との結合部だよ。」
コバンはそう言うとビールを一口飲む。
「あの弱肉強食の世界の中でか?」
「分からんか。共生説(生態系は単純な弱肉強食ではなくそれぞれの生物や自然がバランスを取り合うことによって成り立っているという説)ってやつが。いいか、なぜライオンはシマウマを食い尽くさないのか(実は大人のシマウマはライオンと同じかそれ以上の力を持っている、ライオンがシマウマに蹴り殺されるというケースもある、なのでライオンは基本子供やお年寄りを狙う、まあコバンの話の中ではライオンはシマウマよりも強いってことにしておいてね)説明できるか?」
黙り込む三人今日この場でこんな質問をされるなんて誰が想像できたのであろうか。が、チョウは思いついた。
「シマウマの数が多いからかね。」
「ふむ、そうだ。ただ、裏を返せばライオンはシマウマを獲り尽さないように手加減をしているとも言えなくはない。あるいは獲り尽さない程度食べれば足りるように進化してきたのかもしれない。」
「おいおい、ずいぶんと哲学的な話だな、自然の中の事なのに。」
「何をどこから見ようと調べることは一つだ。昔の人はきっと全部について考えることが大変だから役割分担をしたのであろう。」(専門家が他のジャンルの専門家に協力を依頼することは珍しくはない、生物学者が物理学者に助けを求めたり哲学者が生物学の本を読んだりといったケースが存在する)
四人は納得はしないが一回話を止めてそれぞれ酒を飲んだりつまみを食したりする。
「ところで俺ら何について話していたんだっけ。」
「おっと、結論出すのを忘れていたね、ライオンのシマウマに対するお情け、これも愛の一つの形と思わんか。一見食うか食われるかだけのようの見える大自然は大きな愛によって支えられているのかもしれない。俺らも同様に魔法少女の世話をして彼女たちに戦ってもらって給料もらって。」
「そうじゃの、わしらは魔法少女に日々感謝せねばな。」
「って訳で分かったかギンさん、魔法少女達にも敬意を払って人間扱いせねばな。」
「あいよ。」
ギンは仕方なくうなずく。するとコバンはさらに続ける。
「それにしても今はだいぶたくましくなってしまったが昔のラブカは可愛かったな。泣き虫で素直な手のかかる子であったが。」
少し酔って本音をこぼすコバン。それを聞いた通りすがりのフカはつぶやく。
「おっちゃんあれが好きなの、あのまな板のサディストのどこがいいのやら。」
「貴様粛清してやる!」
コバンは拳を高く掲げる。そんなコバンを押さえる三人。
「愛で止めるんだ。」
「そうだ、彼の言葉は無視しろ。」
「フカ君逃げろ。」
一方その頃、KAT本部の自分の部屋に帰ったラブカは命令書を眺めていた。
「ハクション、大人達は今頃酒盛りでもやってるの、いい気なものね。で、病み上がりの私は明日の午前に後輩のしごきか。まったく愛のない職場ね。」
4-2明日 希望ある場所
「施設内準備完了。」
「以上より訓練を開始する、P07どうぞ。」
「こちらP07、異常なし、P07行きます!」
黒いゴスロリのような戦闘服を着たラブカはペイントバズーカ(訓練用ペイント弾入りのバズーカ)を担ぎながら地下魔法少女訓練ドーム内を駆けて民家の影に隠れる。
「チームA訓練スタート。」
ヒレがそう言うと研修生三人がラブカの潜伏する村を模した訓練所に侵入していく。
(チョウ)「敵は十一時の方向で待ち伏せしている。左右に分かれて時間差攻撃を。」
ラブカにはないが研修生側にはオペレーターがついている。
「ウニ、ナマコ、私が先に行く。」
「ヒトデ大丈夫?」
「とにかくすぐに援護してくれれば大丈夫よ。」
ヒトデは無線のスイッチを押し
「こちらX14、敵の周辺に隠れ場所でもありますか?」
「左側の雑木林を伝っていけ、すぐ着く。」
「了解」
腰を低くしながら進行するヒトデ、一瞬敵を確認しようと腰を起こす。
ドン!ベチャッ
「腰が高い!」
ラブカはバズーカでヒトデを撃つ。ヒトデはゲームオーバー。間髪入れずにウニとナマコはサブマシンガンを乱射しながらラブカに近づく。
バキッ
「間合いがなってない!」
ラブカはウニを蹴飛ばす。その隙にナマコはラブカに銃口を向ける。
「銃は人に向けない!」
「えっ!?」
「スキアリ。」(棒読み)
ドン!ベチャッ
「謀ったな謀ったなヒャア。」ズボン!
零距離で撃たれたナマコはビオトープに飛ばされてずぶ濡れになりゲームオーバー。
最後の一人となったウニはプレグナントをかけると(プレグナントをかけるために何らかのポーズをとる必要はない、ラブカは集中力を高めるために例のポーズをとる)ピストル(魔法少女が使う銃は弾づまりのないリボルバーではなく自動拳銃である、ジャムのリスクよりも弾数が優先された)をラブカに向ける。ラブカは引き金を引かれる前に銃をバズーカで殴って銃口の向きをそらすとプレグナントをかけながら民家の屋根に飛び乗る。ウニが追いかけてくると再び飛び上がると同時にバズーカを後ろに投げつける。
バズーカは屋根に着陸する直前のウニの弁慶の泣き所に命中する。思わず力んで重力の量を増やしたウニは屋根をぶち抜いて民家内に落ち、その痛みに悶絶した。
「ウォアッチャーホアタタタタタタタウォアッチャー!」
「ブルース・リーのアフレコじゃないんだ、黙れ!」
「ゲームセットP07上がって良し。」
「鈴木さん、後輩が荒廃しています。」
「自重しろ、元泣き虫。」
休憩室にてノコギは数人の後輩に囲まれていた。
「退院おめでとう、でも三つ編みじゃないノコギなんてノコギじゃないみたい。」
「そうよ、この前あの変態(ラブカ)にペイント弾撃ち込まれたのよ。」
「先輩本当に大変ですね。あんな上司がいちゃ。」
「しか~しこの前の入院のおかげであの変態の秘密がわかったのであ~る。」
「何何?」
「弱点とか?」
「いやー見ちゃったのよねラブカのふ・・・うぇっほんうぇっほん。」
訓練と着替えを終えたラブカが休憩室に入ってきたのだ。
「あー急にお腹がすいてきちゃった、みんな食堂行こう。」
ノコギと後輩達はそそくさに食堂に向かう。
「もう隠せないってことか、はぁ。」
「一人奈(かずりな)さん、京儀と紅区(こうぐ)にばれちゃおしまいかな。」
「ナヌカいつからここに?」
「まあ気を落とさずに、お互い腹の凸凹仲間でしょ。」
この少し腹のでっぱった17歳の女子真樹ナヌカは何者なのか。彼女も魔法少女である。しかし、訓練は受けていないし戦うこともしない。なぜなら彼女は妊娠している。魔法少女は二世を産むことが可能かといった実験のためである。人工精子(これがあれば男なしでも世の中は成り立つ、しかし、人類の遺伝子の多様性を守るためにはお勧めできない)を移植されている。
では、彼女はKATで何をしているのか。一言で言えば魔法少女の仕事の管理である。過去の自分の経験を生かし訓練のメニューを組み時には後輩の相談に乗り時には大人達に対して労働環境の改善を要求することもある。もちろんKAT職員や一部の魔法少女から反感を買うこともあるが彼女の信念と良識はそう簡単に曲りはしなかった。
話を戻すとラブカはメモ帳とペンを取り出し「話がある、ボイスレコーダーを持ってトイレに来て欲しい。」と書く。
KAT女子トイレにてラブカとナヌカは壁越しに話をする。
「鈴木さんたちには話さなかったけど確かに前回の戦闘中にやばいものを見た気がするのよね。」
「いいわ、一から全部話して十秒後に録音開始よ。」
数人だけだがKATに不信感を抱く魔法少女が存在する。KATは魔法少女に対しては訓練をして枯獣(カリデュー)を倒せとしかいない。多くの魔法少女は目の前の仕事が忙しくてあまり気にしないがナヌカを含めた数人はKATに裏がないか疑っている。もちろんそんな態度を表に出せばどんな処罰が待っているか分ったものではない。よって情報交換はこうやってこそこそやることになる。
休憩室に戻った二人はコーヒーをすすっていた。
「しかし、珍しいわね。あなたが自分から情報くれるなんて。」
「思ったのよ、一人じゃ解決できないって、それともう一つ。」
「何?」
「今私達が感じるこの時間は何十何百何億もの時の積み重ねの上に存在しているのよね、どうして人間はその一秒をじっくり味わおうとでず失った一秒を無視して次の一秒を追いかけまわすのかしら。後ろを確かめもせずに。」
「それはきっと人間が一秒を失う瞬間を理解していないからじゃない。あるいは失った悲しい一秒よりも次の笑顔あふれる一秒を追い求めているせいなのかもね。私自身昨日なんていらないわ。幸せな明日を創ることができれば、この子のためになるわ。」
ナヌカはお腹をさすりながらそう言った。それを聞いたラブカはコーヒーを飲みながら窓から空を眺める。
(過去があるからこそ今の私がある。でも、その過去に囚われていることももまた事実、かといって当たりクジがでるかどうかもわからない未来に投資してみるっていうのも・・・)
KAT食堂にてコバンは脚の折れた長机の前でノコギ一行を叱っていた。
「貴様ら、魔法少女の力を何だと思っている。その力は必要な時だけ使えと言っただろ。」
「ごめんなさい。」
彼女達はノコギからラブカの腹筋の話を聞き、笑ったりはしゃいでいるうちに長机を壊してしまったのだ。
「全員自習室で正座だ。おっとノコギ、おまえは訓練だったな。十五分以内に制圧できなかったら青汁10杯だ。」
「えっあっはい。」
「それとナヌカから聞いたぞ、着替えぐらい冷蔵庫に入れんか。」
「鈴木さん、それって鈴木さんの趣味?」
「うっバカモン!洗濯機だとにかく行け!」
4-3受難 イジメ
朝、ラブカはKAT(カット)本部の食堂に足を運ぶ。いつもと比べると二十分ほど行動が遅れている。が、問題はなかった。彼女はこんなこともあろうと考え普段から早起きをしているからである。
「私も少したるんでいるのかしら。ん?卵がない?」
自分の朝食(魔法少女は口から摂るものより注射器で腕に注す栄養の量の方が多い)のある席に座った彼女は首をかしげた。今日の朝食は確かに卵かけごはんであったはず。しかし、目の前にあるのはご飯とみそ汁だけ。職員のミスか何かと考えた彼女が首を上げるとそこにはありえない光景があった。
朝食を食べるシュモク。彼女の皿には卵の殻が四個分(魔法少女は一人二個の卵を使うことが許されている)のっかっている。気になったラブカ。
「シュモク?」
「あっラブカおはよう、何だもう朝食摂らずに出ていったのかと思った。にしても四倍卵かけごはん最高。」
「要するに私の卵を自分のどんぶりに突っ込んで・・・後で来てくれる?」
女子トイレにてシュモクの襟をつかむラブカ。もう片方の手はシュモクの腹に押し付けられている。
「ラブカ~今日はこの辺で、私マーライオンになっちゃうよ~」(意味はマーライオンの見た目そのままだ、作者も三日間野菜を摂取しないとなる)
「貴様には食べ物の恨みというものを教えてあげるわ。」
そこにエイがはいってくる。
「ラブカ先輩おはよう、そろそろ行きませんか?」
「おっと時間か、エイ、丁度良かった私の代わりにシュモクボコしといて。」
「えっでも。」
「よく聞くのよ、ポニーテールはツインテールよりも強い。それとあなたはグドンあなたはグドン」(某巨大ヒーローネタ)
「ハイっ。」
「ちょっと待った、論理ってものが・・・」
「論より証拠よエイ。」(こうやって戦争が始まるのだ)
「暴力反対~」
ラブカはトイレから出るとバッグを取りに行く。トイレの中からはシュモクの悲鳴が響いた。
電車で学校に向かうラブカとエイ。ラブカは空いた席に座ると片方の靴を脱いでから中に手を突っ込んで金色の物体を取り出す。
「先輩これ何ですか?」
「画鋲よ、こんなものを私の靴の中に入れるのはあいつぐらいよ。」
ところが、彼女の足からは血が一滴も出ていなかった。何しろ魔法少女の足の裏はとても分厚いからである。彼女は張りの折れた画鋲をポケットの中に入れる。
「にしても先輩、あと少しでこの電車に乗り遅れるところだったのですが。」
「それは悪かった、これも一種のパシリっていうパワハラ(部長や上司などといった立場の高い人が立場の低い人にイジメをすること)だったかもね。画鋲の件も一種の報いだったのかな。おっと、ここからは先輩禁止。」
二人はイルカと合流する。学校に向かいながら会話をする。その途中イルカの尻に手を伸ばす男がいた。ラブカはすぐに男の手をつかむ。
「痴漢です。」
次の瞬間老若男女全ての乗客が男に白目をむく。
「最低。」
「これだから男ってやつは。」
「俺だってずっと我慢してるんだぞゴラー。」
電車が駅に停車した途端男は大衆に駅に引きずり出されリンチされる。」
「あちゃー痛そう。」
「みんな加害者をたたくことに必死で被害者には同情しないのね。」
「私・・・私・・・」
「イルカさんは全く悪くないわ。しかし彼豚箱行で十分なのに。傍観者のリンチ受ける理由なんてないわ。」
「悪人をたたく人もまた悪人か・・・」
イルカにとってこのことは他人事とは思えなかった。なぜなら彼女は学校でイジメを受けているからだ。彼女が体育の授業に参加しない理由もそこにあった。復讐をしてやりたいと思うこともあったが、そんなことをすれば自分もイジメをする人達と同じステージに立ってしまうというジレンマがあった。(作者自身も学生時代に性的侮辱を受けていたためこの問題を他人事とは思えない、受ける側はする側の行為を無視するぐらいしか対策がないんだよね、これ、)
ラブカはそんなイルカをイジメから守っていた。鋭い勘で靴や机の中の小細工を見抜き飛んでくる消しカスを自慢の反射神経を生かして打ち落とす。その日も何とか陰口を除くイジメを乗り越えて昼食の時間を迎える。ところが、イルカは弁当の白飯を口の中に運んだ瞬間顔をゆがめる。
「甘っ辛っポリポリする。」
「フリ〇ク?あっごめん、そこまで頭が回らなかった。」
「別にいいよラブカちゃんは何も悪くないんだから、それに大丈夫、私は明日にはこんなことされないようになるから。」
何故か自信にあふれていてイルカであった。
5-1失望 逃げる
切腹(正しいやり方は横に切って縦に切って手を体の中に突っ込む、しかし、だいたい横切りしている間に介錯人(かいしゃくにん)に首を落とされるのがオチ)、自爆テロ、人柱。人が死ぬと確かに何かが変わる。かといって世の中そのものが変わるという保証はない。それでも人は自分が死ねば世界が変わると思ってしまうものである。イルカもそう思っていた。灯油入りのペットボトルの入ったバッグを背負う彼女は父と対峙していた。
「私行かなくっちゃ。もう他人に迷惑かけたくないのよ。パパにもママにも友達にも。」
「何?友達いたのか、ならばなおさら行けないんじゃないか。」
「でも、私がいなくなればもうその友達に迷惑かけなくて済むし世間ではまたイジメに対する意識が低なっているわ。今こそ警鐘を鳴らさないと。」
「だかといってイルカが犠牲になることは、それに、いくらイルカが決行したところで世間は絶対にイルカの事を忘れる。必ずだ。」
「もういい、私は進む。」
イルカは家を飛び出して走り出す。町の人が集まるところで焼身自殺をしてイジメの恐ろしさを世の中に知らしめる、それが彼女の願いであった。だが、道の途中で彼女は小柄で赤い服を着た人とぶつかって地面に倒れこむ。その人は頑丈な体を持っていたらしくびくともしなかった。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい。怪我はありませんか?」
イルカは焦って謝る。
「イルカ落ち着け、それは郵便ポストだ。」
追いついた汗だくの父は言う。イルカは目が少し悪い上に涙で目が曇って前がまともに見えていなかったのである。
「あのさ、パパ私の最後の願い聞いてくれる?」
「何だ、パパはイルカの願いなら何でも何回でも聞くぞ。」
「め、め、眼鏡取ってきて欲しい。」
父は微妙な顔をしつつも郵便ポストと自宅の間を往復して眼鏡を取ってきた。さらに汗だくになった父はイルカに尋ねる。
「イルカ、もうやめにしないか、今を生きて立派な人になって世の中を変えてみたいと思えないのか?」
「だめなの、とにかく眼鏡を手に入れた今は行かなくちゃ。」
再び駆け出すイルカ。父は追いかけられずにはいられなかった。
「俺の大事な一人娘をこんなところで・・・」
「もう私の事なんてほっといてよ。」
「イルカ、頼む止まってくれパパは、パパは・・・」
「いやよ、疲れたなら止まればいいのよ。」
「違う!このままではパパは犯罪者と勘違いされてしまう!」(まったく世の中は住みにくくなったものだ、電車内で騒ぐ子供を注意すればをその親から罵声を浴び、子供に道を教えてやれば警察に逮捕される、本物の犯罪者が憎い)
「そっち!?」
数分後、二人は公園のベンチに座っていた。二人とも生も根も尽きてへとへとになっていた。
「なんでいつまでもついてくるのよ。はーはー。」
「パパはこう見えても元バスケ部のエースだ。それに何よりイルカはパパの一人娘だ。ぜーぜー。ところで喉乾いたか。」
父は自動販売機の飲み物を買うとイルカに手渡す。彼女は一気に半分ほど飲む。すると父は手を伸ばす。
「パパも飲みたいな。」
「間接キスでもイヤ。」(キスといえどもなめられない、ピーナッツアレルギーの人がピーナッツを食べた人とキスをしてあの世行になったというケースが存在する)
「まったく、かわいくないなあ。」
父はもう一本飲み物を買う。彼は息が落ち着くとイルカに聞く。
「ところでイルカ、その友達ってどんな人なんだ、パパにも教えてくれないか。」
「まだ十四歳の飛び級した子よ。日の丸難民救済センターから通ってきていて虚弱体質なんだけど勘が鋭くていつも私をイジメから守ってくれるの。」
「また会いたいと思わないか?」
「うん。」
「素直な返事だね。じゃあ、今死にたいと思うか?」
「思わないわ、それでも・・・」
「イルカ、自分自身はどうしたいんだ?イルカは純粋に自分がやりたいと思うことだけをやればいいんだ。」
「えっ、でも義務が…」
バシャッ突然父は何かの液体を浴びてびしょ濡れになる。この液体はただの液体ではなく強酸性の液体であった。父及びその周辺の地面から気味の悪いシューシューという音が聞こえる。液体が目に入り失明した父は絶叫する。
「熱い熱い熱い・・・ううイルカ逃げろ!生きろ!」
ところが、イルカは恐怖で腰が抜けて動くことができなかった。なぜなら目の前にありえないいたからである。全長3mほどある真っ黒なゴツゴツとした体、丈夫そうな四本の短い足、丸くて歯のない口の周りには顔らしいものは確認できず、先ほどの液体を垂らしている。枯獣(カリデュー)モツレがその場にいた。
モツレは溶ける父の前までのしのしと歩いてくると象の鼻のような口を伸ばして父をポンプのように吸い取って飲み干す。(人は食べたものを体内で消化するが自然の中にはタガメのように消化液を獲物に注射した後に消化された獲物を摂取するというケースが存在する、モツレも獲物を体外消化するのだ)次に体内からゴロゴロという音を立てながらイルカの方に振り向く。イルカは逃げたかったがまだ腰が抜けて動けない。彼女は自分はもう終わりだと思った。だが、その時。
「諦めるな!」
モツレは口を軸にゴロゴロと転がってイルカから離れていく。その時彼女は見た。謎の怪物を大玉転がしのように転がすゴスロリの三人組を・・・
5-2救助 レスキュー
軍隊の真目的はその国の国民を守ることであり戦うことではない。(個人的な見解なんだよねこれ、少なくとも自衛隊にはそうであって欲しい)魔法少女の場合もそうである。枯獣(カリデュー)が出現するとまず逃げ遅れた人を安全な場所に運ぶ。
「X03(エイ)十一時の方向に走って男を運べ。」
(倉道)「ギン、公園にまだ2人いるわよ。」
「こっちで対応する、イカルンジ小隊出現。三時の方向にいる親子を助け出せ。」
コバンは無線に向かって指示をする。
「親子だってもしかしたら援助交際なのでは。」
フカの口は相変わらず悪かった。コバンは注意しようとしたがそれよりフカが
「枯獣例の親子に接近中。」
「P07(ラブカ)枯獣を親子から引き離せ。」
現場にて枯獣のいる方向に走るイカルンジ小隊の三人。ラブカには案があった。
「息を合わせて敵を出会い頭に大玉転がしみいたいに押し転がすわよ、いい?」
「了解」
「いっせーのせーおっと諦めるな!」
三人が枯獣と接触した時片方は食べられたらしくその場には一人しか人がいなかった。それでも枯獣モツレは三人の力によってグングンと生還者から離されていった。
一方、一人取り残されたイルカはこれから自分が何をすればいいのか分からず困っていた。
今の状況を整理すると・・・よくわからない胃袋の怪物に襲われそうになって・・・パパはもう帰ってこない、だから自分の意志で判断しないと・・・そうね、まずは命の恩人にお礼言わなくちゃ。」
モツレを押し転がし続ける三人。
「シュモクテンポ上げて、よそ見禁止。」
「ラブカ後ろからさっき助けた人が走ってこっちにきてるよ。私達の努力が水の泡に。」
「スピードあげるわよ。もっと押せ!オッセーから。」
「ラブカっ前。」
ドシン!パラパラ
モツレが木に衝突して葉っぱが落ちてくる。
「ラブカどうする?いつもみたいに腹パンして気絶させとく?」(魔法少女は民間人に作戦を妨害された際にその民間人を排除していいことになっている、時には足を銃で撃つこともある)
「いやっ今日は私がお持ち帰りにする。2人でしばらく頑張ってて。足狙うのよ。」
彼女はそれだけを言うとイルカの方に走ってすれ違いざまに肩に担いで安全な場所に走り去っていく。
「がふっラブカちゃん?どうしてかんなところに。」
「事情は後よ。私にしろあなたにしろ大変なのはこれからよ。」
「えーと、助けてくれてありがとう。」
軽く照れながら遠くを見て走り続けるラブカであった。(作者はこの体勢でイルカが酔ってマーライオンにならないか心配である)
「ラブカが人に指示されずに人助けをするとは、明日は雪かないやっ説得の効果が出てきたかな。」
(フカ)「これからどうしますか?」
「民間人は回収班が保護、監視班はP07(ラブカ)を人口密集地の前に空輸だ。」
「了解」
グルルルルルルパンパンビシュッチュン
シュモクとノコギはモツレの吐く酸性の液体を避けつつも銃で対抗した。シュモクは敵に近づきピストルで足を狙う。一方ノコギは近づきすぎた敵をサブマシンガンで牽制する。だが、弾はなかなか足に命中しない。
「これじゃらちがあかない。」
「どうする?シュモク。」
「プレグナントかけるわ。ラブカが戻ってくる前に傷の一つや二つはつけておかなくちゃね。」
二人はプレグナントをかけるために精神統一をしようとした。するとモツレは立ち止まった二人にめがけて酸性の液体をかける。二人はスライディングをしてギリギリで避ける。
「酸っぱ(臭いが)、とりまやつは連続で液体吐けないみたいだからここでかける?」
「アルカリ性の反対。」(賛成(酸性)ってこと)
(シュモク&ノコギ)「プレグナント」
モツレは距離を縮めようと二人に突進してくる。二人は重力の量を増やすとタイミングを合わせてダブルキックを放つ。敵は十mほど飛ばされて土煙を立てながら地面に叩き付けられる。二人は間髪入れずに敵の体に飛び乗る。ノコギが右前足を押さえるとシュモクはそれをピストルの零距離射撃で打ち抜く。途端に敵は悲鳴を上げながらジタバタと暴れ出す。二人は十mほど飛ばされるが無事に着地する。シュモクはノコギに尋ねる。
「ラブカ戻ってくる前にとどめさしとく?」
「それじゃ対戦車ライフルでも所望する?」
「本部、対戦車ライフル所望、えっ退却?」
「そうだ、ラブカが戻ってきたらライフルを取りに戻れ。」
一方モツレは足の一本や日本ダメになっても大丈夫な枯獣であった。再び酸性の液体を吐きながら二人に襲いかかる。
「あーとっととライフル空輸してくれれば倒せたかもしれないのに。」(ラブカはこの一連の会話を無線で聞いているため現在の状況がよく分かる)
上空のヘリコプターにて。
「運び屋さん、西側に落としてくれませんか?」
「命令無視ですか?」
「やつはおそらく遠くのごちそうよりも近くのスナックを狙うわ、だから私がやつを人口密集地に案内する必要はないわ。」
「そいつは適切な判断ですな女王様。」
「何か言った、あ?」
「とにかく降りてくださいお姫様。」
彼女はヘリコプターから飛び降りると大の字になりながらプレグナントをかけ自分にかかる重力の量を減らす。地面に到達する十mほどに来ると今度は重力の量を増やして(重力操作により魔法少女は重力の影響を受けにくくなるだけであって質量自体は変化しない)わざと土煙を立てる。モツレは彼女の方に振り向く。彼女が立てひざをやめて流れるようにファイティングポーズ(右腕はグーを前に出しつつ軽くひじを曲げ左手をパーにして胸の前におく、下半身はいつでも動けるように軽く膝を曲げる)をとるとシュモクとノコギは申し訳なさそうにそそくさに退却した。
5-3封印 AD2086
自分の重力の量を増やし土煙を立てながら時速80㎞で敵に向かって走るラブカ。枯獣(カリデュー)モツレも負けじと突進する。二人(?)ぶつかり合う。外から見るとゴスロリと黒い岩が社交ダンスをしているように見えるがこれは今世紀最も過酷な相撲であった。
ラブカは敵の首を脇ではさみながら酸性の液体を浴びないようにしていた。彼女に下された命令はシュモクがライフルを持ってくるまで敵が逃げられないように押さえておくことであった。しかし、彼女はこの命令に不満を感じていた。なぜならこんなに体格差があり体重面(モツレの体重は1.2トンぐらい、ラブカは重力操作でなんとか体重を増やして対抗)から見ても勝ち目がないし、しかも武器の使用も禁止されていた。まったくめちゃくちゃな命令であった。
彼女は案の定敵にふり払われて7mほど飛ばされる。彼女は地面に叩き付けられたものの(重力操作で体重を減らし体を大の字にして地面に接する面積を広くすればダメージはわりと軽くなる)2秒で再起して敵に立ち向かう。敵は酸性の液体を吐いてくる。彼女はそれをスライディングで避けると同時に敵の腹の下に潜り込む。さらに、寝っ転がったまま腹蹴りを三発入れる。慌てた敵が一瞬二足で立ち上がると彼女は回し蹴りを決める。
モツレは仰向けに倒れてもがきだす。ラブカは距離を取りながら(彼女の仕事はあくまでも敵を押さえておくことであり無闇にとどめをさす必要はない)ファイティングポーズをとる。汗をかいた彼女は紫外線を浴びて青い光を放つ。(前回の戦闘は夜に行われたため光らなかった、しかし、1-1では作者が素で忘れていた)敵が再起すると再び敵に組み着き脇で首を挟む。無線によるとシュモクはあと一分で駆けつけてくるらしい。彼女は左手で右腕の汗をモツレの脳みそのありそうなところに塗り付けてライフルの的代わりにする。あとちょっとだけ押さえておけばいい。ところがその一瞬の油断とモツレの学習能力が悲劇を生む。
モツレは首を伸ばしながらから自分の後ろに口を向け酸性の液体をラブカに垂らす。彼女は何とか避けるが左腕に一滴当たってしまった。激痛のせいで彼女の力が緩みモツレは自由になる。敵は彼女を押し倒し前に進みながら転がす。モツレに轢かれた彼女は全身の痛みをこらえつつ考える。
(これでは奴を押さえることができない、この前の傷は開いちゃうし露出している右腕にも擦り傷が・・・そういえばさっき右腕と奴の腹が擦れたような・・・こいつは短足か、ならやってみるか)
ラブカは立ち上がる飛び上がり重力の量を増やしてモツレの背中に飛び降りる。敵はもちろん反撃しようとして後ろ足二本で立ち上がる。彼女はすばやく敵の腹の下に入ると時速140㎞の腹パンをお見舞いした後に両腕で敵を持ち上げる。こうしておけば敵は身動きをとることができなくなる。
モツレも首を伸ばしてラブカに再び酸性の液体を吐けば勝機はある。ところがモツレはそれどころではなかった。地面に足が付かないことを恐れて足をバタバタと動かしてばかりいる。
そこに対戦車ライフルを担いで駆けつけてきたシュモクとノコギ。シュモクはライフルのグリップを握っていない照準を合わせる。ノコギは銃身を支える。
「なんでラブカばかりあんな重労働をやらされるのかしら?」
「皮肉なものね、自分の才能のせいで苦役を呼び込んでしまうなんて。」(工事現場等で重労働をする人々の給料は割と低い、ほっとけば志願する人がいなくなるかもしれない)
「照準の方は?」
「ラブカの汗のおかげで(なぜ魔法少女の目は紫外線を反射して光らないのか、角膜が紫外線を遮断することにしといて)ばっちり、3,2,1」
ドンビシッドンビシッドンベチャッ
弾が枯獣に命中したのを確認すると彼女は敵を自分の後ろに捨てたのちに倒れる。
「おーいラブカ~お疲れ様・・・あれっ?どうしたの。」
ラブカは起き上がろうとせずに手足を痙攣させる。さらには顔の表情が消失している。そこにコバンが無線越しに指示を出す。
「M11(シュモク)M13(ノコギ)、P07(ラブカ)を押さえろ。セルフカニバリズムが始まっとる。回収班医療班マニュアルGだ、急げ!魔法少女が死ぬぞ!」
KAT職員一同は顔を真っ青にしていた。助けに行きたくても行けないというシチュエーションは確かに辛いものである。だが、現地にいる回収班は精神的に辛いだけではなく命の危機にも直面している。マニュアルGとはセルフカニバリズムに陥った魔法少女を救助するための作業である。内容は魔法少女が暴れないように押さえつけ、高濃度栄養剤と麻酔を打って大人しくさせるといったものである。セルフカニバリズム中魔法少女の体内では細胞同士が共食いをするため感覚が狂って体が勝手に動いてしまう。例によって強靭な肉体と高い出力を持つ魔法少女を常人が取り押さえことは危険極まりない。
「ひるむな、とにかく思いっ切りだ!左手は三人で押さえろ!栄養剤急げ!」
「腹筋に注します。」
「よしっ、四肢良し、胴体良し、麻酔行きます。」
シュモクとノコギと宇宙服のような防護服を着た回収班の連係プレーによってラブカはどうにか一命を取り止める。回収班は眠っていても痙攣を続ける彼女を担架で運ぶ。KAT職員達は汗だくになりながらホッとため息をつくのであった。
カタカタ「資産家虎間家心中」カチッ
2084年、宝くじ大当たり、株でも大儲けをする男がいた。しかし、その男は妻と娘と慎ましい金持ちらしくない生活をしていた。では、稼いだ金はどうしていたのか。貧しい人や困っている人に寄付していたのである。妻も娘もその男を信頼していた。もちろん男はそのことを誇りに思っていた。
ある日、日本の大都市が震災に見舞われ男はすぐに寄付をしようと急いでいた。その時、一本の電話がかかってきた。電話の向こうにいる女は自らを被災者支援機構の者であるといい、自らの口座に金を振り込むように頼んだ。
ところが数日後、男はその機構が偽物であり自分は振り込め詐欺にあったということを知る。男は怒り、嘆き、悲しんだ。助けてくれあの科金を取り返して苦しむ被災者に届けなくては。そこに救いの手が差し伸べられた。なんと振り込め詐欺被害者の会が男に接触してきたのだ。会は男にこれだけの金を会の口座に振り込めば取られた金が帰ってくると話す。
男は自分の財産のほとんどを振り込んだ。だが、数日後に振り込んだ金は一生帰ってこないことを悟る。精神がボロボロになりうつ病になった男はついに一家心中を企てる。
方法は密封された個室で燃える練炭を手を繋ぎながら囲むといったものだった。妻は反対せずあの世まで男に着いていくことにした。娘は何もわからなかったが母に言われたように両親と手を繋ぐ。だが、心中中娘は感じる。この行為は無駄である。渾身の力で両親の腕を振りほどき逃げ出す。それからなんとか家から脱出する。振り返り燃え上がる家を見た娘は凍りついた。父も母もまだ心中を続けている、生き残ったのは自分だけ。
この事件の後娘は日の丸難民救済センターに保護されたがその後の足取りは誰も知らない。では娘は今どこにいるかって?2094年日の丸難民救済センター所属病院のベッドの上にいた。彼女は日本政府の管理下にある生物兵器魔法少女になっていた・・・
6-1対話 今を生きて
「まさか死なないわよね。」
「紅具さん大丈夫よ一人奈さんは。」
前回の戦闘中にセルフカニバリズムを起こして倒れたラブカのお見舞いにシュモクとノコギとナヌカが来ていた。シュモクとノコギは正直な気持ち病院に行きたくはなかった。おそらくこの調子では八つ当たりのデコピンを十発ほど受けてデコを押さえながら帰るのがオチだ。一方妊娠六か月のナヌカはラブカが戦地でどんな扱いを受けたか証言を聞こうと張り切っていた。
「ところでラブカ死んだらお通夜どうするの?スシはありきたり過ぎるからたまにはぴざ?」
「京儀さんそれは少々不謹慎では?」
「うーん、でもやっぱり四倍卵かけごはんの味がわす・・・フニャッ。」
「勝手に殺してくれるとは上等だな。」
目を覚ましたラブカはシュモクに枕を投げつけた。するとナヌカが間に入る。
「一人奈さん今日はこの辺で。京儀さんはあの時急いでくれたのよ、スタッフに止められる中反対して援護に来てくれたのよ。」
「かっ感謝する。」
「どーもー。」
その後、イカルンジ小隊の三人はナヌカに戦闘中に何があったかを話ナヌカはラブカだけが重労働をさせられた件について抗議することになった。それが決まるとナヌカはに告げる。
「今回はセルフカニバリズムのおかげ減量約20㎏ね。」
「えってことは私は今65㎏しかないってこと?筋肉まずくない?」(体脂肪率の低い魔法少女の筋肉は簡単に体に消費されやすい、ついでに常人も飲まず食わずで筋トレをしても筋肉はつかない)
「ご愁傷様、まあ、そのおかげで一人助かったからその分と思いなさい。」
「そういえばイルカさんは?」
「えっ知り合い?」
「その通りだ、イルカ君はラブカの飛び級先の紅公高校に通ってなおかつ親友だ。」
「この度はありがとうございました。」
コバンに連れられてきたイルカは病室にいる四人に握手を求める。握手が終わった後コバンはラブカとナヌカに目で合図を送る。コバンは忘れ物をしたといって病室から出ていく。ナヌカもシュモクとノコギの手を引いて出ていく。部屋にはラブカとイルカだけが残される。
「これから赤ちゃんのソナー検査するから付き合って。」
廊下にて話し合う三人。
「ナヌカさんなぜです。」
(ノコギ)「決まってるでしょ、今二人の間に入るのは野暮よ。果たしてどのようなユリ展開が待っているのやら。ニヤニヤ。」
「紅具さん、私はこの前鈴木さんとチョウさんのダブルオヤジが仲良くツレションしてるところを見たわ。」(別に彼女が男子トイレを覗いたわけではない、入っていくところを見ただけ)どんなBL展開が待っているのやら。」
(シュモク&ノコギ)「ダレトク?」
「という話は置いておいて。まあ流線(ルセン)イルカさんも目撃者かつ関係者になったわけだからね・・・」
ベッドの上で上半身を起こすラブカは呆然と立っているイルカと話を始める。
「どっから話すべきかしら。おそらくあなたは私の正体、KATの仕事、それらの秘密を外に漏らしてはいけないことを伝えられたはずよね。」
「そうよ、ひどいのよ。私は何も悪いことはしてない・・・テロ未遂はしたけど。えーととにかく私は表向きでは二日前に死んだことにされて、秘密を守るためにここで働かされることになったのよ。学校行かなくてよくなったのは嬉しいけど。」
「とすると、私は昨日丸一日眠って、イルカさんの方は戸籍を消されてKATに囚われの身。」
それだけを聞くとイルカは両手で顔を覆いながらシクシクと泣き出す。自殺して辛い日常から抜け出そうとした彼女。だが、いざ日常を本格的に失うことはそれを過ごすことよりも辛いことに気づいたのだ。(戦争が始まり平和が、バブルがはじけて資産が・・・作者を含めた人は失ってからそのものの大切さに気付くということは多い、読者諸君も気を付けよう)ラブカは何とかして慰めの言葉を見つけようとする。
「私だって辛いのよイルカさん。学校はとにかくあんな化け物と毎月のように戦わなきゃいけない日常にはうんざりするわ。」
「だったら逃げてみない?」
「そう思うこともあるけど私は逃げたところで幸せになれるとは思わないわ。第一力を持つものはその力を適切に使わないといけない。運命に出会った者はその時を受け止めて最後までその運命と付き合っていかなくてはいけない。」
ラブカの言うことがいくら正論であってもイルカの不安は消えずに黙ってしまう。ラブカは仕方なく続ける。
「もしかしたらここで働くことになったのは幸せなのかもしれないわ。」
「・・・」
「なんて言ったらいいのかしら。今日本でまともに働いて給料得ることが大変なのはしらない?例えいい企業に就職できたとしても働き蜂にされてうつ病になってなにもできなくなって貧困層に落ちるってケースは少なくはないわ。」
「・・・」
「KATって労働者にとっては一種のユートピアなのよ。それは私や枯獣(カリデュー)を見てしまった人が無理やり連れてこられるいうのは事実だけど三か月も働いていいればわかるわ。働いたら働いた分だけ給料がもらえるしパワハラもほぼ皆無。元正社員もホームレスもこの仕事に満足しているみたいよ。」
「・・・」
それでも黙り込むイルカにラブカは続ける。
「あと、個人的な話なんだけど私は初めて自分の意志で助けた人間があなたであったことをとてもうれしく思っているの。」
「・・・」
これまでは上からの命令でしか人を助けたことがなかったけどあなたの顔を見たとき助けなくちゃって思ったの。」
「・・・」
「きっと私にとってイルカさんは友達以上なのよ。だから、これからもそばにいて欲しいの。」
「・・・いいよ、私は大切なことを忘れていたわ。」
二人はかたい握手をする。ようやくイルカは心を開いてくれた。その時コバンが本部から病院に戻ってくる。彼は通帳をイルカに手渡す。
「あの、これは?」
「なに、給料の前払いと思ってくれればいい、食費や生活費はほとんどKATが出すからおこずかいといったところかな。」
「えっ、こんなに、私は喜んでここで働きます。」
イルカは喜んでいたがラブカは複雑な心境であった。どうして自分が金一つで動く野郎の心のケアをやらされたのか。しかも、堂々と同性を口説いてしまった。シュモクやノコギにこのことを知られたら後が思いやられる。そこにシュモクが病室に入ってくる。
「ラブカ~ユリ~」
ビタン!
ブチぎれたラブカはシュモクに本気の一本背負いをお見舞いする。KOしたシュモクはうめく。
「・・・の花お見舞いに持ってきてあげたのになんで~」
6-2抗議 育つ者妬む者
ダイエット、この存在は人を狂わせる。痩せるためとなれば走る、吐く、発狂する。しかし、ここ日本に異端者がいた。(歴史を見返してみるとデブ=美女美男子というケースは少なくはない、貧しい国や平安時代の日本がそう)ラブカは20㎏体重を増やそうと頭をフル回転させていた。
「ピザは一日一枚、フライドチキンの骨は残せ、皿はなめるな、昨日鈴木さんに注意されたばかりでは?」
「ラブカちゃんそんなに体系変わったわけじゃないからいいんじゃない?」
「いやっ今この体のバランス感覚は最悪(ラブカの筋肉は落ちてしまったもののその分体が軽くなり走行速度やジャンプ力は大して変わらないが重力や空気抵抗の影響が変化するためアクロバット等に支障をきたす)とにかく体重元に戻さないとね。」
逆ダイエットをするラブカとそれに協力するシュモクとイルカ。大量の空の食べ物の入れ物で散らかったラブカの部屋で会議中。シュモクは力士のように食っちゃ寝食っちゃ寝を続ければいいと提案する。だが、ラブカは拒否する。
「私の目標はデブになることではなく全身バランス良く密度を増やすこと。そもそも眠ってばかりいるとカロリーを多く消費するらしいわ。」(寝ている間のカロリー消費は割と多い、体が死なないように維持するためには大量のエネルギーが必要、読者諸君ダイエット考えるならまずはグッドスリープ)
「だったら動かないで本でも読みながら一日過ごすとか?」
「ブドウ糖(ブドウや蜂蜜等に含まれる糖類の一種)使うことになるわ。」
「なら、今この時点でもブドウ糖消費しながら考えてるじゃないの。」
自分のうかつさに気づいたラブカは立ち上がり恥ずかしそうに窓の外を見る。そこでイルカはあることに気づく。
「ラブカちゃんその服ツルツルテンじゃなぃ?それと前見た時よりも身長伸びてない?」
「はーなるほどね、硬い筋肉が消えてさらに一日中寝ていたおかげで急成長したって訳ね。20㎏全てがセルフカニバリズムで消えたって訳じゃなかったのね。」
「とすると、私の筋肉の密度は想像していたよりも小さくなっていたってこと?なんて無駄遣いを。」
「母ならぬ乳にも無駄遣いがあるんじゃない?」
笑顔のイルカに指摘されたラブカは気を付けをすると目を下に向ける。確かに胸に隠れて足の薬指が見えない。
「シュモク、イルカさんこうなったら縛って縮める。」
「刺激したらさらに膨らむよ多分。まあラブカちゃん運命に出会った者はその時を受け止めて最後までその運命と付き合っていかなくてはいけない。それと、ラブカちゃんも女の子らしく成長しているってことを喜ばしいことだとは思わない?」
数日前に言われたことをオウム返しにされた彼女に返す言葉はなかった。それに言われてみると少し嬉しかった。しかし、案の定シュモクはそこに水を差した。
「そうだよね、首から下の成長が首から上の成長に追いついてきたってことでめでたしめでたし。」
プッツン
堪忍袋の緒が切れたラブカはシュモクに飛びかかる。
「この野郎好き勝手言いやがって、間接という間接を全部外してやる!」(とすると首は七個の骨で構成されているから八回も外される、痛そ~あっ一回目で死ぬな)
「タンマタンマ謝るってばイルカさん何か言ってよ助けて~」
「ラブカちゃんカロリー消費してるよ。」
「気が変わった今はこの体で頑張る。」
「抜ける~」
KAT(カット)本部の倉道セラケの部屋にてナヌカはKATの魔法少女の扱いについて抗議していた。彼女が提起した問題はラブカの孤立が意図的に引き起こされてなおかつそれを援護しに行こうとする仲間の行動を遅めているのではないかといったところであった。倉道は相変わらず大人の理屈を並べる。
「P07(ラブカ)は昔から孤独な戦いをしてるでしょ。あなただってずっと見てきたから分かるわね。それと援護を遅めているというのも勘違いよ。私たちは戦略的に物事を進めているのよ。分かる?」
「納得できません。特に今回はできません。一人奈さんは京儀さんの判断が一瞬でも遅ければ死んでいたのかもしれませんよ。」
「現にP07(ラブカ)は生きているわ。それにもし私がGOサインを出して二人が犬死したらどうしていたつもり?」
ナヌカはいらだっていた。いくら言いたいことがあっても相手を言い負かす決定的な武器がない。それにお腹の子供にもストレスをかけたくないとも考えた。そこで彼女は後ろを向くと捨て台詞を吐く。
「どうしていたつもり?指令を出すのはあなた達、私が何かをしたくても何もできないわ。それと、いくら恋敵といえども子供に八つ当たりするのは良くないと思います。」
さすがにいつも冷静沈着な倉道も今回は頭にきたらしい。飲みかけのコーヒーにガムシロップを入れるとわざとナヌカの背中ににかける。
「あっ手が滑っちゃった。スタッフ呼ぼうかしら。」
「結構です。」
ナヌカはとっとと倉道の部屋を後にする。さすがに最後の捨て台詞には後悔があったものの自らの決して屈しないという意思を伝えることができたため良しとした。
「とにかく早めにお願いします。」
「大丈夫だ。こっちも急いでいる。しかし、ここ一週間で4㎝伸びたってケースは今回が初めてだ。少し時間がかかるが我慢してくれ。」
「それまではピチピチの戦闘服を使ってくださいと?」
「その辺は謝る。だが、今は我慢してくれ。」
コバンにサイズの合った戦闘服を頼むラブカ。そこにコーヒー臭いナヌカが通りかかる。
「いい香りねナヌカ。」
「シロップ入りのコーヒーかけられたのよ。ベタベタする。倉道はあなたに対して謝るつもりは毛頭ないね。」
「どうだ、今度はラブカでも連れてって多人数で抗議するっていうのはどうだ?」
「当たられるのは私一人で十分よ。これも自分で選んだ仕事だから。」
彼女はその場を去っていった。
6-3盗聴 計画の片鱗
KAT(カット)職員の雑用係。一日の仕事は掃除、料理、洗濯、資料運び等とにかく誰にでもできる雑用である。メンバーのほとんどが魔法少女や枯獣(カリデュー)をを目撃してしまったために口封じとしてKATに連行されて表向き死んだことにされた人々である。職場の環境は割といい。給料は高いし仕事がないときはKATの情報を漏らさない限りは好きにしていていいことになっている。そんな雑用係の一人イルカ。掃除の仕事を終えた彼女は一人休憩室の奥で本を読んでいた。学校嫌いの彼女にとってここは天国であった。仕事がないときは本が読み放題だし夕方になれば話し相手のラブカが帰ってくる。しかし、どうやら今日はのんきに過ごすことができそうもなかった。休憩室にコバンとチョウが入ってくる。席に座るとキョロキョロしながら
「よしっ、誰もいないな。」
自分がいるのにと思うイルカ。あえて息を殺してオヤジの内緒話とやらを聴いてみることにした。
「チョウさん、魔法少女輸出計画のメリットは何ですかね。やはり金ですかね?」
「うむ、今外国が謙虚さを失った日本に感じる魅力といったら上の組の持つ金ぐらいじゃな。おそらく金がなくなればこの国も終わりだな。だから、金の話になると政府はすぐに飛びつく。」
「日本政府は魔法少女を売りたくてウズウズしている。防衛装備品輸出三原則(事実上日本が武器を自由に輸出してもいいって法律、日本製の兵器で外国人が殺されるって不名誉な話だ)、難民救済法(前者と違い架空の法律、日本に来た難民は国が許す限りは自由に他国に亡命できるという法、魔法少女の七割ほどは大陸から来た親なしの難民)。魔法少女を武器とみても人と見ても止めることができない。」
「最後の希望は外国の人権団体か・・・」
二人ともため息をつく。一方イルカは真っ青になっていた。魔法少女が輸出される?ラブカも多分その対象になる。彼女にそのオファーが来たらこれも運命であると認めてしまうに違いない。一人で悩んでいても仕方がないと考えた彼女は息を殺しつつ話を聴くことにした。
「ところで魔法少女が輸出されたらどこに配置されるのか、無人島かな。」
「いやっ、スラム街(貧困層が集まって作る街、犯罪組織の温床になることもある、2094年の日本にはいくらかある)に置くと効率が良さそうじゃな。」
「やはり上の組の産業に影響を出さずに人の心の浄化、陰気の中和を実行するか。」
「陽気目当てで輸出された魔法少女は慣れない環境でひたすら作られる枯獣と戦い続けることになるであろう。」
陰気、陽気、枯獣が作られる。どうやらまずそうな単語ばかりが聞こえてくる。さらにコバンがつぶやく。
「そろそろ枯獣が作られる時間だな。」
「戦闘は朝からかな。とにかく今日話したことはどこかで魔法少女に漏らしておかないとな。」
話が終わると二人は休憩室から出ていく。二人の足音が聞こえなくなるとイルカはコソコソと部屋を脱出した。廊下を歩くコバンは心の中でつぶやいた。
(頼んだぞイルカ)
夕方になりラブカが学校から帰ってくる。自分のクラスで行われたイルカの葬式ごっこを目撃した彼女はウンザリしていた。そんな彼女を見つけたイルカは彼女に飛びかかろうとしたが見当違いの方向に飛び込んで床に叩き付けられる。
「だいぶ大胆なダイブね。近視には禁止された行為よ。」
「ラブカちゃん、部屋に監視カメラか盗聴器ついてる?」
「多分ないと思う、最近は悪いことしてないから。」(5-2で机を壊したノコギの部屋にはついてる、魔法少女はどうしても猛獣扱いされてしまう)
「それじゃ部屋で私の話を聞いて。とても大切なことが。」
「愛の告白以外なら・・・いやっ真面目な話ね。だっ大丈夫だずっと友達ではいよう。」
イルカはコバンとチョウがしていた話の内容を全てラブカに伝える。それを聞き終えたラブカは絶句した。だが、すぐに気を取り直すと
「明日の朝枯獣が出たとしたらこの話は九割がた信用できるわね。でも、私がこの話を知ったところで何もできないわ。隙を見てナヌカに話して、彼女なら何か良い策を考え着くかもしれないわ。」
コンコン誰かがドアをノックする。ラブカは手振りで話をしないようにイルカに指示するとドアを開ける。そこにはノートを持ったシュモクとノコギがいた。二人は宿題を教えてもらおうとラブカの部屋に来たのだ。
「あれ、イルカさん来て何してるの?もしかしてお取り込み中?」
「あのね・・・いやーイルカさんがどうしてシュモクの髪が赤いのかって聞いてきてね。」
「染めてなんていないよ、これは自毛よ。」
「とすると、シュモクって多分東アジアとヨーロッパ系のハーフだからネアンデルタール人(彼らは決して我々ホモサピエンスに劣っていたわけではない、彼らの作る石器の切れ味はホモサピエンスの物以上だし葬儀を行うなど文化のレベルもそれなりに高かった、それがなぜ絶滅したのかって?生息範囲が狭いせいでヨーロッパの火山が噴火したときに全滅したらしい)の血でも入っているのかしら。」
「プッネアンデルタール人だってさ、シュモクご先祖様らしくウホッウホッっていってみたら?」(そいつは変形だノコギ氏)
「ノコギこそ北京原人の血でも入っているんじゃない?」(科学的根拠はない、ついでに氷河期をたくましく生き抜いた彼らは作者よりも頭がいいはずだ)
「それがどうしたネアンデルタール人。」
「何言ってんだか北京原人。」
「ネアンデルタール人ネアンデルタール人ネアンデルタール人・・・」「北京原人北京原人北京原人・・・」(読者諸君くれぐれも区別はしても差別はしないように)
「やかましい!」
ラブカは二人の後頭部をつかむと互いのデコをぶつけてからグリグリと押し付ける。
「ハイハイ仲良し仲良し。」
「目がメガ痛い。」
「ゼーゼー危うくファーストキスするところだった。」
そこでイルカは問題をきれいにまとめる。
「まあ、少なくとも人間同士なら仲良くやっていけるはずよきっと。世の中いろんな人がいるからね。例えばラブカちゃんだって元裸族だし。」
「違う!私は現役裸眼族!」(眼鏡やコンタクトレンズが不必要な人のこと、ついでに作者も2014年現在は当てはまる)
「こう見えても一週間前までは首から下は幼児体型。見ても喜ぶ奴なんていないよね。」
「ロリコンって連中を忘れてない?」
するとラブカはニコニコしながらシュモクとノコギに告げた。
「二人とも正座しよっか?一時間ほど。」
二人は頭から血の気が引いた。ああ、自分達はなんと愚かだったんだ。最初から宿題教えてくださいと言っておけば良かった。しかし、今後悔してももう遅かった。
「イルカさん助けて~ラブカを説得して~」
「ごめん、私そろそろ仕事に戻らなくちゃ。」
「いってらっしゃい。」
(シュモク&ノコギ)「ラブカ様ご慈悲を~」
「情けをかけろだって?今は私あなた達に硫酸(強酸性の化合物の一種)をかけたいところなんだけどな。」
EX-1 座談会
ラブカ(ラ)「この物語も半分ほど終わってきりが良くなったってことで作者素巴キリマさんを招いて座談会をしようと思います。」
素巴キリマ(キ)「4649。」
(ラ)「では最初の質問。どうしてこの物語を書こうと思ったのですか?」
(キ)「理由は二つ。一つは受験戦争が終わって時間ができたから。もう一つは昔から頭の中でシナリオを作るって趣味があったものの一度も外に出したかとがなかったから。まあ、この物語には吾輩が浪人時代に考えたことや感じたことが詰められているってわけ。」
(ラ)「とするとこの物語にはキリマさんの目標や願いといったものが込められているってわけですか?」
(キ)「確かにこの物語を通して自分自身を見つめなおすっていうのは大きいね。」
(ラ)「要するに一種の自分探しってことね安っぽい行動原理ね。で、テーマとかあるんですか?」
(キ)「まあ、最初のうちは個人が持つ義務や責任について書こうとしていたんだけど途中気が変わって自由への物語に方向転換しちゃったんだよね。」
(ラ)「とすると、キリマさんの頭の中にあるシナリオと実際に書かれたものには何らかの違いがあるんですか?」
(キ)「Yes、元々はもっと暗くて悲しい物語だったんだよね。イルカは枯獣(カリデュー)に食べられちゃうし君はクラスメート撲殺しちゃうし挙句の果てにはコバンがラブカに暴力振るっちゃうし。」
(ラ)「うわー悪趣味~さすが顔色一つ変えないでネズミの尻尾と首を引っ張って頸椎脱臼させてパスアウェイさせちゃうだけあるわ。」
(キ)「学校の授業の実験中の話だってば。」
(ラ)「でも、なぜ今のようなふざけた物語に?」
(キ)「やっぱりシリアスな話ばかり書くのはしんどいと思ったし無闇に人を殺したり男が女に暴力を振るうのもなんかと思ってね。けど、変えないで置いたところもあるんだよね。例えば根っこからの悪人を出さないとかね。」
(ラ)「もしかして魔法少女は絶対的な正義ではないんですか?」
(キ)「もちろん、いくら人を捕食するといっても枯獣もただ生きることに必至なだけなわけ。」
(ラ)「では、質問を変えて紫外線を浴びたら光っちゃうとか私の体重が20㎏落ちちゃったりと無茶苦茶じゃないですか?魔法少女の体質。」
(キ)「おーいい質問だね全ては最終回を盛り上げるためなんだ。吾輩はシナリオを作るとき最終回から制作しちゃうことが多いんだよね。」
(ラ)「ほうほう、後付設定で話を作っちゃうキリマさん、この物語全然魔法少女ものっぽくないんだけど。可愛い小動物や素敵なステッキとかでないんですか?」
(キ)「ラブカ氏、さっきからひどくない?まあ、生きている次元が違うから許すけど。実は吾輩某魔法少女MMを見るまでは魔法少女物なんて完全に無視していたんだよね。そういう要素が必要と分かった時にはもう手遅れ。テヘペロ。とりま魔法は重力操作があるね(企画段階では精神ハックや時間停止カッコ自分も停止なんて案があったものの描写が面倒のためカット)。小動物の仕事はコバンさんに任せよう。」
(ラ)「あのムキムキの髭面の中年オヤジにですか?」
(キ)「ステッキの方は鉄パイプじゃ不満?」
(ラ)「あのね・・・それじゃ私たちは魔法少女ではなくゴスロリスケバンに改名した方がいいのでは?」
(キ)「エヘヘ・・・まあクレームは最終回が終わってからで。」
(ラ)「キリマ君・・・悪いことは言わない。この物語作るのをやめてもっと友達を作りなさい。」
(キ)「・・・善処させていただきます。」
(ラ)「貴様は日本の政治家か!全く反省してないな!」
(終劇)
これからもラブカ他KAT(カット)の皆さんの応援4649
7-1濃霧 寝てしまう
ある日の夜明け、太陽が少しだけ地平線から顔を出すものの多くの人々はまだ眠っている。しかし、とある道を見てみると人が全くいないわけではない。早朝から仕事を入れられた労働者、前日に飲み過ぎて家に帰り始める飲んだくれ。そんな中一人の男が深呼吸をする。すると、急に頭から血の気が引いて倒れて深い眠りについてしまった。それを見かけた別の人がその男に近づくと同じように頭から血の気が引いて倒れる。なんと、二人の血糖値は恐ろしいほど低くなっていた。
二人が動かなくなると肝臓の様な胴体と二本の大きなカニの様なハサミを持つ枯獣(カリデュー)コウヘンが現れる。男二人はこの枯獣が吐く高濃度インスリン(肝臓で分泌されるホルモンの一種、血糖値を下げる等の効果がある)ガスにやられたのだ。コウヘンは男の片方をハサミで口の前に運ぶと食事を開始するのであった。(コウヘンの口の周りにははカニのように足の様な物体がついていてこれを使って獲物をちぎりながら食べる)
KAT(カット)本部の施設内では警報が鳴っていた。慌ただしく起きたばかりの職員や魔法少女達が動き回る。
「第一種戦闘配備第一種戦闘配備、戦闘職員(自分で戦いにはいかないオペレーターのこと)及び魔法少女はポジションBへ、繰り返す・・・」
「ナマコ、ノコギを起こしてこい、あとシイラ(彼女さん実はアフリカ系黒人と東アジア人のハーフ、名前だけ2-3に出てきたけど覚えてる?)もだ。」
魔法少女達は会議室に集められる。ポインターを持つコバンは枯獣(カリデュー)の形態についてと高濃度インスリンガスを放つことを説明する。すると、シュモクが発言する。
「ということは、今回私達はガスマスクを装備して出撃するってことですか?」(活動するために大量のカロリーを必要とする魔法少女は同時に大量の酸素も欲する、だったらボンベ背負って戦えって?アクロバット等に支障が出そうだし見栄えも悪そうなためこの案はボツにした)
「だったらアドレナリン(副腎から分泌されるホルモンの一種、インスリンとは反対の血糖値を上げる効果がある)でも注射する?」
「そんなの危ないよ、チューブ入りの練乳咥えながら戦えばいいのよ。」
「え~喉に刺さっちゃうから飴でもなめとけばいいじゃん。」
「それはきっと喉に詰まる、ってより甘いのやだー」
「黙れ!貴様らは最近たるんどる。警報聞いて起きないばかりか会議の時間を長引かせおって。作戦はこれだ。風下から攻める。」
(ラブカ)「私達に死ねと?」
「・・・風上だ・・・貴様らとっとと出撃の準備をしろ。」
(一同)「了解!」
魔法少女達は小隊ごとにヘリコプターに乗りその中で戦闘服に着替えることになった。ラブカがヘリに足を踏み入れようとしたときにナヌカが後ろから手を肩にのせながら話しかける。
「一人奈さん、絶対に生きて帰ってきてください。あなたはある意味魔法少女の希望ですから。」
「大丈夫ですナヌカさん。それよりも隙を見てイルカさんと接触してください。彼女は大切な情報を持っています。」
「分かったわ。いってらっしゃい。」
ヘリに乗り込むとラブカはすぐに着替えを開始する。着替え終了後彼女は不快な気分だった。
「うーきつい、これは拘束具か?」
「本当にすまなかった、謝る。」
「まっまさか鈴木さん着替え中の会話はすべて筒抜けってわけですか?知らなかった。」
「ラブカ知らなかったじゃ済まないよ。私達のガールズトークは全て本部のエロオヤジどもに聞かれてたって訳よね。セクハラよねこれ。」
「しっ心配はいらん、話を聞いてニヤニヤしているのはフカぐらいだ。」
「え~おっさんだってこの前アンボイナ小隊の話聞いて嬉しそうな顔してたじゃないですか。」
「いいから今は作戦に集中しろ、ヒレ状況は。」
「今のところは特に異常なし、部長とりあえず後で謝りましょう。」
ヒレはニコニコしながらそう答えた。コバンは頭を抱えながら大きなため息をついた。その間にヘリは現地に着き魔法少女達はピストルとサバイバルナイフだけを装備して(別に素っ裸で武器を持つわけではない、ちゃんと戦闘服は着ている、男子諸君はそんな妄想を抱かないように)それえぞれの小隊が集まる。そんな中エイがラブカに話しかける。
「ラブカ先輩(彼女は実は十五歳でラブカよりも一歳年上である、しかし魔法少女としての活動を始めたのはラブカが先)今回も生きて帰りましょう。」
「あっ、どうも。」
エイは少し悲しそうな顔をしながら仲間と共に市街地に入っていく。ラブカはエイの態度に少し違和感を覚えた。だが、少し考えてみると自分はここ最近イルカとばかり話してエイとは久しぶりに話したことに気づく。けれど、今は人間関係ではなく作戦に集中することにした。イカルンジ小隊はすぐに小走りでガスを浴びて倒れた六人の民間人を助けに向かう。
「コバン君、盗聴の件魔法少女達を黙らせてあげようかしら。」
「倉道さん、遠慮しておきます。これは私自身が招いた事柄なので。」
悔しそうな顔をする倉道そんな中フカが情報を入れる。
「枯獣がイカルンジ小隊のターゲットに接近しています。」
「P07(ラブカ)、次の角を左に曲がれ、それから二つ目と三つ目は右だ。」
「了解」
すると、倉度は嬉しそうな顔をしながら
「これなら接近戦になりそうね。」
イカルンジ小隊は最後の角を曲がるとラブカが左手を上げて二人を止める。耳を澄ますと枯獣の鳴き声と生々しい食事の音が聞こえた。
ペチャッパキッマグロウマイナーマグロウマイナー
ラブカはシュモクに角から敵の動きを覗くように指示する。シュモクはすぐに敵を発見して左手でキツネを作る(敵を発見したという合図、3-1にもでてくる)った後に五人が無事で一人が捕食されていることを手振りで伝える。
「私とノコギは2人ずつ救出する。シュモクは一人運んで空いた手にピストル持っといて。敵が食事を終えたら行動開始。」
敵が一人目を食べ終えると三人は敵の前に飛び出してラブカとノコギが両脇に眠る民間人を挟む。シュモクが少し遅れて一人を救出すると敵に向けて三発発砲する。
「バカッ!挑発してどうする。逃げるぞ。」
三人は回収班のいる方向に走り出す。
「シュモクいいな~ショタっぽい(幼顔ってこと)中学生とか。私なんてキャリアウーマンとギタリストよ。」
「え~ラブカと比べたらましじゃん、中年オヤジ二人とか、へっへっへ危ないシチュエーション。」
「さて私達に無駄話をする余裕があるのかしらね。奴は後ろから来てるわよ。みんな昏睡状態だから荒く扱えるのはありがたいけど。」
ラブカはそう言うと民家の屋根に飛び乗る。シュモクとノコギも着いていくが三人ともおかしなことに気づく。なかなか回収班に接触できない。片手の空いているシュモクは無線のスイッチを入れて本部と通信をする。
「こちらM11(シュモク)回収班はどこに?」
「すまない、枯獣と接触させないために後退させているところだ。他の魔法少女の手も空いてない。だから力ずくでも枯獣を止めていてくれ。」
無線の向こう側にいるコバンは申し訳なさそうな顔をしながらそう答えた。一方ラブカはすぐに行動に出た。
「シュモク、ノコギもう一人ずつ持って。ここで私が敵を止めておく。」
ラブカは立ち止まってから持っていたオヤジ二人をシュモクとノコギにパスする。
「死亡フラグだ。さよならラブカ。」
「バカッ!貴様ら、死ぬ前に助けに来い!」
7-2朝襲 モーニングレイド
太陽もまともに登っていない明け方。枯獣(カリデュー)コウヘンの機嫌は上々だった。なぜなら、エサとなる人間が六人も手に入ったからだ。よし、こうなったら一人一人ゆっくりと味わって食べよう。彼(?)は一人目をおいしそうに平らげる。それから次の人間に手を出そうとしたとき突然謎の三人組が人間五人を持って行ってしまった。もちろんコウヘンはエサを取り戻そうと三人を追うものの銃や障害物に邪魔されて三人組を見失ってしまった。だが、彼(?)はあきらめずににおいを頼りに進む。すると、やがて突っ立っている三人組の一人を発見する。こいつめ!コウヘンはラブカを羽交い絞めにする。ラブカは一瞬慌てたもののすぐに我に返る。
「いいいから私を置いていけ!」
「ラブカ無理しないで、シイラに追いつかずとも私のガンのセンスは№2よ、枯獣だけを撃つわ。」
シュモクは救出中の人を地面に置くと立てひざで銃の狙いをつける。さらにラブカに注文を付ける。
「ラブカ、ちょっと右に傾いて(魔法少女間では指示を受ける方の人に合わせることになっている)・・・やっぱ左・・・右・・・もうどうしていつまでもタイタニックやってるのよ!」
「逆ギレかよ、ったくあなた達はこの前のお仕置き途中で逃げたわね、生還したら続きやろうかしら。」
「わっ私たちは只今より人命救助を優先させていただきます。」
シュモクとノコギは五人を担ぎながら去っていく。本部ではコバンたちがなんと不器用な連中なのだと呆れていた。二人が見えなくなるとラブカは敵の股関節をかかとで蹴り上げた後にエルボーで羽交い締めから脱出する。彼女は例のファイティングポーズをとると枯獣もハサミを高く掲げながら威嚇のポーズをとる。二人(?)は間合いをとりながらジリジリと距離を縮める。
ある程度まで近づくと枯獣はハサミを時速140㎞で振り回しながらラブカに襲いかかる。彼女はそれをすばやく避けながら時速180㎞の張り手や時速200㎞のキックで応戦する。(いつもより速いがラブカの筋肉は前よりも落ちているため威力も落ちている)さらに隙をついて敵のハサミをつかむと時速170㎞の背負い投げと巴投げを決めて敵を5mほど飛ばす。
近接戦では自分が不利と見たコウヘンは高濃度インスリンガスを噴射する。するとラブカは軽く助走をしてから宙返りをしながら枯獣の頭上を飛び越える。彼女は再び敵に接近しようとしたがそれは間違いであった。なぜなら彼女は先ほどのジャンプで敵よりも風下に来てしまったからだ。
「あっ飲んじゃった…」
何とかガスが充満する空間から逃れたラブカであったがガスを吸い込んでしまったせいで頭がボーっとしてさらに体が重い。枯獣はラブカに駆け寄ると再びハサミで彼女を攻撃する。彼女は一発目を両腕でガードして二発目を避けたが三発目に左腕に切り傷を作ってしまう。
「きっ切れてる・・・おのれインスリンめ。」
全身にインスリンが回ってしまいまともに動くことができなくなったラブカにコウヘンは体当たりで突き飛ばす。うつ伏せで地面に叩き付けられた彼女は頭を上げようとするが敵に頭を踏まれてしまう。敵は更にハサミを彼女の美しさとたくましさを兼ね備えた首筋(作者はラブカを萌えキャラにするつもりはない、しかし首筋だけはどうしても譲れない、彼女の首筋は日本国内で三番目に綺麗なことにしておこう)めがけて振り下ろそうとする。
「ティア!」ゴッガッシャーン!
コウヘンが8mほど飛ばされて民家の窓を突き破る。人命救助を終えて援護に来た赤い魔法少女シュモクが敵に跳び蹴りをお見舞いしたのだ。気の早い彼女は敵が立ち上がるとすぐにパンチを試みるが敵はハサミでそれを避ける。シュモクとコウヘンは互いに体勢を立て直すとコウヘンは再びハサミを時速140㎞で振り回しシュモクは中華拳法のような動きでそれを防ぐ。ラブカほどではないが敵と互角以上に渡り合う。
一方ノコギはラブカの介抱に向かう。ラブカの切り傷に包帯を巻き終えると高濃度栄養剤を注射する。
「ラブカ無事?」
血糖値が正常になり目が覚めたラブカはノコギの質問を無視してガバッと立ち上がると左拳を胸の前においてからひじを伸ばして拳を地面に向けプレグナントをかけてからコウヘンに向かってとびかかる。
「シュモクどけー!」
ラブカはコウヘンの胴体に抱き付いてから自分の重力の量を増やして敵を地面にたたきつける。彼女がいったん敵から離れるとシュモクが敵の体を持ち上げてバックドロップをかけた後にノコギが一本背負いを決める。イカルンジ小隊の三人は代わる代わるコウヘンを持ち上げては投げ飛ばす。三分後、命の危機を感じたコウヘンは火事場の馬鹿力でノコギを突き飛ばして投げ飛ばし地獄からの脱出を図る。しかし、ラブカに飛びかかろうとしたところ巴投げをされて今日四十回目の地面との衝突を味わう。
フラフラになって苦しんでいるコウヘンに対してラブカはハサミを左脇に挟みこむ。敵を固定するとパンチをうつ。続けざまに時速180㎞の膝蹴りを決めるとついにコウヘンは気絶してしまう。ラブカはピストルを手に取るとヒクヒクと体を痙攣させるコウヘンに向かって発砲する。
「ボヤボヤするな、手伝え!」
「はっはい。」
シュモクとノコギも加勢して敵にピストルを発砲する。二分後全ての弾を撃ち尽くしたラブカはコウヘンの体を蹴飛ばす。
「やったか?・・・よしやった殺ったぞ。本部こちらP07(ラブカ)、目標は沈黙、回収班をお願いします。」
「今日も随分と派手にやったな。(本編に描かれていないだけであってヒョウモン小隊やアンボイナ小隊もそれなりに枯獣を倒している。)よし、今日はゆっくり休め。」
コバンはすばやく指示を出して回収班にうっかりガスを吸い込んでしまった魔法少女や民間人の回収を急がせる。回収班を待つイカルンジ小隊の三人は枯獣の前で話し合う。
「あーあぐちゃぐちゃ。」
「それにしてもどうして枯獣ってこう一体一体がこんなに形態が違うんだ?そもそもどうやって増えているのかしら。」
「へっ?」
「私はこれまで枯獣の生殖器官ってものを見たことがないわ。」
「単為生殖(配偶子を必要としない生殖方法、めちゃくちゃ簡単に言うと個体が単体で自分のクローンを作っていくってこと、えっまだ難しい?)って可能性は?」
「何それ?おいしいの?」
「ちょっとノコギ、それ来週のテストの範囲内では?」
イルカから話を聞いたナヌカは頭を抱えていた。自分が考えていたよりも魔法少女の立場はまずいものであると感じたからだ。
「KAT(カット)が枯獣を作っているとしたらその目的は心の浄化・・・」
「あのナヌカさん顔色が悪いですよ。」
「そうね、少しだけ気分が悪いわ、流線さん悪いけど付き合って、生まれるかも。」
7-3中毒 カフェイン
この世界は何でできているかだって?おそらく中気、陰気、陽気、ってものからなっているのだろう。じゃあ中気って何だって?存在そのものの事かな。でもね、存在がただ存在するだけじゃ何も起こらない。空っぽの空間と物体の違いすらつかない。そこで必要となるのが陰気、いわゆる質量やヒッグス粒子(2012年に発見された粒子、どうやら物体はこの粒子のおかげで質量を持てるらしい、作者はこれが軍事利用されることを予言する)といったところかな。これさえあれば世の中に星とか銀河が生まれてくるだろう。けどね、それをほったらかしにすると世の中の物質は全て一つの場所に集まってやがてブラックホールを作って世界はおしまい。そこで必要となるのが生命の力=陽気。重力に逆らい世界を作り替えていくもの。(しかし、陸に上がったイワシは重力に耐えることができない、自らの質量によって潰れてしまう)
中気、陰気、陽気。この三つがそろって世界は初めて世界として成り立つ。そして、この三つは人の中にも存在する。人の体が存在すればまず重力によって引っ張られたり楽な方向に自分を持っていこうとする。また、そんな陰気を拒んで立ち上がり、自身の力でもっと高尚な生き方をすることもできる。
ところで吾輩は読者に何を伝えたいかって?それは魔法少女の力の源についてだ。彼女たちは他の生き物の何十倍もの陽気を持っている。そんなものをどこから持ってくるのか。その答えは尊い命をたくさん犠牲にして・・・
「まるで肉のじゅうたんだ。」
「でも、貴重なサンプルよ。」
「ナヌカに対しては何も感じないのか?」
「そうじゃ、おまえさんも女じゃろ、励ましの言葉の一つや二つ。」
「女だからって差別しないで欲しいわ。私は合理的なのよ、そもそも人の命の一つや二つは地球よりも確実に軽いわ。目の前の人の命が一番だなんて考えが自然破壊や貧困問題を生むのよ。ましてや一つの命の喪失を悩んで大騒ぎして時間を無駄にしている奴らこそ命を粗末にする人間のクズね。」
コバン、チョウ、倉道等のKAT(カット)の上層スタッフたちは生まれたナヌカの子供の写真を囲みながら会議を開いていた。写真に写っていた子供は人の姿をしていなかった。血と肉で形成されたゲル状の物体の中に心臓、胃等の臓器が浮かんでいる。スタッフたちはこの写真をどう政府に提出するかということのついて話し合っていた。
政府に対してKATはまず魔法少女は二世を作ることができないことを伝えなくてはいけない。問題はこれから魔法少女のインフラの運営方針をどうしていくかといったことである。倉道等の事務系の人々はインフラの規模を拡大していつ魔法少女が死んでもすぐに代わりが用意できるようにすると主張する。一方コバン等の現場で魔法少女に指示を出すスタッフはインフラの規模を縮小して人類そのものが魔法少女に頼らない生き方をするべきだと反論している。
「やはり大人は子供を守っていかなくてはいけない。子供に守られていたら話になりません。第一、手当たり次第に子供を加工しても魔法少女になる保証はありません。」
「それは違うわ。今までのデータのおかげで東アジアやベトナムに適合者が多いことが分かったのよ。コメを主食としてきた親の子供が適合者になるのよ、多分。」
「だからといってただでさえ少子高齢化にあえいでいる東アジアから女性が消えたら世界平和どころじゃなくなる。」
「そうならないためには難民保護省に規制緩和(規制のせいで自由がない、金儲けができない、そんなことにイライラして奇声をあげる暇があったら考えてみよう、それが何のためにありあるからこそどんな害を防いでいるのかと)を頼んでアフリカ難民を日本に招待するのよ。」(そんなことを言ってろくに給料を与えなければ奴隷貿易の再来だ)
そんなやり取りを二時間ほど続けたもののなかなか決着がつかない。いったん会議を中断してスタッフたちが休憩をとろうとしたときギンがあることに気がつく。
「今頃どうかと思うが自分の子供を見てしまったナヌカの処分はどうしますか?魔法少女達にこのことが知れ渡ればこの先まずいのでは。」
魔法少女の製造方法は生殖器官にマイクロマシン(SFではおなじみ、めちゃくちゃ小さい機械のこと)を埋め込み(腹にメスを入れるわけではない、蚊の吸い口のように細い針の先にマイクロマシンを付けて目的の器官に埋め込みといったもの)卵子に送られるはずの陽気をその他の器官に送るといったものである。そうである。このことが現役の魔法少女に知れ渡れば自分達の非人道的な行いがばれてしまう。
彼女たちが子供のうちは適当な嘘でごまかすこともできたが今となっては自我を獲得してしまった(いい表現が見つからなかった、とりあえず自らの意志で自分のやるべきことを判断する力といったところか?作者を含めた最近の日本人には抜け気味)個体が情報を外に漏らして逃亡してインフラを水の泡にしてもおかしくない。
そんなわけでインフラ拡大派と縮小派は互いに歩み寄る。
「鈴木部長、ここは一時手を組みましょう。今までの成果を崩されえたらたまったものじゃないわ。」
コバンは仕方なく首を縦に振る。(日本やアメリカではYESの意味だが国や地域が違うとニュアンスが変わることがある、例えばブルガリアで首を横に振るとYES、ついでにブルガリア人にその話をしたところ首の動きよりも振っている際の表情に注目するらしい)こうしてKATは政府への報告を三日遅らせることと健康診断を理由に魔法少女達をナヌカの下に行かせないことを決定した。
コウヘンとの戦いから二日後。ラブカは自分の部屋で缶コーヒーをすすりながらぐったりしていた。高濃度インスリンガスを吸いつつコウヘンと近接戦闘をして身体的に疲れていた。さらには健康診断やら何やらでナヌカの様子を見に行けないどころか電話一つできないことは彼女をいらだたせた。唯一ありがたいことといったら明日まで訓練がないことぐらいかもしれない。コーヒーを飲み干した彼女はもう一本の缶コーヒーに手を伸ばす。そんなときイルカが外からドアをノックする。
「ラブカちゃん入ってもいい?」
「いいよ。」
ラブカの部屋に入ったイルカは一瞬固まった。まず、彼女の部屋がやたらとコーヒー臭い。ごみ箱を見ると無数の缶コーヒーとコーヒー用フィルターが三枚。ラブカの黒いシャツにもコーヒーと思われる染みがついている。ラブカはそんなイルカに缶コーヒーを勧める。だが、イルカは断ってからゴミ箱を指さしながら質問した。
「これって何日分?」
「え~と九割は今日分かな。」
「じゃあ気分転換に紅茶でも飲む?」(紅茶に含まれるカフェインの量は同量のコーヒーよりも多い)
「ラブカちゃん、お願いだからミネラルウォーターで。」
それからイルカは本題を話し出す。ナヌカが病院の何号室にいるかということ等をつたえる。それから約二時間後、魔法少女達は招集をかけられる。枯獣がナヌカの入院している病院に出現した。
8-1触手 探し物
難民救済センター所属病院の二階から上には全く人がいなかった。人々は一階と屋上に密集していた。理由は調理室から火が出たため患者と職員を避難させるということになっている。ところが、それは嘘で本当の理由は病院に枯獣(カリデュー)が出現して人を襲っていたためである。枯獣を倒す役割は魔法少女が果たす。しかし、この存在は世間に公表することができないため非意図が密集する病院に堂々と乗り込んでいくことができない。そこでKAT(カット)が考えた作戦は比較的背の高いエイ(言い忘れていたが彼女はロシア系と東アジア系のハーフ)とシイラに病院の職員の制服を着せてカバーを被せたイカルンジ小隊を台車で輸送するといったものであった。二人は十分ほどで台車を定位置まで運び終える。
「先輩、シュモク、ノコギ着きました。」
「今のところ死者の除けば人間はいないようです。」
「ご苦労様、二人はすぐに退却して。」
二人が退却するとラブカはシュモクとノコギに指示を出す。
「二人とも悪いけど私はこれから命令違反するわ。私の無線は壊れたことにしといて。」
「えっ、枯獣はどうするの?」
「二人でしばらく押さえてて。私はナヌカの部屋に向かうわ。取るものとったら戻ってくるから。」
「そんなこと言って逃げるつもりとかないよね。それと私は陰謀説なんか信じてないから。」
「ノコギ、聞いてあげようよ、ラブカは前回一人でカニ野郎と戦ったのよ。」
それを聞いたラブカは何も言わずに敬礼をしつつも会談に向かって走りながら無線の電源を落とす。残された二人は本部にラブカの無線が壊れたとうその報告をした後枯獣のいる場所に向かう。敵がいるフロアについた二人はすぐにサブマシンガンを構える。ノコギが左手でキツネを作る。(敵がいるって相図)
「シュモク、左側に触手が。」
「えっとノコギ、撃たないで。あれを伝っていけば敵の本体にたどり着けるわ。」
そういうが早くシュモクはダッシュ&スライディングで触手をつかむ。(読者諸君は知らない生物に遭遇した時には無闇に触れないように、綺麗なやつほど危なかったりする)さらにノコギがシュモクの足首をとんでもない力で引っ張る。
「抜ける抜ける、ちょっとノコギ!?」
「助けて~さらわれる~触られる~」
ノコギは敵の別の触手に足首を引っ張られながら泣きそうな顔をしていた。
一方ラブカはナヌカがいるはずの病室の前についていた。部屋のドアは破壊されていて簡単に中に入ることができた。部屋の中ではベッドがひっくり返されていた他床には皿や病人服の切れ端が散漫していた。おそらくナヌカは枯獣ともみ合いになったに違いない。
(やはりナヌカは何かまずいものを見た。その結果枯獣を使ってKAT(カット)に消された。イルカの伝言が正しければベットのカバーの裏か、今度はシュモクやエイや他の連中にも伝えておくかな。やっ待て、人が死んだ割には冷静だな私、いつからこんなに無頓着になったのかしらサイコパスではありませんように。)
ラブカは倒れたベッドもカバーをずらすとA4サイズの封筒を発見する。彼女はそれを戦闘服の中に突っ込むとシュモクたちの援護に向かった。
「やっぱりラブカは私たちを見捨てたのよ!」
「オンドゥルルラギッタタンデスカーッテ?ゴモアクモーモノ!」(本当に裏切ったんですかって?この薄情もの!)
シュモクは前方の三本の触手を両手とかみつきでとりあえずブロック。ノコギは足にからみつく触手に引っ張られつつシュモクの両足をつかんで耐えていた。(敵はシュモクとノコギを別々の獲物と把握しているため自分同士の綱引きをしていることに気が付いていない)ノコギの招いた災難に二人は苦しんでいた。
「オコギーは~な~せ~。」
「い~や~だ~・・・あっそうだ、シュモク案があんだけど。」
「トットットハレッ!」
するとノコギは全力で息を吸うと渾身の力で叫ぶ。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!あああああああああああああああああ!!あああああああああああああああああああああ!!!!・・・・・・・ああああああああああああああああああああああ」(マジな緊急事態に遭遇して助けが欲しい時「助けて」ではなく声が長続きしてなおかつかむ恐れのない「うおー」「あー」と叫ぶのが無難、ついでに作者が交通事故に遭いそうになったときに叫んだ単語は「ウソだー!」である)
三分後
「ああ・・・あっああ・・・」
「アダウトヒデオジャニャインダ、アエルナ、モットサゲレー。」(アダルトビデオじゃないんだ、喘ぐな、もっと叫べー)
ひたすら叫び続けたノコギは頭痛とカラカラに乾いた喉のせいで精神が飛びそうになっていた。シュモクも腕とあごの筋肉に乳酸がたまってしんどい状態にあった。その時、少し遠くから希望の音が近寄ってきた。カンカンと鳴るラブカの階段を駆ける音だった。数十秒後にサブマシンガンを構えたラブカがシュモクとノコギを発見する。
「SOS聞こえたわ。」
「八フヘヘー。」(助けて~)
「二人ともいい?言うことを聞いて、ノコギは手を放せ!」
そう言うと同時にラブカはシュモクともみ合う触手に銃弾を浴びせシュモクを開放すると手を放して敵のいる方に引っ張られていくノコギに走って追いつくとシュモクの時と同様に触手に銃弾を浴びせてノコギも開放する。(ラブカの台詞終了からここまで約十秒)彼女は走ることをやめずに退却する触手を距離をとりつつも追いかける。しばらくすると彼女と触手はパッと止まる。
ついにラブカは枯獣(カリデュー)ヌケール発見したのだ。全高3mはあるアンモナイト(古代の海に生息していたイカやタコの仲間、実はオウムガイの先祖ではなくオウムガイから進化して生まれた生物である)のようなとぐろを巻いた殻。その殻の下の方には黄色い目をしたカメのような頭と数十本の触手が見える。(ヌケールの触手は殻の中に巻尺のように収納されている、また抜けてもサメの歯のように新しい触手が生えてくる)ラブカの姿を見たヌケールは触手で万歳をして自分の体を大きく見せて威嚇行動をする。
対峙するラブカとヌケールは互いに相手の動きを見つつジリジリと近づき合う。そこにシュモクが駆けつけてくる。敵に姿を見るなり彼女はサブマシンガンを三連射する。弾のほとんどはヌケールの殻に命中する。これに驚いたヌケールはサルノコシカケ(木に生えるキノコの一種)のような四本の足で非常階段を下って逃げていった。
「見たか私のハットトリック。枯獣もハッとしていたね。」
「実に素晴らしいよシュモク君、全米が泣くくらいにね。で、枯獣はどこに向かったのかしら?」
「え~と、階段で下の方に。」
「じゃあこの病院の下では何が行われているのかしら?」
「あー人がっ、・・・ラブカ~ごめんなさい。」
「私に謝るなこのおっちょこちょいが、すぐに本部に連絡してヒョウモン小隊に協力を要請して。」
慌てて本部と通信するシュモクであったが本部からの返事はひどいものであった。
「悪く思わないでくれ。他の場所にも枯獣が出現したから今応援を頼めるのは研修組だけだ。」
「こちらP07(ラブカ)武器の方なら用意できますか?」
「ああ、だいたいの物はそろっている。おやっラブ、P07(ラブカ)無線が回復したか。」
「これからM13(ノコギ)をそっちに向かわせます。対戦車ライフルとバズーカを所望します。」
通信を終えるとラブカとシュモクはバテバテのノコギを発見して先ほどのナヌカの封筒をノコギに渡す。
「聞いたわねノコギ。はってでも取りに行ってもらうわ。それと封筒は大人の目に触れさせちゃだめよ。」
「い~頭痛が痛いのに(この日本語間違い)・・・分かった分かった行くってば。」
ノコギがノコノコと階段を上がっていくとラブカとシュモクは動かないエレベーターをこじ開けてヌケールよりも一足早く一階に行くのであった。
8-2葬儀 さよなら
人は生きている間に多くの他の命を犠牲にする。蚊や蠅をつぶすことはもちろん家畜や魚を殺してタンパク源を確保する。植物の命もその犠牲の中に含まれる。葉物はもちろんイチゴを咀嚼しようものなら何十もの未来の可能性=種がパスアウェイ。そんなことを意識しながら生活をしていたらろくな生活ができない。(熱心なゾロアスター(拝火)教徒が水の中に微生物が存在することを知って水を飲まなくなり死んでしまったというケースが存在する、ゾロアスター教の教えは他の命を奪わないこと)ところが、人が死ぬと周りの人は目の色を変えて弔おうとする。動物園のライオンや水族館のイルカが死んでも似たようなことをする。だが、あきれたことに自分とは全く関係のないものや逆にあることやいることが当たり前過ぎる存在に対しては何のためらいもなしに「死ね」の一言・・・
今日のKAT(カット)本部は悲しい空気に包まれていた。魔法少女や一部のKAT職員は黒い服を着て葬式を行っていた。式の最中みんなの動きは統一されている。しかし、お通夜になって食事が始まった途端に動きはバラバラになる。惜しい人を亡くしたといって泣いている人がいれば仲間同士世間話を初めて爆笑している人をいる。(作者は別に葬式中に笑うことをおかしいとは思っていない)
ラブカは一人静かに食事をしていた。さらに載っていた料理はすぐに片付き彼女は立ち上がって自分の部屋に帰ろうとする。すると、彼女の食事の席の向かい側にいたエイが彼女を引き留める。
「先輩、もっとゆっくりしていきませんか?それにしても倉道(クラド)さんってひどいですねこんな時も仕事だなんて。」
「ごめん、純粋に一人になりたいのよ。また今度ね。」
ラブカは不満そうな顔をしながらKAT(カット)本部内の式場を後にして自分の部屋に向かう。彼女の気が重くなっている理由は三つある。一つ目は彼女は過去に何人もの仲間の死を見てきたので葬式にはうんざりしていた。二つ目はナヌカが死んでしまったとなると魔法少女はもう労働組合がなくなりお先真っ暗であった。下手をすれば今度は自分が倉道に抗議に行くことになるかもしれない。三つ目はナヌカのつかんだ情報の入った封筒が没収されてしまったことであった。
彼女が自分の部屋に帰る途中ラウンジの前を通り過ぎた際に何かに気がついて引き返す。なんと魔法少女指導部部長コバンが彫刻「考える人」のようなポーズをとっていた。ラブカの存在に気づいたコバンは彼女の顔をみる。
「ラブカ、おまえ何か悩み事があるのはいつものことか・・・しかし、今日は額にしわが寄ってるな。」
「そうですか。」
「まあ、屋上にでも行ってから話し合わんか?星でも見ながら。」
「あの、私は自室に戻る途中で。」
「そんな堅いこと言わないで年寄りの長話でも聞いてくれないか。そっちの話から先に聞いてやる。」
そんなわけで二人はKAT(カット)本部ビルの屋上のベンチに腰を掛ける。残念ながら空は曇っていて星はあまりよく見えなかった。しかし、二人にとってそんなことはどうでもよかった。ラブカは早速話を始める。
「私はこれまで何度も同僚が死ぬところを見てその葬儀にもよく出ました。ところが、枯獣は何匹殺されても誰にも弔ってもらえないことをおかしいと思ったんです。けど、生物兵器である魔法少女がそんなことを考えていいのかと。愚問ですよね。」
それを聞くとコバンは目を閉じてうんうんと五回うなずく。それから目を半分ほど開く。
「そんなことはない。俺はお前がそんなことを考えていて、なおかつそれを口に出してくれたことをとてもうれしく思ている。」
「なぜですか?こんな非合理的な。」
「だからこそだ。オレにもそういう経験がある・・・これはざっと十年ほど前の話だったかな。俺が自衛隊として中東で人殺しやっていたことの話だ。」
ラブカは首をかしげた。十年前のことはわかるはずがないが彼女はそれについての資料を読んでいて 事実だけは知っていた。十年前日本は独裁者を倒すために国連軍と共に中東で戦争をして多くの人命を救ったと書いてあった。
「鈴木さんは人命救助に行ったんじゃないんですか?」
「表向きはな、しかし人間は銃を持った途端にそんなことは忘れてしまう。オレだってそうだった。確か流れ弾を覗くと14人ほど葬ったかな。うち13人は正面からやり合って殺した。問題は残りの一人だ。」
「もしかして罪もない民間人をですか?」
「いやっ、仲間をだ。」
「裏切られたんですか?」
「それはない、彼はいつものように『お国のためにお国のために。』と言っていた。その時俺が所属していた部隊は孤立してしまって7人で敵地を彷徨っていた。3日もすると水も食料も底をつき死神の足音ってやつが聞こえてきた。」
「それから?」
「仲間を探して3日目にとある村にたどり着いた。そこでいろんな資料を集めるために民家の一つに侵入した。言葉なんて通じそうもなかったから中にいた女を銃で脅しながら水や食料を頂戴した。」
「・・・」
「ところがそれが他の村人にばれてしまって7対30ぐらいの銃撃戦になってな。むろん勝ち目はなかった。最終的には彼と俺だけが残った。彼はおそらくやりたいことやってから死のうと考えたんだろう。民家の中にいた女性を襲おうとした。」
「鈴木さんは?」
「オレはなぜここにいるかを考えなおした。3秒で出た結論は今苦しんでる人を守るためにとね。そこでオレは女に覆いかぶさる彼の頭を撃ち抜いた。それから命が惜しかった俺は武器を捨てて投降した。本当は手榴弾使って自爆してでも一人でも多くの敵を殺すべきだったかもしれない。」
「ところで私の話と鈴木さんの話の関連性って?」
「まあ急かすなって。その後オレは彼を殺したところを敵に見られた成果殺されずに捕虜になって数か月後に日本に帰れることになった。オレは軍人としては失格だったかもしれない。確かに軍にいる人間は冷酷な殺人マシーンであることが理想だ。しかし、争いが終わった途端にそんな人間は社会からのけ者にされる。」
「魔法少女もですか?」
「そうだな。おまえは幸い相手想いつつもやる時はやるからな。オンオフがしっかりしている。出来ている、人間として。」
コバンはラブカの頭をなで始める。
「どうだ?ぼくのことをお父さんと呼んでくれないか?」
それを聞いたラブカは左手で頭をなでるコバンの手を振り払う。
「13回目の拒否。それを言うためにここまで来たというなら私は帰ります。
「・・・帰ってもらっては困る。本題は別にある。枯獣(カリデュー)は人間だ・・・」
8-3接近 ドッグファイト
枯獣(カリデュー)ヌケールはサルノコシカケのような足で難民救済センター所属病院の階段を這うような動きで下っていた。途中床に落ちていた患者の食事のサンドイッチを発見する。彼(?)は触手でそれを口に運ぶ。確かに人よりはいい味がするが心は満たされない。やっぱり人間を食べたいと思った。それにしてもさっき食った人間は体積の割には重かったなあ。そんなことを考えつつもヌケールは階段を下っていくのであった。
一方ヌケールを迎え撃とうと病院の一回で吹き抜けで待ち伏せしているラブカとシュモクはそれぞれ大きな柱の裏に隠れている。無線通信にて
「ラブカ、本当に敵はここに来るの?」
「敵は逃亡を図った時に下に逃げていったわ。それに私達の後ろ500mほどには人が密集しているのよ。」
「要するに後ろにいる避難者をおとりに。でも、もし敵が窓から飛び降りたら…」
「その時は本部から連絡もらって走るまでよ。いざとなったら研修組に特攻させようかしら。」
約三分後ズーペッタンズーペッタン。ヌケールが一回に着き二人のいる柱のほうに向かって歩き出す。敵はラブカの予想どうりに柱の間を通ろうとするがシュモクの気配を感じたらしく彼女がいるほうにペタペタと進みだす。
敵が柱から8m離れた位置まで迫ったときラブカは手榴弾の信管を口で抜いてから敵に投げつけた後に柱の裏に隠れる。(魔法少女といえども手榴弾の爆風をまともに受けたら病院行きである、てかここ病院)爆風が止むとすぐにピストルを撃ちながら敵に接近する。(気を抜いてこの行動をすれば後ろ向きに転倒する恐れがある)敵の方はというと爆風をまともに受けて丸っこい殻を支点に後転するがなんとか地面に足をつけた後に触手を振り上げてラブカの進行を妨害を図る。彼女はピストルと蹴りでさらにシュモクが後ろからサブマシンガンで触手を弾く。
ラブカはご自慢の身体能力で敵に接近するとピストルのマガジンを交換してから(彼女達の使うピストルの弾数は15プラス1発である)銃口を敵のカメのような頭に向ける。ところが、敵は一瞬のスキをついて右腕に触手を巻き付ける。彼女はとっとと触手を振りはらおうとして注意散漫になる。敵はその隙をついてさらに彼女の左腕と首にも触手を巻きつける。(作者にとってヒーローとは孤独な戦いを繰り広げるものである、ところがこの作品の中ではリアリティーを意識したため複数の魔法少女が出てくることになってしまった、よって主役が主役としての仕事をするためには他のキャラクターよりも傷つき痛めつけられる必要があると考えた、少し後悔してるけど)
ラブカは仕方なくピストルを捨てると両手で首に巻き付いた触手を引きちぎろうとする。すると敵は触手を波打たせて彼女を地面に二度叩き付ける。さすがのラブカも両手を首に巻き付いた触手から離してしまう。敵はそんなラブカの両腕を下に、首を上に引っ張る。銃がジャムってあたふたしているシュモクにラブカは苦しそうに言う。
「シュモク・・・早く・・・このままだと・・・私の頸椎が脱臼してしまうっ。」
シュモクはサブマシンガンを捨てるとピストルを手に取ってからラブカに巻き付いた三本の触手を撃ち切る。解放されたラブカはせき込みつつも体勢を立て直すものの今度は上半身を拘束され再び地面に叩き付けられる。ヌケールは今度はラブカを捕食しようと触手をオスのクジャクの尾羽ように扇状に開いて口を露出させる。(ヌケールの口はイカやタコのように触手の付け根にある)
こんな趣味の悪い怪物に食われることになったらたまったものではない。(自分で言ってしまった・・・)ラブカは両腕がふさがっていたため足の力だけでヌケールの進行を止める。ところが彼女と敵の力の差はかなり開いているため彼女は押され気味であった。
「シュモクっ!」
「こっここからじゃラブカも巻き込んでしまうわ。」
「かまうな。私ごと貫け!我々は弾の一発や二発では死なない生物兵器魔法少女だ!」(そんなことはない魔法少女だって頭に銃弾を受ければ死ぬ)
「だからこそでしょ。私たちはいくら生物兵器であるとしても心があるのよ。」
「・・・」
「心があるからこそ仕事でなく友情を優先させられる。心があるからこそ他人の痛みがわかる。」
それを聞いたラブカは一瞬考えた。確かにこれまで自分はいかにして合理的に仕事を進めるか考えて生きてきた。できるだけ私情を挟まないように仕事を進めてきたわけだがシュモクの言葉とこの追いつめられた状況が彼女に考える隙を与えた。
(そうだ、今の自分のやり方は進化の余地を消している)(皮肉にもブラック企業等が進める効率化は社会の非効率化を生み出す、人間の体を見ても割と非合理的に見える器官がいくらか存在する、非合理的な要素は合理的な物体の中に必要なものなのかもしれない)
「シュモク、私は感動した・・・で、これから私にどうしろと?足がしびれてきた、食べられるっ!」
「こうなったら私も接近戦で!」
シュモクはピストルをホルダーに収めると(魔法少女の戦闘服には腰のあたりにピストル、スカートの下にナイフ用のホルダーがついている、ついでにサブマシンガンやバズーカは肩からかけるためのベルトがついているためホルダーはいらない)ナイフを抜いてからラブカの方に走ろうとする(戦闘目的でナイフを持つとき歯が小指側にあるようにする、歯が親指側にあると転倒したときに自分を刺してしまう恐れがある、かといって料理用のナイフを前者の持ち方をするのはただの中二病)もののラブカは反対した。
「待てシュモク!私は最後の手を使う。遺言はただ一つ・・・墓はいらない。プレグナントー!」
彼女がそう叫ぶと病院の窓から降り注いだ紫外線により彼女は青い光に包まれる。(ここは話を盛り上げるために後付設定をするしかない!魔法少女がプレグナントをかけると新陳代謝が良くなって汗をかく、さらには汗が気化してこのような現象が起こるってのはいかが?)力がみなぎった彼女は腕と足に力をこめて敵を押し返そうとする。
チーブチブチパン!
ラブカの上半身に巻き付けられたヌケールの触手は次々と根元から引きちぎられていく。彼女は体からすべての触手を取り払うと的にパンチや飛び蹴りをお見舞いする。(これまでは時速140㎞のパンチ時速180㎞のキックといった表現をしていたがこれ以上はやらないことにした、理由は作者が海に住むシャコという生き物のパンチ力のすごさを知ったからである、エビに似た外見を持つシャコであるが時速60㎞のパンチをはなつことが可能である、シャコがパンチを撃つと一瞬腕周辺の水が沸騰してしまう!要するにそれ以上のパンチを撃てる魔法少女の腕は戦闘中に沸騰してしまっても不思議ではない、しかも言い訳のための後付設定も思い浮かばない(涙)てなわけです)これはたまったものではないと考えた敵はカメのような首をひっこめてからふたを閉める。(ふたは普段首の付け根にある)するとラブカは敵の首のふたに手をかけてこじ開けようとする。腕の力だけではダメとみて敵の殻にも足をかけて恐るべき力で開こうとするが開かない。そこで彼女はナイフを取り出すとふたを数回殴って殻の一部を崩すと再びふたを引っ張って敵の首を殻の外に出す。(この間シュモクはサボっているわけではない、サブマシンガンを修理中)
無論敵は首を引っ込めて頭を守ろうとするがラブカはその前に右腕で首を締め上げて阻止する。彼女の腕はズブズブと敵の首にめり込んでいく。敵は苦しそうにキューキューと鳴きながら暴れだす。彼女はそれでも首を離さない。苦しさが頂点に達した敵は苦し紛れに彼女の首に残った触手を巻きつけて反撃に出る。
何とかあごを引いて首をガードするラブカであったが同時に彼女の首絞め少しゆるくなる。そのことによって元気になった敵は触手に力をこめる。ピンチに陥ったラブカであったが同時に対戦車ライフルを構えるシュモクを目にした。
ドン!ゴロン!
シュモクの撃った弾はヌケールの殻に命中して後ろに転がす。ラブカは開放されて咳き込む。
「お待たせーコホッ」
のどを痛めつつもノコギが武器の配達に戻ってきたのだ。彼女はシュモクの持つ対戦車ライフルの銃身を支えていた。敵は殻が割れてしまったが何とか体勢を立て直して立ち上がろうとする。それを見たラブカは叫ぶ。
「ノコギ、そいつをよこせ!」
ノコギはすぐにもうひとつの武器バズーカをラブカに投げ渡す。それを受け取ったラブカは立てひざになり(立てひざになることによって状態が安定するだけではなく爆風を受ける体の面積を減らすことができる)ロックをはずし引き金を引く。
ドン!ベチャッ!カランカラン
次の瞬間ヌケールの体は木っ端微塵に砕けて辺りに殻の破片や触手を撒き散らす。ラブカは左腕で頭を覆って脳を守る。おかげで頭部は無傷で済む。だが、左腕に細かい殻の破片が刺さる。爆風が止むと彼女は殻を抜きつつつぶやく。
「イタチの最後っ屁か・・・貴様も必死だったんだな・・・いやっまだ必死な最中か。」
ヌケールはまだ死んでいなかった。もう虫の息であったが必死に黒い亀のような首はシャクトリムシのようにはってラブカを目指して進む。彼女はバズーカを投げ捨てる。
「ノコギっそいつもよこせ!」
そういわれるとシュモクはグリップから手を離しノコギがラブカにライフルを投げ渡す。それを受け取った彼女は敵の頭を足で押さえてから零距離で引き金を引く。
ドン!ボスッ!ベチャッ
ライフルの弾が敵の頭を粉砕して床にクレーターを作る。煙が止むとラブカは無線で本部に報告をする。さらに敵を粉砕した際(一回目)に出てきたと見られる骨盤を拾い上げる。
「普通の骨盤より重い、これはナヌカのものか?」
「ナヌカさんが食べられた!?」
9-1事実 世界は平和に
月の出た夜、一人奈ラブカはKAT(カット)本部ビルの屋上のベンチにてKAT魔法少女指導部部長鈴木コバンの話を聞いていた。
「どういうことですか?枯獣(カリドゥー)が人間であるということは。」
「結論から言おう。枯獣は魔法少女同様に人間を加工して作ったものだ。大きな違いは魔法少女は生命の力『陽気』を放」出すように枯獣は重力や人の堕落の源『陰気』を放出するようにできている。魔法少女の目的は枯獣とぶつかって『陽気』と『陰気』を相殺することだ。このことによって世の中の人間はより高尚な行動が取れるようになる。」
「・・・まさか、ここ最近世界が平和になりつつある理由って。」
「そうだ、世界中から堕落の根拠『陰気』が回収され(どうやって集めるかだって?作者一生の不覚!ここまで書くまで考えていませんでした)それが日本に回ってくる。その『陰気』をいなくなってもばれない人間に注入する。すると注入された人間はみるみるうちに体の一部が肥大化して枯獣となる。しかし、これをほおっておけば『陰気』をばら撒き続け、さらには単純化された食欲と性欲によって人を捕食してしまう。」
「そこで魔法少女と枯獣が戦うとどうなるんですか?」
「枯獣の出す『陰気』を『陽気』で中和して事実上『陰気』を消滅させることができる。だが、そこにはおまえのような犠牲が必要となる。」
ラブカはこの話を頭の中で整理する。人は『陰気』というものを持っていてそれが多いと堕落する。(ここでの堕落をすると人は複雑な犯罪をしなくなる、何もかもめんどくさくなるから)そこで問題の『陰気』を日本にいる誰かに集める。しかし、これをほっとくと周りに害をもたらす。それを魔法少女が撃破することによって阻止する。確かにこの理論は筋が通ってる。(ラブカはそう思った、みんなは思わなくていいよ)でも一つ納得できないところがあった。それはなぜこの話を魔法少女である自分に教えてしまって大丈夫なのかといったことであった。
「鈴木さん、そんなことを私に教えてしまって大丈夫なんですか?それともそこまで私のことを思ってくれているんですか?」
それを聞いたコバンはラブカの頭をなでながら話し出す。(実は女の恋愛のツボは頭のてっぺんにある、ついでに男の場合は二の腕にある、では作者も早速自分の二の腕をモミモミ、ア~自分大好き~♡・・・なわけねーだろ!!)
「その通りだ、娘のように思っている。オレには妻がいたが子供ができる前にお亡くなりでな。欲しかったんだ自分の子供ってやつが。ちょうどその時期だったな、お前の担当に回されたのは。」
ラブカは顔を赤くする。少しの間コバンから目をそらす。彼女が再び目を戻すと彼は続ける。
「そして、これはオレなりの正義でもある。人間は魔法少女に依存していてはいけない。高き意志を持って自らの意志で行動しなくてはいけない。それに高き意志を持っても正義は一つではないからいつか争いが起きるはずだ。」
「それで私は何をすればいいんですか?」
「お前は自分の意志で自由をつかみ取れ。ストライキをしてこの仕事から解放されるんだ。前回の戦闘(すみませんどうしてもネタがなくてイカルンジ小隊以外の魔法少女がどういった戦闘をしていたか書けませんでした)では倉道のやつは二体の枯獣を出現させた。今KAT(カット)にたいして何らかのアピールをしないと大変なことになる。立ち上がるなら今だ。」
ラブカは固まりながら考えをまとめる。結論はすぐに出る。
「悪くはないと思うわ。ただ、三つほど気にかかる点があるのよね。」
「三つもか。」
「一つ、ストライキの手順がわからない。これはあとで教えて。一つ、自由と幸せはイコールではないわ。フランス革命(市民革命と呼ばれるフランス革命、しかし、なんだかんだきっかけを作ったのは貴族と地球の寒冷化)にしろアラブの春にしろ自由をつかんだら混沌を招くことになった(革命後の社会ってやつは食料はないわ政治体制が不安定であるわろくなものではない、民衆は我慢しつつ協力して少しずつでも国を立て直していかなくてはいけない、だが、現実はアラブの春後のありさま、えっ日本では革命なんて起きないから大丈夫だって?決めつけちゃいかんよ決めつけちゃ)。もし我々が自由をつかめば国が我々に見切りをつけて切り捨ててきてもおかしくわないわ。そして、最後に一つ、私たちが動く中鈴木さんはどうするんですか?一緒に戦ってくれるんですか?」
「僕は人質の代表になる。」
「・・・僕・・・」
「そこで必要となるのがこのロッカーのカギだ。残念ながらナヌカの告発ファイルはKAT(カット)に没収された上にお前が見たところで理解するには少々時間がかかりすぎてしまう。そこで僕のロッカーの中に『ナヌカの告発ファイル改』を入れておいた。いいか、お前ならできる!」
ラブカはコバンの話が突飛過ぎて少々困った。さらに、熱くなって一人称が僕に代わっているコバンに引いていた。また、ナヌカの努力が水の泡にされたことがショックであった。そんな彼女にコバンはさらに続ける。
「行動は明日起こせ。倉道はもう枯獣(カリデュー)の準備を開始している。」
「えっ、枯獣ほったらかしていいんですか?」
「あれはいざとなったら自衛隊が倒す。それに今日丁度お前の新しい戦闘服と高濃度栄養剤が補給された。とにかく今は自分のことだけを考えるんだ。質問はあるかね?」
「いえ。」
「よしっ。じゃあ今日は寝る。」
ラブカは素直にベンチから立ち上がると例のロッカーに向かって歩き出した。
「おやすみ鈴木さん。」
「お父さんおやすみと言ってほしいところだね。」
ラブカは無視したがその言葉は彼女の心に届いていた。
9-2反乱 リボルト
朝早くにラブカはイルカの部屋の前にいた。手には封筒を持ちそこには「ラブカからイルカさんへ」と書かれていた。彼女は封筒をイルカの部屋の郵便受けに入れようと考えていたがためらってもいた。封筒の中の手紙の内容はこれから自分はKAT(カット)に反乱を起こすから枯獣(カリデュー)が出現したら逃げて欲しいといったものであった。
ラブカは迷っていた。彼女にとってイルカは親友であってまずいことには巻き込みたくはない。しかし、秘密をばらされたら自分の計画はオジャン。しかし、親友を疑いたくはない。しかし、彼女だけをひいきしてよかったのか。しかし・・・
なんて思考を巡らせていると遠くから足音が聞こえてくる。ラブカは封筒を隠そうとしたが隠す場所がなかったため仕方なくポストに突っ込んだ。足音の主はイルカだあった。あたふたするラブカを見たイルカはニコニコしながら話しかける。
「ラブカちゃん久しぶり。あっそうだ私ね明後日に休みとれたんだけどどっか遊びに行かない?それとも例の資料の調査まだ続いてるの?」
「悔しいけど例の資料は手に入らなかったわ。行くわ、たまには息抜きしないとね。」
「じゃあ、行く場所探しとくから。そういえばラブカちゃんはどうしてこんなところに?」
「えーと、シュモク見なかった。」
「シュモクちゃんなら食堂でゲームしてたわ。」
「そう、ありがとう。」
そして永遠にさようならと心の中でつぶやいた。遊びに行く約束をしたのは失敗と思ったがこれで彼女の仕事は終わった。彼女は朝早くから他の魔法少女の部屋の郵便受けに次の出撃の時に反乱を起こすことと魔法少女のシステムについて書かれた手紙を入れていた。
午後、コバンの助言通りに枯獣(カリデュー)は現れた。むろんKAT(カット)本部ビルの中では第一次戦闘配備の放送が流れていた。ラブカは作戦室に行くとすぐに席に座る。シュモクはラブカの隣に座る。
「ラブカ~あのさ~」
ラブカは何も言わずにウインクをする。これは黙れという合図である。シュモクは似合わないなあと思いつつも前を向く。すると他の仲間たちがラブカのことをじろじろと見る。するとラブカは高速で連続ウインクをする。彼女たちは見てはいけないものを見た気分になり前を向くのであった。
その後、コバンが作戦室に来て作戦の説明を終えるとレギュラー組が更衣室に向かう。
「ラブカ、新しい戦闘服はどうだ?」
「はい、鈴木さんサイズも重さ(魔法少女の服がやたらと重いのには理由がある。腕ががら空きではあるが防具としての強度が必要である他、プレグナント中重力の影響を減らしつつ飛び上がる際に慣性の法則によって望みもしない方向に飛んでいかないようにするためでもある、また、上半身より下半身のパーツがあえて重く作られているのはやはり飛び上がっている際に空中で足を地面に向けるためでのある)も問題ないのですがこの色何とかなりませんか?」
「この戦いが終わったら塗り替える、心配するな。」
「いつも通り黒のマットで(光沢なし)でお願いします。」
ラブカの新しい戦闘服を少々嫌そうな顔で見つめる。基本は銀ピカ。胸のあたりは赤い牛の頭のようなクリアパーツ。さらには腹のあたりは遠くから見るとバキバキの腹筋のように見えた。(ウルトラマンノアを参考にしました、ついでにこれまでの戦闘服を着たラブカの見た目はウルトラマンネクサスの第一形態いわゆるアヌファンスを参考にしました)こんな格好で人生の節目ってやつを迎えることになるとは。複雑な気分であった。
そんな中シュモクとノコギはそれぞれサブマシンガンとバズーカを装填する。ラブカは遅れてピストルを装填するとノコギに話しかける。
「ノコギ、ちょっとバズーカ貸して、新しい戦闘服に合うか試すから。」
ノコギは事が始まると感じ素直に渡す。バズーカを受け取ったラブカは更衣室のドアを蹴り飛ばすと廊下に出て誰もいないことを確認してから引き金を引く。
ドッドガン!パラパラ(バズーカの弾が発射されてから壁に当たるまでの時間は一秒以下であるため発射音と爆発音はほぼ同時に聞こえる)
「諸君、作戦開始だ!司令室制圧!人質確保!」
ラブカは無線で仲間に伝える。魔法少女の動きは様々であった。何をしていいのか分からずあたふたする輩。隣にいる仲間に相談をする輩。だが、ラブカや彼女に従う人の動きを見て徐々に動きが安定していく。
小一時間もたった頃。魔法少女達はKAT(カット)の中枢を制圧していた。
「さすが日本人だな。(魔法少女の国籍はバラバラであるが日本人に育てられているため頭の中は日本人である)みんながみんなに合わせていく。」
「隊長、少なくともこのフロアは制圧できました。隊長、それとも大佐?女王様?」
「女王様ってあのね。先輩、いやっノアって呼んでもらおうかしら。」
「ノア?あの旧約聖書の?」
「理由は後でわかるわ。とりあえず人質の扱いからね。」
ラブカは人質を集めた食堂に行く。そこではKAT(カット)職員や雑用係が正座をさせられていた。さらにはもう人質虐待が始まっていた。内容は顔を布で覆って頭から水をかけるといったものであった。(二十一世紀に入ってからアメリカ軍はこの行為を中東で行っていた)ラブカはそこに駆け寄ると人質から布をはがす。さらには虐待をしていた魔法少女に食ってかかる。
「やめろカジキ。人質は大切な資源だ。」
「でも、こいつは訓練生に理不尽に暴力を振るう教官ですよ。」バッチーン!
「バカモノ!!貴様は自分が何をやっているのかわかっているのか!相手と同じレベルでいる間に我々は勝利できない。」
ラブカはカジキにビンタをする。カジキは打たれたほっぺを押さえつつ反抗的な目をしたものの反論はしなかった。ラブカはほかの仲間の方に振り返ると指示を出す。
「人質は全員あぐら、一時間毎にトイレに行かせてやれ、食事は一日三回。でもその前に身体検査だ。全員シャツパンツ一枚。研修組がやれ。レギュラー組は見回りに出るぞ。」
「あのーラブカさん、身体検査はどのように?」
「とりあえず体中さすって危険物を探すだけでいいわ。」
「・・・なんか一部の男が嬉しそうな顔してますが。」
「すべてを私に聞くな。とにかく機械的にことを進めろ。」
研修組はとりあえず時間をかけて人質75人分の体をさすり身体検査を終える。それから希望する人質を順々にトイレに行かせ終えるとあぐらをかかせ見張っておくのだった。いつ殺されるかいつ拷問を受けるか今人質たちの不安は大きいものに違いない。一方魔法少女たちの不安も大きかった。食料や健康診断等職員なしには難しい問題がたくさんあるからだ。
「やばいようちまだ定期健康診断受けてない。」
「それより食料どうするの?私たちだけでさえも象並みのカロリーいるのに人質にまで手回るの?」
(フカ)「そんなことより健康診断が不安じゃない?オジサンなら乳がん診断ができるよ♡さあ君たちさあ!さあ!!」
バシッ!
見回りから戻ってきたラブカは見張りにちょっかいを出すフカの首にチョップをして気絶させたのである。ちょっかいを出されていた魔法少女たちはあせった。なぜならあれほど暴力を禁止したラブカ本人が暴力を使ったからである。
「人質の風紀を正すのも監視者の仕事よ、ヒトデ、ナマコ。」
「はっはあの・・・どうして・・・こっここに?」
「忘れ物をしてね。私もアマチュアね。あなたたち倉道(くらど)見なかった?」
「そういえば一番虐待受けてそうなのに。もしかして倉道は当の昔に逃げていたとか。」
「そうね。最悪の事態は常に想定しておくべきね。けど、いるなら探し出さないとね。」
「でもどうやって人質の中から見つけるんですか?しらみつぶしに髪の長い居乳に当たるとかですか?」
「でも、もしも倉道のやつがどさくさにまぎれて髪を切っていたら。あの胸がパッドで盛られたものだったら。」
「ナマコ、いい視点ね。でも大丈夫よ。」
ラブカはまず無線で見回り組に今の状況を伝えた後に見張り組みに施設内にある段ボールとマジックを取りに行かせる。そして、段ボールをちぎって札を作るとそこに「すぐ立て」と大きく書いた。それから人質全員の注目を自分に集めた後に札を高く掲げる。人質たちはあぐらをやめて急いで立ち上がる。ところが、目の悪い人は周りの動きを見てからゆっくりと立ち上がる。魔法少女たちはそれを見逃さずに動きの遅れた女性数名を取り押さえる。
その中の一人がイルカであった。ラブカはこの事実を認めたくないと考えたが今はあきらめることにした。気を取り直した彼女はある一人の近眼に注目する。それは髪を短く切って外見をごまかした倉道セラケであった。倉道は歯ぎしりをしながらラブカをにらむ。
「こんなことをしてただで済むと思っているのかしら。誰の告げ口で行動を起こしたのか知らないけど絶対に後悔するわよ、絶対に。」
「何を始めようと何を変えようと100%のハッピーエンドなんてありえないわ。行動に後悔はつき物よ。そして権利と自由を得るためには戦いが必要であることも事実よ。ヒラからKAT(カット)最高責任者に上り詰めたあなたのようにね。」
「あなたたちはまだ子供なのよ。絶対に負けるわよ絶対に、それにあなたたちがストを起こしたら誰が世界平和を維持すると思っているの?」
「倉道さん大人気なさ過ぎます。あなたは私たちを子ども扱い(別になめてかかるという意味ではない、労働の免除や経済的な保護のこと、ついでになぜ魔法少女たちが学校に通っているのかというとKAT職員と彼女たちの思考回路の企画を合わせるためである)してくれませんでした、それに私にとって自分の命が日々脅かされることを前提とした世界平和なんて欲しくないです。(別に作者は自己犠牲を否定しているわけではない、ところが沖縄や福島の2015年の現状を見ると彼らの犠牲にはいかなる意味があるのか考えさせられてしまう)とにかく特別人質席に来てもらいます。」
「何を!あんたたちに好きなようにされるぐらいならこうしてやるっ!!」
倉道はなぜか部屋の隅にダッシュする。ラブカは呆れ顔をしながら倉道に歩いて近づく。
何を血迷ったか知りませんけどおとなしくいうことを聞いてもらいますよ。」
「私の狙いはこれだっ!!」
倉道はすばやくしゃがむと地面に置かれていたゴキブリ退治用のホウ酸(化学式H3BO3食べたら脱水症状に陥るから読者の皆さんは絶対に口にしないように)入りダンゴを口に運ぶ。そして勝ち誇った顔をしつつ高らかに宣言する。
「私の勝ちだー!!本当は腹を切りたかったがー!!」
9-3演説 Who do?
私は十年前におきた資産家心中事件の生き残り虎間ノアである。幽霊ではない。
我々はこれまで闘ってきた。他人のために。そして、ずっと自分を見ないでただ走ってきた。
我々はずっと自分が誰であるのか何であるのか確かめることをずっと怠ってきた。そんな我々が目を開くのは今しかない!
今度は他人のためではなく自分のために行動をする。そう、正しく武力を使って敵味方に死者を出さないために行動する。私は今理想でしかない夢を語っていることを認める。ただ、人は理想を思い浮かべながら発展して言ったことも事実。飛行機もパソコンももともとは幻想であった。だが、今世の中でこれらのものは当たり前のように使われている。
我々も夢に向かって進めばそれを「当たり前」にできるかもしれないのである。いやっ我々にはできる!我々の心がひとつである限り。
では、我々のやるべきこととは何か?世間の同意を得つつ自由を手に入れることとKAT(カット)の存在の公開である。
KATとは何か?それは世界平和を実現するための組織である。その方法とはいかなるものか。それは世界中の人々の不の感情の素を何も知らない難民に集めて枯獣(カリデュー)という化け物を作る。さらに同じく難民の少女に処理を施して正の感情の素を放出する魔法少女を製造してこれを枯獣とぶつける。この方法によって世界中の人々の持つ負の感情は浄化されてきた。
だが、こんな方法はあってはならない。感情や心は個人の肉体に宿り(作者はこのセリフを使ってもいいか否か考えた、何しろ個人の書いた文章やネット中での書き込みは人格の一部として見ることができ、狂信的な宗教信者や上司の命令をうのみにする部下、こういった例を見るといくら感情を生産する媒体が脳であるとしても人格の中心が体にあるかどうか疑わしく思える、まあ、この問題は次回作にでも、ついでにラブカはこのセリフをきれいごとと分かりながら使用した)それを動かすのは個人である。KAT(カット)の人達は自分以外の人間を見下している。個人の感情をコントロールしようとしているのは他の人間の人格を信用していない何よりもの証拠である。
世界中の人類には議論してほしい。他者を信用しないことを前提に作られた魔法少女のインフラが必要であるのか。
世界中の人々がどのような答えを出そうとも私たちは自由が欲しい。そして、こんなへたくそな演説を最後まで聞いてくれた人々には感謝する・・・
食堂にて魔法少女と人質の前で演説を終えたラブカはいすに座ってため息をつく。
「ラブカ、全部無事に撮れたよ。」
「ぶれてない?それとネットはまだだめ?」
「ラブカと違って私に手は正確なの。射撃NO2は伊達じゃないのよ。ついでにネットのほうは相変わらずジャミングコロイド(実在するものではなく肉眼で見ると粉にしか見えないが電波を阻害するためのマイクロマシンと思ってください、ついでに重力に逆らって浮くようにできているためものの雨や風の強い日には役に立たない)でだめそう。」
「倉道め。ボタンひとつで我々を孤立させ心理攻撃まで。・・・自衛隊の動きは。」
「えーと、まだ準備中みたい。」
今の状況を説明すると武装蜂起した魔法少女たちはKAT(カット)職員の大半を人質として確保。しかし、KAT最高責任者倉道(クラド)セラケが土壇場で自害。さらには武装蜂起が始まった時点でKATはジャミングコロイドを散布と同時に陸上自衛隊に救援を要請。
追い詰められた魔法少女たちは士気高揚のためと世間からの同情をるために演説をしたもののジャミングコロイドのせいで映像はネットにアップできなかった。(アップできたとしても理解さてもらうのには時間がかかりそう)
そんなことを思い返していると魔法少女たちは頭を抱えられずに入られなかった。ラブカの場合は今から二時間前の出来事に頭を痛められていた。
「脈がない・・・御臨終だ。」
「死体どうしますか?」
「ほっとけばくされ酢の臭いが(死体の腐敗臭のこと、作者はかいだことはないが聞いた話によるとスカンクがおしりから出す科学物質よりはマイルドな臭いらしい、ついでにスカンクが自身の身を守るために出すガスはオナラとは別物)この部屋中に充満してしまう。ヒトデ、ナマコ、死体をビニールででも覆ってから冷凍庫にでもしまっといて。」
「はっはい。」
命令を受けた二人は他の人に頼んで大きなゴミ袋を取ってきてもらうと作業に移りだす。そんな二人を見ていたノコギはラブカに尋ねる。
「ねえラブカ。どうしてあの二人にばかり仕事を頼むの?」
「・・・それは~その、他の人の名前がわからなくて。」(作者も人の名前を覚えるのは苦手である、しかし、なぜか他人からは良く自分の名前を憶えられる、そこまではいいんだけどこの前スーパーで買い物をしていたらアルバイトが吾輩のこと知ってやがる、誰だ吾輩の情報を漏らしたやつ、ブッコロス!)
照れくさそうに答えるラブカを見たノコギは一瞬可愛いと思ってしまった自分に疑問を持った。
「その話題は置いといてレギュラー組集合。」
ラブカが点呼をとるとレギュラー組がすぐに集合する。
「悪いね、リーダー面しちゃって。」
するとシュモクやノコギは別にいいからといった感じに答える。それからなぜみんなを集めたかを聞く。
「我々はここまで倉道(クラド)が死んでしまったことを除で場計画は順調に進んでいる。しかし、ほかの連中の動きを見ると割ともたもたしていて士気が低い。そこで、ここで演説をして士気を高めると同時に映像を動画サイトに上げてわれわれの正当性を世間に訴えようと考えた。」
「なるほど、外の人が私たちのことを信じてくれるかは怪しいけど士気が上がれば・・・」
「って誰が演説を?やっぱりラブカ?」
「そう言いたいところだが私は口ベタだから他の人にやってもらいたいと考えた。」
「うーん、自分の身の丈を測ってかー。じゃあ私もパス。」
「ノコギ、誰もあんたに期待してないと思う。」
「傷つく~」
「カラオケでよく高得点を出す京儀氏は?」
「機械相手か人間相手かじゃだいぶ違うと思う。そもそも私じゃ赤毛で背が低いからうさんくさくなりそう。」
「身長なんて台かなんかでごまかせば?」
「ハイハイ色と背の高さなら平エイさんを推します。」
「何で何で?」
「だって日本人は白人コンプレックス強いから(作者の偏見というほど偏見じゃないかも)半白人のエイさんが演説をしたら聞いてくれるんじゃないの?だって日本の法律の一部はアメリカ産だし中国や韓国とは島一個でもめるくせにアメリカには沖縄、ロシアには北方四島をあっさりプレゼントむぐー!!」
ラブカはシュモクの口を押さえながらため息をつく。それから目を閉じてから開きなおすと決心する。
「わかったやっぱり私が行く。やっぱり私がリーダーだ。異議のある日といる?」
「・・・」
「一世一代の勇気を持ってたつ。それでいい?」
三時間後
「体調、自衛隊がメガホンでなんか言ってますが。」
「何を言ってるか分かる?」
「雑音が多すぎて無理そうです。ジャミングパルスさえなければ聞こえると思いますが。」(ジャミングパルスがあっても無線だけは通じる)
それを聞いたラブカは少し考え事をする。五分もした頃突然立ち上がって叫びだす。
「血液型A型の研修生は(ラブカはできるだけ多くの研修生を募りたかったが全員を使うわけにはいかなかったため、一番該当者が多いA型を選んだ、別に血液型性格判断を根拠に選んだわけではない、そもそも血液型性格判断は日本・中国・韓国等でしか信じられていない)正面の出入り口にバリケードを作れ!今すぐ!」
「何を使ってなの?」
「とりあえず敬語使え、まあその辺の机を適当に並べとけ、レギュラー組は武器を持ってスタンバイ。ナイフ、ピストル、サブマシンガン・・・私も素人だな、所詮。」
魔法少女陣があわただしく動く中自衛隊陣もブリーフィングをしていた。
「質問がないなら以上だ。我々は十分後に突入する。気を抜くな。」
「なあレイ、まったくいかれてるぜ、武装難民の一部は少女、しかも無条件発砲もありってよ。いくら移民の待遇が悪いといってもこのタイミングで凶暴化するかねー。」
「人を一くくりにすることはよくないね是遁(ゼトン)君。」
10-1迎撃 お持ち帰り作戦
「五分後に突入する。」
突如始まった武装難民鎮圧作戦。上官たちが次々と指示を出す中前線で待機する顔素変田(カオスヘタ)レイ(35)は前方にある難民救済センターのビルを眺めつつ考え事をしていた。今日という今日の日は何かがおかしい。まずは朝っぱらからのエイリアン(自衛隊は知らないがラブカたちが戦いをボイコットした枯獣【カリデゥー】のこと)退治。こっとは敵の的が大きく倒すのは楽であった。
事が終わったと思ったら何だ?今度は武装難民がこの目の前のビルに立てこもっていてしかも朝のエイリアンはそいつらが作ったということになっていてしかも前線で戦っているのは成人男性ではなく少女だとか。たぶん政府は裏で何かを隠している。おそらくその秘密が全国民に知れ渡れば大きな混乱が巻き起こるに違いない。
それならばその秘密ってやつを守ればその混乱の影響から国民を守ることができる。しかもこの仕事はテレビに出てくるようなヒーローと違ってちゃんと給料が出る。要するにがんばれば報われる。
「向こうは我々のネゴシエーションに応じない。突入!」(自衛隊はジャミングパルスは武装難民(魔法少女)がばらまいた勘違いしてる、そのため前話でのメガホンの不調は難民のせいと考えている)
レイを含めた自衛隊十六名は小走りでKAT(カット)本部ビルに向かう。彼らがビルに入ろうとしたときありえないことが起こる。上からゴスロリ姿の少女が数人降ってきたのだ。(プレグナントをかけているため落下速度は少々遅め、一種の威嚇でもある)ただ、彼らはそれをボーゼンと見ている場合ではなかった。少女たちはそれぞれ手にに銃を持っていてしかも撃ってくる。自衛隊達は次々と手足を負傷していく。
レイも焦って反撃に出る。ところが、敵の動きが速くて銃の照準が定まらない。ついには銀ピカの服を着た敵にロックをかけられてしまう。レイは恐怖のあまりに銃を乱射するものの全弾避けられてしまう。(銀ピカはラブカのこと、彼女は飛んでくる弾を避けているわけではない、敵の銃口と指を見て動き回っている)
「来るな!来るな!!来るな~」
来るなと言われて来ないヤツなんかいなかった。銀ピカはすばやい動きでレイとの距離を縮めると彼の弁慶の泣き所を蹴る。動けなくなったレイに対して銀ピカは首にチョップを食らわせて気絶させる。何を間違ったのか自衛隊十六名はたった九人の少女によって制圧されてしまったのだ。
「諸君、ケガ人はいる?」
「ノア隊長、ウツホが着地の際に足をくじいたそうです。」
「それ以外は無事か、敵も死者ゼロか。手分けをしてウツホと敵をお持ち帰りだ!」
魔法少女達は両脇に自衛隊を抱えながらビルの中に消えていった。後ろで待機していた自衛隊員たちは驚きを隠すことができなかった。予定されていた第二、第三の突入計画を凍結すると司令官一同は会議を始めた。
魔法少女達は捕まえた自衛隊員たちの手首を縛ると片っ端から装備をはぎとっていく。武装や食料の補給ができない彼女たちにとっての手段は敵から奪ってやりくりしていくしかないのである。(戦において何よりも大切なものは補給である、それができないと旧日本軍のように飢え死にすること間違いなし)そうなると人命も無駄にはできないのである。敵を生け捕りできれば情報を聴き出したり人質として盾や通貨(適切な表現であるかわからないが食料等と人質を交換できるってこと)として扱うことが可能である。よってラブカはほかの魔法少女達に対して敵の命を奪わないように指令を出したのであった。
数分後レイが目を覚ますと手足の自由が利かない。しかもやけに体が軽いと思ったらシャツ一枚にトランクスしか着ていなかった。さっき攻撃を受けた肩と弁慶の泣き所がズキズキするものの我慢して頭を上げて目を開き辺りを見回す。すると驚いたことに自分は会議室のような部屋にいて自分の仲間たちも包帯を巻いていたりすることを除いて自分と似たような格好をしていた。
「おい是遁(ゼトン)、判丼(パンドン)、像具(ゾグ)生きてたか。」
「レイ、実は第一突撃部隊は全員生きて捕虜になっている。ついでにこれ以降のおしゃべりは禁止だとよ。」
「全員おきたか。ノア隊長に伝えといて。」
さっきまで自分たちが着ていた防弾チョッキを着た十五歳くらいの二人の少女(とある国語辞典によると少女は十五歳まで、ついでに作者は永久の十四歳)が銃を持って自分たちを監視している。片方が何かの報告のためか部屋から出て行く。敵は持っているものを除けば普通の少女に見えたものの抵抗すれば殺されそうな気がしたのでおとなしくすることにした。
(ったく、少年兵はまだしも少女兵はなんてなんと野蛮な。難民のお頭め~首を洗って待ってろよ。で、おかしらの名前はノアか、どんなゴリゴリな男なのかこの目で見てやるぜ。)
数分後、部屋に銀ピカの服を着てレーシンググローブをしておかっぱ(ラブカの外見はウルトラマンネクサスのオマージュであるためこの表現は正しくないかもしれない)の頭のこめかみにリボンを垂らした少々顔の老けた少女が入ってきた。彼女はノートパソコンを地面に置きコードをつなぐと捕虜の足の縄をほどくように監視役に指示する。それから捕虜たちを見ながら先ほどのパソコンの前に集まるように指示した。彼女はパソコンを操作しながら彼らに言う。
「これから私の演説を流す。私語を慎んで静かに観るように。」
「あの~一ついいですか?質問をして。」
「いいぞ、君だけ一つだけ。」
「武装難民、いやっあなた方のお頭はどのような人なんですか?」
「・・・武装難民?あーそう呼ばれているのか我々は・・・質問の答えは私そのものだ。」
捕虜一同は互いに顔を見合わせる。一体全体何がどうなっているのか理解できなかった。そんな彼らにラブカ(ノア)は続けて言う。
「我々は魔法少女と呼ばれる生物化学兵器よ。けど自由がほしくなってストライキを起こしたところ自衛隊を呼ばれた。ついでにその魔法少女っていうの難民や身寄りのない子供に処理を施して作るものよ。ついでに続きは私の演説で。」
ラブカはパソコンを操作して演説を流す。一通り流し終えると残りの説明をする。
「とにかく我々はあなた達との武力衝突を望まないわ。国と交渉して自由を得たいの。ついでにあなた達の装備はこっちで有効活用させてもらうわ。え~とそれからー。」
その時部屋に別の魔法少女が入ってくる。どうやら自衛隊が第二陣を送ってきたようだ。
「状況は?」
「ノア隊長、平副隊長が指揮を執っています。」
「分かった今行く。捕虜諸君、大人しくしているなら三食食わしてやる。君たち(仲間に対して)、捕虜をトイレに連れてってやれ。」
一方平エイは五人の魔法少女を連れて机や棚で作ったバリケードの裏から敵の様子をうかがっていた(前回よりも連れてきた人数が少ないのはいざ負けた時に被害を少なくするため、前回九人も動員したのは人を多めに見せて人手不足を悟られないようにするため)。敵はスモークをたきガスマスクを着けながらKAT(カット)本部ビルに向かっていた。おそらく自衛隊は魔法少女(自衛隊は武装難民と識別)側は大した装備を持っていないためスモークでも炊けば何とかなると考えたのだろう。エイは無線にて
「匍匐前進全速力で一撃離脱(一発ダメージを与えたらすぐに離れるという戦法、スモークを吸わないために使う、ついでに作者は食品試食コーナーでこの戦法をよく使う)。目視と反射神経(この日本語間違い、でも伝わればいいか・・・)だけで敵を探して索敵してください。」(この日本語も間違い馬に乗馬パターン)
彼女たちはそれぞれの準備が整い次第高速匍匐前進で敵のいるであろう方向に突っ込んでいく。さっそく魔法少女と自衛隊が接触する。自衛隊は魔法少女の戦法に戸惑った。敵がゴキブリのごとくの速さで地面を張って襲ってくるなんて前例はない。彼らはなすすべもなく次々と手足を負傷してお持ち帰りにされてしまうのであった。
「オオオオオ!」
「捕ったぞー!」
「痛っ!」
「キター!」
「母ちゃ~ん」
「スキアリー♡」
煙の外で出撃を待つガスマスクをつけた隊員たちは煙の中から聞こえる太い悲鳴と黄色い(高い女の声ってこと)歓声を聞いておじけずいていた。
勝ち目がないと見たまだ捕虜にされていない第一ガスマスク部隊は退却。自衛隊司令部は再び作戦を組みなおすことにした。一方、捕虜を八人もゲットした魔法少女陣は有頂天になっていた。
「私達もやればできるのね!」
「この調子なら自衛隊全員を捕虜にするのも夢じゃないかも~」
「ぬか喜びをするのもここまでだ。ここまで来たら装甲車両を投入されてもおかしくはない。」
「装甲車両?それはまずいですね~下手をすればそうこうしているうちに建物ごと壊されて・・・」
「諸君落ち着け、我々は何のために捕虜を捕えたのか。今、手先が器用なノコギ(すみませんこの設定発表がだいぶ遅れました)が無線を繋いでくれた。というわけで人質を含めた諸君、お静かに。」
ラブカは個室にこもると鹵獲品の無線を繋ぐのであった。
10-2要求 食料調達
「こちら魔法少女こちら魔法少女、聞こえますか?」
自衛隊のオペレーターは応答する。
「こちら自衛隊対武装難民支部、もう一度名乗ってください。」
「魔法少女・・・今あなた達が武装難民と識別している存在です。今すぐあなた達の代表につないでください。制限時間はこの通信が終わってから十分以内です。制限時間が過ぎたら人質に手を出します。(Hなことをするってわけじゃないよ♡)今のところは人質は全員生きています。」(倉道の自害の件は都合が悪いため隠すことにした)
「ま、待て、私は状況を把握していない。」
「制限時間内に何をすればいいか言いました。では、良い返事を待っています。」
自衛隊のオペレーターは時計を確認するとすぐに上司に報告を入れるのであった。要求を知った自衛隊対武装難民支部は焦りはしたものの一番位の高い寺(デラ)シオンが話し合いに出ることのなった。制限時間ぎりぎりにシオンは無線のスイッチを押す。
「こちら自衛隊こちら自衛隊、私は現作戦最高責任者寺(デラ)シオンです。どうぞ。」
「・・・聞こえています。私は魔法少女代表虎間ノアです。」
「・・・虎間・・・どこかで聞いたことがあるような。」
「六年前の資産家心中事件を覚えていますか?」
「・・・う・・・まさか生きていたのか、虎間家の娘が。」
「そうです。虎間ノアは生きています。実は私はあの事件後に児童施設に保護されたものの知らない間に政府の施設に回されていました。気がついたら手術台の上にいて魔法少女と呼ばれる物体にされていました。」
「・・・うー・・・とすると政府は~難民のような~身寄りのない子供を~。」
「ただいまから要求を出します。」
「・・・うー・・いきなり~何を~」
「わざと遅くしゃべって時間稼ぎしているのはお見通しですよ。」
「あーうー」
「ここから見える装甲車両を十分以内に我々のビルから半径十キロメートル以上下げなければ人質に手を出します。では、十分後に次の要求を出します。あなた方が我々を理解してくれたら人質を数人介抱します。」
「まっ待っ!」プチッ
シオンは顔を真っ青にしながら装甲車両を交代させるように指令を出す。自衛隊がすべての車両を下げ終えるとラブカはまた通信を入れる。
「こちら魔法少女こちら魔法少女。あなた方のご理解が早いことに感謝します。寺さん、今お話しできますか?」
「あー大丈夫だ。次は何だね?ところでそろそろ人質を数人解放してほしい。」
「いいでしょう。ではこちらの要求です。サツマイモ三千本で一人、卵五百個で一人、マヨネーズ五十箱(通常ビタミンは熱によって分解される、しかしサツマイモに含まれるビタミンは熱によって分解されにくいのである、よってもし自衛隊が魔法少女の要求を飲めば魔法少女陣は炭水化物、食物繊維、ビタミン、タンパク質に困ることはない)で一人、計三人を解放しましょう。猶予は十二時間後です」プチッ
「あのーノア隊長、サツマイモと卵はわかるけどマヨネーズ五百箱ってどういうことですか?」
「それか、いざ食料が尽きた時はこれを摂取する。」
「どうやってですか?」
「っえ?チューって吸うにきまってるでしょ。」(彼女がマヨネーズを要求した理由の一つはストレス解消のためである、マヨネーズには脳を満足させる物質が含まれている、さらには哺乳類はストレスをためると甘いものや脂っこいものが欲しくなるからだ)
(魔法少女一同)「え~!?」
「とりあえずコバンと話してくる。」
ラブカはコバンが一人で監禁されている部屋に向かう。ドアを開けるとコバンは腹筋を鍛えていた。それを見たラブカは目のやりどころに困るがコバンはお構いなしに注文する。
「すまないがあと三十三回でちょうどいい。待ってくれないか?」
「足押さえましょうか?」
コバンの腹筋が終わると二人はあぐらで向き合う。
「ラブカ、調子はどうだ?」
「一応今はうまい具合に敵も味方も丸め込んでいますがこの先が・・・」
「自信がないのか。勝ちたいなら今からでも持っておきなさい。今自分のすべきことを考えれば自ずからわいてくるだろう。」
「その、私の代では勝てなくていいと思うのです。でも、もしわたしか誰かが行動を起こさないと次の世代に続きませんから。私がだめでも次の世代が。」
「それはいかんよ。勝負は一発で決めなくてはいかん。グダグダと物事を進めていたら次の世代までグダグダになる。」
「ただ・・・その。」
「お前はなぜそこまで自分に自信を持とうとしない。」
「他人はとにかく自分で自分を裏切るのが怖いんです。今回はいつもと違ってマニュアルもありませんし。」コンコン
「隊長、報告が二つほど。」
「なんだ?」
「一つは魔法少女の本名名簿が出てきました。(言い忘れていましたがラブカをはじめとする魔法少女の名前はKAT(カット)のつけたもの、ついでになぜラブカが自分の名前を知っているかというと彼女が幼いころにKAT(カット)の敷地内から抜け出してネットカフェに逃亡してそこで資産家心中事件の記事を発見して知ったということになっていたが【仮プロット名「ラブカの家出とイルカの家出」】作者が書くのを忘れてお蔵入りに・・・テヘペロ)私の本名は特定できませんがエイ副隊長の本名は倉井(くらい)ザギだそうです。」
「そうか、でもう一つは何だ?」
「自衛隊の装甲車両がこっちに向かってきてますが。」
「・・・そっちを先に言えっ!鹵獲無線(自衛隊の第一突撃部隊から奪ったもの)を用意しろ!今すぐ!」
「りっ了解。」
KAT(カット)本部ビル内は大忙しであった。あるものはバズーカや対戦車ライフルの用意。あるものは人質の安全な場所への避難の指揮を執っていた。そんなまずい状況から抜け出すため魔法少女陣は自衛隊に無線をつなごうとする。ところが、どうしても無線はつながらなかったのだ。
「交渉は決裂か・・・」
「隊長、人質を盾にしましょう。」
「だめだ。我々は卑怯者であってはならない。」
「この状況で何を!そもそも人質は・・・」
「待て!諸君、見回りを戻せ!レギュラー組集合。ゲリラ戦法で車両のタイヤ及びエンジンを破壊する。」
カチッ「動くな!」
エイはラブカの後頭部にピストルをつきつける。状況を悟ったラブカは両手を上げる。エイはカジキにラブカの武器を取り上げさせ、さらにラブカの腕を後ろに組ませ手錠で(これも自衛隊から奪ったもの、別にKAT(カット)内にSMプレーオタクがいたわけではない)両腕。ガムテープで口を封じる。
「ラブカ先輩ついてきてもらいますよ。」
10-3分裂 終わりへ
できる限り敵味方共に死者を出すまいと考えるノア隊長ことラブカ。ところがエイ副隊長はそんなやり方にいら立ちを感じていた。ついに我慢ができなくなったエイはラブカを手錠とガムテープで拘束して自らが魔法少女の指揮をとろうともくろんだ。
「カジキすまないがラブカを空き個室まで運んでほしい。私は無線で仲間を募る。ラブカは丁重に扱え、あとで説得して仲間にする。」
「了解。」
カジキはガムテープでぐるぐる巻きにされたラブカをお姫様抱っこしようとしゃがみこむ。そのときラブカが急に上半身を起こしてカジキの顎に頭突きを決める。カジキが床に倒れこみエイがそれを見てひるんだすきにラブカは膝を思いっきり曲げてから斜め46度(常識的には45度が適切であろうが重力の影響を考えると少し上に飛んだ方がいいはず)を意識しながら地面をける。ラブカは放物線を描きながら8mほどのバックに成功する。
ラブカは背中で地面に着地すると背中の骨をスパイク代わりにしながらダッシュ。っと言っても速度は小学生低学年の走る速さ程度であった。むろんエイはラブカを追いかけようとする。エイが走り出そうとしたその時ラブカは対戦車ライフルの弾を運ぶシュモクと鉢合せとなる。
「んー!んふー!んんー!!」
ラブカは寝っ転がったままつま先でエイを指しながら「こいつがやった」と伝える。シュモクは状況を判断するとライフルの弾を地面に置いてからエイにピストルを向ける。エイはラブカと違い高い命中精度を誇るシュモクの射撃の恐ろしさを知っていったため一瞬観念する。
パシッ!(ピストルの発射音と床が砕ける音はほぼ同時に聞こえる)
しかし、シュモクはエイの足元に威嚇射撃をしたのだ。これをチャンスと見たエイは後ろにダッシュしてこの場から姿を消す。エイが去るとシュモクはラブカの口からガムテープをはがす。
「ラブカ何があったの?」
「イタタ・・・エイのやつが興奮して人質を前線に送ろうとしたのよ。」
「まだ立てこもりから一日もたっていないのに仲間割れ?」
「事実は事実よ。あなたがエイの頭狙ってたらもう少し状況は良かったかも。まあ歴史にイフはないけど。今は対戦車兵器の準備と非戦闘員の避難を継続ね。」
ラブカ(ノア)とシュモクは急いで無線を使い今の状況を全魔法少女に伝え終えると食堂にてレギュラー陣の点呼をとる。ラブカは人を殺さないように自衛隊の装甲車両を止めるように指揮をし、さらには全員にエイとカジキを発見したら拘束するようにも伝える。
「ノア隊長、あの、お言葉ですがエイ副隊長と和解して人質を利用すべきでは?」
「だめよ、ノコギ、もう少し我慢よ。」
「ノア隊長。ノコギの言う通りと思いませんか?」
「エイ、いつの間に?」
エイとカジキはいるかの頭に銃をつきつけ人質にとり集められていた人質に紛れ込んでいたのだ。数人の魔法少女たちはエイとカジキに銃を向ける。しかし彼女はあまり気にせず要求を出してきた。
「私は人質を前線に送り敵を退却させる。見せしめに二、三人殺すことになるかもしれないが装甲車両によって私たちが全滅してしまうよりましだと考える。私についてくる人は手を上げてほしい・・・」
「エイ、私は思うんだ。殺しあって得をするのは獣、だが許しあって得をするのは人間だと・・・」
そのとき数人の魔法少女がハイハイといって手を上げだす。ラブカはあたりをキョロキョロと見回した後に行きたい人はエイについていきそうでない人はエイについていく人に害を加えないように指示を出す。だが、その時食堂に一発の銃声が響き渡る。次の瞬間エイについていこうとした一人が崩れ落ちる。
「やったな!」
別のエイについて行くことにした魔法少女が銃をぶっ放しながら反撃に出てくる。もちろんラブカについていた方も負けじと撃ち帰す。気づくと互いに敵味方入り乱れながら銃撃戦が展開されていた。食堂は左右から銃弾が飛び交う地獄となっていた。ラブカは自分が的になる前にシュモクをうつぶせになるように張り倒してから自分もうつぶせになると匍匐前進で机の下にもぐる。シュモクもついてくる。
パンパン!ドチュッ!パリーン!
一部の魔法少女はわけがわからなくなり銃をあちこちに乱射する。弾は対立する魔法少女だけではなく避難が済んでいない人質たちにも命中する。
「シュモク、私たち二人で話のわかる仲間と人質を救出してここを脱出するわよ。」
ドサッペチャッ!二人の前に弾が命中して致命傷を負った魔法少女が倒れこむ。どう見ても助かりそうもなかったので仕方なくその場を匍匐前進で後にする。シュモクは泣き出す。
「もういやだ~どうしてこうなるの~」
「今は気にするな。自殺と発狂はいつでもできるが反省は生きて帰ってからじゃないと無理だ。」
「こっ今度はウニちゃんが~今・・・今頭に~」
「ったくこれだから最近の若いもんはな~」(こう見えてもラブカは十四歳)
ラブカとシュモクは生き残った人質を発見するとうつ伏せにさせて死んだふりをさせ銃を乱射する魔法少女を発見すると二人がかりで取り押さえて手錠をかけて拘束する。この作業によって人質を五人確保、魔法少女を2人拘束し終えると二人は人質を連れて出口に向かうことにした。
「ラブカ、あれ見て。」
「えっ?ノコギのやつ無事だったのか、あんなカニがどっかにいたような。」(モズクショイのこと)
ラブカとシュモクが見たのは死体を背中に乗っけて匍匐前進をするノコギの姿だった。ノコギはラブカたちの姿を見ると向かってくる。
「死ぬかと思った~ねえどうすんの?これから。」
「いいから死体下ろせ。目立ってるぞ。」
「え~カモフラージュにも盾にもなるからいいじゃん。」
「どこにあおむけでゴキブリみたいに這いずり回る死体があるんだ。とりあえずそこの出口から脱出する。三人で人命五つを救えば少しは後の待遇が良くなるだろう。」(ストライキ終了後のこと、ラブカはあえて負ける前提で今の行動をとっている)
こうして三人の魔法少女と五人の元人質は銃弾の飛び交う地獄から脱出した。
一方、イルカを担ぎながらラブカたちとは別ルートで脱出したエイ。彼女は仲間二人を連れて自衛隊隊員が収容されている部屋に向かう。安全な場所に着くとエイは仲間と話し合いをする。
「ヤドカ、シヤコカジキを知らないか?」
「わて知らへんで。」
「オラ見ただあ。銃撃戦が始まった時に興奮して暴れまわっていたけろ。」
「カジキはあきらめるか。」
「仕方ないけろ、オラたちで何とかするしかないべえ。エイどんけーから(これから)どうするけろか?」(これはなんちゃって方言)
「自衛隊にうそをついて前線に送る。敵は人間だ、攻撃はできないはずだわ。」
「その間にわてらが運んできたバズーカで装甲車両を大破するんやな。」
「そうよ、作戦はすぐに開始。行くわよ。」
「了解」
話し合いが終わると三人は自衛隊隊員の収容された部屋に行き今聞こえている銃声は自衛隊が魔法少女と人質を虐殺する音だと説明する。それからあえて困ったような顔をしながらモジモジしてみせる。(人間にしろカツオの一本釣りにしろ引いてばかりではうまくいかない、緩める瞬間は意外とミソ)それを見た正義感の強い顔素変田は黙ってはいられない。
「オレを・・・人質として前線に送ってください。オレは君たちの持つか弱い命を守るために自衛隊に入ったんです。」
「おっオレもです。」
こうなると全員が続けて手を上げるのであった。
EX-2 言い訳
(素巴キリマ)「・・・今度こそ・・・今度こそは終わりだ。」
(ラブカ)「キリマさんやっとですか?」
(キ)「そうだ、ラブカ氏。次回でこの物語を終わらせることにした。まあ、話の数だけで言えば予定通りなんだけどね。」
(ラ)「と言いますと?」
(キ)「吾輩はこの物語で自主規制をやりすぎたってことだ。」
(ラ)「もしかして私とイルカさんによる野球拳。」
(キ)「それに倉道(クラド)セラケの刺身女体盛りにシュモクとノコギのポロリ・・・なわけねーだろ!!」
(ラ)「ここに来てノリツッコミですか?」
(キ)「まあその話は置いといてラブカ氏および数少ない読者の皆さんは魔法少女の第〇世代型って節覚えてる?」
(ラ)「そういえばすっかり忘れられているような。」
(キ)「そこだ。実は第一・二・三世代の違いは薬の投与の有無からなんだよね。まず今生きているのはラブカだけの第一世代型、子宮にマイクロマシンが埋め込まれているだけで強くなるためには体を鍛えなくちゃいけない。」
(ラ)「そうですね~確かに私は過去につらい思いをしましたよ。全身アザだらけになって骨もよく折れて仲間内でもストレスで他人の白飯にフリスク入れあったりブーツの中に画鋲やザリガニ入れあったりとか・・・」
(キ)「そりゃ訓練が厳しすぎると心まで荒れ果てるからね。ではシュモク、ノコギ、ナヌカが含まれる第二はどうかというと専用の薬を投与することによって大した訓練をしなくても強い力を手に入れることができる。ラブカがほかの魔法少女を軽蔑した厳しい態度をとるのは薬を投与して自分より楽に強靭な肉体を手に入れた彼女たちを妬んでいるからだね。」
(ラ)「ほーすると第三世代は?」
(キ)「該当者はエイ、シヤコ、ヤドカ。薬の投与までの節は第二と同じだけどさらに頭の中に服従装置が埋め込まれていてKAT(カット)の命令には絶対に服従するように調節されていて、第一第二の見張り役という役職があるという設定があったんだけどね。」
(ラ)「そんな細かい設定があったのになぜ自主規制を?」
(キ)「理由は大きく分けて二つほど。一つはラブカがほかの魔法少女を見下す節。これは実は大学を一般入試で狙った作者がAO入試を利用した人たちに白目を向けた所から来たんだよね。まあ、一年ほど浪人やって頭の中がスッキリして落ち着いたせいか入れる気が失せてね。もう一つは2014年頃に問題になった脱法ハーブ問題。果たしてヒーローが薬で強くなってもいいのか。そういった理由で設定があいまいに。」
(ラ)「なるほどね。」
(キ)「おかげで話はだいぶ丸くなったよ。ところがそうなるシナリオにゆがみが発生してね。」
(ラ)「補強作業ですか?」
(キ)「そうなんすよ。途中でパスアウェイした真樹ナヌカはそう言ったやばいシーンをごまかすために作ったキャラだからね。名前の根拠もマキナデウスから取ったりね。後読者諸君も気づいているかもしれないけどこの物語に出てくるキャラクターの名前は一部を除いてサメから取ってますんで。」
(ラ)「ほー」
(キ)「それとシヤコとヤドカは実は「コードネーム魔法少女シーズン2」(仮)に出てくるクローンラブカというキャラになる予定だったものの企画がつぶれたためシーズン1に回されてきたってわけ。って訳でラブカ氏、次回はラスボス戦だから良く脚本を読んどくように。」
(ラ)「・・・えっこんな動き無理です。」
(キ)「大丈夫だ。ワイヤーがあれば何でもできる!受け身の練習しっかりしとけよ!」
(ラ)「・・・・・・てなわけでこの物語は次回で終わります。少女目を覆いたくなる場面あるけど応援よろしく。」
11-1 戦前 プレリュード
世界中の人々の持つ堕落の素「陰気」を「陽気」をはなちつつ枯獣(カリデュー)と戦うことによって浄化し続けてきた生物化学兵器魔法少女。彼女たちは厳しい訓練を受けつつ死を覚悟しながら必死に枯獣と戦ってきた。ところが自分たちを所有する日本政府の直属の機関KAT(カット)の対応に不満を覚え反乱を起こした。彼女たちはKAT職員や反乱を鎮めに来た自衛隊隊員を人質にとってKAT本部ビルに立てこもった。
そんな中自衛隊は走行車両をビルに近づける。あわてる魔法少女陣は人質を安全な場所に避難させつつ世間の同情を引こうと努力するノア(ラブカ)派。人質を前線に送って敵を威嚇しようと考えるエイ派に割れて互いは銃撃戦を展開。魔法少女および多くの人質が負傷・死亡。自体は最悪な方向に。
銃撃戦地獄から抜け出したエイ・シヤコ・ヤドカはラブカをゆするために人質にしたイルカを連れて自衛隊隊員を監禁した部屋に行く。ヤドカは部屋に入る前に分かれてイルカの監視をしつつ空いた部屋に隠れる。
「悪いけど君にはおとなしくしていて欲しいけろ。おらたちは君を脅しで使うだけだべ。何もしないけど口にはガムテープを貼るけろ。口をしっかり閉じるけろ。」
「・・・」
人質を扱う側は人質にリラックスして欲しいと思うもの。イルカはそれを理解しているため自分がいつ殺されてもいいように一種の覚悟をした。
一方、自衛隊隊員の捕虜を収容した部屋に向かったエイとシヤコは彼らをだまして前線に向かわせる用意をした。
同じころエイたちと同じく銃撃戦地獄を抜け出したラブカとシュモク、ノコギ、元人質の五人の計八人はKAT(カット)本部ビルビルから脱出して自衛隊に降参して残る命を保証してもらおうとしていた。ラブカは仲間に今後の予定を伝える。
「ここをまっすぐ進むと鈴木さんの収容された部屋だ。諸君はこっちに行って鈴木さんを解放して脱出してほしい。」
「ラブカは?」
「私はイルカさんを助けに行く。今回ばかりは私情を優先させる。」
「ラブカさん、無茶を言わずに我々七人と行く方が安全です。大人としても忠告しておきます。」
「そうよラブカ。仮にも私たちは同じイカルンジ小隊でしょ、どうせなら三人で行こうよ。」
「諸君の気持ちには感謝するわ。でも、私が一人で親友を助けに行く方が感動的だろう。」
「だから私達の話を聞いてって。」
「心配はいらない、私は諸君のことを信頼しているからこそ行かせる。シュモク、ノコギお前たちは散々私に罵声を浴びせられても文句の一つ言わなかった。(本人の目の前じゃ言えんでしょ)それとフカさん、ヒレさん、ゴウカさん、ナクイさん、モノさん、あなた達もさんざん我々に拘束されれも素直についてきてくたことに感謝します。おかげでこっちも楽に脱出できました。」
「ラブカ・・・」
「ラブカさん。」
「・・・というわけで予定どうりに私は屋上庭園に向かう。諸君はこっち。」
「ちょっと待ってよえ~と・・・」
「おっと命令に背いたやつは誰であろうと撃つ。それと念のために無線の周波数だでは合わせておこう。他のとダブらないように。」(今の周波数のままだと他の無線を持った人に自分達の会話を聞かれる可能性があるため)
シュモクの無線の周波数を合わせたラブカは屋上庭園に、その他はコバンの収容された部屋に向かう。シュモク他一同はコバンを救出すると外を目指して進む。一方一人になったラブカは自分の持ち物を確かめる。サバイバルナイフ一本、高濃度栄養剤一本、手錠二つ、ライター一本、・・・肝心のピストルの弾は三発。魔法少女が仲間割れを起こしてここに来るまで彼女はピストルの弾を結構消費した。人質にかかっていた手錠や縄を解くためやドアのかぎを壊すために利用したほか持っていた予備弾倉をうっかりなくすというミスも犯していた。彼女の射撃センスは極端に低いためピストルはあくまでも威嚇とけん制にだけ使うことにした。
次にどこから屋上庭園に侵入すればエイに気づかないかを考える。おそらくエイは人質を前線に送って自衛隊にゆすりをかけて時間稼ぎをするだろう。とすると映は食堂での銃撃戦で倒れていない限り北にいるはずと考えると、眠くならずとも栄養補給をするため高濃度栄養剤を半分ほど腕に注射すると小走りで目的地に向かう。
途中錯乱した魔法少女に二回遭遇することになったが格闘戦で気絶させてから手錠をかけて拘束する。手持ちの手錠をすべて使い果たしたラブカは仕方なくナイフを構えながら走る。(ラブカはなぜ拘束した人から武器を奪わなかったのかって?それは彼女が慣れない武器を使いたくなかったからってのは後付設定)エイと戦う時にピストルの弾を残しておきたい彼女は錯乱した魔法少女に出会った時にはナイフでアキレス腱を切ることにした。
約十分後、ラブカの予想は当たりエイたちの後ろをとる。様子を見たところエイは望遠鏡で外の様子を確認していて目線の先に人質はいなかった。どうやらエイたちはまだ行動を起こしていないようだ。イルカの姿は確認できないが行動を先に起こして一人を取り押さえて人質交渉をすればどうにかなると考えた。
ラブカは一回深呼吸をして銃のロックを外すと物陰に隠れながらエイたちに近づいていく。十分距離を詰めると銃の引き金を引いて威嚇射撃をする。
パンッパンッ!ドチュッ!「動くな!」
「ヤドカっ!」
何を間違ったのかラブカの撃った弾はヤドカの脾臓を貫いてしまった。ヤドカはその場に倒れこむ。どくどくと腹から出血して(おそらく肝臓が破けているたむ血の色は黒くなるはず)もう助かりそうもない。お迎えも来ているようだった。
「カイ君・・・私のこと・・・っえ?好きだったって・・・えへへ。」
「あっごっごめん・・・その~当てる気はなかったんだ、なんていうかえ~と・・・まあ話し合わないか?」
「先に撃ってきて何言ってるけろ!ヤドカは・・・ヤドカはもう帰ってこないけろ!」
怒り狂ったシヤコはラブカに襲いかかろうとする。ラブカはシヤコとは対照的に冷静であった。馬蹴りでシヤコを地面に叩き付けるとかかと落としで再起に使おうとした右腕を封じ最後のピストルの弾で足を撃つ。シヤコが動けなくなるとラブカはピストルをグリップではなくバレルを握って構える。(グリップで敵を殴るため)彼女は周りをキョロキョロと見回すがエイの姿は見当たらない。
ヒュン!
エイはラブカの死角に入り込んで回し蹴りをする。ラブカの手に持っていたピストルを弾き飛ばす。続けざまに繰り出されたエイのパンチやチョップを防ぐとラブカはエイと距離を取って構える。
「エイ、やめないと貴様のアキレス腱を切る。」
「ラブカ先輩まだ分かりませんか?私達魔法少女は人よりも優れた身体を持っている。強健な骨格や筋肉、俊敏な神経。これらの力を持った魔法少女はなぜ人の下にいなくてはいけないの?」
「我々がどんなに優れた体を持っていてもそれは人のメンテをあってこそだ。我々は驕り高ぶってはいけない。」
「エイが膝を曲げだすとラブカはこの間合いからナイフを抜く余裕はないと悟る。ラブカとエイは格闘をするためジリジリと互いの距離を縮めていった。
11-3血戦 サイゴノタタカイ
自衛隊に対して投降してできるだけ多くの命を救おうと考えるラブカ。一方、エイは人質を前線に送って最後まで戦い抜いて自分達の主張を政府に通そうとしていた。二人は互いに構え合い一騎打ちをしようとしていた。
「エイ、この戦いは無意味だ。今この瞬間にも我々の同士は互いに撃ちあったりセルフカニバリズム(魔法少女の体力が切れた際に自らの細胞同士が共食いをするという現象、下手をすれば死ぬ、5-3でラブカはこれによって20㎏痩せてしまった)に苦しんだりしている。」
「あなたがもっと強い姿勢で事に臨めばこんなことにならなかった。」
「私は一度も軟弱になった覚えはない。それより貴様は私にかまってもらえなくなったことにイライラしているだけでは?私は他人のあこがれの対象になるほど立派な人間でいられなかった。そこは謝る。」
「とにかくあなたを粛清します。」
「無茶を言うな、話せば分かるはずだ。それとももう遅かったか?・・・おっと。」
エイはラブカにストレートを打つ。ラブカはすばやく避けると攻撃を開始する。しかし、実はラブカは乗り気ではなかった。まず、純東アジア人のラブカと日露ハーフのエイでは体型が違う。手足の長さではエイが圧倒的に有利。その点はラブカはカウンター攻撃でも狙えばいいのだが体重という大きな要素があった。現在ラブカの身長は155㎝体重65㎏に対してエイは身長177㎝体重100㎏である。この体重を生み出しているのは脂肪ではなく圧縮された筋肉と大きな骨密度である。(よって彼女たちはダボンダボンなキングジョー体型をしているわけではない、だがしかし、二人とも作者よりも身長低いくせして体重は作者以上なのだ)よってラブカは無闇にエイの攻撃を受けてしまうと体重差によって思わぬ方向に流されてしまう。逆にラブカの攻撃は戦闘服の強度という問題も絡んで無効化される可能性は高い。
殴り合いが始まるとラブカは案の定苦戦した。パンチ(パンチを繰り出してもパンチラは繰り出さない、これは作者の方針です、男子諸君ゴメンネ)やキックをはなっても相手に届かない。それどころかエイの攻撃が重くラブカは防御に集中しなくてはいけなくなる。でも、いつまでも防御をしていてもらちがあかない。
「プレグナント!」
プレグナントをかけた(詳しくは3-3をみてください)ラブカは自分にかかる重力の量を増やしてエイのキックを正面から受ける。エイは反動で後ろに飛ばされ一瞬バランスを崩す。ラブカはその一瞬を無駄にしない。スライディングでエイの足元に飛び込むと両足首をつかむと同時に流れるように立ち上がりエイを持ち上げる。さらにラブカは持ち上げた足の膝に頭突きをする。しつがいけん反応(座っている人の膝を堅いもので叩くと足をぴんと伸ばす現象、エイの反応がこれに当てはまるかどうかは怪しいが)を起こしたエイの足は真っ直ぐになる。ラブカは仕上げにバックドロップを敢行する。
「眠れー!!」ヒュン!パシィィィ!!
ところが、エイはラブカ同様にプレグナントをかけバックドロップの威力を軽減させる。二人は立ち上がると再び殴り合いを始める。(言い方は軽いが二人はそれぞれ箱根マラソン一周半分のエネルギーを消費済み)互いにプレグナントをかけているため戦いは飛んだり跳ねたりと激しいものとなった。しばらく戦いを続けていると互いに体が熱くなってくる。一瞬二人はある程度の距離を開けると構えたまま固まる。
「あっ熱い。」
「先輩もう限界ですか?脱ぎますか?」
「あいにくだがその趣味はない。貴様も汗だくだろ。」
「そりゃそうだな。ゼーゼー服の中が蒸れて餃子が作れそうだ。」
「蒸しメロンパン(脳みそ)の間違いでは?ちっこの前の消えた20㎏があれば訓練の時のように貴様に遅れは取らないのに。」(すみません、今回も作者のミスです、訓練中にラブカがエイを取り押さえるシーンを入れておくのを忘れました)
「ところで私たちはなぜここにいるの?」
「・・・たまにわからなくなる。ふー」
「そうだな、頭の中整理するか。」
「まあ、先に蹴りを入れたのは貴様だったな。」
「待て。先に撃ってきたのはあなたでは?そういえば本気で話し合いする気あったの?」
「まあ、3対1だと話を始める前に取り押さえられる可能性があると考えた。そこで一人を先に取り押さえて人質にしようと考えた。そして手始めに威嚇射撃をしたところあの有り様だ。」
「あれはたまたまだったのね。」
「そうだ。ところで貴様の人質はどこにいるんだ?特にイルカさん。」
「私を特撮ヒーロー物に出てくる宇宙人と一緒にするな。(ウルトラセブン等では計画をペラペラと話す宇宙人が結構出てくる)言えるわけないわ。言ったらあなたはそっちに行くわ。」
「ところで今自衛隊は?」
「今のところは動きないけどいつ動き出すかは・・・」
「悪いことは言わない。投降しよう。後は世間にゆだねよう。」
「いやっ私たち魔法少女が人間に負けるわけがない。体が冷めたところで再戦よ。」
「結局最後は暴力か。望みはしないがとっとと貴様を寝かせる。」
ラブカとエイは再び戦闘を開始する。エイは長い手足を生かして次々とラブカに攻撃を当てていく。一方ラブカは隙を見ては一本背負い、巴投げ、スーイングをかけてエイに打撲や擦り傷を作るが彼女よりもダメージ量を多かった。何しろエイはラブカに投げられるたびにプレグナントの力で自分にかかる重力の量を減らしてしまうからである。
ラブカは焦った。このまま戦いを続ければ確実に自分が先に倒れる。体力的にもそろそろ限界が近くになってくる。気がつくと飛び膝蹴りが腹に入っていた。さらには倒れこんだ時にかかと落としをされる。エイは更にうめくラブカを無理やり立たせると顔面にパンチを打つ。
(もうだめかも・・・私もここまでか・・・私も随分と年を取ったものだ・・・体が思うように動かない・・・ア~塩素臭い)(鼻の中が充血するとこうなる)
ついにラブカはあきらめモードに入ってしまった。彼女はグロッキーを起こしながらその場に倒れこむ。エイはついにラブカにとどめの一撃両足飛び膝蹴りをかけるために助走をつける。カリッラブカは口の中に何か硬いものがあることに気づく。それはラブカ最後お乳歯であった。とどめの一撃を受けた時にこれを飲み込むのはまずいと思ったラブカはこれを吐き出す。「これで私は終わりだ。」彼女は全身から力を抜いて穏やかな顔をする。
「狩ったー!!」ツルッ!
これは運命のいたずらなのか?エイはラブカの最後の乳歯につまずいて仰向けに転倒する。確かに乳歯はラブカの粘り気のあるだ液(人間が興奮して交感神経が働くとだ液が粘る)でヌルヌルしていた。それでもエイはとにかくツイていなかった。
「全く神は残酷なものだな。努力を続ける間は絶対に届かせないくせに諦めたら救いの手をくれるのか・・・つかんでやるか。」
ラブカは救いの手ならぬエイの足を握ると再び持ち上げてからひざに頭突きをする。エイはまたしつがいけん反応で足をピンと張り体と地面を垂直にさせる。
「またバカの一つ覚えの投げか。きかん!」
「ああ、投げてやる、天国までな。」
ラブカはエイを前の斜め46度を意識しながら投げる。
エイは放物線を描きながら後ろに飛んでいく。だが、このままでは空中で身動きが取れなくなりどんな攻撃を受けるかわかったものではない。彼女はプレグナントの力で自分にかかる重力の量を増やしてラブカに攻撃を受ける前に着地を狙う。
「落ち着け、体重は私が上だ。地面に足がついている限りは負けることはない。」
エイは何とか地面まであと30cmの位置まで降りる。もちろんラブカは着地はさせまいとエイに向かって走り出す。あと10cm、この速度でいくとラブカはエイが着地を終えてから攻撃をすることになりそうだ。そして、ついにエイの足は地面につく!
やったぞ!勝ったぞ!エイは地面に下りつつ有頂天であった。しかし、彼女の考えは甘かった。地面は少々やわらかく彼女の足は地面にめり込んだのだ。その衝撃が彼女の内臓を揺らした。さらには一歩遅れてきたラブカの渾身のパンチがエイの胸に命中した。パンチの威力はかなり大きくラブカの腕の骨にひびを入れた。一方、エイのほうは・・・
「どうだ?今度は痛かっただろう。」
「・・・うっ・・・うっ・・・」
「残念ながら貴様は一度も私に及ばなかった。今回は運も会ったがな・・・返す言葉もないか?」
仰向けに倒れたエイの顔には血の気はなく手足を軽く痙攣させている。話しかけても反応がない。ラブカは罠を警戒してエイを蹴ってみる。しかし、何も反応がない。生きているようだが何かがおかしい。セルフカニバリズムとも何かが違った。まさかと思いラブカはエイの胸に耳を当てようとするがエイの胸は高いためあてになりそうもない。仕方なく腕の脈を取ってみる。すると全く脈がなかった。心臓麻痺だ。
ラブカは分かれたシュモクたちに頼んでAEDを持ってきてもらうために無線をつなぐ。その後、右腕の骨のひびの痛みを感じつつラブかはエイに心臓マッサージをする。今のエイはAEDで蘇生できたとしても脳に障害が残るのがオチであろう。ラブカは虚しさを感じながらエイの肋骨を折る。(ラブカは意図的に折ったのではない、心臓マッサージは強すぎるぐらい押すのがいいと医者から聞いたが読者諸君はその場で判断してね)
11-結末 そして、何か始まる?
11-2より四か月後
「釈放おめでとう。ラブカ。」
「釈放ね。確かに収容所から出られるのは嬉しいわ。でも、これからの生活は制限だらけね。」
「監視されることには慣れているだろう。それともまた銃でも持って駆け回りたいか?」
あれから私は自衛隊に降参して自衛隊基地に収容された。いくらか尋問はあったが拷問は受けずに済んだ。まあ、これまでと違って訓練や出撃がなく時間が空き、しかも看守がいい人だったからガンダムをすべて制覇できた。という話は置いといてエイを心臓まひに追い込んだ私は無線でシュモクとノコギにAEDを所望した。本当はこの二人にだけ来てもらおうと考えていたが元人質のみんなが全員来てくれたのは嬉しかった。おかげでエイは蘇生できたが彼女は今半身不随になり感情はあるが言語はダメになっているらしい。
とりあえず話を戻すとエイの蘇生後私たちは白旗を上げて降伏を宣言。その時は自衛隊から紫外線を浴びせられ発光させられた。魔法少女陣も自衛隊陣もすぐにこれを受け入れ戦いは中断。互いの被害は自衛隊陣は負傷者多数、以上。魔法少女陣は死者二十名負傷者七十名ぐらいだったか。私達は大人しくお縄ちょうだいになったがその頃のKAT(カット)本部ビルの中の光景は散々であった。散らかる死体におびただしい数の壁に開けられた穴。死にはしなくても生き残りの皆さんも銃弾による傷や青あざだらけであった。
ついでに死因のほとんどは銃弾による即死か大量出血。あるいはセルフカニバリズムによる餓死。エイと戦う前に取り押さえたシヤコはエイが敗北した後に自害。
むこうはそれなりに物わかりが良かったらしく私達はあまり罪人扱いされなかった。倉度(クラド)セラケ死んだことを隠して冷凍庫に突っ込んだ件はどう見られたのであろうか。私が主導して暴動を起こした件はどう見られているのであろうか。まあ、今は鈴木さんに聞いてみないと分からない。
「ところで鈴木さん、政府は我々のことをどう見ているのですか?私はこれからどうなるのですか?」
「そうだな。どこから話そうかな。まあ、時間をさかのぼって話すとな自衛隊が装甲車両を進めたりお前の要求を飲まなかったりしたのは仲間割れを招くための心理作戦だった。それから俺はお前らの罪を軽くするためにいろいろ書類を偽装した。まあ、俺がお前に情報を漏らしたところを隠すことに一番力を入れたが、いわゆる保身だ。政府側からは多少嫌がられたが与党議員の金の運用履歴を突きつけてやったら大人しくなったハッハッハ。」
「へー鈴木さんはそっちもできるんですね。」
「勝手に脳筋扱いにするな。今お前以外の生き残りたちは他の元KAT(カット)職員たちと養子縁組とかを使って戸籍を得ている。だが、これはただ国が厄介者をバラバラにしておきたくないからだろう。」
「ところでなんで私たちは生かしてもらえるんですか?」
「理由はわからんがKAT(カット)と政治家の癒着が絡んでいるか、いつか再び魔法少女を使おうと考えているのか。現に今お前の腹にはまだマイクロマシンが入ったままだ。本気で魔法少女を再利用する気がなければとっととマイクロマシンを除去するのが自然だ。だが、マイクロマシンキャンセラーがお前の腹に埋め込まれた。」
「いくらプレグナントや重力操作が使えなくなっても出力はゴリラ並ですからね。私はまたいつか何かと戦う羽目になるのですかねえ。」
「ありうる。気を抜くことはできなさそうだ。そこはオレの力不足だ。」
「あっそうだ。あれからKAT(カット)はどうなったんですか?メディアでは今回の件は同報道されてんですか?」
「ああ、難民救済センターとKAT(カット)は国防省に吸収された。よって機密不可侵法の適用が有効だ。臭いだろ。メディアは今回の件を単なる大規模な難民の暴動と発表。右傾メディアは『移民を追い出せ』、左は『移民だけではなく全労働者の待遇を改善しろ』と論戦中だ。魔法少女はいまだに世間には公表されず、もちろん何かに気づいている人もいるが本質までは理解していないだろう。」
「あっそういえば私はこれからどうなるんですか?十日前位に紙で釈放が通知された時は鈴木さんの養子として引き取られると。」
「そのとうりだ。これからおまえは鈴木ラブカだ。それともノアが良かったか?」
「ラブカでいいわ、お父さん・・・っとイルカさんは?」
「頼むよ。お父さんで文切ってくれ。ああ、彼女はあれから救出されて今はほかのKAT(カット)職員たちと同じで監視はされているが大学入るために浪人やっとる。生物系の学部を目指しているらしく将来はお前の体をメンテすると張り切っていたな。で、お前は本当にこれでよかったのか?結局真実は闇の中だ。」
そういうとコバンは回れ右をして歩き出す。ラブカはそれについていく。
「大丈夫よ、私には妥協する力があるから。」
「・・・まあそれはいいことだが将来ブラック企業に入らないことを祈ろう。」
終劇
EX-3 次回予告他
本編から十五年後
テロを巻き起こす元魔法少女とKAT(カット)職員
これに危機を覚えた日本政府は魔法少女を再び利用することに
復職するパーソナルカラーを赤に変えたラブカと議論するクローンラブカたち
そして、新主人公真野レイジと火留間ショウコの力とは・・・
・・・と言いたいところなんだけどシーズン1のシナリオ書き換えているうちにかみ合わなくなったプラス脳内で製作したのが三年前だから今の作者の価値観も変化して作りにくくなったためシーズン2はお蔵入りにします。
けど、作者はこれからもなんちゃって執筆活動を続けていきます。なので脳内にあるネタを一挙公開
無差別スナイパー
近未来、世界中で資本主義が揺らぎ日本国内では内戦が発生。そんな中若い兵士一一(かず ハジメ)♂二十歳は半盲目のスナイパー・リンリン・李院・凛鈴・リンリリンリ・李院・輪鱗(リンリン・りいん・りんりん・リンリリンリ・りいん・りんりん)♀二十歳とコンビを組むことに。そこでハジメは世の中の残酷さを目の当たりにする。「機動戦士Vガンダム」「攻殻機動隊」「四畳半神話体系」等を参考に作成。後日小説投稿サイト「小説家になろう」に引っ越して作る予定。
XIRACO-シラコ
魔法少女もの(?)第二弾。人を捕食する寄生虫キウズアの弱肉強食の世界に少女達は巻き込まれる。「断れない女」「筋トレスケバン」「ドM!・・・ではない自己犠牲至上主義者」等個性豊かなキャラが大活躍!「コードネーム魔法少女」に引き続きアクションシーンには重量感とスピードを表現するため前作でも使った土煙に加え火薬やエフェクトを使用。
物語は日本社会、アメリカの戦争の他「ウルトラマンネクサス」「ぼくらの」「寄生獣」を参考に作成。
マギポリ
近未来超能力者・魔法使いが出現。政府は魔法使いの犯罪を鎮圧するため対魔警察(マギポリ)を設立。そんなマギポリに所属するドSで負けず嫌いで甘党なあんちゃん千矢華(ちやか)カガリ(♂33)は部下の魔法使いを従えて事件に挑むが・・・
人間の生き方や差別心に作者なりの考察で迫った物語。「攻殻機動隊」「サイコパス」等を参考に作成。
その他悲惨な巨大ロボットものとかあるけど今回はこれぐらいに。
とりま、ここまで読んでくれた数少ない読者みなさんに感謝~
コードネーム魔法少女