ピエロー出会いー

出会いなんて、いろいろあって当たり前でいいのではないか

その日は晴れていた、いつもと変わりなく太陽の光がアスファルトを照らしていた


僕が彼女と出会ったのは1年ほど前のことだった。
その日も晴れていて、照りつける日差しはあらゆるものを溶かす勢いで降り注いでいた。暑さのせいで大学に行きたくなっていしまった僕は、一つ手前の駅で降り大通り公園を歩いていた
誰もが日陰を好む中彼女だけは照りつける日差しの下ギターを奏でていた。
Tシャツにショートパンツ姿の彼女は、胸まであるだろう真っ黒の髪の毛を無造作に束ね揺らしながら、大して上手くない歌を気持ちよさそうに歌っていて
誰に向けて歌ったモノかわからない歌を、遠くの空を見ながら歌っていた。


多くのサラリーマン達が彼女の前を、見もせずに早足で過ぎ去っていく。
何人かは彼女をちらりと見て、歩いていく。
立ち止まる人は誰もいなかった
彼女の歌を聴く人は誰もいないのに、彼女の前には多くの人がいる錯覚に陥るような豪快な歌い方だった

僕は大学に行きたくないときは一つ前の駅に降りるようになっていた

彼女を見ると元気がもらえるような気がした

夏が終わりに近づき、少し肌寒くなってきた頃、その日は曇りだった、夏の時は暑いから大学へ行きたくないといういい訳であったが、肌寒くなっても大学に行きたくない日は月に1度はやってくるものだった
空が曇っているせいか、気温より体感温度は低くなっておりカーディガンを持ってきて良かったと思った
駅を降りて大通公園を歩いているとやはりその日も彼女はいた
彼女の存在を知ってから4回目になるが彼女の前にその日も人はいなかった
彼女の前に開かれて置かれたギターケースにはお金が入っていることはなかった、
今日の彼女は元気がなかったのが見て取れた
4回しか彼女を見ていないのに、感情が読み取れるど顔に出るタイプであった
あんな歌い方をする人が、こんな表情をするとは思わなかった
僕は勝手に彼女はいつも初めて会った時と同じであると思っていたからだった
元気をもらいに来たのにと勝手に残念がっていた
その表情を見ていると、僕は彼女の前で立ち止まっていた
4回目にして初めて立ち止まった
ただ気になったのだ、彼女の歌を聞きたいわけではなく、あんな歌を歌う彼女がなぜ元気をなくしている理由-
正面の位置に赤いベンチがあったそこに腰掛け彼女を見ていた
無心に歌う彼女は悲しそうだった
歌い終わった彼女はやっと僕に気づいた
笑顔を作ってこっちに近づいてきた、ぎこちない笑顔で「ありがとう。」といって、彼女は当たり前のように僕の横に座ってきた。
「うれしいな。聞いてくれたのアナタがはじめてだよ。この時間ね、通勤の人が多くて誰も立ち止まって聞いてくれたことがないの。少し時間が経つと散歩中のおじいちゃんとかが聴きもしてないのに、お金入れてくれるんだけどね。」
聞いてもいないことをペラペラとぎこちない笑顔を作りながら彼女は話してくれた。
そのあと、お互い自己紹介をして、また彼女のトークショーが始まった。
彼女が26歳だということ、夜は知り合いのスナックで働いているということ、夢は歌で稼ぐこと、
初めてあった人によくここまで話すなと、思うほど、彼女の弾丸トークは止まらなかった。
恋に落ちたのは多分もうこの時だったんだろう

ピエロー出会いー

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ピエロ-出会いー暇つぶし程度にぜひ読んでみてください

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-06-29

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